2007年06月09日
●帯研(第90回)
自分の経験から言って新米の通訳が嫌がるのは、その場での演説、つまり前以て演説の原稿をもらわずに、その場で好き放題しゃべるのを通訳させられるときである。これに一応慣れると、次に嫌なのは小話の通訳である。帯研の参加者が帯研100回ぐらいやれば、ロシア人のする大抵の小話には驚かなくなるだろうから、そのぐらいの効能はあるかもしれない。まあガイド試験やロシア語検定には受かるかどうかは知らないが、でもロシア人相手の実戦用なら、よっぽど帯研のほうがそんな試験より度胸がつくのは間違いない。今回の課題は、
Едет качок в автобусе. Женщина сзади спрашивает его:
- Вы выходите?
- Выхожу.
- А перед вами?
- Выходят, только они об этом ещё не знают.
設問1) 誤りがあれば訂正して和訳せよ。
もう90回になりますね。過去に出題していただいた小話もまだまだ咀嚼しきっていないので、ときどき振り返ろうと思います。
今回のは前回・前々回に比べると読んでピンと来たのでオチの理解はなんとか大丈夫かと思いますが、帯研は油断大敵のため、若干不安です・・・。
<回答です>
誤りはないと思います。
Вы выходите?は現在の予定と捉え、будетеはつける必要はないということでいいのだと思います。
<和訳です>
筋骨隆々の男性がバスに乗っていました。後ろの座席の女性が尋ねました。
「降りますか?」
「降りますよ」
「前の席の方たちは」
「降りますよ。ただまだそのことを知らないだけですがね」
男性の逞しさに魅せられて女性が次のバス停で降りるのかどうか男性に尋ね、次のバス停で男性が降りれば自分も降りようと考えたのでしょう。でも気になって前に座っている女性も同じ質問をしたかどうかたずねたところ、この男性、よほど自分のオトコっぷりに自信があったのか(以前もそういうことがあったのかもしれませんが)、自分が降りるから前に座っている女性たちも降りることになると断言したという話ですね。
ボディビルダー風の男性はロシア女性に受けがいいのですか?
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выходитеについてはその通りです。城田先生は、現代ロシア語文法(中上級編)の119ページに、「次で降りますか」をВы будете выходить на следующей остановке?と書いていますが、モスクワで週に1回は地下鉄に乗っていましたが、Вы выходите?以外は聞いたことがありません。будетеをつけると、「~するつもりである」という意味で、文法的に正しいとは思いますが、日常的には使わないと思います。さて和訳ですが、和訳だけ見ると正しいように見えますが、その解説を読むと、考えすぎだと思います。качок = физически сильный молодой человек, натренированный специально силовыми упражнениями.ということで、「筋肉マン」のことです。女性は自分が降りるので、筋肉マンにたんに降りるかどうか聞いたに過ぎないと思います。また筋肉マンの前にいる人たちは、必ずしも妙齢のご婦人ではなく、多分2~3人の男でしょう。この人たちが次の駅で降りるかどうかは知りませんが、筋肉マンは(自分が降りるために)この人たちを押し出して、それでこの人たちは自然に降りるはめになるということだろうと思います。私の訳は、
訳)筋肉マンがバスに乗っています。後ろの女性が彼にこう尋ねます。
「降りますか?」
「降ります」
「前の方は?」
「降りますよ。ただそのことをまだ知りませんがね」
なるほど、混雑したバスの話ですね。
考えすぎでしたね。