2015年02月08日
●和文露訳指南第180回
このコーナーや『和文露訳指南』において、動詞の体や単数複数、その他のロシア語の文法事項において、自説を述べているが、少なくとも私は先達の知識の上に立って展開しているつもりであり、我流の説にあぐらをかいて、雲をつかむような話をしているつもりはない。せいぜいのところ、これまでの参考書と違い、会話における和文露訳の観点から述べているというのが、目新しいのかもしれない。ただ私の説を鵜呑みすることなく、自分の読むロシア語の文章で確認してほしい。おかしいと思えば、具体的な例でご指摘いただければ、それについて回答するし、私の説が間違っていればお詫びして訂正する。
出題)「彼は返答に詰まった」をロシア語にせよ。
Он не знал, что
ответить.
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出題は結果の存続ともアオリスト的用法とも理解できますが、それだと完了体過去形を使うべきだと思います。私の答えは、Он не нашёлся, что ответить.
Он не знал, что ответить.
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お答えをロシア人に見せても、よほど日本語の文法に通じた人でないと問題ないと答えると思います。お答えのロシア語自体は文法的に問題ありませんが、お答えを見る限り体の使い分けの本質を理解なさっていないような気がします。зналは不完了体過去形ですから、過去の時制でしか用いられません。ところが、出題は結果の存続かアオリスト的用法のいずれかと理解されます。もっというと具体的な1回の動作(過去ないしは近接過去)と言えると思います。そうであれば完了体の領域のはずです。不完了体の否定は動作の否定ですから、お答えは過去の時点で(具体的な1回の動作ではなく)「〔いつも〕どう答えるべき知らなかった」というふうに解されます。
不完了体でも、過程(進行形)、遂行動詞、評価解釈型同士など具体的な1回の動作を示す場合がありますが、それは完了体が現在の時制で使えない場合です。
Ему трудно было ответить.
Он затруднился ответить.
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二つ目は正解です。他に、Он затруднился с ответом.も可能です。最初のは過去の時制の状態なので、これだと詰まったというニュアンスが出ないように思います。
Он не смог ответить.
返答できない=不可能と考え、свとしました。よろしくお願いします。
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体の用法は問題ないのですが、詰まるというのは、窮する、苦しみ困るということですから、そういうニュアンスがを感じさせるような訳にすべきだと思います。ただ語彙については、いつも言っていますが、すぐに覚えることであり、重要なのは体の使い分けです。
Он затруднился с ответом.
アオリスト的用法の完了体です。
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正解です。
(お題)
彼は返答に詰まった
(コーシカ訳)
Он затруднился ответить.
詰まるのも返答も具体的1回の動作と考え、完了体を充てました。
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正解です。
Он затруднился в ответе.
結果の存続かアオリスト的用法
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正解です。ただ用例的にはответに関してはс ответомの方が多いと思います。затрудняться в понимании(理解に苦しむ)