2017年03月18日
●和文露訳要覧第191回
出題)「この前モスクワで殺人がなかったのは、ちょうど7カ月前の5月1日だけだった」をロシア語にせよ。
Первое число мая точно 7 месяцев назад явилось единственным днем,
когда не произошло убийство в Москве в прошлый раз.
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первоеではなく、только первогоとすれば、もっと簡単だと思います。それとпрошлый раз = предшествовавший настоящему раз; прошедший (минувший) раз(以前、つまり直近も含め過去において)であり、в последний разはнепосредственно предшествующий настоящему; предыдущий(直近の)という違いがあります。私の答えは、В последний раз в Москве не убивали только 1 мая, то есть ровно 7 месяц назад.
До этого в Москве не происходила убийства только 1-го мая, ровно семь месяцев назад.
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до этого времениでしょうね。それと殺人は可算名詞ですからне происходило убийствでしょう。
Последний раз только первого мая, ровно 7 месяцев назад, в Москве никого не убивали.
動作の無でHBとしました。よろしくお願いします。
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正解です。点過去(アオリスト的用法)として完了体過去形も使えないことはないですが、そうなると否定の強調ということでни одногоをつける必要がありそうです。出題は5月1日を期間と考える方が自然です。
Первое мая, точно семь месяцев назад, только в том дне совсем не произошли в последний раз убийств в Москве.
宜しく御願い致します。
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完了体過去形を使うなら否定の強調とすべきですし、出出しのようにややこしくしなくても、Только первого маяとすればすっきりするはずです。文をややこしくすると聞き手の理解を妨げることになるわけで、その点を考慮する必要があります。それと主語(殺人)がないわけですから、主語は否定生格となります。
いくつもヴァリアントを挙げてしまうのは、自信のなさの表れと自覚しつつ……、今回もご指導どうぞよろしくお願いいたします。
Предыдущий день без убийств случился в Москве ровно 7 месяцев назад, только 1 мая.
★文脈によっては、
день фиксировался; день зарегистрирован; день имел место; день состоялся; день пришёлся нa......等の表現が使えそうな気がします。
★「この前」について。原文の視点が置かれている日も殺人がなかった日なのか、それとも単に最後に殺人があったのは……、と回想しているだけなのか。それによって使う形容詞が変わるかと思いますが、今回は前者を想定しています。предшествующий день;прошлый день も同様に使えると思います。
★もし「殺人」を複数にしない場合は、ある時間の幅があるので、
день, когда не было совершено ни одного убийства
とでもすればよいでしょうか。
★一番の悩みどころです。前半節は日数を限定していないので、деньを使うのが妥当かどうか不安が残りましたが、それ以外に思いつきませんでした。ただ、この問題が解決しないと、後半節の「だけ」につながらないんですよね……
...когда было затишье без убийств を使う案も考えましたが、原文に対して作り込みすぎな気がして却下です。
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別にいくつ文を出してくださってもかまわないのですが、番号を振っていただけると助かります。最初の文は「前日」と訳されていますが、「このまえ」が前日とは限りません。случилсяの主語は何でしょう?動作がなかったのですから、不完了体過去形を使うのが普通ですし(否定の強調として完了体過去形が使えるのは他の方へのコメントに書きました)、動作対象がないのですから、主語は否定生格となるはずです。二つ目の、「文脈によっては」も動作がないという視点が欠けているように思います。3つ目についてはすでに述べました。4つ目は殺人は可算名詞であり、可算名詞が存在しない(無である)なら、すべてを否定するという意味で、複数生格を使うべきです。ни одногоが否定の強調なので、これならслучилось(主語が否定生格なので)が使えます。時間の幅がある(5月1日が期間である)とお考えなら、否定の強調は使えません。
5つ目、どうしてもбезを使いたいのなら、остаться безという句動詞があります。
お答えを見る限り、文法に非常にご興味を持たれているようなので、私の考える方向と似ているような気がします。なにか腑に落ちない点があれば、出題以外でもかまいませんから、尋ねていただいてかまいません。できるだけのお答えをしたいと思います。
コメントを拝読すると、自分は何を見当外れのところ悩んでいたのかと穴に入りたくなります。
ひとつだけ腑に落ちない点がありました。
お言葉に甘えて、こちらから質問させてください。私の訳案がденьにこだわり過ぎて後半節の「だけ」と齟齬が生じ、あらぬ方向に行ってしまったのは重々承知しております。これはあくまで純粋な向学心からの質問です。
<Предыдущий день について>
殺人事件ゼロの日だけに注目した場合、暦上の「前日」だけではなく、「前回の殺人ゼロの日」という意味にも取れないでしょうか。
自分の想像している情景を補ってみたのですが、
1 декабря в Москве произошел чудо-день. День прошел без убийств. Предыдущий день без убийств случился ровно 7 месяцев назад, 1 мая.
このような文脈でも使うのは難しいでしょうか。
犯罪情勢の統計による警察の発表、というイメージで訳しています。
なお、主語はденьそのものです。
в предыдущий деньと副詞的に用いたのではなく。
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何事も突き詰めて考えるのが上達の秘訣です。アカデミー版露露辞典を見ると、предыдущий = предшуствующий кому-, чему-дибо, бывший непосредственно прежде, раньше кого-, чего-либо 直前の、直近の(противоположное, последующий 「それに続く」の反意語)
предшествовать = происходить, случаться прежде чего-либо, перед чем-дибоとあり、передは直前のという意味の前置詞です。
以上から見て、предыдущий деньは前日と訳すべきです。過去の1日と言いたければ、прошлый деньとなりますが、普通は前回(この前の)という表現をつけざるを得ないと思います。語義に疑問があれば、まず露露辞典(アカデミー版でなくとも、Ожеговでもいいのですが、Ожеговは例文がないので私は買いませんでした。)を引いて見るのが、手っ取り早いと思います。
補習ありがとうございました。
今自分に必要なのは、実際に使われているかどうかより、純粋に原理に立ち返ることだと思っていますので、そのためにも、おっしゃる通り、辞書の定義は欠かせないですね。
ようやく何が問題かに思い当たりました。
私の頭の中には”記念日化”された「殺人0デー」がありました。
つまりカヴィチキや大文字を使って、その日を特別なものにすれば、предыдущийを使ったとしても少しはましなものになったはずです。
Предыдущий «день без убийств» случился 1 мая.
ただし、やはりこれは例外的かと思います。
自然な使い方ができる場としては、日付が変動的で、比較的マイナーかつ「殺人0デー」のような偶発的な事件ではなくあくまで予定された「特別な日」、たとえば学校行事などでしょうか。
Предыдущий День открытых дверей проходил в школе 1 мая.
Предыдущий «День добра» отмечали в нашей школе 1 мая.
いずれにしても今回の場合では、明らかに最善な訳文ではないので、使うのは断念したほうがよさそうです。
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いろいろ考えること、疑問点を持つというのは、なかなかできるものではありません。それが上達の秘訣であることはいうまでもありません。
случиться「起こる」という意味ですから、「あたる」という動詞にした方がよいと思います。例えば、На другой день воскресенье приходилось.(翌日は日曜に当たる) *= совпадать с каким-либо днём, часом и т.д.
「日」について誤解されているようなので、書いておきます。5月1日を時間軸の点と見るならば、完了体を使いますし、5月1日を期間(24時間)としてとらえるのなら、不完了体を使うということです。
(日曜にうちに来て下さい)Приходите к нам в воскресенье. <日曜のいつでもというニュアンス>
Приди в воскресенье. <日曜を点としてとらえているために、強制的なニュアンス。そのため非礼な感じを与えるので、通常はこういう言い方はまずしない>
предыдущий деньは前日という意味しかありませんし、やはり無理があります。前回、でも前日でも過去の時制の一点を示しているのは明らかですから、проходилとかотмечалиというような不完了体を使うのは体の用法から見ておかしいように思います。
なるほど、勉強になります。
文法を完璧にマスターすれば、ロシアのニュース記事や出版物の間違いなども指摘できるようになりそうですね。
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ロシアで出たニュースや出版物の誤記を指摘することもできるようにはなるでしょうが、そういうことよりも、どうして不完了体を使うところに完了体を使うのかなどを考えれば、田舎者や乱暴者というニュアンスを与えるためだとか(恩師の故新田実先生はソルジェニーツインの著作にそのような例が散見されるとおっしゃっておられました)、ニュースや文学作品を著者の意図するニュアンス通りに味わえる喜び(これはなかなか翻訳では味わえないかもしれません)に浸れるようになることは間違いないと思います。