2006年10月23日
●ロシア語黒帯研究会(略称「帯研」)第1回
ロシアへ興味を持つ人はそれなりにいるようだが、NHKのラジオ講座の扱いを見ていると、ロシア語学習者の人口が減っているように思われる。一番問題なのは初級を終えてから次の段階に進もうと思っても、教材自体があまりないことである。嘆いていても仕方がないので、その状況打開の一つとして、露露辞典を使えるか、使えると思っているロシア語学習者を対象として、小話や詩など短くて文脈の取れやすいテキストを使って、主にロシア語会話力向上のための研究会をやってみようと思う。やり方は手探りでやるしかないが、課題を出し、それに対する訳や解釈法、訳の問題点などを学習者のみなさんに書いてもらい、それを基に各自会話に活用するという形にしたい。語学研究会なので、ロシアに関するもので語学に関係しないもの(思想関係など)は対象外である。それとロシア語の初心者や初級者で、基本的な文法を知らない人(生格、完了体などという用語を聞いたこともないという人)は、NHKのラジオ講座テキストや現代ロシア語文法(城田俊、東洋書店)を勉強してから参加して欲しい。出題する小話自体は学習用なのでオチも面白くないものが多いということを頭に入れて欲しい。回答はコメントする要領でお願いする。また研究会であって、師範科や master classといった一方的に教えるものではなく、あくまでも私も含めてロシア語力を高めるためなので、正しい答えがない場合もありうるということと、文意は会話ではイントネーション、文脈(コンテキスト)による場合が多いという言うことを申し上げておく。多くの同志の方が参加してくれることを期待する。それでは出題しよう。
Муж приходит домой, смотрит – чемоданы стоят.
- Жена, к нам кто-то приехал?
- Нет, это ты уезжаешь...
設問1)和訳せよ。
設問2)2行目приехалを不完了体のприезжалに変えたら、意味にニュアンスの差が出るか?出るとすればどのようなものか?
設問3)設問のロシア語は正しいロシア語だが、和訳する過程で何かおかしいと感じたか?そうであればどこが?
●帯研(第2回)
黒帯研究会について、まず黒帯とは何ぞやということになるが、私は実戦に使えるロシア語を使えるレベルと考えている。ただこういう定義を人に押し付けるつもりもないし、定義が決まったからといって実力が上がるものでもない。黒帯研究会も黒帯同士の研究会という解釈でもよいし、黒帯を目指す人の研究会というのでもよい。人それぞれである。ロシア語の勉強も一生精進であることに変わりはない。母国語の他に外国語を勉強するということについて、ある中国人曰くЗнаешь один язык – проживаешь одну жизнь, знаешь два языка – проживаешь две жизни.(一つの言語を知っていれば一つの人生を生きることであり、二つの言語を知っていれば二つの人生を生きることになる)。
第1回の設問3について小話のテキストを和訳する上で私がおかしいと思ったのは、地の文のМуж приходит домой, смотрит – чемоданы стоят.の文で、「帰宅して、見た」と過去の文なのに現在形を用いていることである。これは多分、不完了体現在形の特殊用法とされるнастоящее историческое(歴史的現在)で、出来事を眼前で起きたかのようにいきいきと表現するための用法かと思う。異論のある方は是非ご一報を。ただ会話力涵養には地の文は無視して(いつか紹介する機会があると思うが、通常のロシア語と違う用法が多いので)、会話の部分のみを参考にされたらよいと思う。さて、次の出題は、詩から。
Выхожу один я на дорогу;
Сквозь туман кремнистый путь блестит;
Ночь тиха. Пустыня внемлет богу,
И звезда с звездою говорит.
設問1)作者はだれか。
設問2)詩の体裁で和訳せよ。
2006年11月01日
●帯研(第3回)
前回、詩を課題にしたのは、格好をつけたからではない。ロシアのサイトを見ても詩の一部を模したり、パロディー化したものもある。有名な詩は日常に取り入れられているのであり、一部の詩はロシア人の常識を知るのに必要だと感じているからである。小話やロシアのサイトなどでよく出てくる詩を挙げてみると、
よく引用されるロシア詩
ロシアのサイト名、小話、口語的言い回し、日常会話などによく引用されるロシア詩についてまとめてみた。リストは不完全なものであり、今後増えるであろう。
(Пушкин)
К Чаадаеву
Руслан и Людмира(特に Песнь перваяにある У лукоморья дуб зеленый)
Дубровский
(Лермонтов)
Три пальмы
Выхожу один я на дорогу
Белеет парус рдинокий
(Маяковский)
Владимир Ильич Ленин - Сдайся, враг, замри и ляг
Как живете, как животик – Кем быть?
В. Маяковский – Простыми, как мычание
(Эренбург)
Бабий Яр
それと、出題は試験ではないので、回答を辞書やネットで調べても構わない。逆にネットで検索することで検索能力が高まることを期待している。帯研は実戦で使えるかどうかというのが主旨なので、当面はビジネスロシア語を通じての会話力向上に力を入れたい。ビジネスロシア語は「礼儀正しさ」や「論旨の明確さや正確さ」が求められ、日常会話と違い訳に責任が伴うからである。では出題を。
Президент компании отвечает на стук в дверь.
- Входите.
Входит молодая смазливая женщина:
- Здравствуйте. Я читала, что вашей компании нужна секретарь-машинистка.
- Это верно, мисс. Если вы прибыли по этому поводу, хочу спросить вас, что вы умеете делать: вести делопроизводство, печатать, стенографировать?
- Нет, ни того, ни другого я не умею.
- Тогда на место секретаря-машинистки вы рассчитывать не можете... До свидания...
- Извините, но у меня есть одно качество...
- Какое, мисс?
- Я не беременею, мистер.
- О'кей. Мы берем вас на работу.
設問1)和訳せよ。
設問2)2行目Входите. の代わりにВойдите.を使えるか?使えるとしたらニュアンスの差は出るか?出るとしたどんなものか?
2006年11月07日
●帯研(第4回)
回答者のレベルが高いが、それはそれで基礎が理解されているかチェックするため今回は運動の動詞からの出題。
Солдат жалуется старшине, что сосед не даёт ему спать, поёт по ночам: «Приди, приди ко мне Мария».
- А Вы разве Мария?
- Нет.
- В таком случае успокойтесь и не ходите к нему...
設問1)和訳せよ。
設問2)не ходитеの代わりにне идитеと言えるか?
2006年11月09日
●帯研第5回
中級者というのは辞書を引きながらたいていのロシア語の意味は聴いて分かる、あるいは読んでわかるレベルであり、上級者を目指すのであれば、意味だけではなく、言葉のニュアンスも理解できるように勉強すべきである。多くの場合イントネーションや語順や小詞で判る場合もあるが、強意とか対照とかぐらいで細かいニュアンスまでは理解できないことが多い。体の用法によってでも、あるいは会話の動詞の前置詞の有無でも意味のニュアンスが異なる場合もある。今後その点も含めて紹介してゆきたい。今回の課題は、
Мы едем к вам.
В будущем месяце мы едем к вам.
Завтра мы поедем к вам.
Мы будем ехать.
Смотри, машина приходит!
設問1)ビジネス会話ということを念頭において、上記の短文の中で正しいもののみ和訳せよ。
設問2)間違っているものはどこがおかしいのか説明せよ。訂正できるのなら訂正せよ。
2006年11月12日
●帯研(第6回)
ロシア語でインターネットを使った検索力チェックの練習問題を出す。下記はパロディーというよりは、実際にある作品をソ連で売り子が間違って表記したものである。和訳可能なら和訳せよ。また元の作品名を述べよ。かなり難しいと思う(でも普通のロシア人はすぐ分かると思うが)ので時間をかけて頑張って欲しい。
a) Кавказская пельменница
b) Пеппи – длинный чувак
*чувак – парень, молодой человек
c) Старик Похабыч
d) Белоснежка и Сеня Гомов
e) Хождение под мухой
2006年11月14日
●帯研(第7回)
今回もインターネット検索能力チェックの問題。
Вовочка после посещения Третьяковской галереи.
- Что ты там видел? Картины? Какие?
- «Боярню Морозову везут на выборы», «Медведи на лесоповале», «Запорожцы подписываются на заём», «Иван Грозный оказывает первую помощь своему сыну».
設問1)和訳せよ。
設問2)これらは有名なロシアの絵画をもじったものである。本物の題名と作者を述べよ。
2006年11月15日
●帯研(第8回)
出題が一見オタク相手の奇矯な問題のように見えるかもしれないが、帯研の目的はロシア一般大衆の常識について理解を深め、ロシア人気質に迫り、より地に足のついたロシア人理解に努め、ひいては後進の学習者に伝えることが出来るような有段者の学習者を増やすきっかけになればということである。ロシアの大衆文化研究というものは一人ではできず、帯研を通じて同好の士が増えれば、いろいろな分野で私も教わることができる。会話や文法、言い回しなどを通じロシア語教育で手薄と思われるロシア人庶民の文化を通じて、日本人がロシア人をより客観的に理解するということにつながると思っている。ただ帯研で合格点を取ってもガイド試験やロシア検定の1級にうかるとは思えないが、実戦を想定しているので、実際に一般ロシア人とのビジネスのようなコミュニケーションでは大いに威力を発揮するのではと期待している。今回の課題は、ろしピロのロシアなんでも掲示板に載った迷惑メールから。
Внимание! Всего 150 руб/час! - "Ваше такси" - т. 23-23-44. Звоните!
設問1)和訳せよ。
設問2)ЗвонитеをПозвонитеと言えるか?
2006年11月19日
●帯研(第9回)
ロシアのアネクドートにはかけ言葉がオチになっているものが多いが、和訳のアネクドート集では訳せないと無視されることが多い。簡単なもので筆慣らしをしてみてはどうか?
- Скажи, Вовочка, какой предмет тебе больше всего нравится в школе?
- Звонок, папа.
設問1)できるだけオチがわかるように和訳せよ。オチだけ別に説明してもよい。
設問2)Скажиの代わりにГовориと言えるか?
2006年11月20日
●帯研(第10回)
最初の回答が来れば、もちろん自分のコメントをつけるが、最初の人だけしか解答を見ないということではない。前の人の回答を読まずにどんどん自分の回答を送って、それから読めばよい。重複でない限りできるだけ参加者の回答はチェックしてコメントする。さて帯研をやってみようという人はプロつまり上級を目指している人だろうから、ロシア人に会話を習っている人やロシア人と話をする場に参加しているという人も多いと思う。例えばロシア人に具体的な例で言葉のニュアンスや、体の用法の違いなどを聞いても、Так не говорят.と言われるだけか、説明を受けてもそのロシア語の説明を生徒が聞き取れない(聞き取れるレベルなら会話を習う必要もないわけだが)ということになる。別にロシア人に会話を習うなと言っているのではない。小説の会話のシーンや書いてあるアネクドートの音読で、発音とイントネーションを徹底的に直してもらえば授業料の元が取れることになる。それに相手はなにせ本物のロシア人だから、話をするだけでもっとロシア語を勉強しようという意欲が湧く。ただ肝心の会話はうまくならないだろうと思う。たいていの日本人はロシア語を20歳前後から始めるわけで、幼児じゃないのだから、そういう人に理屈抜きにこうは言わないからただ丸暗記しなさいではうまくなるはずがない。会話などで聞くのも馬鹿らしいなと思うような疑問、つまりなぜこうなのか、なぜこういってはいけないのかについて理詰めの説明をしてくれないからと、全ての質問に答えがあるわけはないと分かってはいても、それなりの解説もなく、自分の疑問や質問を胸にしまい続けるというのもかなりのストレスになる。よほどロシア人のいる環境がそろっていない限り勉強は長続きしない。それを克服して生き残るような人々(独力でがんばり続けるという意志の強い人々、こう人たちが上級者になる)でも、無限といえるほどのパターンを覚えなければならなくなる。文法というものは必要なパターン(動詞や名詞の変化など)を、整理して最小限におさえるためのものである。そういう風に理解してもっと文法の勉強が必要だということは理解できると思う。プロの通訳やビジネスマンはロシア語で自分の好きなことだけ聞いたり話したりするということはない。あらゆる分野(文学、芸術、科学技術、ファッション、政治経済など)が大好きという人はいないだろうし、不得意な表現や構文というのは存在するし、どうやっても覚えられないという相性の悪い単語や言い回しもある。会話の先生になる人はロシア人でも日本人でもそういう質問に答えられる人につかないと、会話の上達は望めない。中級のレベルでは、つきっきりの会話指導は必要ない。ちょっとした上達のヒントや行き詰まったところの回答を上級者からもらえれば、飛躍的に先に進むのである。ここでいう上級者というのはロシア語で食べている(パートでもフルでも)プロのことで、教師、通訳、翻訳家など何でもよい。全ての分野に通じた万能の上級者というのはいないのだから、自分の得意な分野で後進の質問に答えてくれるようなブログを作ればよいのにと思う。差しさわりがあるなら匿名だって構わないはずだ。初歩では大学の研究室でそのようなサイトは見るが中級者向けにはほとんどないように思う。まあ別に人間でなくともいいわけで、参考書でもよい。そのため中級以上の参考書が必要だが、昨今ロシアでは再版されないし、ナウカのいくつかのよい参考書は絶版だろう。今手に入るロシア語関係の参考書といえば初心者向けが多いので、先に進もうという人には大変な時代だと思う。人のことを言っても始まらないのでとにかく微力を尽くしたいと思う。今回の出題は、
- Доктор, у меня ухи болят.
- Вы жена генерала?
- Да, а как узнали, по мехам?
- Нет, по ухам.
設問1)オチが分かるように和訳せよ。オチだけ別に説明してもよい。
2006年11月21日
●帯研(第11回)
今回は和文露訳の問題。
設問1)今午前8時。その日の午後2時の便が取りやめになった。では、「そのフライトはキャンセルです。飛行機は飛びません」を露訳せよ。
設問2)今日午後2時の会議が取りやめになった。今現在、今日の午後3時である。では、「その会議はキャンセルとなりました」を露訳せよ。
2006年11月22日
●帯研(第12回)
出題をどう見つけるかというと、この頃は翻訳や通訳の仕事が閑で、本の執筆が一本だけ(ロシアのアネクドート決定版)なので、もっぱらロシアの本を精読(力点や文法のおかしいところなど徹底的に調べる)している。主に自伝でГромыкоやЖуков、Маяковскийの詩、ЧуковскийのНекрасовなどの評伝、Русский Китайという昔のハルビンについてという本を10ページずつ10冊、つまり100ページほど精読している。その中で偶然出題できるようなものが見つかるというわけである。アネクドートについても本を書いたぐらいで、コレクションはいっぱいある。オチが面白くなくて本に載せられないアネクドートでも、会話などで出題に使えるものもたくさんある。そういう中から出題している。今回はビジネスロシア語で工場見学のときによく使われる表現から。もっとも前回も出張がらみでビジネスロシア語でよく使う表現ではある。前回の続き。
Завод построен в 1991 г.
Первый завод был построен в 1991 г.
Завод был построен в 1991 г.
設問1)ロシア語としておかしい文はあるか?あるならその理由を述べよ。
設問2)正しいと思う文だけ和訳せよ。
2006年11月24日
●帯研(第13回)
出題と解答、その解説にどのくらい時間がかかるかだが、出題と解答で15~20分、解説がやや手間で10分ぐらいと、計30分ぐらいであろう。参加者に怒られそうだが、趣味みたいなものだからあまり時間をかけられないので、ミスタイプなども今後出てくると思う。適宜直すが一応ご了解願う。ガイド試験やロシア検定1級などの問題の出題者も、逆にその程度の問題を出されて答えられるかというと大いに疑問である。出題するのはロシア語の本からだから、出す方は楽である。和文露訳だって、元の露文を和訳してそれを出題すればよいのだし。私も帯研と同レベルの問題なら半分も答えられるかどうか分からない。まあ問題は出題者がどうこうということではなく、問題を通じで回答者のロシア語能力がアップすればよいのだから。今参加してくれる人たちがそのうち出題者に回ってくれば、私のロシア語ももっとうまくなるだろうからそれを大いに期待している。あるいは黒帯研究会京都支部とか、元祖あるいは本家黒帯研究会とか、まったく別な名前でこの種のブログやサイトを立ち上げてくれれば、私の志も無にならないことになる。今回は久しぶりに小話からの出題。
Возле памятника А.С. Пушкину стоит почётный караул из двух пионеров. Подходит Вовочка и спрашивает:
- Кому памятник?
Пионеры отвечают:
- Пушкину.
- Это который «Муму» написал?
- Ты что, дурак? «Муму» Тургенев написал, а это – Пушкин.
Вовочка задумался и через некоторое время говорит:
- Все у нас вверх тормашками? «Муму» Тургенев написал, а памятник Пушкину ставят!
設問1)和訳せよ。
設問2)памятник нашей славыと言えるか?
設問3)Мумуの粗筋を述べよ。
設問4)下から4行目написалをписалに代えることが出来るか?
2006年11月26日
●帯研(第14回)
昨日けっこう閑だったので帯研の問題、解答、解説をまとめて作ってみたら、第36回分までできた。重なるものもあるので全部使うか分からない。当分出題に困ることはなさそうである。たまには短い文章で息抜きを。分詞構文からの出題。
a) Часть проспектов, предназначенная для выставки, уже получена.
b) Часть проспектов, предназначенных для выставки, уже получена.
設問1)二つの文の違いが分かるように和訳せよ。解説をつけてもよい。
2006年11月27日
●帯研(第15回)
ロシア語上達のためにはロシア語で書かれた本の読書しかない。会話会話というが話し合う内容を自分が持っていなければ無意味だし、通訳するにしたっていろいろな考えに触れておかなければ(語彙や構文など)、日本人であろうとロシア人であろうと相手の言うことが分からず、分からぬものは通訳しようがない。読書の始めるタイミングというのはというと、その本を1ページ読んでみて、精読(力点、文法、意味など全てについて少しでも分からなければ辞書を引くという意味)で辞書を10回以上引くならその本はまだ早い。辞書の引く回数が増えると気が散って筋が頭に入らなくなる。ただ筋さえ分かればいいからと、辞書を引くのをけちるような人はまず上達しない。その時点で分からないところは、いつかはまた出てくるし、いつまでも辞書を引くのをパスするような人はロシア語のプロには向かない。最初は自分に合った児童文学を読めばよいと思う。そしてロシア語を勉強していてつまらないことでも、おかしいなと思うことが増えたら、それは中級者から上級者への道の第一歩である。初級者は疑問を抱かない。何でだろうという疑問が湧く癖は自然につくものではない。疑問を持つようになればしめたもので、これは上達した証拠である。自ら疑問持たずして上達はない。ただ疑問を胸に納めているだけでは進歩がないというのも当たり前で、あらゆる手段を通じていつかは答えを見つけてやるという気迫と粘りが大事である。今回も小話ではなく、ある文章の一節からの出題である。
Операцию ему делали без наркоза – нельзя было. Боль невозможная. Хоть бы застонал!
設問1)和訳せよ。
設問2)Хоть бы застонал!を分かりやすく言い換えよ。
2006年11月29日
●帯研(第16回)
黒帯研究会には参加者が実践的に会話で活用する上で自分のロシア語の弱点を見つける機会を提供する目的もある。出題者の姿勢(片手間にやってるとか、語学の専門家でもないのに文法用語を振り回すという類)は、参加者には関係ない。少しでも自分の役に立つと思えば続けるだろうし、回答が寄せられなくなったときか、出題のネタが切れたときがこの研究会の店じまいのときである。どっちが早いのだろう?くれぐれもпустоцветに終わらないよう願っている。今回の課題は、
Раз думал я.を最小の変更(追記でも訂正でも)で意味が反対になるように直せ。
2006年11月30日
●帯研(第17回)
参加者のコメントは私の説明が一方的だとか、分かりにくいなとか、ミスタイプが判明した時点で訂正することもあるのでご注意願う。今回はロシア語でのオチは簡単に分かるが、和訳が難しい小話。
- За чем очередь?
- За немецкими унитазами.
Трудящийся отстоял очередь и принес домой длинную узкую коробку. В ней он обнаружил две палки с острыми концами и инструкцию: “Одну палку воткнуть в землю и повесить на нее штаны, другой отбиваться от волков”. Потом он внимательно прочитал название: Ненецкий унитаз.
設問1)オチが分かるように和訳せよ。もしテキストそのままでの和訳が難しければ、オチが正しくなるなら、ある程度テキストの和訳に手を入れてもよい。無理なら和訳と解説を別々にしてもよい。
設問2)коробкаとящикの違いを述べよ。
2006年12月01日
●帯研(第18回)
今回は設問は多いもののレベルはやや低い。
Генерал устроил прапорщикам проверку на сообразительность.
- Что такое: пара чёрных, блестящих, у двери стоят?
Молчание.
- Эх, вы. Это пара ботинок. Вот вам вопрос посложнее: четыре чёрных, блестящих, у двери стоят.
Молчание.
-Эх, вы. Это две пары ботинок. А вот вам самый сложный вопрос: живёт в болоте, зелёная квакает.
Прапорщик тянет руку.
- Ну, говорите.
- Три пары ботинок!
設問1)和訳せよ。
設問2)下から2行目のговорите.をскажите.に代えることができるか。理由を述べて説明せよ。
設問3)ботинкиが他の靴とどう違うか具体的に説明せよ。
設問4)ロシア小話でпрапорщикというのは一般的にどういう位置づけか?
2006年12月03日
●帯研(第19回)
昨日の午前中いつものように、ママチャリで荒川の土手を2時間半サイクリングしていたら、右肩に鈍い衝撃。見ると卵の黄身みたい。鳥の糞だ。見上げるとカモメが一羽。思い起こせば小学1年生のときも、朝礼のときハトの糞が頭に降ってきたし、モスクワでもカラスが背中に(これは頭のいいカラスのことだから狙ってのことだと思う)落し物を。ロシア語で鳥の糞をпомёт(метать「投げる」からであろう)というのも頷ける。運がついたのか、はたまた運の尽きか?故郷の函館では小学生の頃まで馬車が走っていた。道には落し物もあって、誤って踏んづけてしまうと、大人は背が高くなるから気にしないと慰めてくれた。ハトの糞のときも母親は頭がよくなるよと言ってくれた。鳥の糞一つでいろいろなことを思い出す。今回の出題は、オチは分かりにくいかもしれない。
Приходит девочка из школы и спрашивает отца:
- Папа, а что такое аборт?
Отец смутился, но тут же подумал, что рано или поздно дочь узнает, и начал очень туманно и невпопад ей объяснять. А потом спохватился и с тревогой ее спрашивает:
- Послушай, а зачем тебе это нужно?
- Да песню мы пели в школе, а там такие слова:
«... и бьются а борт корабля...»
設問1)和訳せよ。オチが和訳しにくければ、説明でもよい。
設問2)上から1行目、不完了体現在形だが、体を変えることは可能か?
2006年12月05日
●帯研(第20回)
ロシア語を勉強するには文法を極めようという気持ちが大切であることは論を俟たないが、文法だけでは普通のロシア人が何を言っているのか意味がまったく分からないことがよくある。ロシア人同士の仲間内の話とかそういうことを言っているのではない。文法的には理解できるが、何の話なのか文の意味が皆目つかめないという意味である。ロシア人同士が話していて、それからいざ日本人である私と話すときは、まるでスイッチが切り替わるように分かりやすいロシア語になる。日本語を話す外国人に対しても同じようなことを我々はしているはずだ。これは話の背景にある大衆文化や大衆の一般常識をしらないからであろう。モスクワに駐在する前にも、品川のソ連代表部でもそういう経験を何度もした。そこで映画、歌、宴会での作法も含めて、アネクドートを通じていろいろ調べてきたわけだが、対象が極端に言えば18世紀から2002年ごろまでなので、広すぎてとても一人の手には負えない。そこでインターネットの時代ということを考えて「集合知」を利用するということを考えた。どなたかができれば私と違う分野、あるいは同じ分野でもより深めて背景となる大衆文化を研究してくれないものかと考えたのが、この研究会の趣旨である。アニメ、ジャズ、SFについてはユーラシアブックレットですでに著名な方がすでに筆を取られているが、もっとマイナーな分野を、普通のロシア人を理解するという観点から突き詰めてくれる人がこれからどんどん出てきてくれることを願う。何度も言うがチェーホフやドストエーフスキーだけがロシア研究ではないし、もっと現代(ソ連時代も含めて)の大衆文化(B級文化といってもよい)に目を向ける必要があるのではないか。今回の出題は、
Врач имел привычку, принимая больного, всё время говорить «мы».
- У нас болит живот, и нам очень плохо. Кроме того, мы чихаем. Что же мы должны будем сейчас сделать?
- Я думаю, - заметил больной, - что нам с вами вместе лучше всего пойти к другому врачу.
設問1)和訳せよ。
2006年12月07日
●帯研(第21回)
出題しているとはいうもののロシア語の専門家とか教師ではないので、思わぬ間違いがあるかと思う。そのときは遠慮なく指摘して欲しい。ロシア語の研究者でも専門家でもないが、私も36年ロシア語を学習しているわけで、ロシア語を勉強する人の気持ちは分かりすぎるくらい分かっているつもりである。ここでいうロシア語の学習者というのは私のように市販の参考書でロシア語を勉強している人を指す。こうしたらこの難関はクリアできるのではないかとか、ちょっとしたアドバイスでかなり実戦的な面で実力アップするのでは思うことが多々あったということがこの研究会のきっかけでもあるし、将来はロシア語を教えたいと思っているので参加者からいろいろアドバイスを逆にもらえないかという気持ちもある。気軽にトライされたよいと思う。今回は息抜きに短いものを。
Штирлиц выпил со смаком. Смак сегодня угощал. Его очередь.
設問1)三つの文の意味が通るように和訳せよ。
2006年12月09日
●帯研(第22回)
初めてモスクワに駐在したときに先輩から言われたのは、ロシアで三冬もてば一人前ということだった。結局十冬以上過ごしたわけだが、普通の日本人よりは寒さへの忍耐力はついたかもしれない。それ以外はどうだろう?この帯研で私の経験が将来ロシアとのかかわりを目指す方のお役に立てば幸いである。
Я выпил молоко.
設問1)この文が正しいいかどうか述べよ。正しくないならば、正しい文に書き換えよ。
2006年12月10日
●帯研(第23回)
中級者にはあまり参考書がないので、いきおい露和辞典に書いてある解説に頼ることになる。書いてあることはもちろん正しいが、紙面の関係上十分な説明がなされていないこともある。後は実際にロシア語の読書で勘を養うという勉強を我々の世代や、それより上の世代はしてきたわけだが、インターネットの時代でもあるし、もう少しなんとかならないものかという想いが常にある。
- Как вам не стыдно? Здоровый, молодой человек, а просите деньги!
- Я бы, конечно, не просил, но один раз я взял без спросу, и судья дал мне за это три года.
設問1)和訳せよ。
設問2)просите деньги をпросите денегと言えるか?
2006年12月12日
●帯研(第24回)
ロシアのブログのロシア語には注意する必要がある。玉石混交のため12歳ぐらいの子供もブログを開設しているし、ロシア語自体が非常にくずれているのもあるため(標準語から離れているため)、ロシア語の学習の参考にはならないものがある。その点、本は一応プロの読者である編集者がチェックしているので、誤字脱字はあってもロシア語のテニヲハは問題ないといえる。よくロシア人がこういったとか、錦の御旗のように振り回す人がいるが、言っているロシア人による。私も30年以上ロシア人とは付き合いがあるので、ロシア人がというだけで別になんとも思わない。よほどロシア語学の大家が言うなら別だが、Принимаю к сведению.(伺っておきましょう)程度である。今回はそれほど難しくないものを出題する。
Смотрите в лучших кинотеатрах страны!!!! Новейший фильм ужасов: «Родион Раскольников в доме для престарелых»!!!
設問1)和訳せよ。オチを説明せよ。
設問2)Смотритеを完了体の命令形に代えることができるか?
2006年12月14日
●帯研(第25回)
帯研ももう25回目を迎えた。これもひとえに参加者のおかげである。欲も出てきたのでなんとか100回までは続けたいものだ。小話における不完了体現在形の用法についていろいろ考えたが、小話の地の文で現在形が使われるのは、歴史的現在のみならず、Представьте ситуацию.という文言を文頭で補えば分かりやすいのではないかと考えた。アカデミー文法(1980年版)でも触れられているように、歴史的現在(過去の動作を話し手の眼前で起こったかのように生き生きと表現する場合に現在形を用いる)のほかに、現在形は想像の動作にも用いられると記されている。Вообразитеなどを伴なって現在形が使われる例が挙げられている。小話では話し手は未来の出来事を眼前で起こっているかのように描く場合もあるわけであるからどうであろう。今回は簡単、簡潔なものを。
Любовь ушла, но она ещё об этом пожалеет.
設問1)オチが分かるように訳せ。
2006年12月16日
●帯研(第26回)
В 1929 году на КВЖД возник советско-китайский конфликт из-за управления дорогой.
設問1)文が正しいと思えば和訳せよ。間違っていると思えば間違いを正して和訳せよ。
設問2)из-за + 生格をблагодаря + 与格にすることは可能か?
2006年12月17日
●帯研(第27回)
日本だけでロシア語を勉強している人に対して、畳の上の水練だとか袋竹刀の剣法という人もいるが、そういう人は形(基本)を学ぶ重要性を理解していないと思う。語学が上達するには文法を理解し、語彙を増やすしか道はない。それは日本にいてもできるはず。そういう基本の出来ている人は実戦で何度か(何十回か)恥をかけばものになる。そういうことを考えずにいきなりロシアに留学しても、水に突き落とされて、そのままドボンと沈むか、運がよくて話せるようになっても、せいぜい犬掻きか横泳ぎ程度というようなことになりかねない。さて、今回の課題は、ロシア人にはこの小話のオチはすぐ分かるが、日本でロシア語を勉強した人には難しいかもしれない。ある意味で私の言うB級文化(大衆文化)を理解することの大切さを示す例でもある。
Ползут две черепахи по Северному полюсу, одна из них спрашивает:
- Давай над Снежной Королевой подшутим.
- Да ну тебя, Петька, и так над стариком Хоттабычем пошутили, - отвечает вторая.
設問1)オチが分かるように和訳せよ。(オチだけ別に解説してもよい)
2006年12月18日
●帯研(第28回)
モスクワの府主教フィラレートФиларет(1782~1867)がロシアの民衆について語った言葉に、В русском народе свету мало, но теплоты много.(ロシアの民衆には光明は少ないが、温かみはたんさんある)というのがあるが、私がロシアやロシア人に魅かれるのはこの人としての温かみなのかもしれない。今回もやさしいものを。
Пришёл к доктору пациент и жалуется, что у него что-то болит между лопатками.
Доктор спрашивает:
- Курите?
- Нет.
- Пьёте?
- Тоже нет.
- А женщинами балуетесь?
- Нет.
- Так это же у вас крылышки начали расти!
設問1)オチが分かるように訳せ。
設問2)上から2行目Доктор интересуется у пациента:と言えるか?
設問3)最後の行に関連した問題で、
Они не начали работать.
Они не стали работать.
この二つの文章に違いがあるか、あるとすればどのような違いか?
2006年12月20日
●帯研(第29回)
ロシアの男性は女性の前では下品な小話はしないというのは本当であるが、女性同士ではどうかというのはよく分からない。90年代初めにソ連が崩壊して本の出版もほぼ自由にできるようになり、特定の芸能人の小話のほかに、読者から小話を応募してもらいコンクール形式で面白い小話を出版するというのも現れた。読者が簡単な自己紹介をしているものもあり、女性でしかも12~17歳ぐらいでも結構卑猥な小話を紹介している。スパムメールと違い、まんざら男が娘を騙っているとは思えない。もっとどぎついのはさすがに本には載せないのだろうからロシアの女性もひらけているなと思った次第。今回は男同士が飲んでする実際の小話のレベルを紹介しようというもので、私の好みというわけではない。俗語というよりは隠語が散見される小話である。
Василий Иванович с Петькой пьянствуют на берегу реки. По причине жары разделись донага. А на закуску украли барашка.
Василий Иванович говорит:
- Чтоб нас не поймали с этим бараном, ты, Петька, втыкай кости в песок.
Напившись до чёртиков, Василий Иванович отключился, а Петька вместо песка воткнул кость Чапаю в задний проход. Очнувшись, Василий Иванович пошёл по нужде в кусты. Вернувшись, подходит к Петьке и говорит:
- Петька, надо завязывать пить.
- А что такое?
- Сижу в кустах, тужусь. Смотрю, из заднего прохода позвоночник вылазит. Еле-еле назад запихал!
設問1)和訳せよ。
設問2)健康診断などの「上半身脱いでください」を訳せ。
2006年12月22日
●帯研(第30回)
ロシア語で何を読むべきか考えている方に、面白いものを見つけたので参考までに紹介する。1923年ロシアソビエト連邦社会主義共和国文部人民代表部政治文部総委員会委員長クループスカヤの署名した「図書館の図書構成の見直しおよび反革命・反文学文献の削除に関する指示」の中で、具体的にリストに挙がっている著者名は、文学関係ではАверченко(風刺), Амфитеаторов, Боккаччо, Вербицкая, Гнедич, Арцыбашев(サーニン), Дюма (отец), Данилевский(哲学), Загоскин(モスクワ人), Бор. Зайцев, Крестовский(ペテルブルグのスラム), Лесков («На ножах», «Некуда», «Обойденные»), Лажечников, Лейкин, Мельников-Печерский(森の中で), Мережковский, Потапенко, Пшибышевский, Санкевич, Сологуб, Стерн, Форрар, Тэффи(風刺), Терпигорев, Хаггард, Толстой («Народные рассказы», «Отец Сергий», «Ходите в свете, пока есть свет» и все религиозные и филосовские сочинения), Вас. Немирович-Данченко («Плевна и Шипка», «Вперед», «Рядовой Неручев», «Скобелев», За далеких братьев», По воле Божией» и другие рассказы и повести из русско-турецкой войны), Полевой («Клятва при гробе Господнем»)、他に児童文学、歴史関係、哲学、心理学、倫理学、伝記(プラトン、デカルト、ショーペンハウエル、ニーチェ、カント、スペンサー他)が著者ごとにリストアップされており、聖書、福音書、コーラン、タルムードも入っている。その代わりに何を勧めていたかというと、レーニン、ジノーヴィエフ、トロツキー、スヴェルドローフの肖像画である。(私が読んだことのあるものは、Аверченко(風刺), Боккаччо, Арцыбашев(サーニン), Дюма (отец), Данилевский(哲学), Загоскин(モスクワ人), Бор. Зайцев, Крестовский(ペテルブルグのスラム), Лесков («На ножах», «Некуда», «Обойденные»), Мельников-Печерский(森の中で), Мережковский, Сологуб, Стерн, Тэффи(風刺), Хаггард, Толстой («Народные рассказы», «Отец Сергий», «Ходите в свете, пока есть свет» である)。これを見ると革命家を揶揄したり、貧民の生活を犯罪がらみで描いたりしているもの、宗教・哲学などがボリシェヴィキーの気に入らなかったようである。クループスカヤもものの見方が狭そうな人だからこういう委員会の委員長にはうってつけだったのかもしれない。ボリシェヴィキーが発禁にしたものを読むというのも一つの読書の方法ではないかと思う。今回は短いものを。
Тургенев взялся проводить его (= Писемского) до дому.
設問1)和訳せよ。
設問2)до домуをдо домаと言い換えることができるか?理由もあわせて述べよ。
2006年12月25日
●帯研(第31回)
100円のロシア語会話集も売っているが、こういうのは単価を下げるために英語をベースに作られている。全部が悪いとは言わないが、やはりその国の事情がよく反映されていない項目もある。高速道路の料金所(有料高速道路というのは今のところロシアにはない。せいぜい空港の駐車場が有料なのでその料金所ぐらいか)が税関という訳になっていたのには驚いた。和露でも日本の国語辞典に準拠すると、同じようなことが起こる。日本語の語句から無理にロシア語を作って、いくらロシア人にチェックしてもらっても、そういうのは死んだロシア語である。生きたロシア語句を知りたければ、自分でロシア語の文学や小話でも読んで、使えると思う語句を和露または露和の語彙集を作ればよい。エクセルで作れば簡単である。ただ典拠とできれば和訳は分かりやすく書いておけば後で役立つ。書き間違いというのはだれにでもあるからだ。今回の小話は語学はあまり関係なく分かる人は分かるというもの。
Убили чукчи моржа. Взяли его за ласты и понесли в деревню. Идут, пусню поют:
Мы смелые чукчи, убили моржа.
И несём его в деревню,
А деревня всё ближе и ближе.
(Вдалеке уже виднелись юрты.)
Встречают русского. Тот и говорит:
- Чукчи, вы так неудобно тащите моржа. Уже всю землю клыками испахали. Взяли бы лучше его за клыки и несли.
Послушались чукчи русского, взяли моржа за клыки и понесли. Идут поют:
Мы смелые чукчи, убили моржа.
Всей деревне хватит на всю зиму!
И несём его в деревню,
А деревня всё дальше и дальше.
設問1)和訳せよ。オチを解説せよ。
2006年12月30日
●帯研(第32回)
1月発売予定の「ビジネスロシア語」の目次案(豆知識の場所が変わる可能性あり)を「ランポポー」トップページに載せたので、ご興味のある方はご覧ください。
俗語については自分から使う必要はないが、相手の使っている言葉が、丁寧語なのか、口語なのか、はたまた俗語や隠語なのかはある程度分かるように勉強に努めたほうがよい。2002年頃取引を考えていたアルミの二次製品のメーカー(ロシア)がモスクワのある銀行の傘下に入ったというので、銀行の頭取と会いに行っていろいろ話を聞いたわけだが、その面談中にこの頭取(40歳ぐらい)が、без прибамбасов(よけいな飾りなしで)という表現を使った。それを聞いて、この種の言葉は普通若者かヤクザが隠語として使うものなのでちょっと驚いた。早速格付け会社にこの銀行についてデータ(表面的なデータしか分からないが)を調べてもらうと同時に、場所からみてモスクワのどこの組(当時モスクワの大きい暴力団21の勢力圏は調べればある程度想像がついたので)かなど調査に入った。幸いそれ以上話が進まなかったので、取引をするかどうか本社に意見具申するところまではいたらなかった。その頭取がたんに犯罪小説のファンというだけかもしれないし、ヤクザから企業家に転向した人かもしれない。ロシアでは小売店関係では、みかじめ料(за крышу)として小さなところでも月3000ドルぐらいは暴力団(あるいはKGBや警察出身者の経営する警備会社)に払っているので、小売やレストランなどをする場合にはそういう問題も生じるということを頭に入れておいたほうがよい。テレビや映画でよく耳にする俗語を参考のために書いておく。
в натуре = в самом деле マジ
стрёмно = опасно ヤバ(イ)
короче = короче говоря 要はさぁ
блин(блядь「あばずれ」に由来する) バーロー、畜生
чё (= чо) = что ナヌ
затусоваться = провести время в компании つるむ
фуфло = подделка ガセ
типа = вроде とか、なーんちゃって
прикольно = смешно おっかしいの
бывай, бывайте アバヨ
сделать (устроить) харакири кому за что = наказать, разругать кого-л.
どやしつける
*切腹をロシア語では「ハラキリ」と言って、これは結構通じる。
今回も短いもの。次の二つの文を和訳せよ。по полюとполем、по лесуとлесомに意味の違いがあるか?あるなら違いを説明せよ。
Мы шли по полю, по лесу.
Туда мы шли полем, оттуда лесом.
2007年01月02日
●帯研(第33回)
С Новым годом!
中級から上級をねらうには、動詞句と覚えるのがよい。例えば、Устойчивые словосочетания русского языка, Регинина/Тюрина/Широкова, Русский язык, 1983などがよいが、手に入らないだろう。格支配が分かりやすく書いてあり、例文もある。例えば Ставить какой опыт, эксперимент на ком.。大学などの図書館にあってコピーしてよいならコピーするのも一つの手だが、なければ、ロシア語の児童向けの本から、自分が必要だと思う動詞句、単語、名詞句などを抜書きするのが現実的である。できれば前置詞も含めて格支配の分かりやすい例文を選び和訳をつける。例えば、Вы руки мыли с мылом?(石鹸で手を洗いましたか?)。こういう文章はまず露和辞典ではお目にかかれない。例文の露文はまとめて暗記する。そうすれば、активный запас словが増え、日本語からロシア語への通訳や翻訳の練習になる。また例文を和訳することによりпассивный запас словが増え、ロシア語から日本語への訳の練習になる、つまり一石二鳥である。短文の和訳の練習を続けていれば、そのうちに長い文章も(個々の分からない単語は別にして、全体の骨組みなど)短い時間で和訳できるようになる。今回は正月ということもあり、お忙しいかもしれないので短い小話にしておく。短いがこのオチをうまく和訳できれば大したものである。
Карлсон залетел и ждёт малыша.
設問1)和訳せよ。オチを別に解説してもよい。
2007年01月03日
●帯研(第34回)
ロシア語の参考書に書かれたものは一応尊重するが、鵜呑みにはしない。これまで実戦で使ってみて自分で納得したものを帯研で披露しているわけである。まず言葉ありきで、文法は後にそれを説明するためのものであり、逆ではない。ただ外国人がロシア語を習う場合には、文法が唯一の頼りである。しかし文法で全ての語法が明確になるわけではない。説明できないところは例外として覚えざるを得ないし、部分生格一つをとっても単語単語によっていくつかの面からの説明を語学の専門家(日本人やロシア人を問わず)が書いてあるのを読むが、言語の現象をどの面から見るか、全体と部分で見るか、具体性と一般性で見るか、演繹と帰納を繰り返しているように思える。ある場合は語法の説明に納得し、ある場合はこの単語独自の用法ということで納得する。つまるところ我々は語法の研究者ではなく、ロシア語を使ってロシアやロシア人とコミュニケートするためにロシア語を使うのだということを念頭におく必要がある。
Сидит мужик, рыбу ловит. Рядом Бобик зубами блох выкусывает, лапой в ухе скребёт. Вышла из-за кустов лошадь, подошла к мужику и спрашивает:
- Ну что, клюёт рыбка-то?
- Да нет, не клюёт что-то.
- Ну ладно, Бог в помощь, - говорит лошадь и снова в кусты ушла.
Сидит мужик дальше, вдруг как подскочит:
- Ёлки-палки! Лошадь говорящая!!!
- И не говори-ка, я сам удивился, - отвечает Бобик.
設問1)和訳せよ。オチを解説せよ。
設問2)Ёлки-палкиはевфемизмである。ずばり言うとすれば何か?
2007年01月05日
●帯研(第35回)
通訳や翻訳のプロを目指すなら、ロシア語を読んだり聞いたりして、いわゆる頭の中でロシア語で意味が分かる(イメージできる)というだけでは不十分である。このロシア語で分かる、分かったような気になるというレベルに到達するのはそれほど難しいことではない。通訳や翻訳者はロシア語を日本語に、日本語をロシア語にするわけだから、取りあえずはロシア語を聞いたり読んだりしたら、瞬時に母語の日本語に訳せるよう練習すべきである。この練習を日頃しておくのが通訳の役に立つ。今回は簡単な小話を。
- Гражданин, вы не видели поблизости милиционера?
- Нет.
- Тогда снимайте шубу!
設問1)ロシア語の用法におかしいところはあるか?あれば訂正し、その理由も説明して和訳せよ。
2007年01月07日
●帯研(第36回)
前にロシア人同士のロシア語と我々日本人に対するロシア語では、ロシア語を分かりやすいものにロシア人が切り替えることがあると書いた。ただそれが聞き取り能力の不足であれば、ロシア語のCDやテレビ放送などで多く聞いて聞き取り能力を高めればよい。私の言っているのはそういうことではなく、例えば、書いたもので小説や小話の会話の部分が、一応文法はすべて分かっても理解できないものがある(というより多い)ということで、これは参加者のみなさんもロシア語のブログやサイトを見れば、すぐ納得されることだと思う。これは背景となる大衆文化の理解がないからではないかと考えた次第である。ただ大衆文化と言っても大上段に構えているわけではなく、例えば前に出題したポチやタマなどペットの名前をロシア語でなんと言うかなどもそうであろう。こういうのを手分けして調べてネットで知らせるようなごくごく地に足のついたことから、興味のある人が始めてはということなのである。さて今回は短文問題。
a) Он читает книги, брошюры, газеты, журналы.
b) Он читает и книги, и брошюры, и газеты, и журналы.
c) Он читает книги, брошюры, газеты и журналы.
d) Он читает книги и брошюры, газеты и журналы.
2007年01月08日
●帯研(第37回)
И подо льдом вода течет.というのは「アヒルの水かき」で、比ゆ的に表面上は何もしていないようでも水面下ではいろいろ動きのあることを言うが、ロシア語の勉強に当てはめると、何も勉強しなければ、自分では現状維持のつもりでも間違いなく実力は落ちている。少し勉強してようやく現状維持であり、少しでも実力を伸ばそうとするならけっこう大変な努力が要る。発音やイントネーション、聞き取り能力がある程度合格点なら、日々の勉強はロシア語の読書しかない。毎日10ページぐらいを分からないところは文法も含めて、自分で出来るところまで徹底的にやるようにすればよい。今回は日本人にはさして面白くない小話だが、ロシア人気質(русский менталитет)を知る上でよいと思うし、アイロンの小話では古典と思われるものを挙げる。この小話のバリエーションとしてмясорубкаを使ったものもある。
У одного холостяка сломался утюг. Он идёт к соседу за утюгом. Сосед говорит, что утюг у него есть, но будет лучше, если холостяк спустится на два этажа ниже, там живёт одинокая приятная дама. Пусть попросит у ней, заодно, может быть, и познакомятся. Холостяк спускается по лестнице и думает:
- Да, хорошо бы с женщиной познакомиться. Но с другой стороны...Пьяный домой не приходи... Друзей не приводи...Подруг...На рыбалку не сходи...На футбол...
Подходит к двери, нажимает кнопку звонка. Открывает приятная женщина.
- Да пошла ты...со своим утюгом!
設問1)和訳せよ。
2007年01月10日
●帯研(第38回)
最近岩波の露和辞典がネットオークションで3万円とか3万2千円という値をついたというのを「ろしあんピロシキ」の掲示板で読んだ。需要があるのであろう。再版はともかく新版が出ないのは、露和辞典には国語辞典や英和などロシア語以外の対訳辞典と違う事情があるのではないかと思う。国語辞典や英和辞典は新語を吟味して取捨選択し、用例が古くなったものはそれを除けばよいのだが、露和辞典ではそう簡単にはゆかない。それはソ連政権が誕生してから、帝政時代には犯罪など悪いことがあったがソ連時代にはそのようなものはないとして、それを想起させるような隠語、俗語、はては口語まで辞典にほとんど採録されない状態がソ連崩壊まで続いた。そのため新版の露和辞典にはこの15年間の新語だけではなく、革命直後から現在までの口語、俗語、隠語を新たに追加しなければならないわけである。革命前にも隠語、俗語、口語は存在したし、革命直後や、1930年代政治犯として収容所に入れられた一般市民が犯罪者から隠語を教わるということもあり、その後政治犯が釈放されたりしたり、1950年代半ばの大恩赦などで犯罪者が一般市民と交わることが増えて、1980年代からヤクザの隠語がかなり市民の間に広まった。一部Самиздатの小説などにも(ソルジェニーツィン他)こういう隠語が反映されているし、ソ連崩壊後、小話や若者向け雑誌を理解するには、ソ連時代に出た辞書では歯が立たないわけである。ロシアにおいては最近俗語辞典、口語辞典が出版されているが、日本では最近コンサイスの新版が出たのみで、岩波や研究社の露和は15年近く新版が出ていない。コンサイスは新語も取り入れ、訳もこなれたもので非常によい辞典だとは思うが、いかんせん収録語数が10万語と少なすぎる。私が思うにはロシアの若者向け雑誌、小説や小話を理解するためには、岩波の露和の収録語数13万プラス3~5万語は必要だと思う。たんにロシアで出版された口語辞典や俗語辞典を和訳するだけでなく、それを十分咀嚼して新たな露和辞典に反映させることが出来るような研究者が育っているのかというのが私の疑問である。チェーホフやドストエーフスキーの研究者は非常に多いが、ロシア語の口語俗語で我々一般が名を知っているのは狩野亨先生ぐらいというのは淋しい限りである。先生の「現代ロシア話しことば辞典」も全て網羅されているわけではなく、この辞典だけに頼ることが出来ないというのが現状である。帯研の参加者は一応露露辞典は使えるだろうから、ロシアの隠語辞典や口語辞典を買って使うのが早道かもしれない。もし露露はという方は早く露露が読めるように努力すべきだ。今回もロシアの大衆文化の理解なしにはオチがわからないだろう。
Цыпленок бьется головой о стенку и кричит:
- Позор! Позор!
Подходит Курица.
- Мама, а это правда, что у меня отец – Петух?
- Да, сынок.
- Позор! Боже, какой позор!
設問1)オチが分かるように和訳せよ。オチを別にしてもよい。
2007年01月11日
●帯研(第39回)
ロシアの大衆文化を理解するのに手っ取り早いのは、映画鑑賞である。ただソクーロフの映画や「子猫」などのいわゆる「名画」ではない。ロシア人の会話によく出てくる映画(セリフや名言などの観点から)で、私が見たほうがよいと思うものをリストにしたので挙げておく。(*印は私が見ていないもので、和訳していなのは詳細が分からないもの)。
1) チャパーエフЧапаев、братья Васильевы監督、Б. Бабочкин主演、Ленфильм、1934
ロシアで有名な国内戦の英雄の映画化。この映画のイメージが小話のたねに使われているので必見。
2) *ドゥブローフスキーДубровский、А. Ивановский脚本演出、1936、Ленфильм、Б. Лизанов主演
3) *アイタタ先生Доктор Айболит、В. Немоляев監督、1938、М. Штраух主演
4) 捨て子Подкидыш, Т. Лукашевич監督、1939、Мосфильм
迷子が捨て子と間違われて起こる騒動。Ф. РаневскаяがЛяляという重要な脇役を演じている。この演技だけでも見る価値はある。彼女のセリフ、Муля, не нервируй меня!(ムーリャ、いらいらさせないでよ)は流行語となった。上映後街の子供達がРаневскаяに対してこの文句ではやし立てるので彼女は大いに腹を立てたと言う。レーニン勲章受賞のときにブレジネフがこのセリフで彼女に話しかけたときに、それは街のガキの言うセリフですと言って、ブレジネフをドギマギさせた。ПляттやРепнинの演技もよい。
5) 二人の勇士Два бойца、Луков演出、1943、Ташкентская киностудия、М. Бернес主演
この映画の中でТемная ночь「暗い夜」、Н. Богословский, В. Агатов, М. Бернес、が歌われた。この映画上映の前に作曲家からこの曲の存在を知ったУтесовが映画公開の前に歌を披露し、映画で歌ったБернесとの間に確執があった事でも有名。ゴルバチョフが好きな曲に挙げている。この他にオデッサを代表する歌となったШаланды полные кефали「ボラ満載の漁り舟」、Н. Богословский, В. Агатов, М. Бернес、も歌われている。
6) *カーニバルの夜Карнаварная ночь、Э. Рязанов監督、1956、Мосфильм、И. Ильинский主演
7) 人間の運命Судьба человека 、Бондарчук監督および主演、1959、Мосфильм
8) *Зайчик、Л. Быков演出、1964、Ленфильм、Л. Быков主演
9) 「ウィ」大作戦とシューリクのその他の冒険Операция «Ы» и другие приключения Шурика、Л. Гайдай監督、1965、Мосфильм、А. Демьяненко
シューリクシリーズの第1作。コメディー。なぜ作戦名が「ウィы(ロシア文字で普通は大文字にならない)」なのか、それはだれにもあてられないようにだよとある。
10) 車にご用心Берегись автомобиля、Э. Рязанов監督、1966、Мосфильм、И. Смоктуновский主演
成金の自動車を盗み、それを売っぱらって孤児院に寄付する義賊と刑事の駆け引き。コメディーだが、あまり面白くない。
11) 神出鬼没の復讐者Неуловимые мстители、Каосян監督、1966、Мосфильм、В. Васильев主演
П. Бляхинの赤い子悪魔たちКрасные льяволятаの映画化。革命初期革命軍を助ける4人の若者たちの活躍を描く。さらに2作続編がある。
12) カフカスの女性虜囚というかシューリクの新冒険Кавказкая пленница, или новые приключения Шурика、Л. Гайдай監督、1967、Мосфильм、А. Демьяненко主演
シューリクシリーズではあるが、この作品から三バカトリオが表に出てくる。このトリオはБалбесデクノボウ(Ю. Никулин)、オクビョウモンТрус (Г. Вицин)、タヌキБывалый (Е. Моргунов)で、他の映画にもトリオの設定のまま出ている。
13) ダイヤモンドの手Бриллиантовая рука、Л. Гайдай監督、1968、Мосфильм、Ю. Никулин主演
ピエロとしても名高いニク―リンが作中で無表情で歌う А нам все равно, а нам все равно(どうでもいいじゃない、どうでもいいじゃない)がとてもよい。上質のコメディー。
14) *砂漠の白い太陽Белое солнце пустыни、В. Мотыль演出、1969、Мосфильм、А. Кузнецов主演
15) 12のイスДвенадцать стульев、Л. Гайдай演出監督、1971、А. Гомиашвили主演
有名なИльф и Петровの小説の映画化。コメディー。
16) ラッキージェントルマンДжентльмены удачи、А. Серый演出、1971、Мосфильм、Л. Леонов主演
盗まれた貴重な発掘物を突き止めるために、強盗団の首領と顔がそっくりな校長先生が首領に化けて大活躍する喜劇。
17) イワン・ワシーリエヴィチ転職すИван Васильевич меняет профессю、Л. Гайдай監督、1973、Мосфильм、Ю. Яковлев主演
シューリクシリーズとはいえシューリクはあまり出てこない。イワン・ワシーリエヴィチがシューリクの発明したタイムマシーンでイワン雷帝の時代に迷い込み、雷帝となる珍騒動。
18) 運命のいたずら、つまりいいお湯をИрония судьбы, или с легким паром、Э. Рязанов演出、1975、А. Мягков主演
旧友との再会で飲みすぎ、間違ってモスクワからレニングラードへ行ってしまう主人公。そこには偶然同じ名の通りに同じようなアパートが、ただ住人は妙齢の女性だった。上質のコメディー。
19) 待ち合わせの場所を変えることはできないМесто встречи изменить нельзя、Говорухин監督、В. Высоцкий主演、Гостелерадио、1979、5シリーズ(ビデオ3巻) МУР(モスクワ刑事捜査局)の実在の強盗団「黒猫」退治の顛末を描いたものだが、戦後のモスクワの様子がリアルに描かれている傑作。難を言えば浮浪者や乞食が見当たらないことか。警察の強引なやり方にも批判的な見方をしている。Высоцкий演じるところの捜査主任Жегловのセリフは、映画の題名と共に犯罪実録や小説でよく引用される。
20) *秋のマラソンОсенний марафон、Г. Данелия演出、1979、О. Басилашвили主演
21) *В джазе только девушки
22) *Со дней до приказа
23) *Городок в табакерке
24) *Падал прошлогодний снег
25) *Можела и Мокушка
26) *Гадкие лебеди
27) Волшебник изумрудного города(人形劇)
28) *Друзья встречаются вновь
29) Дядя Степа(短編アニメ)
今回の出題は、
Пристрастился муж ходить на скачки.
Муж:
- Ну, я пойду.
Жена:
- Не ходи, твоя кобыла звонила по телефону – скачки сегодня не состоятся!
設問1)オチが分かるように訳せ。
設問2)この小話から舞台は現在のモスクワ(20年前のモスクワということなら分かる)ではないことが分かる。どうしてか?
2007年01月14日
●帯研(第40回)
若い人が同時通訳者になろうと勉強するのは構わないが、英語と違い働く機会が非常に限られているので、それ以外にも目を向けた方が現実的である。では通訳かといっても、ガイド通訳、技術通訳、商談通訳もそれほど仕事が多いというわけではない。いっそロシアと取引のあるメーカーや商社に就職して、通訳のロシア語というよりは自分で使えるロシア語を勉強したほうが実戦の機会は多い。通訳はいろいろな人の言うことを文字通り通訳するわけだが、自分で使うロシア語は、自分の口癖や職種に限られるから、後に通訳をする下準備にもなる。自分の通訳ができなくては人様の通訳なぞ無理というもの。
Человек идёт по улице в одном сапоге.
- Сапог потерял?
- Нет, нашёл.
設問1) 和訳せよ。
設問2) 上から2行目および3行目терял やнаходилと不完了体を使えるか?
2007年01月17日
●帯研(第41回)
最近ロシア人の若い人の会話を聞いていると、типаをкак быやвродеのように使っているのが目立つ。例えば、Она тебя типа полчаса ждала и уехала.のように使う。1967年にЧуковскийはвродеという言葉を、英語のsort ofのように(в родеというような感覚で)словно, будто, кажетсяという意味で使いだしたと書いている。このтипаの用法を聞いたら驚くだろうか。いやまたかと思うだろう。ただвродеには名詞を修飾するものはВ ответ на его следы послышалось что-то вроде смеха. (Лермонтов)のように昔からあるので、それと混同しないこと。今回の課題は、
- Из кого состоит Верховный Совет СССР?
- Из людей, ни на что не способных и одновременно способных на все.
設問1)オチが分かるように和訳せよ。
2007年01月18日
●帯研(第42回)
ロシア人の前でロシア語に関して恥をかいたことは多々ある。ロシア人はだいたい外人のロシア語の間違いを表立っては指摘しない。日本人だって外国人が少々変な日本語をあやつたっていちいち目くじらを立てる人はいまい。人のいい人が多いので、外人がせっかくロシア語を勉強しているのだからとロシア語についてコメントするにも遠慮がちである。ロシア語を始めて36年、好奇心が強いせいか、しなければ恥をかかずにすむような質問をロシア人にして、平均すれば1日1回そういうような恥をかいたような気がする。そうであれば365 x 36 = 13,140回。ロシア語恥かき道というのがあるなら、私は黒帯どころか、赤帯だ。赤帯というのは武道に流派によっては、6~8段を赤と白の混ざった帯で示し、9~10段を赤帯という。日本でロシア語を教えておられる先生などはロシア人の前で恥などかいたことはほとんどないだろう。恥をかくのは悪いことばかりではない。恥をかいた語彙は完璧に覚える。
На уроке русского языка:
- Иванов, как ты думаешь, слово «брюки» - существительное единственного или множественного числа?
- Брюки? Сверху – единственного числа, снизу множественного.
設問1)和訳せよ。
設問2)ズボン2着、ズボン3着を露訳せよ。
設問3)одни брюкиを使う場合の用例を説明せよ。
2007年01月19日
●ビジネスロシア語出版とテレビドラマ
無事「ビジネスロシア語」が1月18日刊行された。それと出版元の東洋書店の話では、1月31日(水)22時~日本テレビ『ハケンの品格』というドラマで、ビジネスロシア語を学ぶ人がドラマの主体になるらしく、拙著「ビジネスロシア語」がドラマの小道具として使われ、いくつかのロシア語の文章もセリフに入っているとのことである。ドラマの製作者がビジネスロシア語に関して調べ、ネットで私のサイトにたどり着き、参考書として使おうということになったようである。ドラマ作りには一切タッチしていないので、どういう内容かは知らない。ご興味ある向きはどうぞ。
2007年01月21日
●帯研(第43回)
言葉の意味やニュアンスというのは、会話では文脈(置かれている状況)や会話のイントネーションで分かる場合が多い。語法というのは、文脈やイントネーションが分からない場合(翻訳の場合ではイントネーションがほぼ分からないと言ってもよい)に、意味やニュアンスを理解する一つの手段であり、語法に頼りすぎるのは本末転倒である。そのため中級者におってロシア人との会話(単なる会話ではなく、いろいろな人とのいろいろなテーマの会話)を多くすることが意味を理解する上で重要である。
- Какая самая красивая часть речи в русском языке?
- Предлог. Ибо всё у нас делается под благовидным предлогом.
設問1) 和訳せよ。
2007年01月24日
●帯研(第44回)
ロシア語の小説にも会話の部分があり、名のあるソ連ロシア文学の翻訳家であっても、ロシア人と会話の経験がほとんどない人がこの会話の部分をうまく訳せるのか大いに疑問である。無論辞書や文法書でも意味は分かるが、言葉のニュアンスなどは会話を長年にわたって十分鍛錬しないと翻訳するのは無理でなかろうかと思う。ロシア語の通訳では私が実際に聞いた限りでは(80年代に経団連の講演会の通訳されたのを何度か聞いた)、吉岡ゆきさんが一番うまいと思う。これは私だけではなく、私の恩師もそうおっしゃっていた。吉岡さんは翻訳もされており、こういう人が訳した本は間違いないと思う。ただロシア語で読めるので、翻訳は原則として読まない。米川訳がどうだとか、原訳がどうだとかは私には無縁の話で興味もない。翻訳で読んだのはソルジェニーツィンの作品で、それも30年前は収容所の隠語辞典が手に入らなくて、普通の露和では読めないとあきらめたからで、これらも後にロシア語の原本で読んでいる。
ロシア語でのオチの理解は簡単だが和訳が難しい小話の問題。
Урок русского языка в грузинской школе. Учитель:
- Запишите предложение. «Мущина сблизился с женщина в бане». Разберите его по частям. Ну вот ты, Гоги!
- А чего тут разбирать! Женщина – подлежащее, мущина – надлежащее, а баня – предлог!
- Садись, Гоги, четыре.
Гоги выхватывает кинжал:
- Пачиму четыре, пачиму нэ пять?!
- Патаму что баня в данном случае – нэ предлог, «а местоимения»!
設問1) 和訳せよ。
2007年01月27日
●帯研(第45回)
第44回の課題が和露語呂合わせ (17) にあるものと重複しているとのご指摘があった。すっかり忘れていたので申し訳ない。ただあまり神経質になってもと思うし、私の訳はあくまで参考訳で100%正しいとは言えない。参加者はすべて自分のためということで、課題に取り組んで欲しい。手持ちの小話のコレクションが1000ぐらいあり、これから適当に (at random) 目についたものを出題しているので、これからも重複があるかもしれないので、あらかじめお断りしておく。1983年からモスクワに商社マンとして駐在するようになって、習ったロシア語の単語と違う言い回しがいくつかあることに気がついた。口語表現だが、秘書も使うし、一般的な語彙である。一つはпереживатьで「体験する、味わう」という意味だが、露和辞典では他動詞なので補語 (радость, горе) を伴うと書いてある。しかし、耳にするのは、Я так переживаю.と補語なしの表現ばかりである。意味はволноваться, тревожитьсяという意味で、「とっても心配なの」ぐらいか。この補語なしのпереживатьは1960年代ごろにもう一般的だったらしい。つまりチェーホフもトゥルゲーネフもトルストイも知らなかったわけだ。Пока をдо свиданияの意味で使うようになったのもこの頃かららしい。他に、обратноを опятьという意味で使ったり、воображать を важничатьの意味で使うなどある。モスクワに行ったときに気をつけて耳を傾けるとよい。今回の課題は、
В женских журнале объявлен конкурс. На фотографии – взлетевшая с земли космическая ракета. Что бы это значило? Лучшим признан ответ: «Спутник улетел. Можешь приходить».
設問1) 和訳せよ。
設問2) 最後の単語приходитьを完了体に代えることが出来るか?
2007年01月29日
●帯研(第46回)
ジューコフの自伝を読んでいるが、3巻本の第2巻まで読んだ。この本も買ってから15年以上経つ。この5年間に読んだ本は20年前に買った本が多い。エセーニンの詩集(6巻)は昨年読んだが、これはなんと買ってから30年経っている。ロシア語の本は辞書でも、参考書でも、文学関係でも、今読めない(時間的に、あるいは能力的に)と思っても、買っておいたほうがよい。眺めていて、何度かトライしてだめでも、いつか読めるようなときが必ず来る。よけいなおせっかいだが、ロシア文学をいつか原書で読もうと考えている人は、その和訳を読むのを勧めない。ロシア語で読む気がなくなるか、ロシア語で初めて読んでも、最初の何が書いてあるんだろうという、読書の一番大切な楽しみを殺ぐと思うからである。
Интересный факт:
«Му сор» - мой полицейский по-английски, пишется так же, как по-русски – «мусор».
設問1) 和訳せよ。
2007年01月30日
●帯研(第47回)
ロシア語を原書で読めるかどうかの基準というのは、1ページで10回以上辞書を引くかどうかだと個人的には考えている。これ以上だと辞書を頻繁にひきすぎてテキストの内容を咀嚼するところではあるまい。忍耐力のある人でも20回以上だとつらいと思う。ただこの辞書を引くというのは、単語の力点はもとより、ちょっとでも疑問があれば辞書をひくということで、あらかた意味が分かればよいということではない。分からない単語というのは、いつか出てくるわけで、そのとき調べておかなくてもいずれは出てくるものだから、できるだけ早めに意味が取れるようにしたほうがよいのは自明の理であろう。
ロシア語でオチを理解するのは簡単だが和訳が難しい小話。
- Вовочка, разбери предложение, - говорит учительница: «Папа ушёл в гараж».
- Папа – подлежащее, ушёл – сказуемое, в гараж – предлог.
設問1)和訳せよ。
2007年02月02日
●帯研(第48回)
幸い拙著「ビジネスロシア語」の売れ行きがよく、発売後1週間で増刷が決まった。もっと売れて欲しい。本を出版した関係もあって、「ビジネスロシア語」に関するサイトを調べてみた。いろいろな大学で「ビジネスロシア語」という講座があり、某サイトではご親切にも「ビジネスロシア語」会話まで紹介している。ただ気になるのは、講師にはロシア人もおり、講師の先生方のロシア語のレベルは当然高いとは思うが、日露あるいは日ソのビジネスを5年以上(10年以上が望ましいが)経験された方が教えているのであろうか?日露ビジネスの経験もなくビジネス英語と同じつもりで教えているのであれば、随分実態とは違うものとなっているわけで生徒が気の毒である。チェーホフを読まずして、チェーホフについて語れないし、チェーホフの全作品を読んだからと言ってチェーホフ作品の講読を大学で講義できないだろう。同じことはビジネスロシア語にも言えるはずだ。例えば、実際のビジネスでのクレームでは、5W1Hをはっきりさせないと、ロシア側から何寝ぼけたことを言っているのかと言われる。それなのに、あるサイトにあるクレームの会話では、「貴社は何度もデリバリー(商品の納入поставка)が遅れたので、もう取引を止める云々」という会話が出てきたが、1回でも納入遅延があれば、その都度クレームを立てるわけで、具体的に船積状況(船名、日時、港)など詳しくクレームアクトに記入して相手に連絡するのが常識である。このようなあいまいな会話をクレームのつもりでロシア人に言えば、証拠も示さずにいい加減なことをいう奴だという事で、こういう担当者を代えてくれと言われるか、最悪取引停止となり、笑い事ではすまないのである。仮に商社に勤めていたといっても業務部(ソ連室やロシア室も含めて)の管理部門で営業を経験していなければ、実際のビジネスのやりとりを肌で感じたことにはならないのではないかと思う。日露のビジネス経験もなく教えているのであれば、ビジネスロシア語の看板を下ろして、一般ロシア語講座とすればよい。それはそれで役に立つこともあろう。実際の商談の流れについて書こうかと思ったが、長くなるので次回にする。今回は隠語に関する小話を一つ。多分勘や類推で正解に近いものを書けるかもしれないが、これらの隠語が載っている隠語辞典を見つけるのは大変だろう。今回は勘や類推でもよいので、訳にトライしてほしい。
Судья просит подсудимого описать произошедший случай. Подсудимый встаёт и начинает рассказывать: «Ну что три копейки диферить, попусту фармазонить, зашли мы с корешом Федькой в кабак, взяли два фанфурика, вмазали. Вышли – штифтами зыркаем, глядим – две клюшки киряют, штанами шуршат. Ну мы их за рога и в стойло на укол. А тут «кубики», баня свободная. Кости на сиденье кинули, поехали, рули – верти. Сперва по просеке Ленина, потом на хауз-камьюнике,а там всё пучком. Три свечурки горят, патефон играет, ну мы туда. И ту менты землю роют, шифером шуршат. Дверь с петель сняли, тут нас и загребили». Судья возмущён: «Подсудимый! Что за жаргон в зале суда?». Встаёт адвокат и говорит судье: «Заткни пасть, волк позорный. Чувак дело молотит».
2007年02月06日
●帯研(第49回)
帯研参加者の高橋さんが、ついにロシア語初心者向けに露英和でアネクドートを自分のサイト「アネクドートの小窓 (http://anecdotenokomado.blog92.fc2.com/)」に掲載を始めた。同氏にはこの他に〔英語徒然日記~nikitaの窓~(http://d.hatena.ne.jp/nikita-diary/)〕というサイトもある。ロシア語(特に会話)が上達するためには、アネクドートが一番というのが私の持論であり、和文だけではなく、露和英で記載することにより、世界に発信することになったわけで慶賀に耐えない。ロシア語の原文があるので、誤訳があるかどうか多くの人にチェックされているわけだが、間違ったらすぐ訂正すればよいと思う。こういう風にロシアの大衆文化の紹介を世界(私はせいぜい日本だけだからうらやましい限りである)に発信するという試みは高く評価したい。世界とは言わず、日本国内で十分なので後に続かれる方が出ることを心から祈っている。
拙著「ビジネスロシア語」は日露貿易に関わるビジネスマンを対象としているので、日露ビジネスそのものは基本的に理解しているだろうという前提で書いている。ただ帯研には学生や主婦の方も、あるいはビジネスに無縁の方もいると思うので、実際の商談の流れについて書いておく。買手がある品物や製品が買いたいといって、それについての条件(技術条件や支払条件、数量)を記載したものが引合запросであり、それに対して売り手(メーカーや商社)が、その条件に類似の条件を提示したのがオファーofferまたは見積предложениеというものである。これで商談がまとまれば、ビジネスロシア語は必要ない。お互いにカタコトの英語が出来ればよい。しかしこのように、中古車や使い捨て注射器のように、だれもがどういうものかを知っていて、値段が安くて納期がOKなら成約(契約)するという商品は少ない。設備などでは、まず売り手が買手にプレゼンテーション(会社概要、製品紹介、特に特徴と長所の説明)презентацияを行う。相互に会社の業務内容、売り上げ、純利(税引き後)、業界シェアなどを説明する。プレゼンテーションには技術用語が頻出する。ビジネスロシア語というのは、専門用語ができないとお話にならないわけである。買手がメーカーを価格などの条件から2、3社に絞込み、テクネゴ(技術交渉 technical negotiations)を行い、技術的に問題ないか双方でチェックする。それでOKなら次にようやくコマネゴ(商談 commercial negotiations)となる。ここで納期、品質保証、支払い条件、価格が合意されることになるわけである。こういう商談の流れを大学のいわゆる「ビジネスロシア語」講座で教えているのだろうか?ビジネスロシア語には科学技術ロシア語などの専門用語の知識(魚のビジネスなら水産用語、木材なら林業用語)、専門用語を日本語、英語(ロシア人の提出用の日本のメーカーのカタログは英語で記載されていることが多いので)、ロシア語で理解することが不可欠だということがお分かりであろう。では初心者がビジネスロシア語の勉強をするにはどうしたらよいか?拙著を買って読むほかに(コピーや回し読みというのはとんでもない話である)、数字(年号、月日、時間、億などの金額)の和訳露訳が瞬間的に出来るようにする。具体的には電車や新聞の広告で特殊なものを除き基本的表現、数字表現を露訳する練習をするとよい。今回の課題は、
設問1)次の文で正しいもののみ訳せ。
1) Я люблю Достоевского, так же, как Толстого.
2) Я люблю писателя, как Толстой.
3) Я люблю Толстого как писателя.
4) В среде таких органических растворителей как сероуглерод
設問2)наを使って言い換え事ができると思うなら、示せ。
a) Он в плаще.
b) Она в темных очках.
2007年02月08日
●帯研(第50回)
ついに50回を迎えた。参加者の御支持の賜物である。すでに100回分の課題は作ってある。せっかくだから後50回は続けて一応100回で終わりとしたい。100回以上やっても、出題が同じようなもので、ただ和訳せよでは参加者も飽きるし、第一勉強にはなるまい。私の出した課題と回答や解説は自分で保存しているが、参加者の回答やそれに対する私のコメントは保存していない。ご興味ある方は自分で保存願う。会話力разговорная практикаを向上させるために、ひとつ勧めたいことがある。それはオチの分かりやすくて、隠語や卑語のない会話の多い小話を1日1話ロシア語のテキストを手書きするかコンピューターにインプットしてから和訳する。これを丸暗記してしまう。そして1行ずつロシア語からでも日本語からでも日本語やロシア語に訳す練習をする。こうすればロシア語らしい会話の文章が自然に出てくるようになる。会話集にある文例は上級者には役立つが、中級者には前後のつながりのない短文が多いので、その文章が使える前段階の文章が分からないので、使えないことが多い。今回の課題は、
Вор спрашивает чёрную кошку, которая перебежала ему дорогу, когда он шёл на дело: «На кого работаешь?»
- Мур! – ответила та.
課題1)オチが分かるように訳せ。
2007年02月09日
●帯研(第51回)
読書は個人の好みで何でもよい。チェーホフやブーニンの短編からはいるのもよいし、いろいろなものをSFも含め乱読するようにする。筆者が読んで面白かったもの及びロシア文学をやる上で筆者の考える必読書(*で記載した)を挙げる。詩は大して読んでないので入れていない。詩は今後の課題である。マスコミ、小話、会話で引用される詩(特にプーシュキン、レールモントフ、アフマートヴァなど)があるので、それはチェックしておく必要がある。どういうのが引用されやすいかは、ある程度まとめてから発表するようにしたい。有名なチェーホフの戯曲が入っていないのは、人間の心理を描く戯曲と言うのはあくまで素材であり、通常は俳優や監督が自分の解釈を入れて劇として完成させるわけで、素材のまま読んでも、読み手にそういう素養というかある程度の解釈できるロシア語のレベルがなければ面白さは分からないと考えるからである。無論チェーホフの戯曲はすべて読んだが、これらは劇として鑑賞すべきものだと思う。
Аксаковアクサーコフ Записки об уженье рыбы釣魚日記, Записки ружейного охотника оренбургской губернииオレンブルグ県狩猟日記, Семейная хроника家譜, Детские годы Багрова-внукаバグローフ孫の幼年時代
Библия聖書 *
Благовоブラゴヴォー Рассказы бабушкиおばあさんの物語
Булгаковブルガーコフ *Мастер и Маргарита巨匠とマルガリータ
Бунинブーニン Суходол涸谷
Виттеウィッテ Воспоминания回想録
Войновичボイノーヴィチ Жизнь и необыкновенные приключения солдата Ивана Ченкина兵士イワン・チョンキンの生涯と不思議な冒険, Москва 2042モスクワ2042年
Вострышевヴォーストルィシェフ Московские обывателиモスクワの住人
Гаршинガールシン Четыре дня 4日間, Attalea princes
Герценゲールツェン *Былое и думы過去と思索
Гиляровскийギリャローフスキー Москва и москвичиモスクワとモスクワの人々
Гогольゴーゴリ Тарас Бульбаタラス・ブーリバ, Ревизор検察官, *Мертвые души死せる魂
Горькийゴーリキー *В людях人々の中で, По Русиロシア中を, Детство幼年時代, *Жизнь Клима Самгинаクリム・サムギンの生涯
Григоворичグリゴローヴィチ Литературные воспоминания文学回想
Довлатовドヴラートフ Наши我らが一族
Достоевскийドストエーフスキー Неточка Незвановаニェートチカ・ネズヴァーノヴァ, Село Степанчиково и его обитателиスチェパーンチコヴォ村とその住人, *Преступление и наказание罪と罰, Бесы魔族, *Братья Карамазовыカラマーゾフの兄弟
Дудинцевドゥヂーンツェフ Белые одежды白衣
Дуроваドゥーロヴァ Записки русской амазонкиロシアのアマゾンの手記
Есенинエセーニン Автобиография略歴, Сергей Есенинセルゲイ・エセーニン
Жванецкийジュヴァニェーツキー Миниатюрыコント集
Зайцевザーイツェフ Дом в Пассиパッシーの建物, Аннаアンナ
Зощенкоゾーシシェンコ Перед восходом солнца朝日が昇る前に
Искандерイスカンデール Сандро из Чегемаチェゲム村のサンドロ, Стоянка человека人間の停車場, Детство Чикаチークの子供時代
Каверинカヴェーリン Ночной сторож, или Семь занимательных историй, рассказанных в городе Немухине в тысяча девятьсот неизвестном году19xx年ニェムーヒン市で噂となった7つの愉快な出来事, Верлиокаヴェルリオーカ
Карамзинカラムジーン *История государства российскогоロシア国史
Короленкоコロリェーンコ История моего современника我同時代人の歴史
Крестовскийクレストーフスキー Петербургские трущобы ペテルブルグのスラム
Крыловクルィローフ *Басни寓話集
Ключевскийクリュチェーフスキー *Курс русской историиロシア史講義
Купринクプリーン Яма魔窟, Гамбуринусガンブルヌス
Лесковレスコーフ *Соборяне僧院の人々, Очарованный странник魅入られた放浪者
Мельниковメーリニコフ *В лесах森の中で
Некрасов Вニェクラーソフ. В окопах Сталинградаスターリングラードの塹壕で
Пастернакパステルナーク *Доктор Живагоドクトルジバゴ
Пикульピークリ Исторические миниатюры歴史の小品
Помяловскийポミャローフスキー Очерки бурсы神学校ルポ
Пришвинプリーシュヴィン Календарь природы自然の暦
Пушкинプーシュキン Повести покойного Ивана Петровича Белкина故イワン・ペトローヴィチ・ベールキン物語, *История Пугачеваプガチョフ史
Пыляевプィリャーエフ Замечательные чудаки и оригиналы素晴らしき奇人変人
Раскинラースキン Энциклопедия Хулиганствующего Ортодокса暴走正統派百科
Репин Далекое близкое遠くて近きもの
Романовロマーノフ Застольная история государства Российскогоロシア国食卓史
Салтыков-Щедринサルトィコフ・シシェドリーン История одного городаある町の歴史, Пешехонская старинаペシェホンの古, господа Головлевыゴロヴリョーフ家の人々
Севера Э.セヴェーラ Легенды инвалидной улицы片輪通りの伝説, Мужской разговор в русской банеロシア式蒸し風呂での男の会話
Скороходовスコロホードフ Разговоры с Раневскойラニェ-フスカヤとの対話
Соловьев С. М.ソロヴィヨーフ *История России с древнейших времен古代からのロシア史
Соллогуб Тарантас旅行馬車
Сологубソログープ *Мелкий бес小人(しょうじん)
Станиславскийスタニスラーフスキー Моя жизнь в искусстве芸術における我生涯
Толстой А.К.トルストーイ Семья вурдалака吸血鬼一家, Артемий Семенович Бервенковскийアルチェーミー・セミョーノヴィチ・ベルヴェンコーフスキー
Толстой Л.Н.トルストーイ Детство幼年時代, *Анна Каренинаアンナ・カレーニナ, *Война и мир戦争と平和, Холстомерホルストメール, Крейцерева сонатаクロイツェルソナタ, Отец Сергий神父セールギー, Воскресенье復活, Фальшивый купон偽クーポン
Тургеневトゥルゲーニェフ Дневник охотника猟人日記, Дворянское гнездо貴族の巣, Отцы и дети父と子, Мумуムムー, Асяアーシャ, Первая любовь初恋
Успенский Г.И.ウスペンスキー Нравы Растеряевой улицыラスチェリャーエヴァヤ通りの気質
Утесовウチョーソフ *Спасибо, сердце心よ、ありがとう
Чеховチェーホフ Ионычイオーヌィチ, Палата № 6第6号病棟, *Попрыгуньяはねっかえり, Человек в футляре殻男, В овраге谷間で, Черный монах黒衣の僧, Каштанкаカシュターンカ, Шуточкаちょっとしたいたずら
Чуевチューエフ 140 бесед с Молотовымモロトフとの140の会話
Чуковскийチューコーフスキー От двух до пяти二つから五つまで、Живой как жизнь実生活のように生きた(言葉)
Шаламовシャラーモフ *Колымские рассказыコルィマー物語, Очерки преступного мира犯罪世界ルポ
Шмелевシュメリョーフ *Лето господне主の夏, Богомолье巡礼
Шолоховショーロホフ *Тихий Дон静かなるドン, Судьба человека人間の運命
Щегловシシェグローフ Фаина Раневскаяファイーナ・ラニェーフスカヤ
Эренбургエレンブルグ Оттепель雪解け; Люди, годы, жизнь人々、歳月、人生
今回の課題は小話ではないのでオチを考えて貴重な時間をつぶさないように。
- Она всё тут с артистом одним ездит.
- С каким артистом?
-Да не знаю...Говорят, что артист.
設問1)和訳せよ。
設問2)даとнеが一つの文に混在する正しい文を作れ。二つの対話にしてもよい。
2007年02月10日
●帯研(第52回)
これまでロシア語でソ連ロシア文学を560冊読んだわけだが、私の選んだベストテンを上位から紹介したい。
1)ドクトルジバゴ Доктор Живаго、パステルナーク Пастернак作
2)コルィマー物語Колымские рассказы、シャラーモフШаламов作
3)アンナ・カレーニナАнна Каренина、トルストイЛ. Толстой作
4)カラマーゾフの兄弟Братья Карамазовы、ドストエーフスキーДостоевский作
5)戦争と平和Война и мир、トルストイЛ. Толстой作
6)罪と罰Преступление и наказание、ドストエーフスキーДостоевский作
7)主の夏Лето господне、シュメリョーフШмелёв
8)ロシア式蒸し風呂での男の話Мужской разговор в русской бане、セヴェーラСевела
9)チェゲム村のサンドロСандро из Чегема、イスカンデールИскандер作
10)回想録Воспоминания、ウィッテВитте作
今回の課題は、
- Это вы подбили танк?
- Я.
- А вы знаете, что это был советский танк?!
- Я, я.
設問1)訳せ。
設問2)オチを説明せよ。
2007年02月12日
●帯研(第53回)
学習者の手近にロシア人がいれば、そのロシア人に自分の作った露文をチェックしてもらうというのは自然なことだが、ロシア人が見ているのは露文そのものがロシア語としておかしくはないかということである。あるいは親切なロシア人なら自分ならこう書くと直してくれるも多い。ただ元の和文のニュアンスが分かるほど日本語が出来るロシア人はそんなにいないということを頭に入れておくべきだ。ロシア人から「この露文はロシア語としておかしい」と言われても、案外テニヲハ程度のミスやそのロシア人の好みに合わないということで、本質的には原文の和文とそれほど違わないということもよくあることだ。聞けるなら、文法のミスか、標準語法ではないのか、そのロシア人の好みなのかよく確認する必要がある。無論そこまで聞くにはロハでということではなく、授業料を払うべきだとは思う。
Самый короткий анекдот:
Еврей – дворник.
設問1)オチを説明せよ。
2007年02月15日
●帯研(第54回)
日本の大学のいろいろなロシア関係の先生方がロシア全般について一冊にまとめて書いてある本で、ある女性の先生が、ロシア人と酒について書いていた。「いい若い者が昼間っからビール瓶片手にビールで酔っ払っているとは情けない」という趣旨だったと思う。ロシア人と酒について何か根本的に誤解していることがわかる。ビールで酔っ払うロシア人というのを見たことはない。ビール瓶を持って酔っ払っているなら、多分ウオッカをしこたま飲んで、のどが渇いたのでビールを口直しに(せいぜい迎え酒に)飲んだというのが普通だろう。日本人の感覚で考えてはいけない。ロシア人が酔っ払うくらい飲むのだから、まあ二人で2本のウオッカ(500 ccずつ)を30分くらいで空けたのであろう。日本人で清酒の一升瓶を一晩で飲んだと自慢しても、ロシア人にとっては別に驚くにはあたらない。問題なのは単位時間とウオッカの量である。くれぐれもロシア人に酒で勝負しようなどと馬鹿なことは考えないようにしよう。今回の課題は技術関係が分からないと難しいかもしれない。技術関係はビジネスロシア語では多用されるし、ロシア語のプロを目指そうという人は、どんな仕事でも、ポルノであれ、技術であれ、訳せといわれたら訳すことができるように研鑽を積む必要があるのは言うまでもない。訳せるが、ポルノは品がないから訳さないというのは自由だ。今回は技術的な小話を。
Плакат: «Сталевары! Ваша сила в плавках!»
設問1)オチが分かるように訳せ。
2007年02月16日
●帯研(第55回)
ロシア語に関して疑問が湧いてくるようになれば、ロシア語の力がついてきている証拠である。ただ疑問が出てくるようになるきっかけをつかめない人が多い。気取らずに文字通りどんなことでもロシア語で疑問に思ったことは?マークをつけてリストアップしておく。それからまず辞書や文法書で自分の力で答えを見出すよう努力をすべきだ。その過程でわき道に入っても、それはそれで後で役に立つ知識がつくことになる。自分で何もしないで人から答えを聞こうと甘く考えても、そういう答えは決して身にはつかない。さて今回の課題は簡単なものを、
Гордый отец позвонил в редакцию одной газеты и сообщил, что его жена родила тройню. Однако редактор не понял его и прокричал в трубку.
- Вы можете повторить?
- Ну уж дудки! С меня хватит троих.
設問1)和訳せよ。
設問2)1行目позвонилを不完了体に代えることは可能か?
2007年02月18日
●帯研(第56回)
サイトでロシア語関係の大学の講座を見ていると、通訳コースや同時通訳コースというのがある。生徒の人気を集めるためだろうが、ロシア語の初歩から始めた生徒がこういうレベルに2年や3年でなれると考えるのはおかしいし、そう考える生徒も無論おかしい。ロシア語はそれほど甘いものではない。中学で始める英語ですら、ごく一部の人たち(高校時代に留学したとか)は別にして、大学で同時通訳のコースを受講できる資格のある人はそんなにいまい。ましてやロシア語はである。生徒に気を引くばかりで実利のないコースを設けるくらいなら、自己通訳コースというのを設ければよい。つまり自分の言いたいこと(あるいは自分の口癖)や自分のよく使う日本語の構文(「~じゃない」とか「~が大事よねだ」とか「~かもね」の類)をロシア語にする練習を徹底的にする。自分の好きな分野(テレビでも、歌でも)ならロシア人に説明できるようなレベルに鍛えるというふうにすればよい。構文が使えれば後は単語の入れ替えだから実戦向きだと思うが如何?チェーホフやドストエフスキーの講読は教えられても、生徒にこのようなロシア語を教えられる先生がほとんどいないだろうとは思うが。
Штирлиц стрелял из двух пистолетов по очереди. Очередь за пивом заметно редела.
設問1)オチが分かるように訳せ。
2007年02月21日
●帯研(第57回)
内向的な人と外向的な人のどちらがロシア語に向いているかと聞かれたら、語学は何年もかけてものにするものだから、内向的であっても、外向的であっても根気のある人が最後に笑うことになると思う。一般的に外向的な人は最初の2、3年ぐらいは進んでロシア人との会話もするし、表面的なロシア語の学力がついているように見えるが、外的刺激がなければ勉強を続けないような人が多い。通訳という職業はある意味で自分を殺すわけで、自分の言いたいことではなく、人の言うことを通訳するわけだから、程度問題だが内向的な人が向いていると思う。内向的というよりは、出しゃばらず、常識のある人ということになる。そういうわけなので、自分が外向的でないから通訳はできないと一人勝手に決めて、翻訳をと考える向きは考え直して欲しい。翻訳だけでも通訳だけでも食えないのに、どちらかだけに限ってしまうとますます食えなくなってしまうのはお分かりだと思うし、通訳の経験が翻訳に、翻訳の経験が通訳に役立つのだから。
Чапаевцы отбили у белых полустанок. При осмотре трофеев Василий Иванович и Петька обнаружили цистерну со спиртом.Чтобы бойцы не перепились, подписали C2H5(OH), надеясь, что бойцы химию знают слабо. Наутро все были «в стельку». Чапаев растормошили одного и спрашивает:
- Как нашли?
- Да просто. Искали мы, искали, вдруг смотрим – что-то на цистерне написано, а в скобках – (ОН). Попробовали – точно он.
設問1)和訳せよ。
2007年02月23日
●帯研(第58回)
ロシア語の文法を独立したものとして教えるのではなく、いかに実戦で応用できるかという観点から、ネットで見かけるようなロシア語の文法書をただ和訳するのではなく、教える側が文法をよく消化して学習者に教えることが大切である。特に文法が会話力向上にどう役立つか具体例をもって説明すべきである。今回の課題は、
Встречаются два мужика на том свете.
- Ты как умер?
- Замёрз, а ты как?
- От смеха умер.
- Это как?
- Был я у лобовницы, звонок в дверь, муж пришёл. Я в панику. Она ему в дверь мусорное ведро подала, пока он ходил, я спокойно оделся и ушёл. Прихожу домой, звоню, а жена мне в дверь ведро протягивает. Я всё понял, ворвался в квартиру, везде все перерыл, а никого не нашёл. Сел на диван, смеяля, смеялся, от смеха и умер.
- Дурак, заглянул бы в холодильник, оба бы жили.
2007年02月24日
●帯研(第59回)
拙著「ビジネスロシア語」の書評が初めて出たので紹介したい。JICインフォメーションwww.jic-web.co.jpというサイトのTOPICSの下のJICインフォメーションをクリックし、新刊のご案内というのに載っている。ご興味のある方はどうぞ。第2刷も出版され、2、3振り仮名のミスタイプを訂正した。さて内向的な人と外向的な人のどちらがロシア語に向いているかと聞かれたら、語学は何年もかけてものにするものだから、内向的であっても、外向的であっても根気のある人が最後に笑うことになると思う。一般的に外向的な人は最初の2、3年ぐらいは進んでロシア人との会話もするし、表面的なロシア語の学力がついているように見えるが、外的刺激がなければ勉強を続けないような人が多い。通訳という職業はある意味で自分を殺すわけで、自分の言いたいことではなく、人の言うことを通訳するわけだから、程度問題だが内向的な人が向いていると思う。内向的というよりは、出しゃばらず、常識のある人ということになる。そういうわけなので、自分が外向的でないから通訳はできないと一人勝手に決めて、翻訳をと考える向きは考え直して欲しい。翻訳だけでも通訳だけでも食えないのに、どちらかだけに限ってしまうとますます食えなくなってしまうのはお分かりだと思うし、通訳の経験が翻訳に、翻訳の経験が通訳に役立つのだから。
自分にとって何か面白いことやためになるなと思うことがあったら、エクセルにでもインプットしてデータベース化すれば、何年後かに役立つ可能性がある。ロシア語の語彙にしても然りである。集合知というのは、多くの人の知恵を集めるという意味もあるが、自分にも日々こつこつ何気なく集めた知識がいつか役に立つ、そういう集合知もあると思う。
今回の課題は、比較的簡単なものを。
Два ковбоя по прерии скачут.
- Джо, когда ты куришь, то смахиваешь на идиота.
- Хорошо, я буду смахивать в другую сторону.
設問1)オチが分かるように訳せ。
2007年02月28日
●帯研(第60回)
ジューコフの自伝を読んでいて、ベルリン陥落のところでстремительная атакаという表現を見た。別になんてことはないもので、「集中した攻撃」、「素早い攻撃」というようなイメージが頭に浮かぶ。アマ(素人)ならこういうイメージだけで読み進んでよいが、通訳でも翻訳でもプロになろうという人はこれで止めてはいけない。ロシア語をイメージだけで読むのは考えるほど難しいことではないし、そのイメージ自体が感覚だけで正しい文法や語彙の理解に支えられていないと、誤訳を一生引きずることになる。理解した気になるというのが一番怖いということにアマは往々にして気がつかない。アマはそれでも実害はないが、プロは金をもらっている以上それでは済まない。プロには文脈に沿った的確な表現で日本語あるいは(日本語からなら)ロシア語にできるかが要求されているのである。そのためには露和だけでなく、訳に疑問が出たら露露辞典を引く癖をつけるべきである。Стремительный にはочень быстрый, отличающийся быстротой движенийとあるので、例えば「迅速な攻撃(これは露和にも載っている)」や「疾風怒濤の攻撃」というような訳を思いつくのもよい。全部を露露で引く必要はないし、そういう人は中級者とすら呼べない。取りあえずは訳する上で気になったところを辞書で見ればよい。露和は特定の文脈の訳ではなく、一般的な(多くの文脈で通じるような)訳が載っているということをよく理解し、露和に載っている訳を金科玉条とするのは辞典の編集者の意図とは異なるということをよく理解すべきだ。プロや上級を目指す人は露和に頼りすぎず(活用はするものの)、露露を頼り、また日本の文学や評論をよく読んで日本語の語彙を高めるのも重要であり、自動的に日本語訳やロシア語訳が出るように訓練を積むべきである。究極的には辞書を引かずに適訳が出るように努力すべきである。通訳はともかく翻訳者は辞書を引く時間があるので、そういう訓練は必要ないと考えるのであれば、それは間違っている。技術関係などの翻訳では提出日というのが設定されているわけで、適訳が早く出れば、訳全体のスピードが上がり、必ずといっていいくらい出てくる難訳語に対しても、余裕をもって調べることが出来るというものである。
Ребёнок подбегает к матери и спрашивает:
- Мама, разве вытрезвитель сгорел?
- Ты что, сынок, нет.
- А почему папа идёт по улице и поёт: «Враги сожгли родную хату».
設問1)和訳せよ。
設問2)オチを説明せよ。
2007年03月02日
●帯研(第61回)
1985年頃から1990年までオチの面白そうなアネクドートを集めて、ロシア語原文とその和訳というふうに対訳本のように560編ぐらいコレクションができた。今思えば解説もなく、オチの理解も訳も深みがなくお恥ずかしい限りだが、当時は本になるかもしれないと思い全部コピーして、10の出版社に送付したら、そのうち2社から返事が来た。一つはナウカからで、アネクドートの対訳本は出せないが、あなたは商社マンだし、ちょうどいいビジネスレターの参考書があるので訳して見ないかといわれ、それが「ロシア語ビジネスレター」の編訳となった。例文は社会主義国向けなので使えず、すべて手持ちの実際のソ連の公団からのビジネスレターと差し替えざるを得なかったのを思い出す。もう一つの出版社は日本放送出版協会(NHK)からで、会いたいというので編集者と会った。アネクドートは出せないが(まあ硬いところだからあきらめてはいたけれど)、モスクワ駐在の経験があるなら、ラジオ講座の後ろに半年エッセーを書いてみないかと言われ、1991年2月(ウオッカの話)、3月(アムール、アムール)、5月(ウハーザラターヤ)、6月(車の話)、9月(庭のシャンピニオン)、11月(カムチャッカの湯煙)が掲載され、初めて原稿料12,000円/編をもらって感激したのを今でも覚えている。高橋さんが「アネクドートの小窓」でコンピューター関係の小話を英和で紹介しているが、100編ぐらい溜まったら(500編ぐらいが望ましいが)、その中で一般向けするものをいくつか選んで、コンピューター関係の雑誌社か英語関係の出版社に送ってみたらよい。コンピューターや語学の雑誌に硬い内容の記事ばかりでは読者が飽きると編集者は考えるだろうから、小話くらいあってもよしと思うかもしれない。採用されなくても私のように別の道が開けるかもしれない。小話の楽しみ方は各人各様だが、やはり出版を考えるなら一般読者のことも考えて、あまりオタッキーなものは、少なくとも最初は控えたほうがよいかもしれない。高橋さんのコラムの文章もなかなかよいのでトライしてみたらよい。Попытка не пытка.(ダメモト)という諺もある。
今回の課題は簡単なものを。
Допрос новичка начальником полиции.
- Ну что, парень, тебе известно, что такое детектор лжи?
- Да, комиссар. Я уже два года женат на одной из них.
設問1)最終行を Я женился на одной из них.とすることが可能か?
設問2)オチが分かるように訳せ。
2007年03月04日
●帯研(第62回)
ビジネスロシア語の定義については各人各様だが、一般的にはNHKの有名な杉田先生の「やさしいビジネス英語」の内容に近いと思ってもらってよいのではないか。つまり商取引(商品の売買)に使われるロシア語一般となる。ただ私が英語でビジネスをしたのは東ドイツからのアカウオの輸入とジャガイモ倉庫を米国のメーカーとソ連に売り込んだぐらいなので、ビジネスロシア語と違ってビジネス英語の実際はよく知らない。ネットで各大学のビジネスロシア語の内容を見ると、明らかにビジネスロシア語ではなく、マクロ経済ロシア語ではないかと思うものもある。別に役に立たないとは思わないが、普通に学生が期待するビジネスロシア語とはかけ離れているのではないかと思う。話は変わるが、拙著「ビジネスロシア語」で読者に特に読んでもらいたいのは、ビジネスロシア語の会話やレターの部分というよりは、ビジネスにおける動詞の活用法である。これをよく理解すれば、会話力が格段にアップすると思うが、何せ書く側であって、拙著で勉強する側ではないので、読者の反応が知りたいと思う。これについて何か一言書いていただければ有難い。
- Моя жена убежала с моим лучшим другом.
- Он красивей и моложе тебя?
- Не знаю, я его ни разу не видел.
設問1)オチが分かるよう訳せ。
2007年03月05日
●帯研(第63回)
拙著「ビジネスロシア語」は中級以上のレベルの人には内容が簡単すぎると思われるかもしれない。ロシア語関係ではレベルを下げないと売れないという事情があるのは確かだが、授業などのチェーホフなど文学の講読と一緒にしてもらっては困る。講読は露文読解で、訳したものを、さらに露訳するということは普通ない。無論これをすればロシア語の実力が大幅にアップするのは間違いない。逆に拙著の例文や関連語句の日本語の部分を100%瞬時にロシア語にできるのであれば、拙著を読む必要はない。もし80~90%ぐらいであれば、プロの商談の通訳としては使えない。なぜかはお分かりであろう。商談の中で80~90%理解できるというのは、10~20%理解できないということで、そう人に商談を任せたり、通訳してもらうわけにはいかないからだ。つまり肝心のところが分からない可能性が出てくるからである。100%ロシア語にできてもそれはビジネスロシア語最低限が分かっているという事で、次にその商談の特殊な専門用語(技術用語が多い)をマスターしなければならないなど難関は続く。出版社の編集者の考え方次第だが、読者のご要望があれば、ビジネス会話力アップ用に構文(科学技術用語をベースに)や会話について「続ビジネスロシア語」というのをいつでも書く用意はある。今回の課題は、
В поезде посол и епископ поспорили, у кого из них более высокий ранг.
- Меня титулуют «Ваше превосходительство», - доказывал посол.
- А меня называют «Ваше преосвященство», - парировал епископ.
Сидевший с ними в одном купе коммивояжер сказал:
- Из нас троих самый высокий ранг у меня. Когда я прихожу к покупателю, он встречает меня словами: «Боже мой! Опять вы!».
設問1)オチが分かるように訳せ。
2007年03月11日
●帯研(第65回)
ロシア語の勉強が面白いと思うから続けられるのであり、面白いと思うのは学業の進歩が実感できるときである。確かにロシア語をマスターするには文法と語彙を措いてないが、目的に応じて勉強のコツというのはある。これまでのロシア語の学習は革命前のロシア文学の露文読解に重点がおかれていたように思える。ソ連時代にはそう簡単にソ連に行けなかったし、革命前の文学なら資料がそろっていたからでもある。しかし、そのおかげでロシア人庶民の文化に根ざす口語の理解が遅れてしまった。この口語および庶民文化の理解に努めれば、ロシア人同士で普通に話す言葉が理解でき、ロシア人とのコミュニケーションも一段と深まり、ロシア語も長足の進歩を遂げるのは間違いない。ソ連崩壊からロシアとの往来は簡単になり、本、DVD、CDの類も簡単に手に入るようになった。あとはちょっとした手助けがあればよいだけである。この帯研が微力とはいえお手伝いとなれば幸いである。今回の課題は、
Сара рекомендует своему мужу, выезжающему в командировку в Одессу: «Остановишься у Раечки, сэкономишь суточные». Через месяц она получает от мужа телеграмму: «Сэкономил суточные, Раечка потеряла месячные!
設問1)オチが分かるように訳せ。
2007年03月16日
●帯研(第66回)
ロシア語の日本人研究者でロシアやロシア人を活字でしか知らないという人(旅行や3年未満の短期留学というのも、図書館通いが主では同様であろう)は、ロシア語の読みのほうはプロだからかなりのものだが、受身のロシア語(読む、聞き取る)のうち、聞き取る力は不足しているし、能動的なロシア語(話す、書く)はそういう環境に触れた経験が不足していることから不得手であることが多い。読むのに偏る勉強ばかりしていると、自分のロシア語の実力が検証できないことになる。文法を学んでも受動的な読みばかりではなく能動的な話すや書く能力がなおざりになっている。このような人たちは一見読んで100%理解したと思う文章を日本語に訳して、それを露訳してみると20~30%もできないことに気づくはずだ。ロシア語を教えるだけで実戦で使ったことのない人は自分の真の実力が分からないままでフラストレーションが溜まるばかりではないか。一方ビジネスでロシア語を使う人は、受動的なものでは聞き取る力と能動的な力である話すのは十分ではあるものの、読む力や書く力が不足していることが多い。その上、日本でロシア語の研究をしている人たちは、ロシア人について具体的なイメージを持てない。ロシア人といってもいろいろで、数多くのいろいろな職種のロシア人と接触する必要が語学専門家には必要であろう。日本に来るロシア人はある意味では日本に興味を持っているか、利害関係のある人であり、ロシア語でも分かりやすく話してくれる。そういうロシア語ばかりに慣れて通訳も大丈夫だなと思って、ロシアに行って日本など何の興味もないロシア人のロシア語に触れてみると、これがロシア語かと思うぐらい全然分からないことがある。つまり本場のロシア語の洗礼を受けることであり、それが実力アップのチャンスでもある。
Молодая женщина спрашивает пожилого мужчину:
- А сколько вам лет?
- Восемьдесят.
- А я бы вам не дала.
- А мне и не надо.
設問1)オチが分かるように訳せ。
2007年03月20日
●帯研(第68回)
ネットのニュースは何が起こっているのかをリアルタイムで知るには便利であるが、中味を詳しく見ても簡潔な事実の羅列に過ぎない。原因と見通しについてさまざまな意見を知るためには、信用のおけるマスコミ(新聞なら社説、週刊誌や月刊誌の記事)を読むことになる。現代人ではここまでの時間がない。せいぜいテレビの特集を見るくらいであろう。ロシアが専門といっても、またロシア自体を知るためには、現代では世界全体のロシア、日本やその他の国とのロシアという位置づけで見ないとより正確な情報は分からない。しかもだれにとっても時間に限りがある。そこで私はCNNのニュースを1日30分、タイム誌(大体ページ数50ページぐらいなので)を1日10ページ(小1時間で読む)ということを20年以上続けている。両方ともロシアだけでなく世界情勢を知るには絶好の教科書である。新聞は読売新聞がロシア関係に強いと思うので読むのと、ニュースはNHKで、NHKスペシャルをよく見るぐらいである。ロシアのマスコミは偏向があると思うので読まないし、見ない。今現在の出来事すべての原因を究明し的確に予想するというのはだれにも不可能だから、ロシアに関する私の興味がある範囲を9世紀から2002年頃までとしている。その歴史的時期(ロシア史のほとんとであろう)について何人かの納得できると感じた著者のものをロシア語で読んできた。英語や日本語のものはロシア関係ではあまり読まない。ロシアに関する出来事の一次資料に近いものはロシア語で書かれているはずと考えているからだ。
Ст.М-2-69
- В какой институт принимают без экзаменов?
- В Институт Склифосовского.
設問1)和訳せよ。オチを別に解説してもよい。
●帯研(第69回)
ロシア語の勉強にはある意味でへたな想像力は不要である。分からない語彙の意味を想像力で補うクセをつけると、辞書を引こうという気が起きなくなる。もし間違った解釈をすると一生それを引きずることになる。少しでも分からなかったら辞書や文法書をひもとき、解答が出ないときには?マークをつけてリストアップしておくのがよい。辞書は鍛えて強く(よく)なると私は考えている。露和ではスペースがないからしないが、露露で用例の多い辞典は用例や解釈を全部読んで、適切だと思う和訳をつけたり、自分なりの索引を作ったりして活用するようにしている。
- Я прибыл к вам из Кантемировской дивизии, а там дураков не держат.
解説)和訳せよ。オチを解説せよ。
2007年03月22日
●帯研(第70回)
ロシア語の語勘を高めるために、ロシア人の日本専門家の書いた日本関係の本を若い頃はかなり読んだ。年鑑Японияなど23冊ぐらい徹底的に読んだ。今になって思えば功罪相半ばというところではないかと思う。ロシア語で日本の事例を説明しているので、ロシア語の動詞句の使い方がよく分かる反面、日本独特のものをロシア語で説明する際にはかなりロシア語で無理をせざるを得ないのではないか。そのためロシア語も普通の用法ではない使い方になる場合がある。それと当たり前だが、こういう勉強を続けているとロシア的なものがいつまで経っても分からないということである。日本関係は1冊か2冊徹底的に読んで、最初はよく分からなくとも、後はロシア的なものを読んで行った方がよいとこの頃思うようになった。
- Что сказал отец, когда узнал , что ты разбил его автомобиль?
- Ругательства опустить?
- Разумеется.
- Ни слова.
設問1)和訳せよ。オチを説明せよ。
2007年03月25日
●帯研(第71回)
拙著「ビジネスロシア語」はビジネスマンで、かつロシア語の初心者が対象なので、中級者にとっては内容的にやさしくて不満な方も多いであろう。ビジネスロシア語というからには、杉田先生の「やさしいビジネス英語」のような内容を想像していた方もおられると思うので、そういう方にはお詫び申し上げたい。実際のビジネスのネゴにおける丁々発止のやり取りが、まったくないというのは内心忸怩たる思いで著者も気にしている点である。それで現在閑なこともあって「ビジネスロシア語会話」(仮題)という本を執筆中である。内容は、会話力向上に重点を置く(つまり通訳の前の段階である自分の考えをロシア人に伝えるという意味で)2部構成で、1部は構文(「BはA用である」とか、「~と比べて」などビジネス会話で頻出する表現)主体、2部にその構文を用いた下記のような会話例を多く収録すると言うものである。
「こんにちは、佐藤さん。モスクワでお会いできて嬉しく思います。工作機械製造ライセンス売却の貴社オファーについて話し合うためお招きしたのですが」
「貴社がこのような工作機械が必要だと知って、このオファーをしたわけです。このライセンスでは貴社に製品の製造権と使用権をロシア国内にのみ供与するということをご考慮いただけましたか?」
「ちょうどその点が気に入らないのです。当社もカザフスタンとウクライナに対しては契約義務がありまして、当社はライセンスによる製品輸出地域を厳しく制限したくはないのです。工作機械の生産を完全に立ち上げたあかつきには、世界のどの国であろうと工作機械を輸出する権利を持ちたいのです」
「弊社にとっては完全にオーケーとはいいかねます。工作機械の立ち上げにどのくらいの期間で考えておられますか?」
「2年後ぐらいでしょうか」
「それならカザフスタンとウクライナへの輸出権供与には反対しません」
粗原稿は3月中にはできるだろうが、出版の目処は立っていない。このような中級者向けの参考書の需要があるかどうかにかかっていると思う。
設問1)
a) прятать часы в карманとb) прятать клад в землеの二つの動詞句のうち正しいほうを訳せ。
設問2)次の文で間違っているものは訂正して訳せ。
а) На востоке страны находится много полезных ископаемых.
б) Токио находится на юго-восток от Москвы.
2007年04月05日
●帯研(第72回)
ロシア語学習者はかなりできる人でもロシア人といると居心地が悪い。ロシア人はロシア語が完璧だから神様と一緒にいるような感じだからだ。よく考えてみるとロシア語ができるから偉いのではなく、言葉で日本人とロシア人の橋渡しをどれだけ完全にできるかが重要であるということを忘れがちである。ロシア人のロシア語は我々の日本語同様、子供時代の環境によって自然に話せるようになったものであり、大人になってから自分の意思で勉強したものとは違う。ロシア人は正しいロシア語については教えることができるが、どうしてロシア語ができるようになったのかは当たり前だが教えようがない。我々学習者が知りたいのはロシア語上達の具体的な方法(言葉の使い分けも含めて)である。それとロシア人といっても日本人同様全ての分野に通じている人はいない。ロシア人を見て常に自分のロシア語を向上させるための一つの具体的な目標と考え、ロシア語についても謙虚に教えを請うという姿勢は大切ではあるものの、ロシア人の言うことを鵜呑みにするような愚は避けたい。Надо критически подйти к факту.(批判的に事実に対処しなければならない)とレーニンも言っている。初心者はロシア語の勉強というとロシア人につくのがよいと考えがちだが、それは間違いである。苦労してロシア語を習得した日本人に日本語で習うのが習得の早道である。日本人が陥りやすい学習上の誤りなどもよく知っているからである。無論発音やイントネーションはロシア人のほうがよいとはいっても、発音ですら、模範的な発音は聞けるが、どうして日本語の発音からロシア語の発音に近づけられるかは説明できないということもある。一通りロシア語を学習して中級ぐらいになって、ロシア語で質問ができ、回答も聞き取れるという段階なら、言語学の素養のあるロシア人から教えてもらうというのは非常に効果的だと思う。初心者がロシア人に習ってのメリットは、実際のロシア人から習うということでやる気がでてくるぐらいで(これも非常に重要な要素だが)、挨拶ぐらいから先に進むのはかなり難しかろう。今回の課題は簡単な小話から、
Встречаются два приятеля.
- Привет! У меня новость: Коля уехал.
- Что ты! Он уже месяц как сидит.
- А мне он сказал, что уезжает к брату.
- Дело в том, что его брат тоже сидит.
設問1)上から4行目、語法が間違っていると思うなら直せ。
設問2)オチが分かるように訳せ。
設問3)上記のПриветに対応する別れの言葉は何か?
2007年04月07日
●帯研(第73回)
アオリスト(第26回で取り上げた)などの和訳は難しくない。ただなぜ完了体を使うのかを理解していないと、その和訳を逆に露訳する場合に不完了体を使うという間違いを犯すことになる。特に通訳は聞き取り力と会話力の両方が求められるから、こんなの簡単に和訳できるなと思っても、それを逆に露訳できるかどうか常にチェックするようにしないと上達は望めない。読解力をつけるために露文を読むのは当然だが、会話力を向上させるためにも使えることに気がつかないか、面倒だと思ってロシア語で書かれた本(文学でもエッセイーでも何でもよいが)を読まない人が多いようだ。ロシア語を読んでそこから使える表現(あるいは文脈から考えて適訳だと思ったものを)をデータベースにまとめておくと和文露訳の通訳・翻訳に非常に役に立つ。それと将来ロシア語の通訳や翻訳のプロとなろうと考えている人は、ロシア語の勉強は当然だが、日本語にするときに、少しでも意味や漢字がおかしいと思ったら国語辞典(別に広辞苑でなくとも新明解でよい)を引く癖をつけたほうがよい。またロシア語の駄洒落を日本語の駄洒落にしようとするときも国語辞典が役立つ。ただ駄洒落用なら、類語辞典(大野晋・浜西正人、角川書店、昭和56年)が非常に便利だ。編纂者も駄洒落用に使っているのを聞いたら驚くだろうけど。
設問1)Сидел один человек.の主語один человек をпо одному человекуに代えれば、動詞はどうなるか?
設問2)下記の3つの文のうち正しいもののみ訳せ。
a) Яблоко – с кулак.
b) Яблоки – в кулак.
c) Яблоки – по кулаку.
設問3)Шли дождь и два студента.はロシア語として正しい文か?
設問4)次の文で正しいもののみ訳せ。
Он поставил книги на полку
Он поставил телефон в кабинете.
2007年04月12日
●帯研(第74回)
ソ連時代商社のソ連室や業務部などのソ連通は、毎日プラウダなどソ連の新聞を細かく読み、細かいニュアンスを読み解くことに熱心だった。熱烈(горячо)の有無で、当局の反応をうかがったものである。今思えばおかしくもある。当時の新聞は政治用語が主で理解はしやすかったが、口語との乖離にはほとんど注意を払わなかったため、われわれ外国人のロシア語学習者が今でも泣きを見るはめになった。
最近の日本におけるロシア関係の著作を読むと情緒的記述が目立つと思うのは私だけだろうか?もっと具体例や事実を積み重ねた上で、こう思うと言わなければロシア側も納得しないだろう。第二次世界大戦末期の満州でのロシア軍の残虐行為(私の父もシベリア抑留組であるし)を言い立てれば、私の経験では、ロシア側はシベリア出兵時の日本軍の残虐行為や南京大虐殺などはどうなのだということになる。事実は事実として伝えることは重要だが、建設的なことも述べる必要があるのではないか。例えば私の父も、ロスケは嫌いで死ぬまでロシアに行くことはなかったが(私がソ連に駐在していたのでチャンスはあった)、シベリアではロシアの女性にはよくしてもらったと言っていた。次の小話は1934年のキーロフ暗殺にからんでのもの。巷ではスターリンが手を下したという噂が今でも根強いが、女房をキーロフに寝取られ嫉妬に狂った男の単独犯行のようである。ただスターリンがこの事件を政敵排除に利用したのも事実である。キーロフもスターリン崇拝者であり、レニングラード市やその周辺の州ではともかく、スターリンのように国政をどうこうするような器量はなかったようである。また下記のベリヤのセリフについては、彼が言ったとは思われないが、ベリヤなら言いかねないということらしい。それが小話の一つの役割でもあろう。
Сталин выступает:
- Товарищи! Вчера убили тов. Кирова...
- Кого убили?
- Кого убили, кого убили... Скажите им, товарищ Берия.
- Кого надо, того и убили.
設問1)和訳せよ。
2007年04月15日
●帯研(第75回)
1993年にあるアネクドート好きのロシア人女性(28歳)が小話の出版社に書いた手紙の一部を紹介しよう。Пусть сколько угодно говорят о приличиях и чистоте родного языка, но анекдоты «не для печати» - целый пласт нашей культуры и закрывать на это глаза даже смешно.(ロシア語の上品さとか、純粋さについては好きなだけ言ったらいいと思うけど、活字にならないようなアネクドートはわが国の文化の一つの大きな層をなしているのであり、それに目をつむると言うのはお笑い種だわ)。ポルノ小話を帯研で紹介するのはどうかと思われる向きもあるかも知れない。ただポルノかどうかは意味が分かってからの話であり、オチや隠語の意味が分かった上で、ポルノは訳さないのだというのは分かるとは言うものの、通常プロは訳せと言われたら意味が分かる限り仕事なら訳すべきで、仕事の選り好みをするようではプロではない。それはアマである。帯研は男女平等で18歳未満お断りということもない。もっとも、時にはバンドルネームを変えて参加するのは各自の自由だ。今回の課題は露骨とは言えないものを紹介する。この程度でどのこうのいうのであれば、実際にロシア人の男同士(女同士はどうなのか知らないが)で酔いが進んでからの小話を聞いたらどうjなるのだろう?
Соревнования по стрельбе. Первым стреляет немец. Он попросил посадить муху на забор и с десяти метров попал в неё. Англичанин сбил на лету шмеля. Выходит русский, выпустил комара из коробочки. Раздался выстрел. «З-з-з-з», - продолжает гудеть комар, правда, на полтона выше.
- Так ведь он же летает! – бросились к стрелку судьи.
- Летает и будет летать. А вот любить – никогда!
設問1)和訳せよ。
2007年04月20日
●帯研(第76回)
ロシアの本を買うと分かるが、日本ではカビが生える。ぼろきれでふくと緑色になるぐらいである。さぞペニシリンが取れるだろう。ロシアは乾燥しているので日本と違い本には防カビ剤など塗布しないのだろうと思う。昔防カビ剤など塗ったがだめで、結局本棚の本の上に新聞紙を置き、毎年取り替えるようにしたら少しは減ったようだ。なにせロシアの本だけで1500冊はある。ひょっとして私の肺の中はカビだらけというのではないだろうか?かなり不安である。私は花粉症ではないが、死んだダニにアレルギーが出る。ダニはカビをエサとするので、ダニが生えないようにするには、窓を頻繁に開ける必要がある。しかし女房が花粉症でほとんど1年中窓を開けられない。アレルギーだから花粉症の苦しさは分かる。結局私の布団をこれまで以上に頻繁に布団乾燥機にかけることで、症状は出なくなった。今回の課題は、
Новый трансурановый элемент, открытый в СССР, предложено назвать капэсэсий, потому что у него период полураспада 50 лет.
設問1)オチが分かるように訳せ。
2007年04月25日
●帯研(第77回)
長女が小学校に通うようになってから一輪車の授業が始まった。土日は親が教えるわけである。自転車には乗れても、支えるぐらいで一輪車には乗れないから娘にアドバイスできない。乗れないのに教えることはできないのは道理なので、自分で大人用の一輪車を買って夜1時間練習を始めた。それこそ手探りで(というより手すがりで)23時間で乗れるようになった。それからは娘に教えるというよりは(娘はすぐ乗れるようになったので)、趣味として毎日1時間乗り回すようになった。それが高じてカザフのアルマトゥイの駐在のときも一輪車を持って行き、休日大統領府の前で乗っていたら、テレビのインタビューを受けた。ロシアでもカザフでも一輪車に乗るのはせいぜいサーカス芸人くらいだろうから驚いたらしい。翌日会社のカザフ人からテレビを見たと言われ少し得意になった。帰国してしばらく乗っていたが、この頃は乗らない。一輪車というのはいったん乗り始めたら、止まるとき以外はこぎ続けなければならない。下り坂でもである。無論三輪車のように両足をペダルから離してもよいが、下り坂が終わって足を乗せるのがそう簡単ではない。年も取ってきたので、人生と同じでこぎ続けるよりは、こいではコースタリング(足をペダルの上において走るに任せること)のできる自転車で、通訳の仕事のないときは3時間ぐらいママチャリで荒川の土手を走っている。まあ閑なのでほぼ毎日走っていることになる。これも人生。
Забегает голодный мужик в столовую, денег нет, а кушать хочется. Видит: сидит мужик, газету читает, а перед ним тарелки супа. Пока тот читает газету, он быстро съедает суп и на дне тарелки видит расчёску с волосами. Его вырвало. Тот, что читал, убирает газету.
- Видел?
- Видел.
- Я тоже видел...
設問1)和訳せよ。おちを説明せよ。
2007年04月30日
●帯研(第78回)
今から20年ほど前モスクワに駐在していた頃家族でパリに遊びに行ったことがある。地下鉄で電車を待っているときに、家内が腕に抱えていたバッグの財布から金を抜き取られたのに気づき、若い男が逃げていったのを追いかけていった。家内が格闘技をやっていたとか、気丈だということではなく、ものを盗まれた人間の瞬間的反応だろう。私はと言えば、長女の手を引き、次女が乗っている乳母車を押していた。そばにいたアジア系のおばさんが英語と身振り手振りで、乳母車は見ていて上げるから、奥さんの後を追ったらと言ったように思えた。それで長女の手を引いて走ろうと思って、はたと気づいた。なんかおかしい。それでノーサンキューと言ったら、残念そうに女はいなくなった。十中八九、子供をハーレムかどっかに売り飛ばす誘拐犯であろう。危ないところだった。その頃モスクワは比較的外国人には安全だった。KGBの取締りがきつく、外国人との係わり合いを恐れたからだろう。何かあれば(つまり疑わしきものは)引っ張るというのがソ連式だったからだ。まあ今のロシアよりは安全だったかもしれないが、秘密主義で臭いものには蓋ということだから、強姦魔の噂なども一人歩きしていたから、実際のところ外国人以外にはそれほど安全ではなかったかもしれない。モスクワで一種の安全ボケがパリで現実を知らされたわけで、ワクチンと同じで少々の危険を経験したほうがよいということだろう。あのときのことを思い出すと今でもぞっとする。運が悪ければ娘はアラブかアフリカのハレムにでも売り飛ばされてしまっていたということにもなりかねなかったわけである。今回の課題は、
Армянское радио спрашивают:
- В чём состоит разница между Черненко и камбодийской столицей?
- Столица Камбоджи – Пном-Пень, а Черненко – пень-пнём.
設問1)オチが分かるように訳せ。
2007年05月01日
●帯研(第79回)
米川正夫の自伝「鈍・根・才」を10年以上探して、5年前にようやく手に入れて読んだが、期待外れだった。やや私小説気味ではあるが別に内容がどうということではない。ロシア語上達の秘訣が書いてあるのではと思って長年探してきたが、そういう観点からは裏切られた。何も書いてないのである。結局翻訳は天賦の才か、地道に多読するしかないということなのか。中村白葉の自伝「ここまで生きてきて – 私の八十年」も同様である。しかし「くもの糸(北御門二郎の聞き書き)」(南里義則著、不知火書房、2005年)は違う。ロシア文学者の原卓也氏との翻訳論争で有名だが、北御門氏の飾らぬ人柄が伝わる好著である。北御門氏自身の誤訳についても触れている。村上春樹が出版された自分の小説を後から手を入れようとは思わないが、翻訳は誤訳や思い違いに後から気づくので機会があれば手を入れるという趣旨のことを言っていた。あるロシア文学翻訳の大家が「俺の翻訳は完璧で、後から手を入れるところはない」というのは無知(無恥)を通り越して傲岸ですらある。翻訳者としての心構えに打たれるものがある。ただ氏は翻訳者(トルストイのみといってよい)であって、通訳ではないため、会話の実力はどうなのであろうという不遜な考えも湧いてくる。氏自身もモスクワでの講演会でのロシア語原稿をロシア人に発音ともども直してもらったと書いているからである。ソ連時代の日本の翻訳家はソ連に行くことが難しく、ロシア人との出会いも少なかったため、発音、イントネーション、口語や俗語(隠語とまでは言わないまでも)が弱かったろうということは簡単に推察できる。しかしソ連崩壊後時代は変わった。翻訳者だからこれらを無視してよいということはない。できないのは努力しないからである。ロシア人文学者とロシア文学という土俵においてロシア語でやりとりできないというのは、やはりはたからみておかしいのではないか?それともみな通訳を介さずにできるのだろうか?
Штирлиц пришёл к Мюллеру и признался, что он советский разведчик.
- Идите, идите, Штирлиц, работайте! Что только не придумают, чтобы на картошку не ездить!
設問1)オチが分かるように訳せ。オチを別に解説してもよい。
2007年05月05日
●帯研(第80回)
チェーホフの小説で一番好きなものはПопрыгуньяだが、拙著「ロシア式ビジネス狂騒曲」で、主人公の夫のモデルはКувшинниковというスラムの警察医であると書いた。これはГиляровскийの書いているものに拠ったものだが、Эренбургはチェーホフが手紙の中でКувшинниковの42歳の妻は自分がこの小説の主人公だと思い込み、中傷だとチェーホフを非難していると驚きをこめて書いている。それはそうだろう。確かに彼女の夫は医者で、画家と同棲していた。ただ小説の主人公は御年20歳だから買いかぶったものだ。この画家は有名なレヴィタンでこれがもとでチェーホフと仲たがいしてしまった。夫のほうは特に何も文句は言わなかったらしい。まあいい役回りだから当然と言えば当然だが。この他に「チャイカ」のニーナ・ザレーチナヤのモデルはチェーホフの家によく出入りをし、チェーホフにぞっこんだったオペラ歌手志望のリーカ・ミジーノヴァだったとか、トリゴーリンは作家のポターペンコだとかの類である。
Владимир Вольфович на Птичьем рынке покупает белого коня. Соратники по партии интересуются:
- Парадом собираетесь командовать?
- Нет, на Кремлевских воротах везде повесили «кирпичи», так я на коне в Кремль въеду.
設問1)オチが分かるように訳せ。
2007年05月06日
●帯研(第81回)
ロシア語の参考書はほとんどが初級者向けだが、例文が女子中学生の仲良しクラブのような感じだ。ロシア語を学習する人はほとんど成人だろうから、何か読者を甘く見ているような気がする。レベルは別にしてもう少しロシアの現実生活を反映させるようなものでないと、実際には使えないだろう。またよいと思う中級上級向けのロシア語の文法書や参考書でも露文読解が主であるように思う。文例を見てもドストエーフスキーだったりチェーホフだったりする。無論ロシア語でロシア文学を読みたい、あるいはロシア語の文献を読むためにロシア語をやっている人にはいいだろうが、そういう人は現代では少数派ではないだろうか?現時点で一番求められているのは、例えばロシアに進出著しい日本企業の担当者ができるだけ通訳を使わず、自力でビジネスに活用および応用するための会話力だと思う。これは通訳を目指す人にとってもまず自分の意思をロシア人に伝える事が出来て初めて通訳の勉強に取り掛かれるわけだから、実戦的な会話力を高めるというほうが需要は多いと思う。日本のメーカーや商社で作るモスクワの商工会も私が帰国した2004年は80社ぐらいだったが、今や150社と聞く。会話力をつけるには小話のオチ以外の会話の部分を暗記するとよい。自然に口語のロシア語が身につくし、ついでに小話も覚えておけば宴会でウオッカ攻撃から逃れられるかもしれない。帯研の出題を解いてみたり、他の参加者の回答例を見れば、岡目八目で、案外知らない自分のロシア語の弱点が見えてくるかもしれない。
Брежнев и Рейган поспорили, у кого дети лучше знают математику. Побывали в школах, поспрашивали детей в США и СССР. Рейган говорит:
- Да, ты выиграл! В вашей стране почти на каждой стене написаны икс, игрек и знак высшей математики!
設問1) オチが分かるように和訳せよ。
2007年05月10日
●帯研(第82回)(OB-Ken)
Дуров В.Л.(1863~1934)は弟Дуров А.Л.(1864~1916)とともにピエロとして活躍したが、のち兄弟げんかをして分かれてしまった。兄は「ドゥーロフ兄старший」と名乗り、弟は「ドゥーロフ真настоящий」と名乗ったという。兄は革命後サーカスの動物調教師として有名になり、その中で「万国のウサギ諸君、団結せよЗайцы всех стран, соединяйтесь!」という出し物が人気を取った。これはкроликиを宮廷派に見立て、臆病者の代名詞であるзайцыが革命を起こし勝利するというものである。このように日本語ではウサギと一語で代表する動物をロシア語では英語同様ウサギを二つに分ける。ウサギにはノウサギзайцы (hare) とアナウサギдикие кроликиがあり、アナウサギがやや小型で、飼いウサギ(rabbit)кроликиの先祖である。飼いウサギはペット用というより毛皮を取ったり食肉用である。ネズミは英語と同様、ハツカネズミдомовая мышьと、ドブネズミсерая крыса やクマネズミ черная крысаでは単語が違う。ドブネズミのほうがクマネズミより大きく、мышь は крыса より小さい。
設問1)下記の文で正しいものを和訳せよ。
a) Вчера нам сообщили результаты, полученные в ходе эксперимента.
b) Вчера нам сообщили о результатах, полученные в ходе эксперимента.
設問2)次の文が文法的におかしければ訂正して和訳せよ。(追加)
Я сказал, что завтра уезжаю в Москву; вернусь через две недели; надеюсь его встретить в Токио.
2007年05月17日
●帯研(第83回)OB-Ken
今から30年ほど前商社に入って、ある造船所にロシア語の通訳見習いで出向したときのこと、ある技術者から「クレーンのブームの飛翔」とは何かと聞かれた。技術者のくせにといったら失礼だが、ロシアの詩にでも興味があるのかと思ったら、そうではない。RS(РС = Регистр СССРソ連船級協会)のルール(船舶建造規則)の和訳に書いてあるという。クレーンのブーム(boom)というのはクレーンの腕に相当するところだということは分かった。問題は飛翔である。クレーンがロケットでもあるまいし、どうやって飛び立つというのだ?問題の訳を見せてもらい、相当するロシア語文を探し出した。вылет стрелы кранаとある。一般の辞書にも「飛び立つこと、離陸、出撃」とある。「飛翔」と訳した気持ちも分からないわけではないが、意味が分からないことには変わりはない。ふと見ると、露文にはカンマの後にмとある。「メートル」であろう。長さに関係することらしい。しかし想像ばかりしていても、正確でなければ誤解の元だと思い、家で調べることにした。その頃露英海軍辞典というのを買ったばかりだったので、それで調べると「reach, outreach」とある。ブームの長さらしい。念のため2巻本の露英技術辞典で調べたら、working radiusとある。クレーンのブームの旋回半径のことだったのである。道理で単位がメートルのはずだ。それからしばらくは造船所でブームの旋回半径を飛翔と称することが流行った。飛翔と訳出した人はどういう気持ちで訳を書いたのだろう。(?)でもつけておけばよかったのに。訳せないと認めることの難しさであり、他山の石でもある。
Объявление: «Перевожу с Немецкого и Армянского на Ваганьковское».
設問1)オチを説明せよ。
2007年05月22日
●帯研(第84回)OB-Ken
小話はкраткость/компактность(簡潔さ、コンパクトさ)とинтонация(イントネーション)やмимика(表情や身振り手振り)で成り立っているが、書いた小話はイントネーションと表情や身振り手振りを欠いている。だから実際にロシア人の話す小話のほうが理解しやすいと思いがちだが、そうではない。やはりベースにあるロシアの大衆文化への理解がないと聞き取れてもオチが分からないということになる。イントネーションや身振り手振りも助けにはなるが、これはある程度想像で補えるものだが、大衆文化は別個に広く浅く自分で勉強しなければならないし、時代(18世紀頃から現在まで)や場所(ロシアだけでなく旧ソ連諸国)など範囲も広範なものだ。個人では無理だということがお分かりだろう。何度もいうが集合知によって、いろいろな人が自分の関心ある分野についてのみでも調べて発表するような場が持てれば、大衆文化について広範囲な成果があがるのではないかと思う。今回の課題は、
設問1)次の動詞句で正しいものを訳せ。
a) гулять в лесуとгулять по лесу
b) глядеть в небоとглядеть на небо
設問2)Письмо материを訳せ。
2007年05月24日
●帯研(第85回)
革命後товарищが人の呼びかけに使われるようになり、コムソモールはребята, девчатаを使うようになった。1930年代девчатаは乱暴なニュアンスがあるためか、Иван Микитенко の人気のあった戯曲«Девушки нашей страны»のせいもなくはなく、若い女性への呼びかけにはдевушкаが普及し、革命前のбарышняに完全に取って代わった。ただ電話交換嬢には相変わらずбарышняが用いられたが、自動交換機の普及でそれもなくなっていった。 今回の課題は、
Еще издали перед Штирлицем открылась необычная картина: голубые ели. Когда он подошел ближе, то увидел, что голубые не только ели, но и пили.
設問1)オチが分かるように訳せ。
2007年05月27日
●帯研(第86回)
ロシア語を勉強するなら、取りあえずは会話力と聞き取り力をつけるのに全力を尽くすべきだ。話せる、聞き取れるようになって、次の段階である通訳の勉強をしたらよい。帯研の対象者である中級者とはということを私なりに解釈すると、ガイド試験にギリギリ受かるか、受験するぐらいの学力で、ロシア人に電話で用件は伝えられるが、向こうが何を言っているかはおよそ分かっても、100%は聞き取れないレベル、つまりプロとしてロシア語ではお金がもらえないレベルと思う。極端に言えば95%聞き取れても、後の5%や仮に1%でも肝心なところを聞き取れない人は雇う側が怖くて使えない、そういうレベルの人ということである。それに皆が通訳になる必要はないし、需要もない。通訳を使わずに自分でロシア語を活用する仕事につくのだというほうが通訳よりは面白いかもしれない。日本には知られていないロシア大衆文化の伝え手(担い手というよりは)として活躍してくれたほうが、日露の相互理解を進めるというという点で後進のためにはありがたいはずである。
設問1)бояться материとбояться мать、およびдожидаться учительницыとдожидаться учительницуで、正しいものを指摘せよ。
設問2)下の8つの句に意味の違いはあるか?あるとしたらどのような違いか?
у дома, при доме, около дома, возле дома, подле дома, перед домом, близ дома, вблизи дома
2007年05月31日
●帯研(第87回)
ロシア語の会話集を見ていると、語彙の解説と例文の羅列が目につく。これはこれで文章を暗記するという点では効率的で悪いことではないが、会話力をつけるには、文章の流れにも気を配る事は重要である。なぜこういう表現が来るのかということが前の文脈ではっきりする場合が多い。そういう意味で4行ぐらいの小話を丸暗記してしまえば、肝心の表現を組み立てる時間が稼げると思う。もっともその前にやっておいたほうがよいものがある。それは文法である。ただ既存のロシア語文法書は露文読解に主眼が置かれているように見える。例文一つとってもロシア文学からとられているものが多い。作文用の会話力をつけるための広く応用できるような文法の解説がもっとあってもよいと思う。たとえば実際の会話で多く使うのは、ビジネスでは予定などである。それと同時にロシア人にとって常識であるような知識にも常に意を払っておくのがよい。「どこからですか?」と聞かれて、答えたくないときや答えをはぐらかしたいときに、ロシア語ではОт верблюдаという。この表現はЧуковскийの児童向けの詩Телефон(電話)が由来である。この詩は最近ラジオのNHKロシア語講座応用編でも取り上げられたので覚えている人も多いだろう。ロシア人はこういうものを幼い頃から耳にも目にもしているので、児童向けの作品を読むのも重要だなと思った次第。勉強するに遅すぎるということはないが、若いうちにチェーホフやドストエーフスキーを読むより前に、先にこのようなものを読んでおいたほうがよいと思う。電話と言えば、お恥ずかしい話だが、長いことтаксофонというのはタクシーの呼び出し専用電話だと思っていた。これは公衆電話でтелефон-автоматと同じことである。電話するときにコインを入れて、時間毎に課金されるのでそれがオフィスや家庭の電話とは違うということらしい。今回は駄洒落問題。
- Что такое шансонетка?
- Женщина, у которой нет шансов.
設問1)日本語でも駄洒落となるように和訳せよ。
2007年06月01日
●帯研(第88回)
「封筒に入れる」とか「ハンドバッグに入れる」を露訳する場合、初心者なら手元の和露辞典を見ることになる。手元にあるЛаврентьевの和露で見てみると、вкладывать, вставлять, вмещать, помещать, впускатьという動詞が出てくる。技術関係で何かの部品に別の部品を入れるという場合なら、ともかく、初心者が知りたいのは一般的にどういうかであろう。普通はкласть/положить в конверт/сумкуという。和露に頼って一般的な文章を作ることばかりしていると、思わぬ恥をかくことになる。遠回りのようでも、児童文学でできるだけ日常生活を描いたものや小話などを読んで、日常生活でこれは使えると思った文章をデータベース化しておくことが後で大いに役に立つと思う。急の場合にはそうもゆかぬだろうから、これはという単語を露和(和露ではなく)で引いて、例文を見るのが案外正解に近い場合が多い。
設問1)「コインを自動販売機に入れる」は何というか?
設問2)次の小話を訳し、オチを説明せよ。
Еврей заглядывает в отдел кадров:
- Скажите, пожалуйста, вам требуются сотрудники?
- Да, а какая у вас фамилия?
- Шихман.
- «Ман». Нет, не подойдёт.
- А «ич»?
- Нет, «ич» тоже не подойдёт.
- А «аум»?
- Нет, нельзя.
- -А «ко»?
- А «ко» подойдёт.
Еврей радостно выглядывает в коридор:
- Всё в порядке, Коган, заходи!
2007年06月05日
●帯研(第89回)
ロシアの本はカビが生えやすいと書いたが、そのカビをエサにするのか紙魚やダニが見つかるときがある。無論容赦なく退治する。そのためゴキブリや蚊はその場で退治するものの、クモはダニを食べてくれると思うので殺さない。しかも私には死んだダニのアレルギー(ハウスダスト症候群)があるからなおさらである。家族にも殺さないように言っている。クモと言えば、トルクメニスタンのチャルジョウというところに20年前パイプのテストで出張したときに、5月頃だったが、周りが砂漠というより土漠でサソリやタランチュラтарантулが出てくるが気にしないようにといわれた。サソリも毒蜘蛛も刺されたら危ないじゃないかというと、サソリもタランチュラも毒が弱く、それで死んだら新聞種だと言われたのを思い出す。そうこうするうちに泊まったホテルの部屋に入ると、バサッ、バサッと音がする。田舎だから窓を開けていたので鳥でも迷い込んだかと思ってよく見たら、ハトぐらいもある灰色に点々のあるバッタだった。さすがにバサッ、バサッでは眠れないので、窓を開けて追い立てたが、部屋が5階と高かったせいかバッタは出てゆかない。それでタオルをバッタにかけてそのままタオルをつかんで、タオルごと窓に放り投げた。そのような僻地でも(ここはウズベキスタンのブハラに近くなので)、シルクロード巡りをしている年配の日本人観光客にあったが、今と違って20年前とはいえどこにでも日本人はいるなと驚いた次第。
Встречаются два корабля в море: русский и американский. На русском паника, суматоха:
- Кто бросил валенок на пульт? Кто бросил валенок на пульт?
Американцы посмотрели и говорят:
- У нас в Америке такого нет...
- Да нет больше вашей Америки! Кто бросил валенок на пульт?!
設問1)オチが分かるように和訳せよ。
2007年06月09日
●帯研(第90回)
自分の経験から言って新米の通訳が嫌がるのは、その場での演説、つまり前以て演説の原稿をもらわずに、その場で好き放題しゃべるのを通訳させられるときである。これに一応慣れると、次に嫌なのは小話の通訳である。帯研の参加者が帯研100回ぐらいやれば、ロシア人のする大抵の小話には驚かなくなるだろうから、そのぐらいの効能はあるかもしれない。まあガイド試験やロシア語検定には受かるかどうかは知らないが、でもロシア人相手の実戦用なら、よっぽど帯研のほうがそんな試験より度胸がつくのは間違いない。今回の課題は、
Едет качок в автобусе. Женщина сзади спрашивает его:
- Вы выходите?
- Выхожу.
- А перед вами?
- Выходят, только они об этом ещё не знают.
設問1) 誤りがあれば訂正して和訳せよ。
2007年06月10日
●帯研(第91回)
和露に載っていない単語を調べるにはどうするかというと、例えば「交通機関」という語句を調べるとすると、自分で言葉を言い換えてみて、「交通手段」と考え、露和から、транспортные средстваという語結合があるか調べてみる。他に、「交通機関」というのは、サイトでその場所(の建物)にどう行くかを示すもので、ロシア語の店や博物館などのサイトを見て、「地下鉄の最寄の駅は~」などという解説がないか調べる。そうするとсхема проездаなどの単語が見つかる。常にこのように簡単ではないが、ロシア人も同じ人間であり、現代人の生活は同じようなものだという前提で調べることが可能である。自分で露訳して、その単語が実際にあるかどうか、どう使われているかを見るには、これもロシア語のサイトを見ればよい。いくつかバリエーションを作っておけばどれかあたるだろう。ただこれを100%頼るというわけにはいかない。サイトのロシア語というのはサイトの日本語同様多くが素人であり、ファンタスティックな単語や文章をもあるということを頭に入れておく必要がある。そういう危険を理解してのうえなら、文章や前置詞の語結合もこれで調べられる。そのほかにサイトでは、日本同様、ロシア語が非常に隠語だらけというのもあるから、標準語法を使っているかを理解するのもやはり経験がものをいう。それと和露に載っているからと言って、それがロシア人が普通に使っている単語とは限らない。単なる説明の場合が多い。つまり意味は分かるがそうは言わないとロシア人に言われることが多々あるという事を頭に入れておいたほうがよい。そういう説明するだけなら、何も和露を引かずとも自分で作れる。それをロシア人に試して調べるという手もある。ただ用語の場合は一般のロシア人が知らない単語も多いので、100%ロシア人に頼りきるというのも危ない。結局自分で語彙集を作ってゆくしかない。頼れるのは、つまるところ自分だけなのである。
Мужик собирается гулять, жене сказал, что идёт на собрание. Стоит перед зерколом, прихорашивается и напевает: «Пара-па-бабам. Пара-па-бабам». Жена уловила и тоже начинает собираться, припевая: «Таратарам-дарам-дам, татарам-дарам-дам!»
設問1)オチが分かるように和訳せよ。
2007年06月12日
●帯研(第92回)
ロシア人に自分が作文したロシア語を見てもらう場合、気をつけたほうがよいと思うのは、ロシア人が訂正するときに、1) 文法的な誤り、2) 慣用からの乖離、3) 自分ならこう訳すというこの3つを明確にしてもらったほうがよい。1) と2) は指摘してもらえばためになるが、3) は参考としたほうがよい。ロシア人すべてが美文家ではあるまい。日本人の日本語の例で分かることだ。今回の課題は、
Однажды король вышел в зимний сад и увидел на снегу надпись: «Король дурак». Он был страшно разгневан и приказал министру разобраться. На вечернем докладе министр докладывает:
- Ваше величество! Преступники найдены. Моча – первого министра, почерк – королевы.
設問1)できるだけ上品に訳せ。
2007年06月14日
●帯研(第93回)
ロシアに出張するときは風邪薬、下痢止め、傷薬ぐらいは持ってゆくが、あまり風邪を引かないとはいえ、引くとのどに来る。うがい薬を持ってゆくのは面倒なので、紅茶のティーバッグの二番煎じでうがいする。不思議とよくなる。カテキンのせいか。
都会ではそういうことはないが、ロシアや中央アジアの田舎の空港に行くと、見知らぬ人から到着地の荷物を頼まれることがあるが、これは絶対引き受けてはならない。中に麻薬でも入っていたら言い逃れが出来ず、間違いなく刑務所入りとなるからだ。海外ではある程度善意についても抑えておかないととんでもない目にあう。
ロシアでも田舎を歩いていると、木の幹が途中から白くなっているのを見かける。これはкольцеватьといって害虫予防である。初めは夜自動車が木への衝突予防用かと思っていた。
それとソ連時代飛行機で驚いたのは、到着するとさっさとパイロットが乗客より先に下りることである。搭乗のときはパイロットが最後に乗ってくる。パイロットが大事にされるわけだ。地方では今でもそうらしいので驚かないように。
Официант:
- Как наши бифштексы?
Клиент:
- Слишком маленькие для их возраста.
設問1)訳せ。オチを解説せよ。
2007年06月15日
●帯研(第94回)
現代人は忙しい。ニュースを読むのもサイトのタイトルニュースで終わりである。ロシアの出来事や文化、ましてや大衆文化など知ろうとする人は少ないかもしれない。それでも両国間の誤解からくる摩擦を防ぐために、ロシア語のプロが自分の好きな分野で、これまで紹介されてこなかったものを分かりやすく日本人に知らせることは非常に意義あることだと思う。そのためにもロシア語で文献を読めるよう、またテレビのロシア語が聞き取れるようがんばって欲しい。取りあえずは好きな分野に傾注すればよいのだから。
Встречаются два знакомых. Один спрашивает:
- Ты какие спиртные напитки пьешь?
- Один. Он состоит из названий двух животных. Это коньяк.
- И какими дозами ты его употребляешь?
- Если наоборот прочитать это название – як конь.
設問1) 和訳せよ。
2007年06月20日
●帯研(第95回)
ロシア語と日本語は違うといっても、単語の意味と基本的な文法が分かれば、素直に訳せる構文というものは多い。例えば делиться с кемは「~と分かち合う」ということで、単語の順序は違うが、訳して妙な感じはしない。ところが、управлять чемとなると、日本語なら「~を支配する」ということで、ロシア語の補語に対格が来てくれれば違和感がないが、造格が来る。こういう句動詞や格支配で日本語と違うなというものを集中的に覚えるとよい。日本語として自然な文章でなければ翻訳ではないが、語法や文法を無視して文章の流れで訳すのは翻案である。ロシア語の文法を独立したものとして教えるのではなく、いかに実戦で応用できるかという観点から、ネットで見かけるようなロシア語の文法書をただ和訳するのではなく、教える側が文法をよく消化して学習者に教えることが大切である。特に文法が会話力向上にどう役立つか具体例をもって説明すべきである。今回の課題は、
Мужик говорит:
- У меня очень красивая жена – чистая Венера.
- Загибаешь. Венера – богиня красоты.
- Ну, Венера не Венера, но всё-таки в ней есть что-то венерическое.
設問1)オチがわかるように訳せ。
2007年06月24日
●帯研(第96回)
若い頃は自分のロシア語の力のピークは45歳ごろだと漠然と考えていた。それを10歳も過ぎた今、10年前よりも、そして1年前よりもロシア語の実力ははるかに上回っていると実感している。語学の実力は勉強を続ける期間とその内容の充実さに比例する。ただ先輩(無論50歳を過ぎた人)で実力に安住している人(勉強しない人)には、ロシア語の実力が前より伸びているなと思う人はほとんどいない。これは体力的なものも大きいと思う。語学をする人は文系だからか、運動が苦手な人が多い。体力が弱まれば気力も落ちる。何もスポーツの大会に出場するような体力が要求されているのではない。夜すぐ眠れて、すっきり朝目が覚め、どこといって身体に痛いところがなければ(肩こり、腰痛がない)それでよしということだ。こういう健康管理も若いときからストレッチングなど毎日する癖をつけないと無理である。健康管理ができて、勉強を続けてゆけば、70歳か80歳にはロシア語のレベルがそれなりのものになるのではと思うというよりは期待している。勉強にこれで終わりと言うことはない。この5年間は詩を中心に勉強しようと思う。身体のどこかに具合が悪ければ勉強を続ける体力もないだろうし、血の巡りも悪いということは、脳も身体の一部だから脳の血のめぐりも悪くなるということである。知らず知らずに勉強を止めれば後は下り坂が待っているのみである。どのくらい下がっているのか本人の気がつかないだけである。いくらロシア語の権威と言われている先生方でも2、3分ぐらいロシア語で会話をすればその人の実力が分かるというものだ。しかもただ漫然といくら勉強をしても本当の上達にはつながらない。ロシア人との会話の実戦のときに、どのように、どのような表現法を用いるかということを常に研究しておかなければ上達はない。
На иностранца подали в суд на удержание с него алиментов. Он по-русски знает только падежи. В суде держит ответную речь.
- Я - предложный, она – дательный, я – творительный, она – родительный, в чём же я винительный?
設問1)オチが分かるように訳せ。
設問2) алиментыについて分かりやすく説明せよ。
2007年06月29日
●帯研(第97回)
尊敬するロシア人を一人挙げろと言われたら、人類愛にあふれ、サハリンまで馬車を継いで行ったチェーホフ(このサハリン行きで命を縮めたといっても過言ではない)と答えてもよいが、やはり冒険家・人類学者Миклухо-Маклай(1846~1888)であろう。彼は苦学してドイツのハイデルベルク大学を卒業し、1870年初めニューギニアでパプア人と共に暮らして人類学的研究を行い、黒人が白人より劣っているという当時の通説を覆すのに尽力した。世界的なスケールを持つロシア人と言える。
今エレンブルグの自伝「人々、歳月、人生Люди, годы, жизнь」を読んでいるが、その中でロシア人気質に触れたものがあるので紹介しよう。作者がフランス人との比較で述べている。「フランス人は私にはあまりに礼儀正しく、不誠実で、計算高いように見える。ここでは(訳注:パリでは)行きずりの人に心を開こうなんてだれも思わないし、だれもちょっと(よその家に)立ち寄ろうとか、最後のシャツ一枚まで飲んでしまおうなんて考えない。きっとだれも首吊りなんかしないだろう」
Ст.М-3-38
設問1)訳した上でそれぞれオチを説明せよ。
Два самых которких анекдотов:
1) Баня, через дорогу раздевалка.
2) Родил.
設問2)次の句のうち正しいものを訳せ。
a) хозяйка квартиры в доме на проезде Художников, 27
b) из квартиры в доме по улице Червонного Казачества
2007年07月13日
●帯研(第98回)
自分も小話を和訳しているので、小話の著作権については気になっていた。小話の作者は実在するはずだが、ソ連時代は小話で刑務所行きとなったので表立って作者が名乗り出た例は知らない。小話の作者だというならそれを証明する必要があるわけで、それは少数の例外を除き不可能であろう。漫談家のペトロシャンПетросянが、自分のアネクドート集の中で、この点についてこう述べている。Анекдоты не имеют конкретного автора и поэтому могут печататься в любом издании и повторяться бесконечно, пока что не надоест покупателю.(アネクドートは具体的な作者というのを持たない。それゆえにどんな出版において印刷されてよいし、際限なく繰り返されてよい。買う人がうんざりだとおもうまで)。私はこの考え方に従っている。
Стреляются Колобок с Чебурашкой. Чебурашка:
- По ушам не стрелять!
Колобок:
- И в голову тоже!
設問1)オチが分かるように訳せ。
2007年07月15日
●帯研(第99回)
疑問を持つというのは簡単そうだが、常に意識していないと疑問は湧かない。例えばперронという言葉がロシア語の文章で出てきたとする。これはプラットホームだが、платформаとはどう違うのだろうという疑問が出て、露露辞典を引いて答えを見出せば、上級の入口に立ったも同然である。疑問が湧くということが自然に出来るようになれば、その場で答えが分からなくとも(疑問は質問の形でノートに書いておくとよい)、いつか答えが分かるだろうし、そういう人は自分に満足しない人だから自然にロシア語がうまくなる。ちなみに露露辞典を引いた限りではперронは旅客用のプラットホームで、платформаは貨車・客車両方使えるのではないかというのが私の考えである。ちなみに駅の5番線は5-й путьという。同様に、ロシア語の勉強をするときは長期、中期、短期と分けてそれぞれの見通しを立てて勉強したほうがよい。長期のものには、すぐには効果が出ないかもしれない諺、言い回し、句動詞などをやればよい。ある文章でв нижнем течении「下流で」を見つけたとしよう。下流という単語を知らなかったので暗記しようとする場合、нижнее течение と主格(対格)で覚えるよりは、вをつけて「下流で」と覚えたほうが将来活用しやすい。露和辞典にも「下流」は載っているが、「下流で」は載っていないので、どんな前置詞がくるか後になって役立つ。動詞句などもそうである。今回の課題は難しいかもしれない。
Человек приехал на курорт. На первом приёме лечащий врач, посмотрев курортную карту, заметил:
- У вас тут не всё заполнено. Скажите, какая у вас спиртометрия?
- А что это?
- Ну...Сколько вы выдуваете?
- Могу литр, а то полтора?
- Что вы! У нас женщины и то до трёх литров выдувают.
- Так это ж, наверное, красненькое. А я – о белом.
設問1)オチが分かるように訳せ。
2007年07月20日
●帯研(第100回)
ついに100回を迎えた。一応これで帯研は終了となる。これも一重に参加者の協力の賜物である。深く感謝する。第1回から100回まで自分の力で課題を解いてきた参加者は、ロシア人と実戦でやり取りしてもそれほどオタオタすることはないと思う。これでガイド試験やロシア語検定1級にでもうかるぐらいの実力がつけばいうことはないのだが、目指しているところが違う。帯研はあくまで実戦本位である。もし何か面白い課題が見つかれば再開するかもしれない。それまでは各自アネクドートなどで修行して欲しい。アネクドートはロシア語のネットでいくらでも見つかる。小話もロシア語の教材になるということを確認できたのは私にとって大きな成果であった。帯研の成果を基に、新たに小話を用いた会話用参考書の原稿を執筆中。使う小話は帯研で出題したものは載せないつもり。出版できるといいのだが。最後の課題は、
Идёт судебный процесс в Грузии. Судья строго спрашивает:
- Подсудимый, ваше последнее слово!
Подсудимый встаёт и низким голосом говорит:
- Сто восемнадцать тысяч.
- У прокурора есть возражения?
- Нет.
- На нет – суда нет!
設問1)オチが分かるように訳せ。