2011年07月31日

●和文解釈入門 第82回

キリスト教が日本で普及していない理由(キリスト教各派を合わせて信者数200万人程度)は、キリスト教のような一神教において当然と見なされる他の宗教を排撃するという考え方が日本人のそれとなじまないという事や、先祖を大切にする日本人にとって、ザビエルが主張したキリスト教に改宗しなかった先祖は地獄に堕ちる、つまりキリスト教に改宗した者だけが救われるという考え方についていけなかったという事ではないかと思われる。
道の「カーブ、曲がり」という意味ではповоротが一番普通であり、лукаやизлучинаも使えるが、これらは川に使うのが多い。петляはкрутой проворот(急カーブ)のことで、серпантинはつづら折り(山道で急カーブが連続するところ)であり、коленоは一つの曲がりから次の曲がりまでの区間от одного поворота до другогоを指す。виражというのはオートレース場などの傾斜のついたカーブの事である。
設問)「列車は23時ちょうどに7番ホームから発車します」とアナウンスが聞こえてきた。このカッコ内の和文をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 05:14 | Comments [2]

2011年07月30日

●和文解釈入門 第81回

すべての動詞が体のペアになるものではないし、なっているものでもどちらかの体の方がよく使われるという事が多い。両方の体が等しく使われるのはсказать/говорить, написать/писать, взять/братьという日常でよく使われる動詞ぐらいではないか。そうなると不完了体がよく使われる時の、そのペアの完了体の役割というのは、ある特別なニュアンスをもったものとなる。例えば、надеятьсяの完了体понадеяться(必ずしも体のペアとは呼べないかもしれないが)は、по-のつく完了体で、このように不完了体のほうが普通に使われるグループでは、надеятьсяが最善を期待するというのが本義のため、понадеятьсяはこれとは異なる、つまり期待したがだめだったというニュアンスの文で使われる。Мы понадеялись тогда, что конфилкт не будет расширяться.(我々はそのときは紛争は拡大しないと期待していたのですが)
設問)「奴を捕まえろ」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 07:14 | Comments [3]

2011年07月29日

●和文解釈入門 第80回

「マクシーモフさんは席を外しています」は、Г-н Максимов вышел.無論Г-на Максимова нет на месте.でもいいが、いくつか運動の動詞の完了体を使い分けるとすればどうなるだろう?そのニュアンスの違いは、вышелは昼食、外出、ушёлは会社にはその日はもう戻らない、帰宅、ないしは出張か何かで長期に戻ってこないという感じ、отошёлはトイレや他の部署に行って席を外しているという、つまり会社内にいるというニュアンスで、пошёлはいないというよりはどこかに出発したということで、普通は行き先 (на заводなど) とともに用いられる。Я пошёл.というのは行き先なしで使う例で、この動詞としては少し変わった用法ではある。これはЯ пойду.と同義で、「行ってきます」という意味だが、日本語と違い挨拶ではなく、秘書や同僚に出かけることを伝えるという意味がある。
отойти/подойтиはロシア人はよく使うが、この使い方をあまり知らない人も多いと思うので書いておく。Я отошел от остановки шагов на двадцать.(20歩ぐらい停留所から離れた)、Он отъехал от Москвы.(モスクワの近くに出かけた)で、両方とも連絡の取れるくらい近くにいると言うニュアンスである。もっというと目に入るとか声が聞こえる距離ぐらいという感じである。同じことはподойтиにも言える。Мы подъехали к Москве.(モスクワに近づいた)。отойти/отъехатьは前置詞のотを取るがкも来る。подойтиにはкが来る。подойти к окну, чтобы открыть его(窓を開けるために窓に近づく)と、отойти к окну, чтобы не мешать танцующим парам(踊っているペアの邪魔をしないために窓の方に離れる)。
設問)「イスを元のあった場所に返して下さい」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 06:10 | Comments [3]

2011年07月28日

●和文解釈入門 第79回

単語を覚えるときに、例えば手品をфокусと覚えるだけでは効率が悪い。数字を使っての手品фокус с цифрамиとか、手品をするделать/сделать фокусというように句動詞や後に続く前置詞と一緒に覚えるべきだ。そうすれば効率よく語彙が増えて行くし、会話にも応用できることになる。
「予約する」という意味ではбронировать(完了体・不完了体同形でзабронироватьという完了体形もある), записаться/записыватьсяがあるが、前者は飛行機やホテルの予約に用いられ、後者は自分の名をリストに入れてもらうという意味で、病院、美容院などの予約、公営住宅入居のリストに入れてもらうなどという意味で使う。
製品はизделие(я)が普通で、продукцияは総称名詞、продукт(ы)でもよいが、この語は食料品という意味で使うのが普通である。поделкаは手作りの品という意味である。
設問)「あなたが席を外していたときに(どこかにいらしてたときに)我々は両替しました」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 05:24 | Comments [3]

2011年07月27日

●和文解釈入門 第78回

映画やテレビ、ビデオの聞きとりの勉強というのは毎日3時間ぐらい1年ぐらいは必要だと個人的には思うが、それ以上は語彙を覚えるという点では効率が悪いと考える。この聞き取りの勉強というのは何度も言うが、BGM感覚で通勤通学で聞き流すという意味で、真剣に3時間も聞きとれという事ではない。第一そんなことを毎日はできはしまい。重要なことは音に慣れるということである。効率が悪いというのはスペルがほとんど完全には聞き取れないからだ。だからといって新聞やネットのニュースと言えば時事ロシア語ばかりで、これも語彙的には偏ってしまう。やはり小説やエッセー、歴史などいろいろな分野の本を読むに如くはないと思う。私は必要に迫られない限りほとんどロシアの新聞を読んだことがない。同じ覚えるなら美しいロシア語の方がいいし、面白そうな話題となると本の方がまとまっていて文章も洗練されているのが多いように思うからだ。ニュースもモスクワやアルマトゥイ(カザフスタン)に駐在していたときは、これも給料の内と思い見ていたが、聞きとりというなら会社でロシア人と話をするので特に必要はなかった。聞き取りの練習は今も仕事で通訳やガイドでロシア人と話すくらいだ。ロシア語でのメールのやり取りもウラジオの日本研究家とロシアの知り合いとごくたまにするくらいである。だから語彙を増やすのはもっぱら本に頼るという事になる。今ロシア語で読んでいるのは、20世紀の農民の聞き書き、19世紀の旅(ロシアの悪路)、第一次世界大戦中のロシアの市民生活といったものである。この中から会話で使えそうな表現をせっせとエクセルの和露の語彙集にインプットしている。
設問)「ナターシャに電話してきます」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 12:29 | Comments [4]

2011年07月26日

●和文解釈入門 第77回

正確な名称は知らないが「強意代行動詞」と呼んでもよさそうなのがロシア語にはある。意味は「激しく~やる」(つまり「激しく~する」の俗語)という意味をもつ。вломитьは「思いっきり殴る、ズバズバ言う、ジャンジャン飲む」という意味である。дутьは「突っ走る、ジャンジャン飲む」という意味で、жаритьは「突っ走る、じゃんじゃん飲む、〔外国語などを〕ペラペラしゃべる、ジャンジャン演奏する」, задуватьは「ジャンジャン演奏する」、закатать/закатыватьはぶん殴るという意味で使う。лупитьは「どつく、じゃんじゃん撃つ、バカスカ食べる、ジャンジャン降る、ぼる」という意味がある。нажариватьは「ジャンジャン演奏する」という意味で、наяриватьは「ジャンジャン演奏する、バカスカ食う、ペラペラしゃべる、激しくセックスする」という意味がある。отхватывать, отжариватьは「ジャンジャン踊る」という意味であり、поглощатьは「がつがつ食べる、ぐいぐい飲む、むさぼり読む」という意味があり、садить(何度も激しくする)、хватитьは「一気に(ぐいと)飲む、思いっきり殴る、いきなり歌う、いきなり踊りだす、走り出す」という意味であり、чесатьは「突っ走る、〔外国語などを〕ペラペラしゃべる、車で突っ走る、バカスカ殴る、ジャンジャン歌う・演奏する」という意味であり、шпаритьは(他に「ジャンジャン飲む、ジャンジャン演奏する、ペラペラしゃべる)がある。
設問)「探していたものをついに見つけた」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 05:59 | Comments [3]

2011年07月25日

●和文解釈入門 第76回

トロイの発見で有名なシュリーマンは外国語を15マスターしたといわれている。その勉強法は、非常に多く音読すること、決して翻訳しないこと、毎日一時間をあてること、常に興味ある対象について作文を書くこと、これを教師の指導によって訂正すること、前日直されたものを暗記して、つぎの時間に暗誦することだと述べている。この中で「常に興味ある対象について作文を書くこと、これを教師の指導によって訂正すること」が一番会話の上達に効果がありそうだし、ロシア語を教える大学や学校でも生徒にこういうやり方をしたら非常に効率的な勉強法だと思うが、それに対応できる先生は少ないだろうし、手間もかかるし、多人数の生徒には対応しきれまい。せいぜいのところロシア語にした作文をロシア人に直してもらうぐらいだろう。それだとできた作文のロシア語がなぜだめなのかということを、元の日本語とのニュアンスとの違いも含めて日本語で事細かく文法も含めて説明できず、いわゆる正解だけがあって、間違いもこうはロシア語では言わないという一点張りのような気がする。問題なのは答えのロシア文がいわゆる正解に近いかというよりは(それも重要であはあるが)、原文の日本語をどのくらい文法的に正しく、また語結合や、類語の使い分けも勘案し、文化的な違いなどの説明も含めてロシア語に反映させているかどうかということであり、これは日本語とロシア語両方に双方の文化も含めて精通していないとできないはずだ。独立したロシア語の文としては正しくとも、肝心の日本語の原文から見れば露訳が間違っているという事は大いにありうる。無論作文の内容は生徒が本当に興味を持っている事柄であり、気まぐれな問いにつきあうという事ではない。
設問)会議の後で「そのままお待ちください」のカッコの中をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 06:02 | Comments [2]

2011年07月24日

●和文解釈入門 第75回

2008年11月6日付読売新聞朝刊によるとサイコロの目の出る確率は目の数や配置などから重心が乱れ、偏った出方をするとの入曾精密の斉藤清和社長の話である。同社は人工衛星の部品やレーシングカーのエンジンの製作をしている。斉藤社長の話では2の目が最も出にくいとのことで、同社は世界一フェアなチタン製のサイコロ(1辺12㍉)を作って売り出しているというのはそういうことがあるからであるという。
司会者と言っても、テレビ、ラジオ、コンサート、会議、大衆芸能のはведущийだが、サーカス、大衆芸能、コンサートなどで面白おかしく司会をする人はконферансьеという。加工もобработка(加工業обрабатывающая промышленность、「もの作り」の露訳をこれに充てるロシア人の日本研究家японистもいる)ですべてよさそうなものだが、мясоперерабатывающая компания(食肉加工会社)というのもある。加工はобработкаが一般的で広い意味を持つが、переработкаはобработка сырья в полуфабрикат, готовую продукциюということで、原料を半製品ないしは製品に加工することである。他に石油精製とか消化(胃腸などのでのほかに、比喩的な意味でも使う)という意味がある。逆にпочтовый ящикは「(郵便)ポスト、郵便受け、新聞受け、私書箱」の3つ(郵便受けも新聞受けも普通は区別しない)の意味がある。しかも日本語のポストには郵便受の意味もあるからややこしい。
設問)「彼はやってきて、面白い話をし始めたものだ」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 05:20 | Comments [2]

2011年07月23日

●和文解釈入門 第74回

技術通訳の実際というのをご存じない方も多いと思うので簡単に書いておく。双方の出席者紹介の後に、訪問者側の会社説明があり、その後受入側のメーカーのプレゼンがあるのが普通で、このときに会社概要、ビデオ、製品紹介がある。無論面談の趣旨が何かによってその順番が変わるのが普通である。この資料(カタログなど)を事前に通訳がもらえる場合もあるし、もらえない場合もある。もらえない場合が多い。だからこういう通訳を臨機応変にできるかどうかで通訳の力量が試されるわけで、広く浅くの勉強が必要とされるわけである。その後、工場の設備や機器による生産の流れが、図を使って紹介され、工場見学となる。この後は質疑応答や技術交渉となる場合が多い。途中昼食や休憩が入るので、雑談の通訳もこなさないとならないことになる。
技術用語でпроверкаとповеркаの違いが分からない人も多いと思うので書いておく。проверкаというのは検査、点検など広く使われるが、поверкаは計測器で測る検査を指すのが普通である。
設問)「昨日はどこにも行かなかったわ」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 07:21 | Comments [5]

2011年07月22日

●和文解釈入門 第73回

セルゲーイ・マクシーモフСергей Максимовはロシアの旅行家で民俗学者でもあった。1860年にシベリアを旅し、1861年に函館(当時の箱館)にも10日ほど立ち寄っている。日本に赴く旅の途上ボルガ川で船に乗るのだが、От компании «Самолёт» отходил пароход «Телеграф».(船会社サマリョートから蒸気船「テレグラフ」が出航した)という文が目に入った。当時電信は発明されていたから、船名のテレグラフはともかく、船会社の名前がСамолётというのには驚いた。1860年には飛行機は発明されていない。どこからこの船会社は名前を取ったのだろう?考えられるのは、空飛ぶ絨毯ковёр-самолётである。このぐらい早いと言いたかったのだろう。
設問)「降りますか?」
「いえ、次の次で降ります」という会話をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 06:22 | Comments [4]

2011年07月21日

●和文解釈入門 第72回

谷崎潤一郎の「文章読本」(中公文庫、1975年)を読んでいたら、「文法的に正確なのが、必ずしも名文ではない。だから文法に囚われるな」という文が目に入った。ははあ、これを金科玉条としてロシア語の翻訳家の卵などが文法軽視をする大元かと思ったが、よく読むと、「日本語には明確な文法がありませんから、従ってそれを習得するのが甚だ困難なわけであります」とある。この本の初版は1934年であり、本書の中には谷崎自身の英訳もあって、「英文法における歴史的現在 Historical present」なる文章もあるから、よほど英語の文法には詳しかったのだろうと思う。日本語に明確な文法があるかないかは別にして、文法とは日本語の文法を指しているのであって、英語(外国語)ではないという事が分かる。本書には同義語を数多く知ることの重要さにも触れており、一読に値する。「数を数えるのに「一つ」「二つ」と言わないで、「一個」「二個」という風な言い方をするのも、田舎の人に限っているように思われます」と書いてあるが、今の日本語を聞いたら谷崎は何と言うだろう。
本書の中で職人の言葉に学べというところがあり、「うちのり」という言葉が出ていた。多分若い人はこう言う日本語を知らないだろう。これは内法と書き、造船関係でもたまに使うが、ロシア語にすればразмер отверстия в свету(穴の内法寸法)などといって、容器などの厚みを含まない寸法である。厚みを含むのは外法(そとのり)という。英語でもin the clearはロシア語в свету同様「うちのりで」という意味である。この他に取り合いというのがあって、部材связь(英語ならmember)の組み合わせや接続の仕方をいうが、100%の自信はないがпривязкаが使えるような気がする。
P.S. プーシュキンの詩Евгений Онегинの中に、
Как уст румяных без улыбки, 笑わぬ深紅の唇に似て、
Без грамматической ошибки  文法の誤りのなき
Я русской речи не люблю.   ロシア語は好かぬ。
 私は詩はレールモントフの方が好きだ。
設問)「次から次へと質問が浴びせかけられる」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 06:07 | Comments [6]

2011年07月20日

●和文解釈入門 第71回

в связиの力点はиにあると書いたが、「~に関連して」というような理由を説明する場合はそうだが、Залог успеха в тесной связи прмышленности и сельского хохяйства.(成功の証は工業と農業の密接なつながりにある)というような「結合」という意味ではяに力点が来る。
技術関係からロシア語を始めると、用語はともかくとして構文は不完了体の現在形で済む場合が多いので、完了体の使用が多い生の会話とのギャップに悩むことになる。一方文学から入ると、ロシア語の多様な構文を勉強することにより露文解釈は上達するが、日本語をロシア語にするという発想や経験がないために和文解釈は一向に上達しない。こういう人にとってロシア語は所与のもの(ロシア文学のロシア語はある意味構文的語彙的に間違いのない絶対的なもの)だからである。しかし19世紀のロシア文学を現代の会話に活かそうとすると、古めかしい表現とそうでないものを峻別する別の知識が必要になることは言うまでもない。また回りからもあれだけ露文が読めるのだから、会話もできて当たり前と見られてしまうというジレンマもある。いずれにせよ自分の不得手の分野を克服するように勉強をするように頭を切り替えないとロシア語はそれ以上上達しない。このコーナーの第10回の表は、ある程度どの部分が自分の弱点なのかを知るための道しるべとして作って見た。参考にされたい。
設問)「灯りをつけたまま寝た」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 06:25 | Comments [6]

2011年07月19日

●和文解釈入門 第70回

19世紀のモスクワのクレムリンの前にオホートヌィリャートОхотный рядという市場があった。中でも名前の通り肉の市場が大きかった。当時冷蔵庫もなく、不潔であり、ドブネズミも多かった。その辺の猫なんか逆に食い殺されかねず、困っていたが、ある人がネズミ捕り用のフォックステリアをプレゼントした。これが働きものであっという間にネズミは駆除されたという。カザフスタンのアルマトゥイに駐在していた頃カザフスタン東部の都市アクチュービンスクの近くのクロム鉱山に出張することがよくあった。1996年の冬でカザフの経済もあまり芳しくなく、ホテルも鉱山経営のが一つあるきりで、客も少なかった。あるときカザフ人の部下と一緒にホテルの食堂で昼食を食べていた。客は他にはロシア人女性の技師が二人。当時は観光客が来るようなところではなかった。私の座っているところから料理が出てくる廊下が見える。廊下には黒っぽい影が見え、猫がいるのかなと思い、料理を食べていたら、部下が肘でつっつく。「佐藤さん、佐藤さん、ドブネズミкрысаがいる」と小声で言う。とその瞬間、天地を引き裂くような、魂消るような悲鳴のあとに、なんとそのロシア人の女性の一人はテーブルの上に飛び乗って、もう一人はイスの上でフォークとナイフを振りまわしているではないか。そこをドタドタと一見猫ぐらいの大きさに見えたドブネズミが駆けていった。とんだくの一だ。人間というのは必死になると神業みたいな真似ができるなと感心した次第。鼠がいなくなったのでそのまま食事は続けた。宿泊代も食事代も工場持ちなので強くも言えず、別段腹も痛くならなかったからそのまま交渉を続けてアルマトゥイに戻った。
歪みも訳しにくい言葉で、空間の歪みはкривизнаで、変形という意味ならдеформация、経済の歪みならперекосыとなる。幕といっても芝居の第一幕の幕は、действиеでпьеса в 4-х действиях(4幕物の戯曲)などと言うが、バレーやオペラではактを使う。
設問)「野菜を袋に入れてください」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 06:33 | Comments [5]

2011年07月18日

●和文解釈入門 第69回

体の用法がある程度分かってくると、会話だけでなく露文解釈のときもニュアンスが細かく伝わってくるような気がしてくる。自分が覚えた体の用法と違うと、ロシア人のくせにまともなロシア語も書けないのかというような不遜な事を考えたり、ひょっとして知らない用法かとか、わざと体の用法を変えることによって無礼な感じを文体で出しているのではとか、一見ありきたりのどうでもよいようなロシア語の文章が推理小説のように面白くなってゆくかもしれない。もっともサイトやブログを見る限り日本人だってまともな日本語を書ける人はそれほど多いとは思えないから、一般のロシア人だってそれほど意識してロシア語を使いこなしていないような気もするが。
茶というのは簡単な単語だが、日本語に訳す時に、日本にいるのなら、ロシア人観光客にはзелёный чайとし、逆にчайを日本語にするときには紅茶と訳すべきだ。効率というのは技術用語ではкпд (коэффициент полезного действия)といい、略語のままカーペーデーと発音する。アコーディオン(手風琴)のаккордеонは鍵盤式で、гармоника, гармонь というのはボタン式と鍵盤式の総称である。その中でボタン式のものはバンドネオンという。革命前にはоднорядка, тальянка, ливенкаと言うのが流行った。баянは全く独自の鍵盤配列を持った民族楽器である。ハーモニカはгубная гармоника, губная гармошкаというのはご存じの通り。
ласкаをイタチと訳している辞書もあるが、学名で見ると違う。イイズナといって日本の食肉獣で最小の種とされ、日本でも東北や北海道に棲む。昔信州に飯綱使いというのがいて管狐を操ったというが、この管狐はイイズナに関係あるのかもしれない。ただ公式には管狐はオコジョ(エゾイタチ)горностайの別名ということになっている。オコジョの冬毛は白く換毛し、ロシア皇帝、貴族のガウンの裏地に用いられ権力の象徴でもあった。英語では冬毛のオコジョをermineアーミンといい、白テンと訳すのは誤りである。ニホンイタチはイイズナより一回り大きい。だからласкаをイタチと訳すと、ロシア人にとっては小さいという印象があるが、日本人にはそのような印象は特にない。
設問)「佐藤は他の電話に出ております。どちらさまでしょうか?」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 06:41 | Comments [4]

2011年07月17日

●和文解釈入門 第68回

черезとсквозьの違いは、Ради тебя я готов переплыть через океан, пройти сквозь огонь и джунгли.(お前のためなら大海原を泳ぎ渡り、火もジャングルも超えていく覚悟だ)という文でも分かるように、сквозьの方が意味は強い。海は泳ぎ渡れるかもしれないが、火の中は無理だろう。ただ海と言っても大洋だし、火といっても火くぐりや火渡りなどはテレビでも見るから、説得力がないかもしれないなとは思う。ロシア語難語辞典Словарь трудностей русского языка, Розеньталь/Теленкова, Русский язык, 1981の解説によればсквозьとчерезは空間、環境を越えて通過する、浸透する、見えるという意味ではシノニムだが、сквозьにはより多くの努力をするという付加的なニュアンスがつくことがあると書いてあるので念のため。
鉄鋼用語で真円度(パイプの端面がいかに円に近いか)というのがあるが、これはロシア語ではкруглостьではなく、овальность(直訳すれば楕円の程度)である。発想の違いであろう。日本語でも技術用語というのはこれが同じ日本語かと思うほどに違う。鋼の非金属介在物というのは鉄鋼用語ではありふれたものだが、一般人にはまずわからないだろう。介在物というのは異物(混入物)であり、普通のロシア語ならпримесьだが、専門用語では鋼の非金属介在物はнеметаллические включения сталиとなる。また、同じ「差」でもразностьは引き算の差であり、разницаは性質などの差である。公差という日本語を知らない日本人もいるかもしれないが、技術用語では一般的なものである。これは許容誤差のことで、ロシア語ではдопуск, допустимое отклонениеといい、допустимое отклонение по диаметру(径の公差)などと使う。ちなみに技術用語では直径とは言わず径という。端も普通はкрайだが、技術用語ではкромкаを使い、торецは端面である。菌株というのはштаммだが、日本人の専門家は「きんかぶ」と言っていた。これは菌種と紛らわしいからだろう。私立を「わたくしりつ」、市立を「いちりつ」と言ったり、バケガク(化学)の方じゃないカガク(科学)の方だと言ったりというようなものだ。
設問)「この世界的に有名な場所の名称を記した道路標識がまったくないことにびっくりしないでくださいよ」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 05:58 | Comments [8]

2011年07月16日

●和文解釈入門 第67回

通訳やガイド関係の数少ない入門書、参考書とか講座内容を見ると、医学や観光の語彙に特化したものや、通訳やガイドの心構えや、もっと具体的なメモのとり方とか、ガイドの立ち位置とかを親切に教えてくれるようなものが多い。それはそれで結構な話で役に立つことは間違いないが、その前提は一般のロシア人の言う事はすべて分かるし、普通の日本人の言う事はすべてロシア語にできるという人が相手ということのようである。ロシア語にはガイド(通訳案内士)試験というのがあり、国家資格試験でもあるので、これがロシア語上達の目安になると思われるが、自分の経験から言って、この試験に合格したからと言って、またプロの通訳を5年や10年くらい漫然とやったとしても、露文解釈は別にしてこういう前提をクリアできるレベルに立てるとは到底思えない。ガイド試験に受かったというレベルは日本語で言いたいことは一応言えるし、ロシアに行っても日常生活では特に不自由はないし、仕事上でロシア語を使うにも特に問題はないが、それでも自分の話すロシア語とロシア人の話すロシア語とは随分違うということがはっきりと分かるレベルであると思う。どう違うかというと、自分の話すロシア語がまだまだ外国人のロシア語だなと感じるレベルということになる。外国人のロシア語で悪いことはないが、ロシア人の話す何か一番肝心なニュアンスを理解しそこねているのではという不安が、常につきまとっているような感じを受ける。普通のロシア人の話すロシア語と何が違うのかというと、個人的な意見だが、体の用法、語結合、類語の使い分け、それとロシアの庶民文化の理解である。これは単に語彙を増やせば克服できるという問題ではない。きちんと意識して自分なりに勉強する必要がある。体の用法については1970年代半ば以降磯谷孝先生や原求作先生の参考書なども出回って来ているから勉強の手立てはそれなりにある。だから通訳やガイドを目指す人にはできるだけ早く体の用法や類語の使い分けの重要性について理解してもらった方がよいという意味で、このコーナーを立ち上げた理由の一つでもある。少しでも役に立ってもらえることを願っている。
設問)「私たちは同じ建物に住んでいたが、階は違っていた」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 06:52 | Comments [5]

2011年07月15日

●和文解釈入門 第66回

рабочийとработникの違いをよく理解していない人もいるかもしれないので書いておく。рабочийというのはнаёмный работникであって、「雇いの労働者」であり、работникはработник почты(郵便局の職員)というように、どこかの企業、役所に常勤として勤めている人である。だからработник умственного труда(知的職業の人)とかработник физического труда(肉体労働の職業の人)という分け方もできる。一方рабочийには肉体労働者というイメージもあり、рабочие и служащие(肉体労働者と事務職の人)というような表現もある。このслужащийはслужба(事務系の仕事、軍務)から来た言葉である。他に、служительといって、学校の用務員、動物園の飼育員などを指す言葉もある。
設問)「意味不明のところをもう一度読み上げるようにして下さいとのことです」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 06:07 | Comments [4]

2011年07月14日

●和文解釈入門 第65回

まえに防水について書いたが、書き忘れたこともあるので補足する。непромокаемыйも「防水の」という意味で使い、непромокаемые куртки(防水ジャケット)などというが、от влагиということで、влагаはводаと必ずしも同じではない。влагаは水気、水分と訳し、イメージ的にはものの表面にうっすらとつく水という感じで、プールや水たまりの水の塊という意味ではないし、水蒸気の湿気という意味でもない。непромокаемыйはこれが侵入するのを防ぐという意味で、防水ジャケットというのもゴム引きпрорезиненные курткиとか、ナイロン製капроновые (нейлоновые) курткиなどを意味するし、непромокаемые часыというのは革命前の新聞広告にも出てくるが、完全防水(潜水しても大丈夫)というのではなく、生活防水(雨に濡れても大丈夫)という程度である。
「指示」はуказаниеだが、「助言、教示、指摘」と意味が広い。一方распоряжениеは会社などで上司の指示(命令)という意味でよく使い、предписаниеは公的な指示か、医者からの指示(処方)である。спасательは救助隊員(救助船という意味もある)、つまりプロである。一方спасительは「命の恩人」であり、大文字にすれば救世主(キリスト)である。
設問)「彼は朝一番に新聞に目を通し、その後朝ごはんを食べていた」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 06:04 | Comments [3]

2011年07月13日

●和文解釈入門 第64回

江戸時代の日本では銀の方が金より高く評価された。それが江戸時代を通じて大量の金が海外へ流出した大きな原因である。これは日本人の渋好みと関係があるのかもしれない。我々は日光や金閣寺よりも桂離宮や銀閣のほうを好むのと関係がありはしまいか。
地下水もロシア語では二つある。広義の意味の地下水はподземные водыで、これはпочвенные воды(土壌水), грунтовые воды(表層地下水), межпластовые напорные воды (артезианские воды深層地下水)に分かれる。狭義の地下水は表層地下水のことである。また地下水の水位はгоризонт грунтовых водという。
「作る」でラブレンチェフの和露辞典に出ていないものを挙げる。составить предложение, список, таблицу(文を、リストを、表を作る)で、сделать предложениеは「見積もり(オファー)を作る」となる。
「構造」というのはстроение, построение, структураを使い、строениеはстроение мозга(脳の構造)のように、生物学的、物理学的なものに使うが、построениеはпостроение характера(性格の構造、構成)など数学、言語や芸術の分野で使う。структураはструктура металла(金属の構造)など、科学、経済、社会的組織(機関)の構造として使われる。
設問)「いつでも連絡の取れるようにしておいてください」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 05:32 | Comments [4]

2011年07月12日

●和文解釈入門 第63回

ロシア人とロシア語の会話をしているように見せかけたいのなら、ロシア人に立て続けに質問し続けることである。これならボロは出ない。相手の言う事を聴きながら当意即妙の相槌を入れられればそれは本当にロシア語が出来るということになる。つまりシンポジウムの通訳は事前に用意してあるなら原稿の棒読みであるから楽なようだが、いくら事前にお願いしても、たまに原稿と違う事や順番を変えて言う講師がいる。そうなると原稿を見ないで通訳した方がはるかにましということになる。だから技術通訳で難しいのはシンポジウムそのものというよりは、その後の質疑応答の通訳である。慣れない通訳は質問を紙に書いてもらって、回答は後日などとお茶をごまかそうとするが、質疑応答の時間が限られていればともかく、主催者が気を利かして十分時間を取っていたら悲劇的展開となる。
設問)〔「禁煙は難しくない。私自身20回くらいやめたよ」とマーク・トウェインは語った〕をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 06:28 | Comments [2]

2011年07月11日

●和文解釈入門 第62回

ロシア語を聞いて分かるというのは大切だが、そればかりやっても意味はない。例えばリスニングは1年で千時間もやれば十分であろう。ただこれは特に根拠はない。英語のリスニング1,000時間マラソン(アルク社)をモスクワ駐在のときにやってみて、うたい文句通りに全て聞きとれるのようにはならなかったが、それでも聞く英語に対するコンプレックスはなくなったのでロシア語もそうだろうといういい加減な理由である。ロシア語を、それも毎回毎回必死に聞き取ろうとするのは疲れるだけだ。無理に聞き取ろうとはせずに、BGMを流す要領で通勤通学の合間に聞くようにする。ここでのコツは何度も言うが、意識しないでただロシア語の音を聞いていればいいのである。1年経てば無意識でも何となく30%ぐらいは単語を聞きとれるようになると思う。これはスペルが推測できるだろうという事で、意味は別に覚えなければならないのは言うまでもない。前後関係で類推できる単語というのはそれほど多くはないし、それに頼ろうとするのは不確実だ。つまり意識を集中すれば、その確率は高まるわけで、通訳するときはそれこそ全身これ耳という感じだから、練習のときに張り切り過ぎても実戦ではあまり効果はないと思う。それ以降は露文読解に力を入れる。リスニングで単語のスペルをほぼ聞きとれるような人は、そういう訓練を必要としない高いレベルの人であり、語彙を増やすためなら本や雑誌を読むことを勧める。その方が語彙習得で効率的だと思う。耳で聞くものより活字の方が辞書でスペルをチェックできるから頭に残りやすいと言える。またインターネットのサイトは玉石混交なので個人的には勧めない。本や雑誌なら編集者がロシア語のチェックを一通りしているはずなのでそれほど変なロシア語はないと思うからだ。
設問)「車は動きかけたが、彼は車を止めた」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 05:52 | Comments [5]

2011年07月09日

●和文解釈入門 第61回

私の亡き父は戦争中千島列島の飛行場で鐘馗(陸軍二式単座戦闘機、迎撃機)の整備兵をしており、航空隊に配給された固形日本酒(寒天に原酒をしみこませたものらしい)を食べた話などしてくれたことがある。日本酒は16~18度ぐらいで、世界で一番強い醸造酒と言われているが、2年ほど前に24度という日本酒の原酒を飲んだ。醸造酒でもこのぐらいにはなるという事らしいので、父が食べた寒天もこういうものだったのかもしれない。父は戦後捕虜としてソ連軍の収容所に入れられ、バイカル湖の護岸工事などをした。皮肉なことに戦争中は戦死者が1名だった父の部隊の2/3は収容所で飢えと寒さのために死んだという。2年ぐらいで病気になって無事帰国できたのは元来健康なたちでもあり本当に運が良かったからである。私が初めてモスクワ駐在になったときもモスクワ見物を勧めたが頑として首を縦には振らなかった。死んでも行くものかという気持らしかった。それでも収容所の外で作業をしていた時などロシアのおばさんがたから食料を分けてもらい、おかげで生き延びたとよく話してくれた。そのおばさん(たいていは戦争未亡人だった)がたの婿に来ないかという話もあり、うんといっていたら今の私はなかったことになる。私は函館で生まれたが、父は函館から汽車で1時間ぐらいの木古内の人で、姓は岩手山といい、11番目の子だった。二代前は南部藩の足軽の家だったらしい。父は北海道生まれでセンチのことをサンチといい、ストーブをストーフと言っていた。何となくロシア語のように聞こえるのに最近気がついた。
設問)「仕事の前に体操をします」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 22:58 | Comments [4]

2011年07月08日

●和文解釈入門 第60回

メーカーや商社の人で貿易関係の人は英語がうまい。そのため技術用語のロシア語も英語由来だと勝手に考える人がいるのは大いに困る。最新式のものは英語から入ったものもあるから、英語が分かればロシア語も類推できるものもなくはないが、ロシア語の技術関係の基本用語は英語とは無縁のものが多い。ポンプはнасосといい、помпаは一般的ではない。応力(ものを破壊しようとするとそれに対してこわれまいと抵抗して働く力)はнапряжениеといい、これはロシア語では電圧も意味する。英語ではstressであり、ロシア語のстрессは文字通りストレスという意味になる。
和文露訳という観点からロシア語の学習を考えると、分野毎の基本的な日本語の語彙を徹底的にロシア語に換える練習をするべきだ。例えば、「水」について、日本語の水とロシア語のвода について意味と差異について、露和辞典でもよいが、できれば語結合辞典などを活用して派生する形容詞、名詞(水素なども)も含めて徹底的に覚える。その過程でロシア語の自己研鑽(自修)の方法を学び、なんとか露露辞典を使えるまでに持ってゆくというのが最終的な目標となる。同時に、一通り文法を覚えたら、日本人には分かりにくい運動の動詞や体の用法をマスターする。これが理解できていないで、自分でロシア文を作ろうとすると、日本語のテニヲハや敬語を無視したいわゆる外国人の日本語のようになってしまう。
設問〔女店員が買い物客に、「次の方、どうぞ」〕をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 05:47 | Comments [7]

2011年07月07日

●和文解釈入門 第59回

同時通訳というのはアポロの月着陸で有名になったが、宇宙飛行士が実際に業務で話すロシア語というのはどんなものなのだろう?例えば、宇宙飛行士の業務上の会話にはЗапитай ПСМ в ПГО АЗСом на ППС-10.(モジュールの計器貨物室のアラーム盤に電力を供給しろ。そのためには電力供給システムの10番パネルの自動トリップをオンにしろ)とか、Есть ГСО-3, ТК в ЛСК.(姿勢制御システム用意のサインがあれば、放射座標系の貨物宇宙船の姿勢制御維持を意味する)とか、略語が続出する。元宇宙飛行士のバトゥーリンЮрий Батуринの「ロシア宇宙飛行士の日常生活」Повседневная жизнь российских космонавтов, Молодая гвардия, 2011によれば、宇宙飛行士候補生は数年をかけて膨大な量の宇宙関係略式ロシア語を覚えるざるを得ないという。この略語は3文字以内で、正確な業務を遂行するためにはこういう専門用語の略語の知識が不可欠だと述べている。面白いのはロシア人のジャーナリストがしばしば宇宙飛行士を取材するのだが、いくら普通のロシア語を話そうと宇宙飛行士が努めても、正確に状況を伝えようとすればするほど、このような略語ロシア語がかなり頻繁に顔を出すのは避けられない。略語が数百という程度のレベルではないのでまず理解不能であり、インタビュー記事が実際に宇宙飛行士が話した通りなのかは保証の限りではないと書いている。ロシア人同士でこうなのだから、宇宙での作業を通訳するのは、同時通訳も含めて、よほど前もって作業内容を知らされていないとまず不可能だというような気がしてきた。
 国際宇宙ステーション内ではアメリカ人宇宙飛行士はロシア人宇宙飛行士に対してロシア語で質問し、ロシア人側は英語で答えるという。これは米露親善ということではなくて、相手の外国語で質問し、答えを相手の外国語ですれば構文が簡単明確になるからということであるとバトゥーリンは書いている。
設問)「仕事場まで近いんです。車でたった20分くらいです」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 17:22 | Comments [3]

●和文解釈入門 第58回

体の用法で完了体過去形の順次性という用法を繰り返し紹介してきたが、言葉は生き物であり、次々と動作が行われているものがすべて完了体過去形だけで繰り返されるというわけではない。動作が次々と完了(終了)していく場合はそうだが、一つの動作がすぐ完了して、次の動作は時間がかかるという場合もある。そういう場合は完了体過去形の後に、不完了体(現在形ないしは過去形)が来るわけである。例えば、Посмотри, - сказал вдруг Аркадий, - сухой клёновый (кленовый) лист оторвался и падает на землю; его движения совершенно сходны с полётом бабочки.(〔ご覧、乾いた楓の一枚の葉が取れて地面に落ちてゆこうとしている。その動きは蝶の舞そのものだ〕と、突然アルカーヂーは言った)。これはトゥルゲーネフの「父と子Отцы и дети」にある文(1862年)で、すぐ後で飾り過ぎたロシア語だとバザーロフが反論しているものの一部分である。ただ美しいロシア語には違いないし、他にこれ以上いいと思われる会話文も例として浮かばないので紹介することにした。この他に不完了体が先に来て、完了体が来るという用法もある。いずれにせよ不完了体は瞬間ではなくある程度時間がかかる動作や状態に用いられるという事を頭に入れておくとよい。
設問)「クリームケーキでもいかがですか?」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 13:13 | Comments [3]

2011年07月04日

●和文解釈入門 第57回

 この和文解釈入門は自分のためにやっているのだということを何度か申し上げたが、思いもよらぬ回答をいただくとやってよかったと心から思う。前々回の設問で毎朝という反復・習慣の意味で副動詞を使った回答が寄せられたが、これなどは自分の発想にはないものである。そういう回答を寄せてくれた投稿者に感謝するとともに、これを正解としていいものだろうかという疑問が、完了体副動詞の性格を考えたときに回答の当初からわいてきた。そのときは頭の中でЗакончив работу, он отдыхает.というような文が浮かんだから一応よしとしたのである。これは「仕事を終えて〔今〕彼は休んでいる」という意味で、反復ではないことが明らかだが、副動詞が副詞化していたら反復・習慣でも使えるかもしれないと感じたからである。完了体副動詞は不完了体動詞とも共に使われるが、状態の動詞сидеть, лежать, стоятьや発話や感情の動詞と一緒の場合が多い。Он сидит (сидел, будет сидеть), нахмурившись.(彼はむっつりとした顔をして座っている(座っていた、座る)では、むっつりとした顔になった顔のままで座っているのであって、繰り返しむっつりしたりしているわけではない。またСтарик долго ходил задумавшись.(老人は考え込んで長いこと歩きまわっていた)では、部屋の中か外かは知らないが、老人は考え込んだまま行ったり来たりしていたわけで、考え込むのを何回か中断したというわけではないはずだ。不完了体と完了体副動詞が使われる時は、その不完了体はсидеть развалясь(手足を伸ばしてゆったりと座る), говорить насупясь(無愛想な顔をして話す), читать пригорюнясь(悲嘆にくれて読む)などとその完了体副動詞が副詞化されたものに近い(近いのであって完全に副詞化されたという意味ではない)。しかし副詞化した不完了体副動詞由来の副詞句にはничтоже сумнясь (сумняшеся)(いささかの疑いもなく)、невзирая на лица(だれかれなしに、相手の地位に関わらず)、лёжа(横になったままで)、стоя(立ったままで)、сидя(座ったままで)やнесолоно хлебавши(当てが外れて)などで、完了体副動詞由来のものはзасучив рукава(せっせと)、спустя рукава(いい加減に)、сложа руки сидеть(手をこまねいて)などがあるが、вставを副詞と考えるのは無理だと思うし、百歩譲って副詞であったとしても反復の意味はないだろう。副動詞はその動詞の基本的な語義(体の用法も含めて)をなくしてはいないのだと思う。文法的に副動詞が反復・習慣で使えるかどうかは文法学者が判断することだし、仮に副動詞が反復・繰り返しと使われる例が見つかったとしても、私のレベルで重要なのは自分が完了体副動詞を反復・繰り返しの意味に使うか否かであり、その答えは否である。完了体が副動詞とはいえ反復・繰り返しと結びつくのは無理があると思う。一応こういう理由なので回答者の皆様やこのコーナーをご覧の皆様にお詫びして訂正する。
装飾や飾りという意味にではукрашение интерьера(インテリアの装飾)というようにукрашениеが一般的で、建築関係ではдекорを使う。декорацияというのは舞台装置という意味で、うわべの飾りという意味もある。語形が似た言葉でизморосьは霧雨で、изморозьは樹氷である。
設問)「何をお召し上がりになりますか?」
「おまかせします」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 06:10 | Comments [3]

2011年07月02日

●和文解釈入門 第56回

副動詞は露文解釈においては形動詞とともに絶対覚えておかなければならないものである。また作り方が比較的簡単であるので、会話でも使ってみたいと思う人も多いだろう。副動詞は先だって完了した動作を表すのが基本だが、文脈によって原因、状件、付帯的状況、譲歩などの意味になるため、特に会話では意味が取りにくいということもあり、相手の事を考えると(たどたどしいロシア語の会話にいきなり副動詞が入って来ては相手のロシア人もびっくりするだろう)、また副動詞自体が書き言葉なので、会話では自分から使用するのは控えるべきだと思う。
技術用語で防水など防~という用語がいくつかある。これは-защищённыйや –непроницаемыйをつければだいたいなんとかなる。「防水カメラ」はводонепроницаемый фотоаппартであり、「生活防水の時計」はбрызгонепроницаемые часыで、「防湿防塵ライト」влагопылезащищённый светильник、「防爆仕様の電話」はвзрывобезопасный телефонный аппарат、「火花放電防止仕様工具」はискробезопасный инстурментである。「気密の」という意味での「空気を通さない層」はвоздухонепроницаемый слойであり、「気密ヘルメット」はгерметический шлемという。ただ同じ気密でもвоздухонепроницамыйは布地などによく使われるので注意が必要。防水性водонепроницаемостьというのは水の流入や浸透を防ぐ性質ということだが、その反対の漏水防止はどういうかというと、гидроизоляцияという。例えば、Вода бесполезно уходит в землю, потому что каналы часто прокладывают без гидроизоляции.(水路はよく漏水防止をせずに敷設されるので水は無駄に地中に逃げて行く)などと使う。
「戦前の東京」という意味ではдовоенная Токиоとпредвоенная Токиоと両方使えるが、後者が戦争直前の東京というニュアンスがある。「計測する」は三次元(高さ、長さ、幅)や温度、圧力などにはизмерить/измерятьが広く使われる。смерить/смерятьはこの口語体で、замерить/замерятьは技術関係の専門用語である。промерить/промерятьは深さや厚さを計るときに使われる。
設問)「お電話がありましたが、お名前はおっしゃいませんでした」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 08:05 | Comments [4]

2011年07月01日

●和文解釈入門 第55回

物事の核心に触れたがる人は知識欲汪盛だが、物事を白黒だけで判断しようとする、つまり結論を追うのに忙しく、物事には灰色のゾーンというものが概して多いのだということを忘れがちである。でもこういうタイプはロシア語に関しても講師を質問攻めにするが、そういう質問に懇切丁寧に答えるいい講師に巡り合えれば伸びる。問題意識を持つとのいうのはそう簡単なことではないからだ。ここでいう問題意識は社会的なということではなく、もっと単純に、物事に対しどんな疑問でもそのままにしておかないという気持ちの持ちようである。
完了体と不完了体と形が同じ動詞двувидовые глаголыがいくつかあるが、私のコレクションでは今のところ380ほどある。-оватьや-евать型の動詞が多いが、多くは書き言葉で使われるものである。比較的使われるものは、拙著「アネクドートに学ぶロシア語文法」136ページに書いておいた。間違えてはいけないのは、これらは完了体と不完了体の形が同じというだけで、用法は別々である。和文解釈では体の用法をあまり考えなくても使えると喜ぶ人もいるかもしれないが、使う文脈によりどちらの体かは分かるのである。こういう動詞でも-сяがつけば不完了体だけで使われるという動詞も多い。例えばиспользоватьもそうで、использоватьсяは不完了体しかない。つまり受け身の意味で使われる時はこういう形の-ся動詞は不完了体となると考えてもよい。この他に逆に完了体しかない動詞、不完了体しかない動詞と言うのもある。それぞれ同書の117ページと111ページに書いておいた。
設問)「失敗と間違いはだれにでもありうる」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 14:17 | Comments [3]