2015年09月01日

●和文露訳指南第302回

『「ドイツ帝国が世界を破滅させる』(エマニュエル・トッド著、堀茂樹訳、文春新書、2015年)を読んだ。この中で興味深いのはロシアの復活にかなりの頁を割いていることである。ロシアでは乳児死亡率(1000人の乳児が1歳未満で死亡する率)が1995年20人から2013年には9人(2014年にはWHOによれば6名)と大幅な改善が見られるとある。ちなみにアメリカは8人(2014年には4人)、フランスは4人、日本は1名(WHOによる2014年発表の数字)とトップクラスである。出生率もロシアは1993年が1.7、1999年に1.2、2005年に1.4、そして2013年には1.7(WHOの2013年版、2014年版、2015年版では1.5)と回復している。フランスは2013年に2、日本はWHOの2013年版、2014年版、2015年版では1.4。人口維持には2.07ぐらいと言われている。ロシアでも子供の多い家庭向けの手当てを増やしており、そのせいもあるのかもしれない。意地悪い見方をすれば、ソ連崩壊の混乱がおさまって、旧に復しただけという感じもないではない。

出題)「今お電話よろしいですか?」をロシア語にせよ。

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2015年09月02日

●和文露訳指南第303回

彼らの間に、背の低い、見た感じとてもやせた女の子がいた。年は13歳くらいかもしれないが、彼女の小さな、病的な姿全体に、何かもう年寄りじみた、弱々しい、老いぼれた、生きるのさえ疲れたような感じが現れていた。汚い、破れ果てた、繕っては繕うのを繰り返したような、繻子の破れ果てたボロが、何とか彼女のやせた小さな体を隠していた。脇腹のところは破れていて、それは喧嘩をしたからだろう。このボロの大半が床を引きずられており、裾はぎりぎりまでほつれにほつれ、むき出しの脛にボロボロのすだれとなっていた。袖の上には大きな裂け目があり、そこを通して血の気のない、骨ばった小さな肩が見えていた。襟は破れて、ボタンもはずれ、ぺたんこの、病的にへこんだ子供の胸の一部が見えていた。

出題)「今通り過ぎた駅の名は?」をロシア語にせよ。

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2015年09月03日

●和文露訳指南第304回

もつれた、いつからか梳かされていない、濃い栗色の髪がべったりと濡れた額にはりついていて、少しカールして短いお下げのように肩にかかっている。そのおかげでやせた長い首がさらに目立つ。顔はといえば、可哀想で見ていられない。美しさのかけらぐらいはあろうけれど、熱に浮かされたようなくぼんだ目には、黒い青みがかったくまどりで、飢餓ゆえにギラギラと輝いている。明らかに不自然なほどの憔悴の徴候だ。きっと結ばれた、乾いて熱をもったような唇の隅には、図々しいような、挑むような、ふてぶてしさが浮かんでいる。この張り出した頬骨には何という自堕落な日々や夜が痕を残しているのか。

出題)「就職の見通しは?」をロシア語にせよ。

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2015年09月04日

●和文露訳指南第305回

そのこけた頬にはどれほどの無慈悲な怒りが、この若さで、きわめて異常な、不自然なほどの怒りが彼女の表情全体に現れているのだろう。ここでの放埓さがこの子の顔にぬぐえない刻印を残したのである。この子の顔はその表情がなければ素晴らしいと言えたかもしれない。この子は体の大きい、たくましい力持ちの男の膝の上にとりすました顔で座って、二人に勧められたパイプで苦くて酸っぱい、とてもきついくずタバコを喫い、彼のウオッカをあまり間をおかずにコップで飲み干していた。

出題)「暑さのせいで開店休業だ」をロシア語にせよ。

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2015年09月05日

●和文露訳指南第306回

この女の子こそ、(悪党の巣窟)マリンニクやヴャーゼムスキー屋敷の申し子である。そこで育ち、そこで生まれた。誰の子かって?知りはしない。どうやってこの年まで大きくなったかはこれも神のみぞ知る。生まれてこのかた母の優しさも知らず、人から優しい言葉やまなざしの一つもかけられたこともない。ただただ死ぬまで凍えて飢えているだけだ。この子は見捨てられ、誰からも憎まれる存在である。生まれてこのかた覚えているのは、いたるところで雨あられと降って来る棍棒だった。棍棒と悪口雑言、軽蔑と嘲笑は彼女のいつもの運命である。誰もがいつでも、殴りたいときに彼女を殴った。彼女を嫌うのは特に女たちだった。からかったり、つねったり、髪をひっぱたり、ピンで刺したりして、心から楽しむのだった。

出題)「この席にはどなたかいらっしゃいますか?」をロシア語にせよ。

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2015年09月06日

●和文露訳指南第307回

その子が涙も流さず、歯を食いしばったり、歯がみしたりして、血走った悪意に満ちたギラギラとした目で、野良猫のように、憤怒のあまりに、いじめた女の誰でもいいから一人に飛びかかり、その肩に飛びかかって、両足で抑え込み、噛みついたり、顔を自分のとがった瓜で傷だらけにしようとした時が、騒ぎのクライマックスになるという、それが酒席の座興だったりしたものだ。

出題)「一緒に暮らして17年になる」をロシア語にせよ。

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2015年09月07日

●和文露訳指南第308回

まるでどこかの獣の子であり、獣みたいに呼ばれていた。だれかが、どこかで、いつだったか彼女を「どぶねずみ」と呼び、それが彼女の一生の通り名となる。スラムの住人のだれもが彼女の本当の名を知しらないということは、このあだ名はもっと小さなころについたものに違いない。彼女には子供らしさは微塵も残っていないし、気持ちの上で男女の別や年齢を少しでも思わせるような、おとなしそうなまなざしとか、優しそうな動作とかはまるでなかった。あるのはどす黒い欲求不満、すぐ切れてしまうような、神経質な怒りっぽさだけである。

出題)「冬に市場はにぎわったものだった」をロシア語にせよ。

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2015年09月08日

●和文露訳指南第309回

彼女の口から飛び出すのは悪態や恥知らずな歌、世の中を逆さに見た放蕩の言葉のみである。奇妙な、そしてほとんどあり得ない、考えられないような生き物である。残念ながら自分の目でそれを見たり、観察したりしなければ全くあり得ないと思えるほどだ。
 この子はとてもいらついているとはいえ、この子の目に涙が浮かぶのをわたしは一度して目にしたことがない。この病的なイライラは彼女の奇妙な、衝動的で素早い動きや、しかめっ面や、だるそうな、青ざめた顔の引きつったような動きの中に頻繁に見てとれるのだ。

出題)「偽証すれば責任を問われることを彼は前もって警告された」をロシア語にせよ。

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2015年09月09日

●和文露訳指南第310回

彼女の咳には血が混じり、てんかん持ちでもあった。げんこ混じりに、しつこくつねられたり、からかわれたりすると、死ぬほどかっとなって、発作が起きる。口に泡を吹いて床に倒れ、体をバタバタさせたり、ひきつけが起こったりする。そのとき彼女の顔には何かのボロがかけられ、この発作が疲れきって失神状態になるまで放っておかれることになる。あるちょっとした、まったくちっぽけな場面を私は忘れることができない。そこには私も端役ながら登場人物の一人とならざるを得なかったし、それは私の記憶にはっきりと刻まれている。

出題)「ついに彼女にお鉢が回ってきた」をロシア語にせよ。

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2015年09月10日

●和文露訳指南第311回

それは夜中過ぎのことだった。当時のスラムの友人一人とマリンニクにある店に立ち寄った。サリャンカというスープを一人前ずつ頼んで、空いたテーブルにどっしりとすわった。そのテーブルのそばの向こう側に、「どぶねずみ」が座っていた。私は彼女が「どぶねずみ」であることは知っていたし、彼女をここでは何度となく見かけたが、彼女とは知り合いでもなかったし、口をきくチャンスもなかった。サリャンカとは名ばかりの水っぽいスープが一皿ずつ出された。私には食べたいという気持ちがちっとも起こらなかった。たんにつきあいで頼んだだけだった。正直言って、こういう雰囲気の中、マリンニクのものを食べるのはちょっとどうかなとも思った。よほど腹が減っているか、食い物に好ききらいがないか、かなり慣れていないと無理だ。

出題)「この近くで警察官を見ませんでしたか?」をロシア語にせよ。

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2015年09月11日

●和文露訳指南第312回

私の話相手が自分の分をすごい食欲で平らげたその時に、「どぶねずみ」が自分の席から彼の方を、特に彼の丼の方に、がまんできないような、欲しくてたまらないような目つきを向けたのに私は気がついた。絶えず自分の頬の筋肉を神経質そうに動かしながら。今日の分のパン代を稼ぐことができずにいたから、「どぶねずみ」はきっと腹が減ってたまらなかったのだろう。
「食いたいのかい?」と、唐突に私は彼女に声をかけた。しかし、私の問いなど知らぬようだった。その問いが彼女に向けられたものとは思いもしなかったのだろう。
 私はもう一度もっとはっきりと繰り返した。「どぶねずみ」はぴくっと体を動かして、ほんとにびっくりしたように、私の方を見た。
 何も言わない。
同じ問いかけを三度繰り返す羽目になった。
「食うかって?」怪訝そうに彼女は言った。
「そうだよ。とても腹が減っているように見えたからね」
「食いたいからって、それがどうしたのさ」

出題)「寿司を食べたことのない人は(食の)楽しみを知らない」をロシア語にせよ。

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2015年09月12日

●和文露訳指南第313回

「どぶねずみ」の心の中には私がからかったり、いじめたりしようとしているのではないかという疑いが頭をもたげているようだった。彼女の声はかすれて、呼吸もぜいぜいとして、短く、途切れがちだった。

出題)「2002年以降公用でそこによく出かけた」をロシア語にせよ。

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2015年09月13日

●和文露訳指南第314回

「食いたいなら、食うといい」こう言って、私は彼女の方に自分の丼を押しやった。
しかし、死ぬほど食べたいのだが、彼女はその丼に触れるか触れまいか決心がつかず、私を不信とやるせないような目で見つめ続けた。このようなことに耳を傾けるのは不慣れだったし、彼女にとってあり得ないというか、奇妙なことだった。
「どうしてなんだよう?」かなりためらった後で、とうとう彼女の方から聞いてきた。
「なんでだよ?笑いものにする気かい。それともまじで?」
「笑いものにする気はないさ。ただ食いたくないからだ」

出題)「いまどきの若い者ときたら」をロシア語にせよ。

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2015年09月14日

●和文露訳指南第315回

「どぶねずみ」はもう一度ちらっと見て、ためらいがちに、信じられないという感じで手を伸ばした。そしておずおずと私の分を自分の方に引き寄せた。初めの一口は遠慮がちに飲み込んだが、食いたい気持ちはあるのだが、ちょっと食べるのを止めて、彼女に対して何か悪だくみを私が企んでいないかどうかもっと確かめたいという風に、斜に、じろりと私の方を見た。飢えた、おびえた野良犬がそばにいる知らない人の手から投げられた食べ物の切れ端を取る時のようなやり方と表情と全く同じだった。もう二つ三つ、このような動きと、視線をぶつけた後、「どぶねずみ」はようやく私が汚い真似を彼女にするつもりはないという事を得心したようだった。ガツガツと、すさまじい早さで、一瞬のうちにスープを平らげたのである。

出題)「みんなに課題を解くよう命じた」をロシア語にせよ。

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2015年09月15日

●和文露訳指南第316回

彼女はきっとわざとこんな早さで食べたように思われた。それも根拠のないことではない。私が悪さをして、いきなり丼を取り上げはしないかと思ってのことである。この薄倖の子供を見るのは哀れで、胸が痛かった。丼はあっという間に空となったが、「どぶねずみ」はまだまだ腹いっぱいというわけではなかった。
「もっと何か欲しいのか?」、彼女に向かって、「欲しけりゃ、そう言え。頼んでやるから」
「肉団子が欲しい」と途切れ途切れに、私の方を見ずにその子は答えた。

出題)「ユーゴスラビアで行方不明になったソ連のジャーナリストたちが死んでいることは98%間違いない」をロシア語にせよ。

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2015年09月16日

●和文露訳指南第317回

 肉団子が出てくる間に、私はこの野生児をもっと近くで見てみたくなった。
「名前はなんて言うんだい?」と話のきっかけになればと尋ねると、またびっくりしたように、
「名前?」と彼女は繰り返して、「どぶねずみ」
「それは、お前をからかって「どぶねずみ」って呼ぶんだろ。名前だよ。何かの名前があるんだろう?」
「名前、名前はあるよ」
「どんな?」
「どぶねずみって言っただろ」

出題)「私は彼にとって兄弟同然だ」をロシア語にせよ。

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2015年09月17日

●和文露訳指南第318回

彼女は自分の名さえ知らないのか、小さい時から忘れてしまったのだろう
「母親はいるのかい?」と私は続けた
「母親って?どんな母親のこと?」
「普通にいる母親だよ」
 「どぶねずみ」は私をじっと、すごく怪訝そうに見つめた。これまで彼女にこんなことを聞いた人はほとんどいないので、彼女にはこの当たり前の質問がとんでもない、奇妙なものに思われた。
「いるかもしれないし。さあね。聞いたこともないわ」と少しためらって、考え込むようにこう言った。

出題)「見つけた人には褒美が出る」をロシア語にせよ。

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2015年09月18日

●和文露訳指南第319回

そのときその顔には何か淋しそうな、思いに沈むような、わびしそうなものが現れたように思われた。一言で言えば、何か人間的なものが。母という言葉は、最初は彼女にはとんでもないように思えたのが、本能的に心のどこか琴線に触れ、瞬時に新しい意識の残り香を目覚めさせたかのようだった。これまで自分の母や、母とは一体何なのかを知らなかったことが彼女には哀れで、心痛むものであるかのように。
「いくつなんだい?」と私は尋ねた。
「そんなの知るもんか。数えたことなんかないし」神経質そうな、忌々しいようないらだちとともに彼女の口をついて出た。

出題)「彼女は家から8キロのところで不慮の死を遂げた」をロシア語にせよ。

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2015年09月19日

●和文露訳指南第320回

「つきまとうなって。ほんとに胸糞悪いだから」
 彼女を捉えた新しい感情と意識のすき間に、この質問が彼女を病的にいらだたせたようだった。それは当然、過ぎた年月や彼女の誕生、すなわち再び母に対する思いと結びついていたからである。どれもこれも彼女には見当がつかないものだった。違う口調で、違う質問でもいいけれど、なにか関係ないことで彼女の気持ちや思いをそらしてくれるなら、うれしかったろうと私には思われた。
 彼女の細い首には貧弱な飾りのような、真っ赤なビロードのリボンがあり、それは「どぶねずみ」の外観と際立った違いを見せていた。
 「ビロードなんかつけて」と私の連れが指さして言った。「そのビロード、どこのだ?だれからもらったんだ?」

出題)「彼のアリバイは崩れた」をロシア語にせよ。

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2015年09月20日

●和文露訳指南第321回

「盗んだんだよ」とあっさり、ごく自然に、何の恥じることなく、「どぶねずみ」は答えた。
「センナヤ広場の古着屋からかっぱらったんだ」と彼女は自慢して、でっかい態度でニヤッと笑い、ちょうど持ってきた肉団子にまたがつがつと取りかかり始めた。肉団子が食いつくされた時に、彼女はちょっと間をおいて、立ち上がり、とんでもなく大胆な、小馬鹿にした表情で私に向かってこう言った。
「行こうか?」挑むような調子でこう彼女は続けた。
「どこに?何のために?」私は私で驚いた。「どこにも行かないよ。行きたいところあれば勝手に行けよ」

出題)「(気持ちの上で)何か引っかかるものがある」をロシア語にせよ。

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2015年09月21日

●和文露訳指南第322回

 「どぶねずみ」は本当に怪訝そうに立ち止り、私を驚いた眼でじっと見た。
「何だって!お前、ロハでおごってくれたっていうのかい」、なぜか奇妙にゆっくりと引き延ばして話し、見つめ続けた。
「他に何だって言うんだよ?」
「フーン、ほんとうにタダでかい?」
「そう言ってるだろう」
「バーカ」、ぶっきらぼうに、ほんとうに軽蔑したという体で、「どぶねずみ」は声を発し、すばやく私たちのテーブルから去って行った。
 可哀想な子である。彼女は、だれかが後先何も考えないで、目的もなしに腹いっぱい食わせてくれるという可能性を一顧だにできなかったのだ。このような意識より苦いものがあるだろうか?この子のために、彼女の人生のために私の胸は痛んだ。「主よ、早く御許にお召しください」とその時私は思った。「どぶねずみ」はほんとうに死んだらしい。少なくとも最近どこのスラムでももう彼女の姿は見かけない。だれに聞いても、答えは返って来ない。この子の思い出さえ消えてしまったのだ。

出題)「途中で我々は雨に降られた」をロシア語にせよ。

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2015年09月22日

●和文露訳指南第323回

『和文露訳指南』の一部内容追加のお知らせ。

6-1-4 動作の開始(促し)・継続・終了

日本語とロシア語は違う言語だが、同じ人間が話す言語ゆえ、発想が似ている部分もある。日本語で動作の開始や継続、終了を示す動詞結合は、連用形を取って、読み始める(読みだす)、読み続ける、読み終えるなどとなるが、この「読み」の部分は、読了するとか、ちょっと読むということを必ずしも意味しない。そういうニュアンスを超えた、文字通りの「読む」という意味と理解するのが普通である。露訳する場合日本語の連用形の部分は不定形で示されるが、「読み始める」はначать (начинать) читатьのように、不完了体不定形となる。このчитатьは読了するとか、ちょっと読むとかというもあるかもしれないし、ないかもしれないという、そういうニュアンスを超えたところの、動作の有の確認、つまり動作の名指しを意味するから不完了体が来ていると言える。
動作の開始(始発、促し、着手)、継続、終了を意味する動詞бросить/бросать(~するのを止める)кончать/кончить(終える)、начинать/начать(始める)、останавливаться/остановиться(止る)、переставать/перестать(止める)、прекращать/прекратить(中止する)、продолжать(続ける)、стать(~し出す)などと結合する不定形は不完了体となる。これは完了体の動詞は動作の全一性を扱うことと、動作の経過を伝達することがまったくできないことに起因する。つまり動作の開始、継続、終了の意味の動詞と結合する不定形には、その動作の内容を示す(動作の有の確認)だけで、動作の全一性を示す前提や必要性がないからである。全一性を担う必要性が出てくれば、し始める、~し続ける、し終えるという動詞がその機能を担う。начать/начинать(始める)ということは、その後動作が継続するか、反復することを想定し、продолжать(続ける)というのは、継続そのものであり、кончить/кончать(終える)のは継続、反復してきた動作が止むということを意味すると考えてもよい。動作の焦点が不定形に来ないために不完了体不定形になるという理屈も成り立つ。そのため、отправиться/отправляться、приняться/приниматься、взяться/братьсяなど着手の意味がある動詞は、不完了体動詞不定形と結びつく。これは命令法の着手や促しの用法で不完了体が用いられるのも、これを敷衍したものと考えてもよい。

出題)「彼は北朝鮮に大使として左遷された」をロシア語にせよ。

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2015年09月23日

●和文露訳指南第324回

諸般の事情により、今後このコーナーは土日、休日となりますので悪しからず。

出題)「先月その課は廃止された」をロシア語にせよ。

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2015年09月26日

●和文露訳指南第325回

『和文露訳指南』追記のお知らせ。

9-6-5 疑問詞を二人称に使う例

 誰にкомуという疑問詞をお前にтебеの意味で使う場合があるので紹介する。これは日本語にもある反語法的用法であろう。

(彼女につきまとわないで。誰に言っていると思ってるの)Отстань от неё, кому говорю! 
(下から出なさい。誰に言っていると思ってるの)Вылезай, кому говорят! <この場合говорят = говорю> 

出題)「明朝運動場に全員集合!」をロシア語にせよ。

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2015年09月27日

●和文露訳指南第326回

2015年9月21日付のタイム誌によると、アメリカではフットゴルフなるスポーツが人気を呼んでいるという。文字通りサッカーボールを使ったゴルフで、ゴルフ用具は必要ない。2009年にオランダのミカエル・ヤンセンという人が発明して、アメリカではゴルフコースとの兼用で433のコースができる人気ぶり。アメリカの若い人にとってゴルフは、金がかかる、プレーに時間がかかる、プレーが退屈ということで、ゴルフ人口が前年より500万人減ったという。面白いことにこのフットゴルフにはまった人の36%がゴルフをやってみたいと答えた由。今年には専門のフットゴルフ場もできるという。サッカーボールを蹴るというのなら大概の人はやったことがあるだろうし、ゴルフ界にとってもサッカーゴルフからゴルフをやってみたい人がたくさん出てくるのなら朗報だろう。日本人はアメリカで流行ったものに対するあこがれが強いので、日本でも流行るかもしれない。

出題)「排尿時に残尿感はありますか?」をロシア語にせよ。

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