2013年04月01日

●続和文解釈入門 第50回

зритель(観客)やчитатель(読者)は集合名詞として単数で使われることが多い。читательを文中での呼びかけで用いるときは、今その文章を読んでいる人に対してだから、単数となるのは当然であるので、ここから単数でよく使われるのかもしれない。二人で1冊の本を読むというのはかなり特殊な状況であろう。読者層は当然ながらкруг читателей, слои читателейと複数が来る。

出題)「どこかの二人がいつも会社の行き帰り、彼についてくる」をロシア語にせよ。

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2013年04月02日

●続和文解釈入門 第51回

このコーナーを見ている人は分かると思うが、露文を見て簡単に和訳できるようなものでも、和文から露訳というと案外に難しいものである。和文露訳には文法の勉強が露文解釈以上に必要であることが分かるはずだ。そうでないと思うならば、試しに本コーナーの出題の和文を露訳してみれば分かる。不完了体現在形とて簡単そうに見えるが、遂行動詞は簡単には手に負えない。どう難しいか、分かりやすい例を挙げてみる。благословлять(祝福する)とпроклинать(呪う)はそれぞれ遂行動詞であり、下記のように使う。

Благословляю вас.(祝福申し上げます)
Проклинаю тебя, твоё здоровье, твоё будущее.(お前を、お前の健康を、お前の将来を呪ってやる)

ところが(お前に遺言だ。5ルーブルを盗むなら呪ってやるが、10万ルーブルなら祝福するぞ)を露訳すればどうだろう?共に日本語では、「呪う」、「祝福する」である。

Вот тебе завет: украдёшь пять рублей - прокляну, украдёшь сто тысяч – благословлю.

露訳すると、例示的用法だから、上のように完了体未来形なってしまう。発話と同時に動作が始まり、発話の終了と共に動作が終わる遂行動詞(不完了体現在形)と、その時点では動作が始まっていない完了体未来形の意味の差が分かるだろうか?つまり母国語の日本語においても時制を精確に理解していないと訳せないのである。ちなみに、この例文はドストエフスキーの作家の日記からのものである。

出題)「好むと好まざるにかかわらず、これは俺の仕事だ」をロシア語にせよ。

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2013年04月03日

●続和文解釈入門 第52回

ソ連時代ホテルに泊まると、パスポートの記帳というか、その筋への報告のためにパスポートが一晩預かりになったのである。最近のロシアでは、特に田舎でない限りは、パスポートとビザのコピーを取ってすぐ返してくれるだろうから、最近ロシアに行く人はあまり知らないかもしれない。長いことこういう風習は、ソ連が秘密警察国家だから、そのせいだと思い込んでいた。ところが、1913年に出た稀代のロシアの詐欺師騎兵少尉サーヴィンкорнет Савин(1854~?)の自伝を読んでいたら、1890年代のエピソードとして、彼がフランスのドゥ・トゥルーズ・ロートレック伯爵граф де Тулуз-Лотрекと名乗り、ブルガリア王家を乗っ取ろうとして、ブルガリア政府を手玉に取るというくだりで、セルビアのベルグラードに立ち寄るのだが、そのときに西欧との違いというくだりで、ロシア風あることの証左として、По приезде же в гостиницу у вас отбирают паспорт для прописки, так же как и у нас.(我が国同様、ホテルに到着するとすぐ滞在証明のためにパスポートは取り上げられる)とある。ロシア帝政時代からのものだったのである。

出題)(長電話で)「カチューシャ、(もう)切るわ。電話して」をロシア語にせよ。

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2013年04月04日

●続和文解釈入門 第53回

和文露訳の勉強と突き詰めて行くと、日本語での作文の勉強のように、いずれはロシア語で作家やジャーナリスト並の文章を書けるようにということを目指すということになるのかもしれない。しかし、普通にメールの文章が書けるというのと、よい文章を分かりやすく書けるというのは違う。普通に文章が書けてから、文章が上達する練習が始まるのである。和文露訳の場合は、外国人が文法や語彙の間違いを最小限に抑えて、普通にロシア語の文章が書けるよう練習をするという事である。

出題)「何かあったら言って」をロシア語にせよ。

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2013年04月05日

●続和文解釈入門 第54回

勧誘形という一人称の命令形がある。分かりやすく言えば、英語のLet's(~しましょう)という、давай(те) + 完了体未来形(不完了体不定形でもよいが、使用例は少ない)という用法である。「~しましょう」と言っているのだから、話しの流れに沿ってであり、давай(те)と不完了体命令形が来るのは分かる。その後に不完了体不定形が来るのも、主観的ニュアンスのない動作そのものという事で理解できる。問題は完了体未来形である。これは文法的にはдавай(те)の後の完了体未来形という事なので、二つ文があり、カンマが省略されていると考えられる。そうでないと、命令形の後に、完了体未来形が来るのは論理的におかしいことになる。つまり、着手の意味でдавай(те)が来て、その後には、別の文が来るわけだから、主観的なニュアンスを示す完了体未来形が来るということになる。この場合、давай(те)は添え物というか、露払いのような、動作の着手を先の文で示しているという事になるのだろう。

出題)「お借りになったお金の期限はとっくに過ぎております」をロシア語にせよ。

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2013年04月06日

●続和文解釈入門 第55回

デパートで「御来場のお客様にご案内申し上げます。ただ今8階ではバーゲンセールを開催中でございます」という類のアナウンスを聞くことがある。これを露訳すると、Мы сообщим Вам, покупателям. Сейчас идёт распродажа на восьмом этаже. となりそうに思う。ところが、ロシア語としては非常におかしい。接続語なしで二つの文が続いているのである。しかも最初の文は「御来場のお客様にご案内申し上げます」という短文の露訳としては、伝えるのが未来の時制ゆえに完了体未来形が来ており、一応文法上正しいように見える。しかし、考えてみると、日本語本来の用法では、述語が後に来るから、「ただ今8階ではバーゲンセールを開催中であることを、御来場のお客様にご案内申し上げます」となるはずである。これは発話と共に動作が始まり、発話の終了と共に動作が完了し、その結果が残る(発話終了と同時に伝えたい内容が聞き手に理解されるという意味で)わけだから、文法的には遂行動詞ということになる。しかし、これだと文が長すぎて、何を言わんとしているか、よほど注意して聞いている買い物客でないと意味が聞き取れないはずだ。遂行動詞の構文にもかかわらず、英語や、ある意味ロシア語風に、意味を的確に伝えるために、アナウンスでは、文を二つに分けて、述語を先に持ってくるという工夫がなされたのではないかと思われる。だから、この最初の文を露訳するには、Дорогие покупатели! Мы сообщаем Вам, что сейчас идёт распродажа на восьмом этаже. とするのが自然だと言える。このように、日本語の文でも、文ごとに訳してゆくと、ロシア語としてはおかしい文になることを指摘しておきたい。

出題)警察官が強盗に、「警察だ、全員床に、伏せるんだ」をロシア語にせよ。

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2013年04月07日

●続和文解釈入門 第56回

予定の用法には動詞によって不完体現在形が使われる。これは予定を組むというのは話し手にとっては主観的動作であるが、一旦予定が組まれてしまえば、それは主観的動作ではなくなり、惰性的な動作でもあるがゆえに、不完了体が用いられるとも考えられる。

出題)「子供の喧嘩に親兄弟、大人が口をはさんではいけない」をロシア語にせよ。

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2013年04月08日

●続和文解釈入門 第57回

体の本質を一言で言えば、完了体は話し手にとって意識的であるという事に尽きる。裏を返せば、不完了体は意識的(主観的)な要素が少ないと言える。つまり、不完了体は話し手にとって動作や状態という素材そのものであり、完了体は動作や状態が、話し手にとって主観的ニュアンスを帯びたものであるからである。大きく言えば不完了体は則天去私であるといえる。

 武道の稽古には自由組手と形組手がある。自由組手というのは、実戦を想定した試合形式の稽古であり、形組手というのは、技の粋を形にまとめ、それを練習することによって実戦的な技を習得する手がかりにしようというものである。ロシア語の会話においては、実際にロシア人と会話をするのは自由組手であり、形組手は『和文露訳入門』の目次にあるような各種の用法に相当する。これらの用法の説明を理解し、多くの用例に当たることで体の本質が必ず見えてくる。本書では、過去・現在・未来の三つの時制と命令法と不定法に分けて、またそれぞれを不完了体と完了体に分けて、多くの用例を体系的に方向づけ、配置することで、その手がかりとなるように工夫されている。これらの具体的な用法を順次会得することにより、体の真髄がだんだんと会得できるようになってくるはずだ。

出題)「彼女の面接が行われた」をロシア語にせよ。

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2013年04月09日

●続和文解釈入門 第58回

遂行動詞というのは発話 = 動作であり、そういう動作があるということを確信を持って言えるのは主語が一人称のときである。二人称や三人称というのは、基本的に他人であり、人のことは何を考えているのか分からないということもある。日本語でも小説などの感情移入は別にして、感情・感覚を示す「悲しい、痛い、感じる」、意志や欲求を示す「するつもりだ、~したい、~しよう」、精神作用を示す「思う、考える」は主語が一人称の時だけであり、二人称の時は「~か(問いかけ)」、「ね」などの終助詞を添え、三人称の時は「~かもしれない、~に違いない、~のだ、~らしい、~のようだ、~だろう」というような推測や判断の表現形式を添えるか、引用形式にするのが普通だということがある。ロシア語でも直接体験できるのは当事者のみという考え方から、遂行動詞が使われるのは圧倒的に一人称が多いのだと考えられる。二人称で使われるのは、О чём ты спрашиваешь? (何を尋ねているの?)とか、三人称は『和文露訳入門』の3-1-4項に例がある。ゆえに遂行動詞の使用については、どんな動詞でも、どんな人称でも使えるということにはならないのである。二人称や三人称が主語の時に遂行動詞が使われるのは、話し手が聞き手や第三者が動作を遂行することに確信がある場合

出題)「私はあなたの何なの?」をロシア語にせよ。

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2013年04月10日

●続和文解釈入門 第59回

最近、宮部みゆきの本を何冊か読んだ。出来不出来というか、私の好みもあるから一概に言えないが、『模倣犯』は傑作であろう。『理由』も虚構家族をテーマにして面白かった。その中に戦前、舅が嫁と通じることが伏線として出てくるが、核家族の現在ではあまり起こり得ないとはいえ、革命前のロシアでも大きな問題であり、19世紀など息子が出征している時に嫁を犯すとか、息子が自分の嫁と通じた父を殺し、尊属殺人のため形が重くなり、シベリア送りとなった悲劇は多い。『流刑Каторга』Дорошевич, Захаров, 2001にもこういう例について挙げられている。こういう嫁と通じた舅をロシア語ではснохачと言うのだという事を思い出した。

出題)「困ったら、だれに聞けばいいのですか?」をロシア語にせよ。

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2013年04月11日

●続和文解釈入門 第60回

体の用法の使い分けにおいて完了体が意識的であるという事は前に述べた。未来の時制においてこれを当てはめてみよう。完了体は意識的ということにから、アオリスト的用法のように、過去の時制において完了体は過去の明確な一点で行われた動作を扱う。それに対比して考えれば、完了体未来形というのは、同じく意識的という事で、動作を行う未来の一点を目指すと言える。その際その動作が具体的に明示されるかどうかは問題ではない。一方不完了体未来形は未来における動作の有無を示す事に主体があり、いつ動作が行われるかは二の次ということになる。これによって未来における時を示す具体的な語句があれば、完了体未来形を使うのが自然だという事が分かる。不完了体現在形の予定の用法は、現在を近接未来まで拡大解釈した用法であり、そういう意味では未来を示す具体的な語句と共に使われる例外と言えなくもない。

 上記により、『和文露訳入門』の4-1-1-5を下記のように補足した。

 出だしの「明日モスクワに立ちます」という文を露訳すれば、新しい事態や情報が出てきたわけであるから、Завтра я поеду в Москву. と完了体未来形を使うのが普通である。Завтра я еду в Москву. と不完了体現在形の予定の用法を用いると、モスクワ行きを前から予定していたということになる。あまり言わないが、不完了体未来形を使ってみよう。ただし、завтраという時間の副詞があると、4-2-1項でも述べるが、未来における時を示す具体的な語句があれば、完了体未来形を使うのが自然だという事だということと、出発するという動詞に文の焦点が行き、これでは完了体未来形の領域なってしまうので、これを外して文を作ると、Я буду ехать в Москву. となり、「(飛行機ではなく)車や電車でモスクワに行く」というニュアンスになる。

出題)「彼らはあわてず騒がず、冷静な頭で決定を下す」をロシア語にせよ。

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2013年04月12日

●続和文解釈入門 第61回

ロシア語は2という数字で短さを示す事が多い。в два счётаと言えば、あっという間にぐらいの意味であろう。これは軍隊の命令(かけ声)、Раз, два!(オイチ、ニ)から来たのだという説がОпыт этимологического словаря русский фразеологии(ロシア語慣用句語源辞典の試み), Шанский, Зимин, Филиппов, Русский Язык, 1987に書いてある。

出題)「アポイント(面談)は10時15分前だった」をロシア語にせよ。

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2013年04月13日

●続和文解釈入門 第62回

騎兵少尉サーヴィンКорнет Савин(1854年~?)は1887年ごろフランスのドゥ・トゥルーズ・ロートレック伯爵граф де Тулуз-Лотрекと名乗り、ブルガリア政府を煙にまいて、ブルガリア大公(王様)の候補となり、王家を乗っ取ろうとしたという稀代のペテン師であり、彼の自伝Записки корнета Савинаにはその事が書かれている。大半はヨーロッパでの逃避行と牢屋暮らしのため、私の興味があるロシア関係の犯罪文献としては価値が劣る。ただ19世紀末のヨーロッパの牢屋事情は詳しいし、当時のヨーロッパの社会情勢などもよく分かる。若干とはいえ、1887年ごろのモスクワの監獄の様子について具体的な記述があるのは参考になる。この自伝は1913年に作家ギリャローフスキーにより出版されたので、文章や校正に彼の筆が入っている可能性があるから、文法的な面で言えば安心である。彼は1918年に横浜に来ており、日光まで足を伸ばし、まもなくウラジオに戻り、香港で死んだという。

 拙著『ロシア奇譚』の4-17にイスカンデール閣下として、ニコライ1世の孫であるニコライ・コンスタンチーノヴィチには盗癖があり、1874年には時の皇后(アレクサンドル2世の后)の印鑑を盗んだり、他の皇族からダイヤなどを盗んだという事は述べた。このダイヤの盗難にサーヴィンが関わっているという話もあるらしい。

出題)「このセメントは短期間で強度を増してゆく」をロシア語にせよ。

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2013年04月14日

●続和文解釈入門 第63回

くしゃみをするとロシアではБудьте здоровы!と声をかけてくれる。これは東スラブ族の伝説で、くしゃみは霊や魂と人が接触するときに起こると考えられたものである。そういう意味での「お大事に!」ということなのである。中世の日本ではくしゃみをすると鼻から魂が抜けると信じられており、そのためにくしゃみをすると寿命が縮まると信じられていた。そこで早死にを避けるため「くさめ」という呪文を唱えるようになったとある。日本語のくしゃみについては休息万病、休息万命の早口言葉だとか、糞食めだとかという説がある。

出題)受付(守衛所)からの連絡で、
「お客さまです」
「どちらさま?」
「イワノフさんです。通行証を出しますか?」をロシア語にせよ。

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2013年04月15日

●続和文解釈入門 第64回

арестоватьは完了体・不完了体同形だが、遂行動詞の場合はарестовываюで、арестуюは完了体未来形として使うと第47回の出題でコメントした。日本語の「逮捕する」はその時の和文訳でも分かるように、遂行動詞としても、未来の時制でも文脈により使われるので、和文露訳のときには意識して使い分けることが肝要である。遂行動詞自体があまり知られているとは思えないので、遂行動詞とは何かということを『和文露訳入門』の3-1-4項でよく理解する必要がある。

出題)「私の治療の効果は出てる?」
「ええ、奇跡が起きましたよ」をロシア語にせよ。

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2013年04月16日

●続和文解釈入門 第65回

ガイドというと決まったスケジュール表があって、それに従って、観光案内や食事、時間の管理をすればよいと考える人もいるだろう。グループの観光客を相手にする時はそういう事もあるのは事実だが、まったくフリーというのもある。一番多いのはその中間で、ガイドはフレキシブルに対応しないとやっていけないし、お客様本位の世界なのだ。最近やったのは完全フリー、つまりホテル名と場所、ガイドする時間、客の名前だけ教えてもらい、後は客と直に話しあって決めてくれというものである。お客さんは夫婦の二人連れで、ホテルに着くなり、合気道の道着が買いたいので手伝ってほしいというので、探し回って、その店に連れて行き、買い物の手伝いをした。その後、円が少ないというので、土曜だったが両替店を探し出し、両替してもらった。通常はホテルで出来るのだが、ビジネスホテルや小さなホテルでは両替サービスがないところや、金額に制限を設けているところもある。ロシアと違い、土日や休日もやっている両替店は少ないので、ある程度そういう両替店の場所を頭に入れておく必要がある。その後、翌日京都に行きたいから切符を買う手伝いをしてくれと言うので、駅のみどりの窓口に連れて行き、その駅から東京駅までの行き方(プラットホームの番号や所要時間)などを教え、京都の何を見ればよいかと言うので、日帰りなら、金閣寺、竜安寺の石庭、清水寺ぐらいということで、その概略を説明し、京都でタクシーの運転手に分かるよう、日本語と英語・ロシア語で金閣寺などの行き先をメモに書いてやった。

 それからようやく観光スタートとなり、交通機関はすべて地下鉄・JR、徒歩でということになった。日本的なものが見たいというので、明治神宮へ、幸い2組も結婚式直後のカップルの写真も撮れ、非常に喜んでいた。その後、皇居、そのまま東京駅のレンガの建物を案内し、ついでに翌日の京都行きのために新幹線(東海・山陽と東北山形新幹線のマークの違い、行き先の違いを説明し)の改札口まで案内しておいた。桜は1本、2本は見たがまとまって満開のはまだ見ていないというので、上野公園へ。桜は満開で、花見客の写真も多く撮れ、ソメイヨシノだけではなく、八重桜、枝垂れ桜なども珍しがっていた。その後浅草へ。さらに東京湾を見たいというので、お台場の自由の女神像のところに連れて行き、レインボーブリッジをバックにかなりの写真を撮り、喜んだようだ。その後、都庁へ連れて行き、そこで時間となったので別れた。これは極端にしても、午前中は予定のコースを回り、午後は自分たちの希望はこうなので、予定を変更してほしいということはよくある。費用に関係ないならば、あるいは費用を客が負担するというなら、できるだけ客先の要望に従うようにしているので、このような臨機の対応をするためには、ある程度和食のレストラン、寿司屋、ふぐ店などを事前に調べておくことも必要だが、そのためにはガイドの場数を踏んでおかねならないだろう。

出題)「そろそろ帰るつもり。とにかくもう9時だもの」をロシア語にせよ

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2013年04月17日

●続和文解釈入門 第66回

箱根、日光、富士などの観光をしていると、火山が噴火したとロシア語で説明することが多い。例えば、「3千年前にその火山は噴火した」なら、Вулкан извергался три тысячи лет.となり、3千年前という過去の一点を示しているのにもかかわらず、不完了体過去形が来ている。アオリスト的用法である完了体過去形は使えないのだろうか?どうしてだろう?これは噴火というのが、瞬間的な出来事ではなく、ある一定の期間続くことから不完了体が使われるのではないかと思われる。体の用法も語義が大いに関係してくるという例である。

出題)「僕は紅茶だ」をロシア語にせよ。

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2013年04月18日

●続和文解釈入門 第67回

体の用法は極端に言えば、聞き手や第三者がどう思おうと関係なく、話し手がどう思うかどうかによって体の使い分けが決まる。回りの状況に流されない話し手にとって新規の動作であれば完了体を、そうでなければ不完了体ということになる。第55回の出題の解説を見れば、私の言う新規とそうでない場合というのが具体的にどうなのか分かるはずだ。

出題)「好きか嫌いかの問題はここでは関係ない」をロシア語にせよ。

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2013年04月19日

●続和文解釈入門 第68回

40年以上もロシア語を仕事で使っているのだから、体の使い分けが100%出来るかと言われたら、私の場合、90%とか95%ぐらいは正しく通訳していると思う。100%でないのは、通訳が、同時通訳とは言わないまでも、ほぼ間髪を入れずにしなければならないので、体の使い分けまで考える時間がないからである。ただ通訳した直後に間違いは分かるが、そのときはもう手遅れであり、言い直すことになる。外国人がロシア語を話すのだからこれはこれで仕方がないと思う。これ以上精度を上げるよりは、もっとリラックスしてロシア語を楽しんだ方がよいというのが私の考えであり、1分でも時間(長ければ長いほどよいと思うが)をくれれば、より正しい体の使い分けを提示できると思う。

出題)ゲームや勝負事で「ツキが変わった」をロシア語にせよ。

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2013年04月20日

●続和文解釈入門 第69回

痴漢というのも訳が難しい。最近女性専用車両をロシア人観光客に説明することがある。この訳自体は簡単だが、なぜこういうのができたかを説明するときに、ラッシュアワーには痴漢が多いから、その時間女性だけを隔離しているのだとしたいのだが、大体は言わんとするところは通じるにしても、肝心の痴漢の訳がすっきりせず、隔靴総洋の感じである。ロシア人の女性に痴漢を説明するときに、モスクワにも地下鉄があるのだから、当然痴漢がいるわけでそれはいいのだが、何と言うか知らないと何度かロシア人の女性に言われたことがある。эксгибиционистыだろうと何人かのロシア人女性から言われたが、それは露出狂であって、必ずしも痴漢ではない。最近マリーニナМарининаのУбийца поневоле, ЭКСМО, 2011(不本意な殺人者)を読んだら、развратник、половой психопатとあり、さらにВ переполненном транспорте к ней приставали сексуально озабоченнные взрослые дядьки.(満員の乗り物で彼女は痴漢につきまとわれた)というのがある。多分половой психопатぐらいがいいのだろう。他にもсексуальный маньякというのがあるが、強すぎるような気がする。грельщикは俗語(隠語に近い)人混みや電車などで女性に触る痴漢だが、ロシア人でもこの単語を知らない人がいるので使えないだろうし、хулиган (この他に、ゴロツキという意味で広く使える)だと茫漠としている。эротоман といえば色情狂だろう。

出題)「彼はすでに数え切れない回数、いろいろなコソ泥、ちょっとした脅迫、その他の犯罪で有罪判決を受けていた」をロシア語にせよ。

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2013年04月21日

●続和文解釈入門 第70回

不定法の例示的用法につきよく説明が分からないという人も多いだろうと思うので、故障の例で説明したい。体の使い分けは故障の頻度による。故障が定期的、ないしは頻繁に起こると話し手が考えれば、反復ということで不完了体不定形が来るし、故障は起こるかもしれないし、起こらないかもしれない、万一起こったらという文脈であれば、完了体不定形がくる。それが完了体の例示的用法である。

(故障のときの連絡先を教えてください)Куда обратиться в случае неполадок? <例示的用法で、故障はないかもしれないし、あるかもしれない、万一故障があったら>
(彼は何かの故障の場合は彼だけに問い合すように言いつけた)Он наказал в случае каких-либо поломок или неисправностей обращаться только к нему. <故障が頻繁に起こると話し手は考えている>

出題)「彼ら二人のうちだれかが嘘をついている」をロシア語にせよ。

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2013年04月22日

●続和文解釈入門 第71回

本との出会いというのにはいろいろある。1990年ごろナホトカの税関の人と話していた時に、何かお勧めの本はありませんかと尋ねたことがある。その方はダニレフスキーДанилевскийという思想家の本を勧めてくれた。メモをしたが、当時は手に入らず、2002年に『ロシアとヨーロッパРоссия и Европа』を手に入れたが、読んだのは今年(2013年)になってからである。『収容所列島』の中でソルジェニーツィンが勧めるフロレーンスキーФлоренскийの哲学書も2冊買ったが、未だ読んでいない。最近マリーニナМарининаの『Убийца поневоле, ЭКСМО, 2011(不本意な殺人者)』という警察小説を読んだが、その中で登場人物である前科者がある本のことで主人公と意気投合する場面がある。その本というのはЛев Успенскийが書いたСлово о словах (Зебра Е, 2009)という1954年に出たロシア語に興味を持たせるための入門書である。ナウカに問い合わせたら在庫があるというので、買い求めて今読んでいるところである。その中で、Рынду бей.(鐘を鳴らせ)という船員用語が、英語のRing the bell.の音読みから来ていることを知った。非常にためになりそうな本のようで、ご参考のためにここに書いておく。

出題)「資金不足のためにその雑誌は1899年第70号で休刊した」をロシア語にせよ。

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2013年04月23日

●続和文解釈入門 第72回

40年以上ロシア語をやっていると、随分ロシア語の達人と出会う機会も多い。サハリンで生まれた人、幼少期をモスクワで過ごした人などはロシア人並であるし、学生のときから努力して達人になった人も知っている。そのロシア語を聞いているとロシア人と変わらない。ただそういう達人は別にして、日本語とロシア語を通訳するときに、完璧な通訳だと思わせるテクニックはある。日本語をロシア語にする時に、相手のロシア人が意味が取りにくいというものを、分かりやすいロシア語に言い換えて通訳することである。ある意味通訳の独断と偏見という事にもなるが、国際的な分野の経済や政治なら、趣旨が一貫しているならそれでも通るかもしれない。しかし、ガイドの通訳をすれば分かるが、わびやさびをロシア語で一言で説明はできない。ロシアの文化や風習にしてもそうである。技術関係でも、世界でよく知られている技術はともかく、自社独自の技術を説明するときは一言では済まぬというのもご理解できるだろう。できるだけ訳の上で引っかかりがないような通訳を目指すというのも一つの道であろうが、私はごつごつしていても、説明の部分が多くても、時間が少しはかかっても正しい通訳を目指したいと思っている。

出題)刑務所の面会で「面会終わり。出てください」をロシア語にせよ。

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2013年04月24日

●続和文解釈入門 第73回

会話でどちらの体を用いるべきか区別できるような指針を作るのが、私の勉強の目的であるが、それを一言で言えればそれにこしたことはない。これまでいくつかお知らせしてきたが、最新のものを紹介する。
体の用法は話し手中心であり、体の本質が何かというなら、それは、

完了体の本質は話し手が動作の行われる
時間的な一点を意識する

という事に尽きる。裏を返せば、不完了体は時間的な一点を意識しないということである。

 完了体が現在の時制で用いられないのは、現在の時制における動作の一点が常に動いているため、ビデオカメラの一コマ一コマの静止画面のような、結果の存続のという形式か、ないしは一瞬後の未来のような広い意味での今でしか完了体は表せないからである。

出題)「これらの犯罪において自分が有罪だと認めますか?」をロシア語にせよ。

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2013年04月25日

●続和文解釈入門 第74回

想像中の動作の現在Настоящее воображаемого действияという用語があって、想像する場合は現在の時制を用いるという事であるが、Лев УспенскийのСлов в Словах (Зебра Е, 2009)の中に、Вообразите себе, что «дом стоит», так, чтобы можно было сразу понять, что он именно «стоит», а не «стоял», не «встанет», не «будет стоять», - разумеется, вам не удастся.(まさに「家が立っている」のであって、「家が立っていた」でもなく、「(未来の時制で)家が立つ」のではないということがすぐ理解できるよう、「家が立っている」と想像しなさい。もちろんそれは無理だ)という文がある。これを読んで気がついた。「家が立っていた」と想像するには、立っている家を頭に描いて、それから過去とか×印とかつければいいのだろうか?「これから家が立つ」では、空き地を想像して、透けた家が立っているところを想像すればよいのだろうか?こういう風に考えると、想像では、時制は現在形でしか表せないという事になる。
(あなたが彼女と後に、しばらくしてから上流階級の集いで会うと想像してください)Вообразите же, что вы встречаетесь с ней потом, через несколько времени, в высшем обществе.
 
しかし、仮想の状況での二つ以上の動作が続くときは、先行する動作の完遂ならその部分は完了体過去形が来て、それ以降の動作は現在の時制である。ロシア語には未来完了形がないので、完了体過去形で代用していると考えられる。この場合допустим(仮に~とする、~と仮定しましょう)という挿入句があるのが普通で、そういう意味では分かりやすい。

(あなたがワッチ(当直)に立って、地図の上にかがみこんだとしましょう。ほらこれが針路です。右手にはどこかの王国、左手にはどこかの国、まるでおとぎ話ですよね)Встали вы, допустим, на вахту, склонились над картой. Вот ваш курс, справа некое царство. Слева некое государство, как в сказке.
出題)「何もしなければ何も変わらない」をロシア語にせよ。

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2013年04月26日

●続和文解釈入門 第75回

принять (принимать) меры по + 与格(против + 生格)はフランス語由来で、「何らかの措置を講ずる」と訳す。意味はликвидировать или попытаться ликвидировать что-либо нежелательное(何か望ましくないものを一掃する、一掃しようと試みる)ということであり、мерыと複数が来ているのも、その正体が漠然としているか、明確に言いたくないからだろう。принять конкретные меры(具体策を講じる)という語結合もあるが、その具体策がどんなものかは、これだけでは分からないままである。

出題)「彼とは異母兄弟なの」をロシア語にせよ。

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2013年04月27日

●続和文解釈入門 第76回

Лев УспенскийのСлово о словахに、言葉が全ての単語が擬音から発声したのではないという例に、кукушкаが挙げられている。ロシア語でも英語cuckooでも鳴き声からというのは誰にでも分かるが、そうではない例として日本語のホトトギスが取り上げられている。学名をすり合わせるとホトトギスはロシア語でмалая кукушкаだから、間違いではないのだが、кукушкаだけならカッコウであり、これも鳴き声からであることは容易に推測できる。ちょっとした勘違いであろう。この本には中国語の他に、日本語の単語「火事、人、笑う〔「ばらう」と誤記されている〕など」もよく出てくる。1954年に出版した本で、こういう東洋語にも目配りが利いているのはさすがだと感心する。

出題)「折れた鎖骨がくっつき、病院を去るつもりになった」をロシア語にせよ。

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2013年04月28日

●続和文解釈入門 第77回

SOSの由来については諸説あるが、Сос! Сос! Сос! Спасите от Смерти(SOS! SOS! SOS! Si O Sakesasetamae 死を避けさせたまえ)などと勝手に解釈する人もいる。SOSはロシア語ではソスと発音し、SOS と書くのが普通である。SOSはСпасите наши души. Save our souls.の略ではない。単に伝えやすいようにтри точки, три тире, три точкиが選ばれただけである。

出題)「勤務中(仕事中)は寝てはならない」をロシア語にせよ。

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2013年04月29日

●続和文解釈入門 第78回

体の使い分けは動詞によって違うという事も言えるが、同じ動詞でも語義によって、また時制によっても違うし、同じ時制であっても反復、過程、遂行動詞など用法によっても異なる。『和文露訳入門』は日本語の時制を中心に、和文露訳の観点から体の用法を考察したものである。

出題)「この時間を利用して市中を散歩した」をロシア語にせよ。

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2013年04月30日

●続和文解釈入門 第79回 

通訳で困るのは、資料なし、背景の説明なしのスポットというか、代打のような通訳である。だいたい前の日に急に頼まれて通訳する羽目になるのだが、ロシア側がバラバラのグループで、日本側のグループもばらばらの各30分ぐらいの5~6回の通訳というのは困る。いわゆる最近流行りのB2B(business-to-bisiness 個別企業打ち合わせ)であり、大きなフォーラムで行われることが多い。全く資料なしで、背景も何も連絡もない。主催者側もどんな話になるのかが見当がつかないから当然と言えば当然である。通訳していて背景が分かりかけたら、はい次ということなので、こちらにもストレスがかかるが、通訳してもらうお客さんにとっても不満が多かろうと思う。まともな通訳ならそのような、背景の説明や資料のない通訳などは断るのだろうが、当方は生活がかかっているし、こういう仕事がある以上誰かがやらなければならないわけで、断れる人がうらやましい。ただよい通訳を願うなら、事前の背景説明や資料を渡すのは当然であり、それがなければ、それ相応の、その場でベストを尽くした通訳とならざるを得ないという事だけは理解してもらう必要がある。

出題)「コーヒー飲むかい?」をロシア語にせよ。

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