2013年04月06日

●続和文解釈入門 第55回

デパートで「御来場のお客様にご案内申し上げます。ただ今8階ではバーゲンセールを開催中でございます」という類のアナウンスを聞くことがある。これを露訳すると、Мы сообщим Вам, покупателям. Сейчас идёт распродажа на восьмом этаже. となりそうに思う。ところが、ロシア語としては非常におかしい。接続語なしで二つの文が続いているのである。しかも最初の文は「御来場のお客様にご案内申し上げます」という短文の露訳としては、伝えるのが未来の時制ゆえに完了体未来形が来ており、一応文法上正しいように見える。しかし、考えてみると、日本語本来の用法では、述語が後に来るから、「ただ今8階ではバーゲンセールを開催中であることを、御来場のお客様にご案内申し上げます」となるはずである。これは発話と共に動作が始まり、発話の終了と共に動作が完了し、その結果が残る(発話終了と同時に伝えたい内容が聞き手に理解されるという意味で)わけだから、文法的には遂行動詞ということになる。しかし、これだと文が長すぎて、何を言わんとしているか、よほど注意して聞いている買い物客でないと意味が聞き取れないはずだ。遂行動詞の構文にもかかわらず、英語や、ある意味ロシア語風に、意味を的確に伝えるために、アナウンスでは、文を二つに分けて、述語を先に持ってくるという工夫がなされたのではないかと思われる。だから、この最初の文を露訳するには、Дорогие покупатели! Мы сообщаем Вам, что сейчас идёт распродажа на восьмом этаже. とするのが自然だと言える。このように、日本語の文でも、文ごとに訳してゆくと、ロシア語としてはおかしい文になることを指摘しておきたい。

出題)警察官が強盗に、「警察だ、全員床に、伏せるんだ」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2013年04月06日 07:42
コメント

Полиция ! давай всем
опустить головы на
пол.
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いくつか問題があります。頭が取り外しできるなら、こういう構文も可能かもしれません。それとдавай + 完了体未来形(または不完了体不定形)という語結合を忘れてはなりません。давай(те)は前に説明したと思いますが、一人称複数の命令形です。つまり話し手も命令に従うわけです。お答えだと警察が強盗と一緒に床に伏せるということになります。
 一番問題なのは、完了体を用いているという点で、命令法の体の使い分けを理解していないことになります。『和文露訳入門』5-1-1を参照願います。私の答えは、Милиция! Всем на пол! Ложись! (Лежать!)   
「床に伏せる」はлечь на полだが、答えに不完了体が来ているのは、警察官にとって、犯人を確保する以上、強盗が床に伏せるのが当然という意識があり、その分かり切った動作への合図(着手、促し)だからである。Лежать!は犬への命令で、「伏せ」などにも使うが、これは飼い主が、犬がその場では伏せるのが当然という意識があるからである。不定形の命令は強意である。「地面に伏せろ」ならЛожись на землю! (Падай на землю!)で、いずれにせよ同じ理由で不完了体命令形が来る。
 Всем лечь на пол, руки за спину!(全員床に伏せろ、手は後ろに)のように、完了体が来る場合もあるが、警察官が犯人を逮捕した時に、パトカー(壁)に手をつかせるなど、他に可能性がある場合で、必ずしも犯人に床に伏せさせるのがこの場では自然だと警察官の考えない場合である。当然だという意識が警察官にあれば、不完了体命令形を使う。

Posted by ブーチャン at 2013年04月06日 08:15

Я полиция! Ставь вверх дном!
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お答えを和訳すると、「私は警察だ。(何かを)逆さまにせよ」ということになり、後半はともかく、非常に分析的に考えていることになります。露訳するときに重要なのは、動作をイメージすることです。銀行強盗を捕まえようと警察官が来たとして、出題のロシア語を言ったとすると、発話する警察官は一人です。ここからЯというご回答になったのでしょう。ただ私は警察だと警察を代表して言えるのは、警視総監、署長などのトップです。警察というのは警察官全体の集合名詞ですから、抽象的な一人が全体を示すというのはありえますが、具体的な一人であるяが全体を示すというのは警察トップ以外は難しいと思います。逮捕には通常警察官一人ではなく何人かで来るでしょうし、яというのは全体の一人であるはずです。
 動詞が間違っていますが、それ自体は大したことではありません。語彙はそのうち覚えます。出題のロシア語を実際に使う人はほとんどいないでしょうし、重要なのは出題のような場面でどういう体を使うかが分かっているかどうかだからです。それが出題の狙いでもあります。前回もそうでしたが、体の用法は正確です。語感がロシア人並みによいのかもしれません。ただ、感覚で80%、90%体の用法を正しく分かっても、100%というのは無理でしょう。私のように理屈で体の用法を覚えることを勧めます。語感の良い人が体の理屈を覚えれば鬼に金棒でしょう。今後の精進を祈ります。

Posted by ヨタロウ at 2013年04月06日 12:26

Полицейские приехали!
Лягте на животе! (ничком)
話の流れがなく、緊急性があるのでсовにしました。
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理詰めに考えようとされていることは理解できます。不完了体は話の流れというよりは、話者が、どう思っているかです。つまり、第三者から見ても、話し手から見ても、聞き手から見ても、客観的(あるいは話に流れに沿っていると)ということではなく、話し手がかくあるべき(当然だ)と考えるということなのです。「おかけなさい」にСадитесь!と不完了体命令形がくるのは、既存の参考書では、着手(促し)と説明されています。これはこれで正しいのですが、不完了体の本質から考えると、話し手が、聞き手や第三者がどう思うかどうかにかかわらず、その場でそうすることが当然とであるとみなしての命令形なのです。「おかけなさい」は、聞き手やその場の雰囲気で座るのが当然というよりは、話し手に座るよう相手に勧めるのが当然だという意識があるからです。
 ナイフを持った追いはぎが通りで、「オーバーを脱げ」と言ったとします。これはСнимайте пальто!と不完了体命令形を使います。犠牲者がどう思うかは関係ないことがお分かりでしょう。あくまで追いはぎがその場で当然(ナイフを持って脅す以上相手が要求をのむことは当然だという意味で)と思うから不完了体が来ているのです。
 体の使い分けというのは、あくまでも話し手中心だということをご理解ください。

Posted by ゴ at 2013年04月06日 23:06

(お題)
(警察官が強盗に)警察だ、全員床に伏せるんだ
(コーシカ訳)
Мы из миллиции! Лягите, вы все, лицом вниз на полу!
新規の命令ですから完了体が来ると思われます。
警察だ!が枕にあるとはいえ、強盗がおとなしく伏せるとは警察も考えていないでしょうから。
さて、正解は
…と思とったら、「伏せて当然」の不完了体命令でよいのですね!
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警察官が自分の思い込みで犯人を逮捕や確保するわけではなく、警察官が犯人を拘束、ないし逮捕する場合は、上からの命令があるか、現行犯逮捕のように警察官(この場合話し手)にとって職務遂行が当然であるという状況下では、話し手にとって流れに沿って行うのが自然であるということで不完了体命令形が来ます。ですから新規の動作ではありません。新規や話の流れに沿ってというのも、まわりから見てということではなく、話し手の意識の問題です。極端に言えば、聞き手や第三者がどう思おうと関係ないのです。話し手がどう思うかどうかによって体の使い分けが決まります。ちなみにлечьの命令形はляг, лягтеです。лечьは方向を示しますからна полとなります。

Posted by コーシカ at 2013年04月07日 23:48
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