2015年01月14日
●和文露訳指南第155回
このコーナーで出題の和文露訳用短文の回答をする上で理想的なのは、短文を読んだ瞬間、語彙は別にして、どの時制でどちらの体を使うべきか分かることであり、そのあとすぐその理由づけが浮かんで来れば、体の使い分けの奥義を極めたことになる。100%正しく体の使い分けが感覚的にできるなら別だが、そうでなければ用法が分かっていないと、次回は間違う可能性が常につきまとう。体の用法を極めるためには、ロシア語の本を精読多読する他に、書かれた(聞いた)ロシア文に対して、また日本語の新聞や文学、日常会話における体の使い分けを意識して、これを会話に応用するにはどうしたらよいのかという意識を常に持つことが必要である。バイリンガルなら自動的に体の使い分けができるから楽だと考える人が要るかもしれないが、バイリンガルというのは幼いころからロシアに住んでいた日本人や、日本に住んでいたロシア人だが、日常会話はペラペラでも、全員が通訳で使えるかどうかは分からない。通訳には長文読解力が要求されるからである。長文読解力を鍛えるには、日本語でもロシア語でも数百冊以上の本を精読する必要がある。それとともに体の用法(ロシア人ならテイルなどの日本語のアスペクト)などを極める必要がある。95%体の使い分けができればいいのではなく、プロなら100%できないといけないということになる。読書力がないと、ビジネスや政治経済、技術などでの標準ロシア語や、標準日本語が話せないということになりかねないからである。バイリンガルの方で通訳として成功している人たちは、自らさらにロシア語を向上させるために勉強を続け、このような努力している人たちなのである。ただ多くの通訳の方々は体の使い分けに、文法的なアプローチではなく、大量の例文の丸暗記で対処(感覚的な動詞の体の自動識別化、ロボット化とでもいうのか)なさっているように見える。私のアプローチとはこの点が違うし、文法的に対処する方が、効率的に、短期間で体の使い分けをマスターできるが、大量の例文丸暗記では出口の見えないトンネルにいるようなもので、だれもこれで十分とは言ってくれないのである。このコーナーの短文は日常会話というよりは、新聞雑誌、文学書で使われるような表現が多いので、体の奥義を極める上でも、また実戦にも大いに役に立つと自負している。
P.S. 139回のやまさんへの最初のコメントに、стрельнутьなどの一回体は、動作の一括化がないと書いたと思うが、これは間違いで、一回体も動作の一括化がある。『和文露訳指南』にその例が載せてあるのをすっかり失念していた次第。お詫び申し上げる。
Снова несколько раз кашлянул.(再び何度か咳き込んだ)
出題)「誰かから私に問い合わせがあったら、私はレストランにいますから」をロシア語にせよ。
Если кто-то меня
попросит, вы найдете
меня в ресторане.
------------------------------------------
-тоと-нибудьの使いわけが分かっていないようです。それと完了体未来形が二つ続いているわけで、そうなると動作が、次々と動作が起こっていることになり不自然です。例示的用法であれば、ある条件がそろえば、動作が起こる、そろわなければ起こらないということですが、出題は動作が起こる可能性が高い、ただ相手がだれかは分からないし、1回かどうか分からないという点で、例示的用法は使えないと思います。私の答えは、Если меня будут спрашивать, я в ресторане.
これはすでにレストランに行こうとしているわけで、быть動詞の現在形でも近接未来完了を示す事ができる。下記のような未来完了の例もある。
Если меня будут спрашивать, я буду после двух часов.(だれかか私のことを問い合わせきたら、2時過ぎに戻ります)
Если меня спросят, ищите меня в рестране,я буду там.
問い合わせがあるかは分からないので偶発的反復でсв、いないとき=レストランなので規則的反復でнвとしました。よろしくお願いします。
-----------------------------------
従属節に完了体未来形があり、時の状況語もないので、動作がすぐ起こると理解されることになり、不自然です。主文は論理的ですが、ロシア語でも日本語同様、私の答えのように非論理的なものです。
和文解釈第443回と同じ文と考え、その回答がなぜそうなるかを、4-1-1-9から考えてみました。
和文解釈第443回の答え:
Если меня будут спрашивать, я в ресторане.
消去法ですが、完了体だと
・具体的な1点を話し手は想定していることになる(出題ではあるかないか不明)
・具体的1回の問い合わせしか表せなくなる(出題では複数回の問い合わせもあり得る)
ために、そういった意味を一切持たない不完了体未来が使われていると理解しました。
я в ресторанеについては、予定の用法のようなイメージではないかと考えます。
今まさに食事に出る場面でしょうから、я буду в ресторане.では間がありすぎるように聞こえてしまうかも知れません。
--------------------------------
誠に申し訳ありません。以前に出題したことをすっかり忘れておりました。ただ既出の問題でも体の使い分けについて考察することはおっしゃるように可能です。お答えの最後の部分は正解ですが、後は違います。完了体未来形が来ていて、時の状況語がないと、動作が近接未来で完遂されると理解されるのが普通です。そのため、未来のいつの時点で動作が起こる(完遂されるとは限らない)場合は、不完了体未来形を使います。不完了体未来形は近接未来では使えません。если以下が複数なのは、不定人称文だからです。つまり掛けてくる人が、一人とは限らないし、発話の時点では分からないからです。кто-нибудьも使えるでしょう。
Когда кто-нибудь обратится ко мне с вопросами, тогда я буду в ресторане.
例示совと状態をあらわしているつもり。すみません、今度こそ覚えます。
-------------------------------
コーシュカさんのところにも書いたのですが、完了体未来形は近接未来を示すので、今回は使えません。будуでもよいのですが、そうなると、レストランに行くという動作はその時点では起こしていないということになります。例示的用法というのは、従属節も主文も起こるかもしれないし、起こらないかもしれないが、動作が起こったら、~するという意味です。ところが、お答えの、主文のя будуというのは、未来の時制で動作が起こると想定していることになりますし、例示的用法であれば、完了体未来形を使うという決まりがありますから例示的用法にはなりません。例示的用法は予測不能という場合に使います。出題は十分予測可能ですから使えません。
Если кто-нибудь будет меня спрашивать, скажите, что я в ресторане.
-------------------------------
正解です。
Если кто-нибудь будет меня спрашивать, помните, что я в ресторане.
促し
-------------------------------
正解です。ただジェーニャさんのようにскажитеの方がよいような気がします。
Если кто-нибудь попросит меня, я буду в ресторане.
よろしくお願いします。
------------------------------
時の状況語もなしに完了体未来形を使うと、近接未来と理解されるのが普通です。それとпопроситьは頼む、呼ぶという意味ですから、この場合はどうかなという気がします。呼ぶという意味では可能でしょうが、спрашивать = вызывать, заявлять о желании видетьの方がよいと思います。