2007年06月01日

●帯研(第88回)

「封筒に入れる」とか「ハンドバッグに入れる」を露訳する場合、初心者なら手元の和露辞典を見ることになる。手元にあるЛаврентьевの和露で見てみると、вкладывать, вставлять, вмещать, помещать, впускатьという動詞が出てくる。技術関係で何かの部品に別の部品を入れるという場合なら、ともかく、初心者が知りたいのは一般的にどういうかであろう。普通はкласть/положить в конверт/сумкуという。和露に頼って一般的な文章を作ることばかりしていると、思わぬ恥をかくことになる。遠回りのようでも、児童文学でできるだけ日常生活を描いたものや小話などを読んで、日常生活でこれは使えると思った文章をデータベース化しておくことが後で大いに役に立つと思う。急の場合にはそうもゆかぬだろうから、これはという単語を露和(和露ではなく)で引いて、例文を見るのが案外正解に近い場合が多い。
設問1)「コインを自動販売機に入れる」は何というか?
設問2)次の小話を訳し、オチを説明せよ。
Еврей заглядывает в отдел кадров:
- Скажите, пожалуйста, вам требуются сотрудники?
- Да, а какая у вас фамилия?
- Шихман.
- «Ман». Нет, не подойдёт.
- А «ич»?
- Нет, «ич» тоже не подойдёт.
- А «аум»?
- Нет, нельзя.
- -А «ко»?
- А «ко» подойдёт.
Еврей радостно выглядывает в коридор:
- Всё в порядке, Коган, заходи!

Posted by SATOH at 20:43 | Comments [4]

2007年06月05日

●帯研(第89回)

ロシアの本はカビが生えやすいと書いたが、そのカビをエサにするのか紙魚やダニが見つかるときがある。無論容赦なく退治する。そのためゴキブリや蚊はその場で退治するものの、クモはダニを食べてくれると思うので殺さない。しかも私には死んだダニのアレルギー(ハウスダスト症候群)があるからなおさらである。家族にも殺さないように言っている。クモと言えば、トルクメニスタンのチャルジョウというところに20年前パイプのテストで出張したときに、5月頃だったが、周りが砂漠というより土漠でサソリやタランチュラтарантулが出てくるが気にしないようにといわれた。サソリも毒蜘蛛も刺されたら危ないじゃないかというと、サソリもタランチュラも毒が弱く、それで死んだら新聞種だと言われたのを思い出す。そうこうするうちに泊まったホテルの部屋に入ると、バサッ、バサッと音がする。田舎だから窓を開けていたので鳥でも迷い込んだかと思ってよく見たら、ハトぐらいもある灰色に点々のあるバッタだった。さすがにバサッ、バサッでは眠れないので、窓を開けて追い立てたが、部屋が5階と高かったせいかバッタは出てゆかない。それでタオルをバッタにかけてそのままタオルをつかんで、タオルごと窓に放り投げた。そのような僻地でも(ここはウズベキスタンのブハラに近くなので)、シルクロード巡りをしている年配の日本人観光客にあったが、今と違って20年前とはいえどこにでも日本人はいるなと驚いた次第。
Встречаются два корабля в море: русский и американский. На русском паника, суматоха:
- Кто бросил валенок на пульт? Кто бросил валенок на пульт?
Американцы посмотрели и говорят:
- У нас в Америке такого нет...
- Да нет больше вашей Америки! Кто бросил валенок на пульт?!
設問1)オチが分かるように和訳せよ。

Posted by SATOH at 10:22 | Comments [3]

2007年06月09日

●「ロシアのジョーク集 - アネクドートの世界 -」刊行

このたび2007年7月末に「ロシアのジョーク集 - アネクドートの世界 -」が東洋書店からユーラシア選書 No. 6 として刊行予定です。暫定的な目次をご参考までに挙げておきます。今度こそ売れるといいのですが。
目 次

はじめに

第1章 万国向け(受け)小話
(1) 会社で (2) 犯罪 (3) 夫婦の仲 (4) セックス (5) 家庭問題 (6) 金言 (7) 医者 (8) その他
第2章 ロシア人の目に映る日本人
第3章 知られざるカザフスタン
第4章 ロシアの奇人変人珍談奇談(18~20世紀初め)
(1) プーシュキンとパンタロン (2) スープに身投げしたオッパイ (3) デザート (4) イクラの話 (5) ヘボ詩人 (6) 大食いクルィローフ (7) 名物
第5章 ロシア的小話
(1) 酒 (2) 警察沙汰 (3) 夫婦関係 (4) ロシアの市民生活 (5) 五露助(ごろつき)成金〔ロシアマフィア略史〕 (6) 義母物語 (7) チュクチ人 (8) 軍関係
第6章 ユダヤジョーク
第7章 駄洒落、ナンセンス小話、トンチ話
第8章 政治小話
(1) プーチン (2) エリツィン (3) ゴルバチョフ (4) ブレジネフ (5) フルシチョフ (6) スターリン (7) レーニン (8) ジェルジンスキー (9) その他

おわりに
索引

Posted by SATOH at 16:50 | Comments [2]

●帯研(第90回)

自分の経験から言って新米の通訳が嫌がるのは、その場での演説、つまり前以て演説の原稿をもらわずに、その場で好き放題しゃべるのを通訳させられるときである。これに一応慣れると、次に嫌なのは小話の通訳である。帯研の参加者が帯研100回ぐらいやれば、ロシア人のする大抵の小話には驚かなくなるだろうから、そのぐらいの効能はあるかもしれない。まあガイド試験やロシア語検定には受かるかどうかは知らないが、でもロシア人相手の実戦用なら、よっぽど帯研のほうがそんな試験より度胸がつくのは間違いない。今回の課題は、
Едет качок в автобусе. Женщина сзади спрашивает его:
- Вы выходите?
- Выхожу.
- А перед вами?
- Выходят, только они об этом ещё не знают.
設問1) 誤りがあれば訂正して和訳せよ。

Posted by SATOH at 22:08 | Comments [2]

2007年06月10日

●帯研(第91回)

和露に載っていない単語を調べるにはどうするかというと、例えば「交通機関」という語句を調べるとすると、自分で言葉を言い換えてみて、「交通手段」と考え、露和から、транспортные средстваという語結合があるか調べてみる。他に、「交通機関」というのは、サイトでその場所(の建物)にどう行くかを示すもので、ロシア語の店や博物館などのサイトを見て、「地下鉄の最寄の駅は~」などという解説がないか調べる。そうするとсхема проездаなどの単語が見つかる。常にこのように簡単ではないが、ロシア人も同じ人間であり、現代人の生活は同じようなものだという前提で調べることが可能である。自分で露訳して、その単語が実際にあるかどうか、どう使われているかを見るには、これもロシア語のサイトを見ればよい。いくつかバリエーションを作っておけばどれかあたるだろう。ただこれを100%頼るというわけにはいかない。サイトのロシア語というのはサイトの日本語同様多くが素人であり、ファンタスティックな単語や文章をもあるということを頭に入れておく必要がある。そういう危険を理解してのうえなら、文章や前置詞の語結合もこれで調べられる。そのほかにサイトでは、日本同様、ロシア語が非常に隠語だらけというのもあるから、標準語法を使っているかを理解するのもやはり経験がものをいう。それと和露に載っているからと言って、それがロシア人が普通に使っている単語とは限らない。単なる説明の場合が多い。つまり意味は分かるがそうは言わないとロシア人に言われることが多々あるという事を頭に入れておいたほうがよい。そういう説明するだけなら、何も和露を引かずとも自分で作れる。それをロシア人に試して調べるという手もある。ただ用語の場合は一般のロシア人が知らない単語も多いので、100%ロシア人に頼りきるというのも危ない。結局自分で語彙集を作ってゆくしかない。頼れるのは、つまるところ自分だけなのである。
Мужик собирается гулять, жене сказал, что идёт на собрание. Стоит перед зерколом, прихорашивается и напевает: «Пара-па-бабам. Пара-па-бабам». Жена уловила и тоже начинает собираться, припевая: «Таратарам-дарам-дам, татарам-дарам-дам!»
設問1)オチが分かるように和訳せよ。

Posted by SATOH at 22:27 | Comments [3]

2007年06月12日

●帯研(第92回)

ロシア人に自分が作文したロシア語を見てもらう場合、気をつけたほうがよいと思うのは、ロシア人が訂正するときに、1) 文法的な誤り、2) 慣用からの乖離、3) 自分ならこう訳すというこの3つを明確にしてもらったほうがよい。1) と2) は指摘してもらえばためになるが、3) は参考としたほうがよい。ロシア人すべてが美文家ではあるまい。日本人の日本語の例で分かることだ。今回の課題は、
Однажды король вышел в зимний сад и увидел на снегу надпись: «Король дурак». Он был страшно разгневан и приказал министру разобраться. На вечернем докладе министр докладывает:
- Ваше величество! Преступники найдены. Моча – первого министра, почерк – королевы.
設問1)できるだけ上品に訳せ。

Posted by SATOH at 10:17 | Comments [2]

2007年06月14日

●帯研(第93回)

ロシアに出張するときは風邪薬、下痢止め、傷薬ぐらいは持ってゆくが、あまり風邪を引かないとはいえ、引くとのどに来る。うがい薬を持ってゆくのは面倒なので、紅茶のティーバッグの二番煎じでうがいする。不思議とよくなる。カテキンのせいか。
都会ではそういうことはないが、ロシアや中央アジアの田舎の空港に行くと、見知らぬ人から到着地の荷物を頼まれることがあるが、これは絶対引き受けてはならない。中に麻薬でも入っていたら言い逃れが出来ず、間違いなく刑務所入りとなるからだ。海外ではある程度善意についても抑えておかないととんでもない目にあう。
ロシアでも田舎を歩いていると、木の幹が途中から白くなっているのを見かける。これはкольцеватьといって害虫予防である。初めは夜自動車が木への衝突予防用かと思っていた。
それとソ連時代飛行機で驚いたのは、到着するとさっさとパイロットが乗客より先に下りることである。搭乗のときはパイロットが最後に乗ってくる。パイロットが大事にされるわけだ。地方では今でもそうらしいので驚かないように。
Официант:
- Как наши бифштексы?
Клиент:
- Слишком маленькие для их возраста.
設問1)訳せ。オチを解説せよ。

Posted by SATOH at 10:30 | Comments [2]

2007年06月15日

●帯研(第94回)

現代人は忙しい。ニュースを読むのもサイトのタイトルニュースで終わりである。ロシアの出来事や文化、ましてや大衆文化など知ろうとする人は少ないかもしれない。それでも両国間の誤解からくる摩擦を防ぐために、ロシア語のプロが自分の好きな分野で、これまで紹介されてこなかったものを分かりやすく日本人に知らせることは非常に意義あることだと思う。そのためにもロシア語で文献を読めるよう、またテレビのロシア語が聞き取れるようがんばって欲しい。取りあえずは好きな分野に傾注すればよいのだから。
Встречаются два знакомых. Один спрашивает:
- Ты какие спиртные напитки пьешь?
- Один. Он состоит из названий двух животных. Это коньяк.
- И какими дозами ты его употребляешь?
- Если наоборот прочитать это название – як конь.
設問1) 和訳せよ。

Posted by SATOH at 18:14 | Comments [3]

2007年06月20日

●帯研(第95回)

ロシア語と日本語は違うといっても、単語の意味と基本的な文法が分かれば、素直に訳せる構文というものは多い。例えば делиться с кемは「~と分かち合う」ということで、単語の順序は違うが、訳して妙な感じはしない。ところが、управлять чемとなると、日本語なら「~を支配する」ということで、ロシア語の補語に対格が来てくれれば違和感がないが、造格が来る。こういう句動詞や格支配で日本語と違うなというものを集中的に覚えるとよい。日本語として自然な文章でなければ翻訳ではないが、語法や文法を無視して文章の流れで訳すのは翻案である。ロシア語の文法を独立したものとして教えるのではなく、いかに実戦で応用できるかという観点から、ネットで見かけるようなロシア語の文法書をただ和訳するのではなく、教える側が文法をよく消化して学習者に教えることが大切である。特に文法が会話力向上にどう役立つか具体例をもって説明すべきである。今回の課題は、
Мужик говорит:
- У меня очень красивая жена – чистая Венера.
- Загибаешь. Венера – богиня красоты.
- Ну, Венера не Венера, но всё-таки в ней есть что-то венерическое.
設問1)オチがわかるように訳せ。

Posted by SATOH at 13:16 | Comments [3]

2007年06月24日

●帯研(第96回)

若い頃は自分のロシア語の力のピークは45歳ごろだと漠然と考えていた。それを10歳も過ぎた今、10年前よりも、そして1年前よりもロシア語の実力ははるかに上回っていると実感している。語学の実力は勉強を続ける期間とその内容の充実さに比例する。ただ先輩(無論50歳を過ぎた人)で実力に安住している人(勉強しない人)には、ロシア語の実力が前より伸びているなと思う人はほとんどいない。これは体力的なものも大きいと思う。語学をする人は文系だからか、運動が苦手な人が多い。体力が弱まれば気力も落ちる。何もスポーツの大会に出場するような体力が要求されているのではない。夜すぐ眠れて、すっきり朝目が覚め、どこといって身体に痛いところがなければ(肩こり、腰痛がない)それでよしということだ。こういう健康管理も若いときからストレッチングなど毎日する癖をつけないと無理である。健康管理ができて、勉強を続けてゆけば、70歳か80歳にはロシア語のレベルがそれなりのものになるのではと思うというよりは期待している。勉強にこれで終わりと言うことはない。この5年間は詩を中心に勉強しようと思う。身体のどこかに具合が悪ければ勉強を続ける体力もないだろうし、血の巡りも悪いということは、脳も身体の一部だから脳の血のめぐりも悪くなるということである。知らず知らずに勉強を止めれば後は下り坂が待っているのみである。どのくらい下がっているのか本人の気がつかないだけである。いくらロシア語の権威と言われている先生方でも2、3分ぐらいロシア語で会話をすればその人の実力が分かるというものだ。しかもただ漫然といくら勉強をしても本当の上達にはつながらない。ロシア人との会話の実戦のときに、どのように、どのような表現法を用いるかということを常に研究しておかなければ上達はない。
На иностранца подали в суд на удержание с него алиментов. Он по-русски знает только падежи. В суде держит ответную речь.
- Я - предложный, она – дательный, я – творительный, она – родительный, в чём же я винительный?
設問1)オチが分かるように訳せ。
設問2) алиментыについて分かりやすく説明せよ。

Posted by SATOH at 12:26 | Comments [2]

2007年06月29日

●帯研(第97回)

尊敬するロシア人を一人挙げろと言われたら、人類愛にあふれ、サハリンまで馬車を継いで行ったチェーホフ(このサハリン行きで命を縮めたといっても過言ではない)と答えてもよいが、やはり冒険家・人類学者Миклухо-Маклай(1846~1888)であろう。彼は苦学してドイツのハイデルベルク大学を卒業し、1870年初めニューギニアでパプア人と共に暮らして人類学的研究を行い、黒人が白人より劣っているという当時の通説を覆すのに尽力した。世界的なスケールを持つロシア人と言える。
今エレンブルグの自伝「人々、歳月、人生Люди, годы, жизнь」を読んでいるが、その中でロシア人気質に触れたものがあるので紹介しよう。作者がフランス人との比較で述べている。「フランス人は私にはあまりに礼儀正しく、不誠実で、計算高いように見える。ここでは(訳注:パリでは)行きずりの人に心を開こうなんてだれも思わないし、だれもちょっと(よその家に)立ち寄ろうとか、最後のシャツ一枚まで飲んでしまおうなんて考えない。きっとだれも首吊りなんかしないだろう」
Ст.М-3-38
設問1)訳した上でそれぞれオチを説明せよ。
Два самых которких анекдотов:
1) Баня, через дорогу раздевалка.
2) Родил.
設問2)次の句のうち正しいものを訳せ。
a) хозяйка квартиры в доме на проезде Художников, 27
b) из квартиры в доме по улице Червонного Казачества

Posted by SATOH at 10:32 | Comments [11]