2011年07月23日

●和文解釈入門 第74回

技術通訳の実際というのをご存じない方も多いと思うので簡単に書いておく。双方の出席者紹介の後に、訪問者側の会社説明があり、その後受入側のメーカーのプレゼンがあるのが普通で、このときに会社概要、ビデオ、製品紹介がある。無論面談の趣旨が何かによってその順番が変わるのが普通である。この資料(カタログなど)を事前に通訳がもらえる場合もあるし、もらえない場合もある。もらえない場合が多い。だからこういう通訳を臨機応変にできるかどうかで通訳の力量が試されるわけで、広く浅くの勉強が必要とされるわけである。その後、工場の設備や機器による生産の流れが、図を使って紹介され、工場見学となる。この後は質疑応答や技術交渉となる場合が多い。途中昼食や休憩が入るので、雑談の通訳もこなさないとならないことになる。
技術用語でпроверкаとповеркаの違いが分からない人も多いと思うので書いておく。проверкаというのは検査、点検など広く使われるが、поверкаは計測器で測る検査を指すのが普通である。
設問)「昨日はどこにも行かなかったわ」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2011年07月23日 07:21
コメント

(1) Вчера я никуда не
пошла.

(2) Вчера я никуда не
поехала.

(3) ВОЛЬНЫЙ ПЕРЕВОД

Вчерая сидела дома
целый день.
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(3)は意味上は正しいと思います。(1)や(2)についてはこのように全く何も行動を何も起こしていないものに対して普通は完了体過去形の否定は使えません。このような運動の動詞を使えそうな場合は不定動詞の過去形を使うのがよいと思います。私の回答は、Вчера я никуда не ходила.
Вчера я никуда не пошла.(〔気持ちが変わって〕どこにも行かなかった)
Вчера я нигде не была.としてもよい。ただбыть動詞の過去形は具体的な過去の目印がなければЯ нигде не была кроме Москвы.(モスクワ以外はどこにも行ったことがないの)というような使い方(経験)もできる。これを利用して、Я нигде не была кроме комнаты.(部屋にいたわ)とも言える。この他にもЕё нигде не было – ни дома, ни на работе.(彼女はどこにもいなかった、家にも、会社(仕事場)にも)というのもある。

Posted by パラショーノク at 2011年07月23日 09:29

Вчера я никуда не
вышла.
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いずれにせよ完了体過去形は動作が全く行われなかった時には普通使われません。

Posted by パラショーノク at 2011年07月23日 09:58

(訳)
「昨日はどこにも行かなかったわ」
Вчера я никуда не ходила.

・事実の名指しによる不完了体過去
・ходить には行為そのものを表わす意味があるのに対し
 идти を出かけるという意味で用いる場合は何らかの目的地が必要となるため適さず
・никуда とすることで、
 「そもそもどの方向を指しても」出かけなかった
 というニュアンスを出せる
 нигде では点を表わすゆえに具体的に過ぎ不適
と考えました。さて、正解は…
うぉう、一発正解!(めずらしい)
パラショーノクさんの
終日家に居りました、もお上手ですね。
部屋以外には居りませんでした、で нигде が使えるというのも面白かったです。

>поверкаは計測器で測る検査を指すのが普通である。
してみると、この間噛みついておりましたパイプの真円度などは
поверка, поверить を使うのが相応しそうですね:
Овальность стальных труб поверена линейкой.
鋼管の真円度は直尺によって計測される。

あの後、仕事で鉄工所を訪問した折、
ちょうど530Aくらいの鋼管が転がっておりました
(他の読者の皆さんに注釈です:
パイプの内径はパイプの呼び径と言われ、パイプサイズを表わす場合などに多用されます、
この場合530Aというのは内径が530mmという意味です)。
長さは確かに10mほどありました。
この業界は径、長さともにインチ目のミリ表示と思われ、
530Aで長さ10mほどとすれば
呼び径が20と7/8インチ(20インチ7分)、長さが30フィート(10ヤードないし360インチ)
という規格もののパイプなのでしょう。
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この設問は簡単なように見えても定動詞・不定動詞を理解していないとできないものです。ここまで勉強する人は非常に珍しいという意味で、基礎を大事にするコーシカさんは褒められてもよいと思います。поверкаははっきりいって、VNIIGAZやGDZPROMの技術者が使う用語で、その専門家でも若い人は知らず、大御所の方から聞いたもので、一般ロシア人は知らないでしょう。一般的にはпроверить, проверкаで十分ですとその方も言っていました。ただVNIIGAZなどのスペックでは厳然と使い分けています。呼び径が内径というのは必ずしも正しくはありません。パイプは内径と肉厚及び長さで表示するのが普通だからで、呼び径は実際寸法(実寸)や限界寸法に対する言葉で、品物の大きさを示す概略の寸法です。パイプなどでは販売するときの寸法です。ロシア語ではноминальные размеры, условные размерыなどといいます。

Posted by コーシカ at 2011年07月31日 20:41

いえいえ。
これだけ食らいつけるのも
さとうさんが市販の文法書に書かれている事柄を
ご自分の体験を交えて噛み砕いて説明してくださればこそです。

>呼び径が内径というのは必ずしも正しくはありません。
>パイプなどでは販売するときの寸法です。
>ロシア語ではноминальные размеры,
> условные размерыなどといいます。
そうでした!
当社の商品も刻印されている径と、刃先径には若干違いがある、というのを忘れておりました
(たぶん鉄鋼ドリルやエンドミル等々の外径と呼び径でも同じはず)。
貿易に居りました頃、nominal diameter で呼び径、と聞いたように記憶しております。
 例 呼び径φ65mmの刃物、実寸はφ66.2mm
そや、読者のみなさん。
このφの字もまるいものの径を表わす記号のように使われます。
実際の発音は「…パイ」だったり「…まる」だったり様々です。
 例 φ14.3mmのドリルの刃先径を職人さんが口にすると…
    「14.3パイ」あるいは「14.3まる」など。
    「…まる」は金属加工の業界に多いように感じます(あくまでコーシカの知る限り、ですが)。

>パイプは内径と肉厚及び長さで表示するのが普通
そうなんですか!
確かに設計する段で必要なのは外径もさることながら、流量と許容圧力が不可欠ですものね。

VNIIGAZ?なんやそれ??
と調べてみると、ガスプロムの研究所なんですね~
頭のVが何の略なんか気になるところではありますが
научно - исследавательский институт природных газов и газовых технологий - Газпром ВНИИГАЗ
をどう略したら頭のVが出るのか、フシギなおはなしです。
流石はロシア!
現代でも"知もて知り得ぬ、ひたすら信ずるのみ"な事柄があるとは(←違います)
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ВНИИГАЗのВは元々はВсесоюзныйの略で、今ならВсероссийскийで、全ソとか全ロと訳します。φはファイфиでパイпиはπでしょう。ロシアでもφは直径の意味で使います。それとноминальные (условные) размерыは呼び寸法で、呼び径はноминальный (условный) диаметр(Ду)です。訂正してお詫びします。

Posted by コーシカ at 2011年08月01日 23:22

всесоюзныйのVですか~
ありがとうございます。

呼び寸法という言い方もあるのですね。勉強になります。

>ロシアでもφは直径の意味で使います。
そうなんですか。これもやはり現場用語というか職人用語なのでしょうね。
皆考えることは同じ…

>φはファイфиでパイпиはπでしょう。
ところが日本の職人さんはそうでもないのです。φと書いて「パイ」ないし「まる」と読んでます
(「まる」の方は製図か何かのちゃんとした記号で、
ギリシア文字のφとよく似ているのでφで代用されているだけ、とも聞いたことがあります)。
逆にφ12.5mmを「ファイ12.5mm」と言われるのを(今のところ)耳にしたことがありません。

日本語の場合、下記の3つの理由が入り混じって
変化していったのではないか、と予想されます:
1. 誤解
 →まるつながりで円周率の方のπとごっちゃになってしまった用例が定着した
2. 日本語の「ふ」の発音特性
 →「ふぁ」が「ぱ」に変化していった
  日本語の「ふ」は唇をすぼめて出す摩擦音であり(無声両唇摩擦音、というそうです)、
  ただでさえ接近気味の上下の唇が上記の誤解から完全に閉じてしまう方向に変化し、
  両唇破裂音「ぱ」となってしまった
3. 「パイ」ということばの使われる現場
 →この言い方をするのは加工ないし建築現場の職人さんたちです、
  彼らは始終大きな音のする環境で仕事をし、言葉を交わすため
  単なる摩擦音「ふぁ」よりも聴き取りやすい破裂音「ぱ」に変化していった

Posted by コーシカ at 2011年08月02日 21:07
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