2015年11月29日
●和文露訳指南第354回
『英文法のエッセンス』(江藤裕之、大修館書店、2015年)を読んだ。英文法の本質を分かりやすく説明した好著である。現在形(過去形)は現在(過去)の客観的事実に加え、話者が事実と考えていることも含むものを示すとか、未来には事実がなく、主観的な想定を示すためwillを使い、それがとりわけ意志を示す事なるなど、分かりやすく説明されている。動作動詞の現在形は習慣的な事実(ふつうのこと)を、現在進行形は一時的な事実(そのときのこと)を示し、状態動詞は恒常的事実(いつものこと)を示すという説明にも感心した。高校のときにこういう本に出合えれば、私のように理詰めに文法に取り組む学習者には、ロシア語文法を極める上でも、大いに助けになったろうと思われる。みなさんにもお勧めする。
ただ、和訳で未来を示すのに推測の「~だろう」を使うなど、学校英文法の欠点が踏襲されているが、これは日本語の特徴である非過去(現在と未来)を分けて英語との違いを学習者に理解させるためには、やむを得ないことなのだろう。それと、When it rains tomorrow, I will stay at home.を露訳すれば、従属節は不完了体未来形になるが、英語では従属節が現在形になるのを、「明日雨が降るという事実を仮に想定しているので現在形を用いる」というのは、これは時制の例外であるとする説明よりはましだとは思うが、かなり苦しいように思う。この点は同じインド・ヨーロッパ語族とは言え、ロシア語の方が論理的である。
出題)「低気圧はサハリンからオホーツク海へ向きを変えつつある」をロシア語にせよ。
Циклон меняет
направление
с Сахалина к
Охотскому морю.
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сはнаと対応しますから、サハリンの上からという感じがしますので、サハリン沖からとотを使ったほうが自然のように思います。私の答えは、Циклон смещается от Сахалина в Охотское море.
циклон = область низкого атмосферного давления
Циклон смещается от Сахалина в Охотское море.
宜しく御願い致します。
気象用語をチェックしようと、ここ数年来勉強している参考書の該当章を改めて目を通しておりましたら、上記の記述に偶然たどりつきました。低気圧にはциклон、高気圧にはантициклонとの訳語が割り当てられているようですが、相当する英語のCycloneはインド洋に発生する温帯低気圧を指し、多くの場合は地域的に限られて使用される用語ですので、ロシア語との対比が非常に面白く感じられました。
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正解です。ただ研究社のリーダーズ英和や研究社の露和を見てもциклонやcyclone両方とも、温帯性低気圧と、インド洋上の熱帯性低気圧(いわゆるサイクロン)の訳が載っており、何か誤解されているように思います。
Низкое атмосферное давление меняет направление с сахалина к охотскому морю.
過程でнвとしました。よろしくお願いします。
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сについてはブーチャンさんと同じですね、низкое атмосферное давлениеというのは「低い大気圧」ということであり、気象用語の低気圧は、低い大気圧の領域ということですから違うと思います。
Низкое атмосферное давление меняет свой курс из Сахалина в Охотское море.
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Сахалинは島ですから、結び付く前置詞はсかотであり、изではありません。低気圧についてはやまさんと同じですね。