2015年01月09日
●和文露訳指南第150回
繰り返し構文の主格 + 造格には、第119回出題で紹介したように、суеверие суеверием(迷信は迷信として措いといて)、сомнения сомнениями(疑惑は疑惑として)、поэзия поэзией(詩は詩として)、переписка перепиской(文通は文通として)「~は~として」があるが、人や人称名詞は用いられないようである。その代わりに、下記表現を見つけた。
Папенька сам по себе(パパはパパ)
Божья воля сама по себе, а надо и меры принимать.(神意は神意として、手段を講じなくては)
Лотерея-то лотерея, да кой-какие номерки и помеченные.(クジはクジとして、若干の番号札には印がついているのだ)
なぜ人や人称名詞が使われないかについては、私見だが、19世紀によく使われた同じ繰り返し構文の強調用法が関係していると思われる。この表現は現在では慣用表現にしか残っておらず、基本的に新しく作ることはない。дурак дураком(大馬鹿者)、баня баней (= как баня 蒸し風呂のようだ)、чудак чудаком(大変人)、сирота сиротой(天涯孤独の身の上)、 молодец молодцом(男の中の男)、туча тучей(雲霞のごとく、むっつりした)だが、このようにマイナスイメージの熟語が多いために人に対しては使わないのかもしれない。
出題)「だれも怪我していないか?」をロシア語にせよ。
Никто не ранен ?
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正解です。私の答えは、Никто не пострадал?
「怪我人はいないか?」ということ。完了体過去形の結果の存続であり、不完了体過去形にすると動作の有無の確認だが、過去において怪我をしたかどうか聞いていることになり、今現在とは関係のないことになる。命や金銭に関わることは主観的なことなので完了体を使うということもある。
Кто-нибудь получал трамву?
Никого не ранило?
ニュートラルに尋ねてるからнесов。
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ニュートラルというのをどういう意味でお使いか分かりませんが、動作の有無の確認ということでしたら、違います。
ранитьは完了体・不完了体同形であり、二つ目の文は正解ですが、完了体過去形の結果の存続です。
(お題)
だれも怪我していないか
(コーシカ訳)
Никто не ранен?
結果の存続の否定の被動形動詞過去短語尾です。
先回に引き続き、『そのまま使える!ロシア語会話表現集』の「交通事故」で耳にした表現をそのまま疑問文にして使ってみます(今日は間違ってへんはず…)。
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正解です。
Никто не ушибался?
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お使いの動詞は打撲に関する負傷についてだけだということと、不完了体過去形の動作の有無の確認、つまり過去における経験(だれも打ち身をしたことがないのか?)を聞いているので違います。結果の存続を使う必要があります。
Никто не ранен?
結果の存続で被動形動詞過去単語尾としました。よろしくお願いします。
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正解です。
Нет никого раненого?
よろしくお願いします。
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文法的に間違っているとは思いませんが、こうは言わないでしょうね。
Никто не ранен?
結果の存続
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正解です。
繰り返し構文といえば、この前Репкаというロシアの童話を読んだところ、тянет-потянет, но вытянуть не можетという文に出会いました。文脈から、引っぱっても引っぱっても…、という意味だというのは推測できるのですが、こういう形は初めて見たので印象に残りました。
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тянутьに体のペアとして対応する完了体は、語義に応じてпротянутьかвытянутьです。тянетは動作の提示で、次に続くпотянетは始発の動詞です。つまり「引っ張る」と動作をまず提示し、つぎに引っ張る動作の開始を告げ、その後に、「しかし引っこ抜けない」と述べているのだと思います。説話ですから、歴史的現在と例示的用法の組み合わせだと思います。