2014年12月27日
●和文露訳指南第137回
「完了体は話し手が動作遂行の結果として、時間軸の特定かつ不動の一点をイメージする」という私の完了体の定義は、完了体が過程を表す事ができないことに由来する。完了体は動作に焦点を置くわけで、それは動作にピントを合わせるゆえに、具体的な動作を示すのに完了体は使われるということになる。ここから完了体は動作のミクロ化(縮小化)を示し、不完了体は俯瞰的な、いわばマクロ的な動作を示すということも言える。
出題)「いざという時になると彼は二の足を踏んだ」をロシア語にせよ。
Когда решающий момент пришёл, он поколебался.
"踏む"ではないので、いつもではなく一度だけの事で、過去 → 完了体過去形 と考えました。
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正解です。私の答えは、В решающий момент он начал колебаться.
В случае надобности
он колебался в
решении.
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お答えは、「必要な時に(いつも)躊躇した」ですから違うと思います。いざというときは、「事件の起きた場合、ことの目前に迫った場合」と広辞苑にあります。
Он не мог решиться на действие в нужный момент.
よろしくお願いします。
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必要な場合と訳されていますが、弱いような感じがします。
(お題)
いざという時になると彼は二の足を踏んだ
(コーシカ訳)
1) Настал решительный момент, но он не решался.
2) Настал решительный момент, но он колебался.
いざという時が来たのは過去の1点なので完了体過去
1) は否定ないし未完了の不完了体過去
2) は過去の一定期間・繰り返し・状態で不完了体過去です。
решить系の語をあえて繰り返して強調するかな、と思い、あえて2通りで投稿します。
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二つ動作があって、その順序がはっきりしているときは、完了体の順次的用法を用いるべきです。不完了体は動作の完遂を特に示さないので、始まりも終わりも文脈に依存します。колебатьсяの動作が始まるのが、いつなのか分かりませんし、普通に考えれば、同時となります。特に2)はстал колебатьсяとすると正解です。ロシア語らしくするためには、статьやначатьを順次的用法を作るための道具と考えることが必要です。
2)については、構文的にはおかしくないのですが、「いざというとき」が躊躇するという規則的反復とはなじまないと思います。つまり、二つの動作があって、両方が規則的反復ではあるが、動作の順序が明確なときには、先行する動作を完了体過去形で示す確述(確言)〔『和文露訳指南』9-2-3項参照〕という用法があり、残りの主文は不完了体で示します。もちろん先行する動作を完了体未来形でも示せますが、その場合は例示的ニュアンスが出ます。両方とも不完了他にすると、「毎日朝起きて、ご飯を食べる」というような文でも、勘ぐれば布団の中でご飯を食べるということもありうる、つまり不完了体は動作の始めや終わりを示すということが、曖昧としているため、二つの動作は同時という場合で使われるのが普通だからです。『和文露訳指南』の改訂版が出るとすれば、上記のことを書き加えるつもりですが、どうなるか分からないので、一応ここに書いておきます。
В нужный момент он не мог решиться.
(он оказался нерешительным.)
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必要な時では弱いでしょう。
В нужный момент он колебался.
過去の反復
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必要な時では弱いということと、いざという時が規則的反復を示すのかとか、よくあることなのかというと、そういうことはないと思いますので、不完了体を使うのは間違いだと思います。