2014年12月21日

●和文露訳指南第131回

和文露訳の問題を作成するにあたって、一番信頼性が高いと思われていて、手軽なのは日本人とロシア人の分業である。日本人で話せるかどうかは別にしてロシア語の分かる人が和文を作り、それを日本語の読み書きができるかどうかは別にして、日本語の話せるロシア人に訳してもらって相互にチェックするというやりかたである。一見大丈夫のようだが、日本人がロシア語の体の使い分けや時制に、そのロシア人が日本語の時制に精通しているかどうかはこれまで問題にされて来なかったようだ。日本語とロシア語の時制が違うということすら気にもされず、会話が一応通じれば和文露訳の問題と回答は作れる能力はあると見なされているようである。相互チェックといっても、実質のところ語彙だけであり、出題される和文露訳の答えとなる露文は、つまりチェックするロシア人にとって、この露文を出題の和文とチェックすることになり、それはそのロシア人にとっては露文和訳であり、これは我々日本人にとっての和文露訳に相当するから、結構難しいはずだ。もしその日本人なり、ロシア人が日ロ両方の時制や体の用法に精通しているというのなら、二人でコンビを組む必要はないことになる。チェックが語彙はともかく、時制やアスペクト(体の用法のニュアンスも含めた和訳)が正確かどうかは大いに疑問である。一方その日本人にとっても、時制や体の使い分けを理解していないと正確にロシア語をチェックできないことになる。語彙が正しいというだけでは、訳の正確さは保証されないのはいうまでもない。これは前回出題した偶発的反復なども、この用法をその日本人がよく理解していなければ、時制が合わないということで出題から外されると予想されることでも分かる。出題されないのだから、いつまでたっても生徒は覚えないということになるのは必然である。

 このコーナーの短文に回答されたり、閲覧された方は分かると思うが、ロシア語の回答がロシア語として正しくとも、和文の意味を伝えていなければ間違いとなるのはよくあることである。こういうことは実際にやってみないと分からない。しかも出題の正解は一つとは限らない。正解と間違いの境界というのが曖昧な時もある。出題の日本語の解釈の仕方によっては、完了体と不完了体がそれぞれ可能な場合があるが、出題者としては、想定される全てを答えに網羅すべきである。またそのニュアンスの違いを明確にし、二つ解釈できるなら、解釈ごとに回答しなければ完璧な答えとは言えない。和文露訳を教える大学や講座が、そういうことも考慮して教えているのが大いに興味あるところである。どなたかご存知の方があればご教示いただきたいものである。

出題)「患者は急性の貧血を発症した」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2014年12月21日 06:10
コメント

Пациент заболел
острым малокровием.
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正解ですが、お答えは「発病する」ですが、貧血は症状の場合が多いようなので、語結合的には少ないかもしれません。私の答えは、У больного развилась острая анемия.
*развиться = возникнуть, образоваться

Posted by ブーチャン at 2014年12月21日 09:10

У пациента появился симптом острой анемии.
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意訳ですが正解です。

Posted by じぇーにゃ at 2014年12月21日 20:53

У пациента произошло острое анемия.

過去から現在に至る継続
(про-の接頭辞を持つ完了体動詞過去形)
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正解です。完了体過去形の結果の存続ですが、アオリスト的用法とも言えます。用語ですが、もちろん結果の存続(ロシア語ではперфект)は過去から現在に至る継続とも言えますが、動作の結果の継続であり、動作そのものの継続ではありません。しかし下記のような例文においては、おっしゃるような過去から現在までの継続とは言えません。地震が起こるという動作は過去(1906年4月18日)に1回起こったと言っているだけで、現在とは関係がありません。このような用法をアオリスト的用法と言い、おっしゃるような「過去から現在に至る継続」はその派生的用法であり、具体的な過去の時点から現在までを示すことができますが、普通は、少し前に起こった動作の結果が発話の時点(必ずしも今とは限らない)まで残っているということで、動作自体が継続しているのとは違います。

Именно здесь 18 апреля 1906 года произошло землетрясение.(正にこの場所で1906年地震が起こった)

私が呼ぶ過去から現在に至る動作の継続というのは、『和文露訳指南』3-1-3項のような不完了体現在形を使うものです。

Я работаю на фирме с 2001 года.(2001年から会社で働いている)

Posted by awarin at 2014年12月21日 22:46

偶発的反復はなかなか身に付きません。なぜかを考えますと、やはり習い始めのころにсвは「一回の行為」といったイメージがついており、複数回起こりうる行為にсвを使おう、という発想がとっさに出ないためと思われます。頑張っていきます。

У пациента появилась острая анемия.
アオリスト的用法でсвとしました。よろしくお願いします。
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正解です。完了体が「1回の行為」を示すのは、私が始めに習った「完了体は動作の完了を示す」よりも、優れた理解の仕方だと思います。「具体的な1回の動作を示す」と初学者に教えれば、もっとよかったのかもしれません。何事も最初が肝心であり、感覚的に体の使い分けをマスターした人はいても、理論的に教え方までマスターした人がおらず、教える側もよく理解していないからでしょう。やまさんのレベルなら偶発的反復でも意識するようにすれば、難しくはないと思います。

Posted by やま at 2014年12月21日 22:49

Пациент заболел острым малокровием.
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正解です。発病と発症は違うような気もしますが、貧血も病気と考えれば問題ないのかもしれません。

Posted by ゴ at 2014年12月21日 23:05

У пациента возникло острое малокровие.
アオリスト的用法か結果の存続
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正解です。

Posted by チジクピジク at 2014年12月22日 01:38

昨日は投稿しようとしてもそれ以上頁の読み込みが進まず、断念しました。

(お題)
患者は急性の貧血を発症した
(コーシカ訳)
Пациент заболел(а) острой анемией.

結果の現存ないしアオリストの完了体過去です。
さて、正解は…完了体過去で○。
回答に当たって検索してみましたが、острая амемияの語結合は確かに少なく、急性出血後貧血など間に何か入った例が多かったです。
развиться。英語も同じような文脈でdevelopを使いますから発想が似てますね。
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正解です。

Posted by コーシカ at 2014年12月22日 22:05
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