2014年12月24日
●和文露訳指南第134回
トルストイの『読書範囲Круг чтения』にブーカБукаという人の箴言がよく出てくる。ロシア語のбукаはお化けという意味だが、調べてみるとこの人は本名アルハンゲリスキーА. И. Архангельский(1857~1906)といい、獣医から時計職人になった人らしい。「精霊、救世主、聖母、天使たち、聖人、聖者、奇跡を起こす人たち、イコン、複数の十字架、数知れぬ絵やものが豊穰の角から出る神々のようにばらまかれている。最大の驚きは死者の体の一部(мощиのことを指しているのだろう)さえもだ。これは近代のエジプトのミイラと同じだ」と非難している。私が以前書いたように、一神教であるはずのキリスト教にも多神教の要素があり、庶民の中には聖母やそれぞれの聖人を、具体的な御利益(家内安全とか病気の平癒、家畜のお守り)に分けて信仰する人もいるわけで、彼はそれをものへの隷属化(執着)であるとして強く指弾している。
出題)「運転手が駐車場ではないところに車を置いて、罰金を払うということはこのようによくあることだ」をロシア語にせよ。
Как видите, часто
встречаются такие
случаи, что водители
ставят машины вне
стоянки и платят
штраф.
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困りましたね。偶発的反復が分かっていらっしゃらないようです。ブーチャンさんのような上級者が分からないということは、私の説明に問題があるのかもしれません。次回の本文で別の角度から説明してみましょう。それとвне стоянкиというのは駐車場の外にということで、出題とは必ずしも一致しません。私の答えは、Так и случается: поставит водитель машину не на стоянке – заплатит штраф.
偶発的反復の復習。第130回参照。
Такие случаи часто бывают, чтобы водители оставят машины не на стоянках и уплачат штрах.
бываютは慣習でнв、置く、払うは偶発的反復でсвとしました。止める、払うという順次的な意味になる恐れがあるような気もしますが。よろしくお願いします。
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順次的というのはよいところに目を付けました。おっしゃるように偶発的反復です。このように何か目印を見つけるのはよいことです。ただчтобыは目的構文で使えませんし、その節は仮定法扱いですから過去が来ますから違います。уплатитьというのは、ガスや水道などの公共料金の支払いに用いるのが普通です。заплатитьにはそのような制限はありません。詳しくは『るいごプラス!』参照ください。偶発的反復では主語は単数が普通です。詳しくは次回本文を参照ください。
Это часто бывает так, что шоферы поставили в месте, которое не стоянка и заплатили штраф.
чтоの後は順次的用法かなと思い、完了体過去形にしました。
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順次的用法は順次的用法です。ただ完了体過去形の順次的用法だと動作が1回ずつとなり、1回ずつの動作にчасто бываетとあるのは論理的におかしいことと、что以下が完了体過去形で、主文がбываетと現在の時制ですから、これもおかしいことにはなりませんか?
Водители ставят машины в местах не для парковки и оплачивают штраф, вот такие случаи могут возникнуть нередко.
起こり得る、でсов。
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偶発的反復が理解されていないということになります。
んんっ、偶発的反復やな!
(お題)
運転手が駐車場ではないところに車を置いて、罰金を払うということはこのようによくあることだ
(コーシカ訳)
Таким образом, часто бывает то, что водители поставят машину на том месте, где не стоянки, и уплатят штраф.
быватьは繰り返しと動作そのもの(と不完了体しかないので)不完了体現在
節の中は例示的用法の完了体未来です。
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正解ですが、偶発的反復というのは一つの動作を例として(例示的に)反復や慣用という動作を示す用法であり、тыを主語にした普遍人称文でよく用いられるので、主語は単数にすべきです。それとзаплатитのほうがよいでしょう。
Часто бывает так, как водитель паркирует машину не на стоянке, и из-за етого ему придётся платить штраф.
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不思議な文ですね。бываетの主語がなく、無人称動詞ですが、それだと次の節につながりません。какも接続詞ですが、так, какでは様態を示しており、この場合は違います。чтоという接続詞を用いるべきです。паркируетという単語はありません。парковатьでしょう。етогоではなくэтогоでしょうが、чегоと関係代名詞を持ってきた方が自然です。前の文が規則的反復なのに、どうしてпридётсяと完了体が来るのでしょう?しかもその後がплатитьと不完了体不定形なのはめちゃくちゃです。いずれにせよ偶発的反復を理解されていないということになります。
Так часто бывает, что водитель штрафуется, когда паркуется в местах не предназначенных для парковки.
часто бываетで一般的な事象になり、続くштрафуетсяも同様に不完了体現在形。 または、когда以下を条件節の不完了体現在形にしたため、偶発的反復にはならないと考えました。
運転手は一般化できると考えて単数形にしました。
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つまるところ偶発的反復をご理解なさっていないということになります。出題を見ても分かるように、これだけ具体的内容が規則的反復になると考えるのはおかしいと思わなければなりません。規則的反復の、しかも順次的用法というのは、「しばしば朝7時に起きて、朝食を食べ、会社に行く」というような、結果のニュアンスがないような文を指しますが、これと出題の文を比べてみると分かります。次回本文に別の角度から偶発的反復を解説しますが、それでもよく分からないようであれば、具体的に質問願います。偶発的反復、しいては例示的用法をマスターしないといつまでも外人ロシア語のままで、意味は伝えられるが、ニュアンスは伝わらない、あるいはロシア文学の作者の意図が伝わらないということになりかねません。
運転手の単数は正解ですが、この場合一般化ということではありません。総称(一般化)というのは、運転手の語義の本質に共通するものであり、運転手というのが駐車場以外に車を置き、罰金を払うというのが常態化しているというのなら別ですが、そういうことはないでしょう。
Как вы видите, часто случается так, что водитель поставил машину не на парковке и заплатил штраф.
例示の完了体を過去形で使ってみました。
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発想的にはいいところを衝いています。過去の時制に例示的用法というのはありましたっけ?完了体過去形というのは、動作が起こり、その結果が生じたという意味か、相対時制の確述のように、未来における二つの動作のうち最初に動作が終了するものを指すか、仮定法過去で用いるかですが、例示的用法では用いられません。それは例示的用法が仮定を含むからです。動作が確定し、それのみならずその動作の結果も生じているというのであれば、仮定の余地はありません。『和文露訳指南』4-2-3項に書いたように、例示的用法は過去の時制で用いる場合にも、形式上は完了体未来形を用います。ですから、動詞を完了体未来形に変えるだけで、お答えは正解となります。
すみません、なぜか過去形が使えるんじゃないかと思い込んでいました。ところで、ネットで以下のようなロシア語の文章を見つけました(http://www.ferra.ru/ru/byt/review/how-to-choose-dishwasher/#.VJx10sAIA)。
Посудомойка работает очень просто. Нажали на кнопку — пошла вода, горячая или холодная, в зависимости от подключения к трубам; в рабочую камеру отправилось специальное моющее средство, и машина тотчас же принялась мыть, чистить и ополаскивать.
和訳:食洗器の使い方はとっても簡単。ボタンを押せば、接続されている管に応じて熱・冷水が噴出し、器内に洗剤が送られ、すぐに洗浄、汚れ落とし、そしてすすぎが始まります。
このように完了体過去形のオンパレードですが、これも躍動感を伝える手法で、意味としては上記和訳になるのでしょうか。
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これは相対時制(『和文露訳指南』9-2-3項参照)でよく使われる、確述(確言)と私が名付けた用法です。正式な用法を知らないので仮にそう名付けました。私だけでは不安に思われるかもしれませんので、A Grammer of Aspect, J. Forsythの6.8項にいくつも例文が載っていますが、一つ挙げると、
Как только кто-нибудь из студентов поставил неправильно ударение, употребил не то слово, я замечаю это сразу.(学生の誰かが力点や言葉遣いを間違えたりするとすぐ、私には分かる)
口語でよく使われる習慣、一般的真理を示す用法とフォーサイス先生が呼んでいる用法ですが、完了体過去形を使うことで、話し手に完了体の持つ順次的用法、動作の完遂を示すことができるという利点がありますが、ご提示の文のようにくどく続けるというのは、プロのコピーライターが作った文とは思えません。特にотправилосьなどは、普通の動詞положить とかпосыпатьを使ったほうがよいように思います。
訳はお書きの通りです。フォーサイス先生の呼ぶ習慣、一般的真理というように特別に分けて用法を考える必要はないと思います。ご提示の文では主文はработаетと単なる不完了体の規則的反復です。これに完了体過去形の順次的用法と確述の用法が組み合わさったものだと私は考えます。ご提示の文は食洗機のコマーシャルであり、仮にボタンを押したらではなく、ボタンを押さないと話(コマーシャル)が始まらないわけで、その点が「仮にボタンを押したら」という偶発的反復と違います。順次的用法は完了体の特性であり、規則的反復でも使われますが、「朝起きて、テレビを見て、歯を磨き、会社に行く」という文では、テレビを見て、歯を磨きがテレビを見た後、歯を磨いたという風にはロシア語では必ずしもなりません。不完了体の持つ同時の動作という可能性もあります。完了体の順次的用法であれば、そのような誤解はありません。順次的用法は基本的に完了体の用法であり、不完了体の順次的用法は二つ(以上)の動作が、重なり合う場合を排除できないために、明らかに順次的用法で動作が終わったということを確実に言うためには、完了体過去形を使わざるを得ないわけです。完了体未来形にも先に動作が終了するという用法がありますが、どうしても例示的ニュアンスが出てきます。例示的用法と確述の用法を組み合わせることも可能です。
ご回答ありがとうございます。『指南』の該当箇所を読みました。食洗器の例文は完了体過去形+完了体過去形なので、победилやпропалといった、「もう終わりだ」という意味を示す動詞群を含む例文が構造としては近いと思いました(『指南』の確述の項の他の例文は完了体過去形+不完了体現在形が多いのに比べて)。順次的用法に加え、コマーシャルでは食器をあっという間に洗い終わるのを勝利のように表現しているのではないかとふと思いました。
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よく考えてみると、最初のНажалиというのは、同じ時制の転用でПошли!やПоехали!Let's pushという意味かもしれません。「ボタンを押してみよう。そうするとパイプの接続によって湯か冷水かが出る」
ただ文法的にはすべて説明がつくとはいえ、ご提示の文が標準ロシア語かどうかは疑問が残ります。少なくとも私の本やこのコーナーでは例文として挙げることはないでしょう。日本人が書いたからと言って、それが標準日本語ではないことは、ネットのサイトやブログの日本語を見れば分かることですが、同じことがロシア語にも言えます。仮にコピーライターが書いたロシア語とて、標準ロシア語として将来はともかく現時点で受け入れられるかどうかは別問題です。
初見は偶発的反復と考えながらも、часто бывает, что以下は不完了体になるはずという固定観念が抜けていませんでした。それに伴って、когда以下は条件節だから不完了体でよいと奇妙な理由付けもしてしまいました。
第130回のようにиногдаと完了体未来形が共存する例や、そもそもロシア語には時制の一致がないので一文の中に不完了体と完了体が共存してもよいと考え直し、以下に敢えて自分の回答文を偶発的反復に訂正してみました。Так часто бывает, когда водитель припаркуется в местах не предназначенных для парковки, его оштрафуют.
順次的用法に沿って順番も入れ替えてみましたが、いかがでしょうか?
勿論、今後はご回答のように「 : 」で文を区切ったり、「 , 」一辺倒ではなく、「 - 」で文をつなげたりすることが自然にできるように意識したいと思います。
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最後のоштрафуютという不定人称文は例示的用法としてはまずいでしょうね。例示的用法には不定人称文や命令形が使えないとなると、残りは完了体未来形の普遍人称文の活用ということになります。完了体未来形を使う普遍人称文の復習をしてみてはどうでしょうか。それと聞き手からいうと、途中で主語が変わるのは、意味の理解がこんがらがるような気がします。読む場合はいいのでしょうが。частоもダメとは言いませんが、つける必要はないと思います。