2010年08月25日

●日本の心 第1回

NHK放映のワーキングプアについての番組を見ていたら、その失職した日本の若者は、運命ではなく、自分の努力が足りないと自分を責めていた。このような状況であれば、1990年代のロシアを知る自分が考えるには、ロシアならすぐに暴動になったろう。そのような心構え(心映え)をもつ若者を職のないまま放置してよいはずはない。政府がいの一番に取り組まなければならない課題であり、政府が就職の保証人になるなり、住居の保証をすべきであると考える。これは徳議論だけで言っているわけではない。我慢にも限度があるわけで、そのうちこういう弱者が暴発したら、行政や経済界、社会の被る被害大変なものになるだろう。正社員でも帰宅が夜中というのは異常であり、こういう若者の救済や女性、中高年の活用のためにワークシェアに本気で政府や財界は取り組むべきだ。ちょっと話がそれた。言わんとするのは戦後日本は変わったというものの、このように変わっていないと思われるものもある、その変わっていない日本的なものというのは何かを調べてみたいという気がしてきたということである。
自分の若いころの経験から言うとある程度通訳ができるようになると、今度は雑談が苦痛になる。通訳の言い回しや語彙は必至で覚えるが、通訳ではなく、自分の考えで話すとなると、それなりに素養がいる。歳をとればそれなりに雑談もできるようになるとはいえ、初対面のロシア人と趣味が一致することは稀である。そうなると相手にも喜ばれ、時間稼ぎにもなるのは文化も含めて日本独特なものを話柄にすることである。その勉強を少しずつでも若いころから意識しておけばよかったのにと思う今日この頃である。それとロシア人のガイドをして常日頃思うのは、日本のよさや、日本らしさを説明するためには、日本人の観点ではなく、日本に特に興味もない、またパナソニック、トヨタ、寿司程度しか知らないロシア人にも興味をもってもらえるような説明が必要だということである。我々が日頃当然だと見なして顧みないものが何かということは一見簡単なようで非常に難しい。ガイドのように日本的なものをそのようなロシア人に伝えるには、ロシア語が出来るだけではだめで、一般大衆の、伝統的、現代の日本の文化を深く知ることが大切である。そこでいろいろ考えた結果、温故知新、つまり外国の影響を受けていない頃の日本や日本人について理解を深めることが必要なのではないかと考えるに至った。つまり日本や日本人と外国ないしは外国との出会いを記録したものを調べるという事である。これには二つあって、外国人が日本に来る場合と、日本人が外国に行く場合のがある。前者の開国当時の日本を訪れた外国人(ロシア人も含めて)の受けた印象の方が、現代の日本人の考え方に近いと考えた次第である。なぜなら当時の日本人にとって当たり前の事柄は当時の日本人の著作からはうかがい知ることが出来ないのに対し、外国人は自国との比較で説明してあることが多いので大いに参考になる。無論150年ぐらい昔のことなので、外国人とはいえその頃の人達の気質とは違うだろうとはいえ、鎖国直後の日本人よりは世界的視野に立ってものを考えるのに慣れていたヨーロッパ人の著作の方が、比較の問題とはいえ現代の我々の考え方により近いと考えてもいいと思われる。前者に比重を置いたとはいえ後者のも参考のために挙げてある。私は北海道の函館生まれなので、函館(幕末まで箱館)に関する記述には無関心ではいられない。そういう意味で昔の生まれ故郷がどうだったのか知ることが出来て本当によかったと思う。今後週1回ぐらい更新したい。

Posted by SATOH at 13:53 | Comments [1]

2010年08月28日

●日本の心 第2回

ロシア語の本は別にして、次回以降に挙げる日本語の本の8割か9割は図書館にあるものである。現に私は東京都葛飾区に住んでおり、区内には11の図書館があるが、インターネットで書籍の貸出予約が出来、最寄りの図書館で受け取ることができる。しかも区内の図書館になければ区外に問い合わせてくれるサービスもある。頼む本が古い本が多いからか、面白くないから借りる人がいないのか、ほぼすべて貸出順位1位で、だいたい翌々日には最寄りの図書館に届き、私の個人メールに知らせが届くという便利な時代である。これを利用しない手はないと思う。読みだして気に入らなければ図書館に返せばいいだけである。葛飾区内の本屋に私の著者は置いていないので、1冊でも置いてもらうのが当面の私の目標であるが、区内の図書館には8冊もある。そういうこともあって葛飾区の図書館は目が高いな、葛飾区に住む価値はあるなと思う今日この頃でもある。幕末・明治の自伝で、とくに文語調のものなどを読むときに当方の浅学非才のため、随分広辞苑や新字源の世話になった。歳のことを考えると何か情けない気がしないではないが、辞書を引いて分かるなら死ぬまで勉強だし、それもよしと考える次第。最近新聞の新刊紹介蘭が充実しているが、既刊の方にこそ良書が多いのはものの道理で、テーマ別にどういう本があるという紹介をした方がよいと思う。
ガイドの勉強のために当然日本の文化そのもの(もののあはれ、侘び寂び、幽玄、禅の悟り、粋、義理と人情)、外国人の書いた日本史についての本も読んでおり、参考となると考えたのを挙げてある。それが第一部「日本の心」である。第二部は「外国人の目で見た日本、および異国の日本人」であり、基本的に明治前後とし、その時代の雰囲気を窺う事が出来る聞き書き、実話、自伝なども必要に応じて配した。このほかに日ロ関係の文学も大いに参考になる。井上靖の「おろしゃ国酔夢譚」、司馬遼太郎の「坂の上の雲(日露戦争)」とか「菜の花の沖(高田屋嘉兵衛)」が有名だが、筆者が読んだもので、ガイドの業務にも役立つと考えられるものを、ロシア語で日本について書かれた文献や日本語の文献を小説も含めて参考のため挙げたのが第三部「その他」である。特に重要と思われるものは*を付した。この半年でこれに関する200冊を超える文献を読んだが、ここにガイドをするうえで第一部の方が参考文献としてはより役に立つ(即効性がある)と考えたのでこのように分けた次第である。拙著「ロシア人と日本観光案内」の中で書いた「観光案内のための参考書」は紙数の関係で、すべてを書ききれなかった。開国前後で外国の影響を比較的受けていないものをより多く読んだ。ただ日本独自の文化や日本人気質を知るため、上流階級の考え方については主に当時の自伝を、一般的な日本人のそれについては来日した外国人の記述や、篠田鉱造、下母澤寛などの聞き書きを、下層階級については、「職工事情」や「明治東京下層階級生活誌」などを読んだことを付記しておく。

Posted by SATOH at 18:39 | Comments [0]