2005年07月14日

●徴兵における隠れた階級(新兵いじめ)

 ロシアにおける徴兵では非公式に2年間で4つの階級に属することになる。強いて言えば日本の私学の体育会系クラブでみられるような、1年生(ゴミ)、2年生(奴隷)、3年生(人間)、4年生(神様)といった類である。日本の軍隊でも古参兵の新兵いじめは有名だが、これほど体系化されたものではなかった。この新兵いじめを дедовщина と言う。1968年以後前科者の入隊を認めたため、ムショのしきたりを軍に持ち込んだため、新兵いじめが激しくなったとされる。召集は春と秋の2回で、召集が終わるのは27歳である。新兵は宣誓前1ヶ月は、карантин (= мамонт, слон, глобус)と呼ばれいじめはない。問題が起こるのは最初の半年からで、この期間はслон (= глобус, дух, салага, лимон, салабон 象のように働かされるからだと言う) 、次の半年がсалага (= сынок, лимон, огурец, старший лимон, дрозд, черпак, молодой)、次の半年がчерпак (= фазан, второй лимон, котел 料理番をすることが多く、これは大きな役得でもある)で呼ばれる。最後の半年がдед (= старик) で、新兵に対して将校も及ばないような実質的な権力をもつ。宣誓後22ヶ月経って除隊命令が出てから1~3ヶ月をдембельと言い、3月と9月に除隊する。カッコ内にいろいろな呼び方があるのは、地方によってあるいは隊によって呼び名が違うからである。新兵のいじめや、дедが新兵にホモ売春を強要して貢がせるなど問題が多いとされる。徴兵制度廃止を唱える向きにはこういう問題のため賛成している人もいるのである。まとまった参考文献はないが、Большой словарь русского жаргона, НОРИНТ, 2001に断片的に記載ある。ただДедовщинаはロシア人にとって常識である。付け加えると、1874年普通徴兵制が敷かれる前のロシア軍にもдядькаというのが世話係として任命され、担当する新兵(同郷人が多かった)に軍服の着方、装備、整列、敬礼の仕方、他の軍人から身を守る方法、部隊の歴史、しきたり、勲功など教えていた。これから派生して行ったのかもしれない。

Posted by ruspie at 01:22 | Comments [0]