2011年07月07日
●和文解釈入門 第59回
同時通訳というのはアポロの月着陸で有名になったが、宇宙飛行士が実際に業務で話すロシア語というのはどんなものなのだろう?例えば、宇宙飛行士の業務上の会話にはЗапитай ПСМ в ПГО АЗСом на ППС-10.(モジュールの計器貨物室のアラーム盤に電力を供給しろ。そのためには電力供給システムの10番パネルの自動トリップをオンにしろ)とか、Есть ГСО-3, ТК в ЛСК.(姿勢制御システム用意のサインがあれば、放射座標系の貨物宇宙船の姿勢制御維持を意味する)とか、略語が続出する。元宇宙飛行士のバトゥーリンЮрий Батуринの「ロシア宇宙飛行士の日常生活」Повседневная жизнь российских космонавтов, Молодая гвардия, 2011によれば、宇宙飛行士候補生は数年をかけて膨大な量の宇宙関係略式ロシア語を覚えるざるを得ないという。この略語は3文字以内で、正確な業務を遂行するためにはこういう専門用語の略語の知識が不可欠だと述べている。面白いのはロシア人のジャーナリストがしばしば宇宙飛行士を取材するのだが、いくら普通のロシア語を話そうと宇宙飛行士が努めても、正確に状況を伝えようとすればするほど、このような略語ロシア語がかなり頻繁に顔を出すのは避けられない。略語が数百という程度のレベルではないのでまず理解不能であり、インタビュー記事が実際に宇宙飛行士が話した通りなのかは保証の限りではないと書いている。ロシア人同士でこうなのだから、宇宙での作業を通訳するのは、同時通訳も含めて、よほど前もって作業内容を知らされていないとまず不可能だというような気がしてきた。
国際宇宙ステーション内ではアメリカ人宇宙飛行士はロシア人宇宙飛行士に対してロシア語で質問し、ロシア人側は英語で答えるという。これは米露親善ということではなくて、相手の外国語で質問し、答えを相手の外国語ですれば構文が簡単明確になるからということであるとバトゥーリンは書いている。
設問)「仕事場まで近いんです。車でたった20分くらいです」をロシア語にせよ。
1. Близко до моего
рабочего места.
(До моего рабочего
места не так далеко.)
Дорога займет лишь
минут 20.
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これで大体よいのですが。「車で」が入っていません。最後にездыをつけるとよいと思います。私の回答は、До работы мне близко, всего минут двадцать езды.
このработаは仕事ではなく、仕事場(会社、工場など)で前置詞はнаを取る。仕事の意味ではвを取り、сдавать в работеというと(大型、精密)機械を作動試験に出す(作動試験を受ける)という意味になる。作動試験というのは通常は立会試験でこれに合格しないと発注者に納品できない。
Место работы рядом.
На машине ехать только минут двадцать.
よろしくお願いいたします。
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およそ20分などの使い方も理解されていて正しいのですが、一部日本的発想が見られます。それはだれの仕事場かという点です。Моё место работыとしないと、一般的に仕事場は近いという不自然なロシア語になると思います。
むむ、第44回と一緒(でもないか?)
(訳)
Моя работа - близко отсюда. Она находится во всего около 20 минут езды на машине!
今回も第44回の時と同様、不完了体現在を使います。
現在の状態(存在)を表わす不完了体です。
всего около は最近ニュースで耳にして自分でも訳したので使ってみました:
訳してみよう第17回です(ちょっと宣伝)。
в +前置格と並べて使えるかは知りません…
さて、正解は
あ、そうや。минут двадцатьという手があったがな…
>宇宙飛行士の会話の略語
これぞ宇宙語!さっぱり分かりませんね(もう笑うしかない)。
>相手の外国語で質問し、答えを相手の外国語ですれば
>構文が簡単明確になるから
そうなると込み入ったことを伝える際にもどかしいような気もしますが…
あるいは国際宇宙ステーション内でも略語が独自の発達を遂げているのかもしれませんね。