2015年02月04日
●和文露訳指南第176回
会話での和文露訳のときには、実際に使える活用語彙активный запас словと文法の知識がものを言う。語彙というのは単語、熟語、慣用句、諺にせよ基本は丸暗記だが、単語だけを並べても意味やニュアンスが伝わるとは言えない。そこで必要なのが、語用論である。語用論というのは動詞の体の用法、単数複数の使い分けなど、実際にロシア語を話す上で必須となる知識であり、手段かつ武器である。露文解釈では必要がないということで、ほとんど無視されてきたが、拙著『和文露訳指南』は、その武器を実戦用に分かりやすく解説・整備したものである。
出題)「ひょっとしたら、それはすべて俺の空耳か」をロシア語にせよ。
Может быть, что это
все разве моя ослышка.
-----------------------------------
お答えのослышка = ошибка сулха, вследствие которого сказанное принимется за другое, сходно звучащееであり、AがBと聞こえたという聞き違いですが、空耳というのは、Aが聞こえたか、聞こえなかったかということなので違います。私の答えは、Может быть, мне всё это просто послышалось.
次回本文の『和文露訳指南』7-3項参照。
Неужели это всё моё воображение?
よろしくお願いします。
-------------------------------------
空耳ですから音に関係しますが、その辺がお答えにはありません。
Разве всё, что я слушал, просто ушная иллюзия?
---------------------------------
空耳は聞こえるものであって、聴くものではありません。сулшатьとслышатьの違いがお分かりではないようです。『和文露訳指南』10-8項参照ください。
(お題)
ひょっとしたら、それはすべて俺の空耳か
(コーシカ訳)
Все это, наверняка, у меня было галлюцинация слуха?
たぶん違う、もっと簡単かつ(医者語でなく)ロシア語で言えるはず…
-----------------------------------
幻聴слуховая галлюцинацияと空耳は同じことですが、会話ではこうは言わないでしょう。
1) Может быть, это все мои ослышки.
現在時制の連辞
2) Возможно, всё это мне послышалось.
結果の存続
---------------------------------
1)はブーチャンさんと同じで間違いです。2)は正解ですが、『和文露訳指南』7-3項では結果の存続としたのですが、空耳であり聞こえた動作を否定しているわけですから、アオリスト的用法で、かつ結果存続の無効の用法だと思います。この点についてはお詫びすると同時に、次回本文で改めましたのでご参照ください。
Все это, может быть, у меня было слуховой галлюцинацией?
よろしくお願いします。
-----------------------------------
『和文露訳指南』9-13項に書いたように、этоは主語ではなく、繋辞であり、主語はお答えの文では幻聴です。つまり была слуховая галлюцинацияとする必要がありますが、医者同士のかいわならともかく、こうは言わないでしょう。