2014年12月19日

●和文露訳指南第129回

ガイド試験に受からないとガイドとしては働けないが、通訳に免許は不要である。ガイド試験に受かるためには、市販の問題集をやって、ガイド試験の傾向と対策を十分に練ることが基本である。ガイド試験に受かるためなら、そういう学校や講座、過去問題集もあるから、私などの出番はない。ただ、試験に受かった後や、ロシア語の通訳として働こうと考える時に、自分のロシア語の実力でロシア人に通じるだろうかという不安は初心者ならだれでも持つはずである。特にロシア語の場合は、暗記した例文がそのまま使えるぐらい例文や語彙のストックがあれば別だが、動詞の体の使い分けが難しい。日常会話に近くなればなるほど、なぜこの体が使うのか理解できないことが多い。使い分けができないと、次に話す時に又間違える可能性もあるし、正否の区別がいつまでも分からないことになる。それでそのまま例文を丸暗記ということになる。問題はその例文でどちらの体も使えるような例文や、覚えた例文にない会話の和文に出くわしたときである。確率50%だから運を天に任すしかないが、それではいつまでも体の使い分けが理解できないし、死ぬまで運に天を任すというゴールの見えない例文や語彙の丸暗記の道を突き進むことになる。

 体の使い分けについては入門や初級の段階で勉強を始め(私の指導のもとかどうかは別にして)、中級や上級に至る前にマスターすることが望ましいし、それは不可能ではない。その一環として。実際に投稿するかどうかは別にしても、このコーナーの出題の短文にトライすることで、ある程度自分の弱点は分かるが、独学の場合適切な指導なくして、それ以上進むのは困難だろうと思う。その学習者のレベルに合わせ、また希望を聞いて、個人向けにアレンジした私の講習を週1時間受け、毎日2時間私のアドバイスに従って自習すれば、ゼロから始めた人でも5年くらい(体の使い分けのマスターだけなら1年くらい)で、語彙は別にして、今の私の文法のレベルに達することは可能である。すでに中級や上級のレベルの人は、1~2年も真面目にやれば私のレベルに到達できる。実際にガイドをしている人や通訳している人でも、体の使い分けに自信がないという人もいるというのは私にとっては驚きである。そういうレベルの人が私の指導のもと体の用法をマスターするのは、コツをつかめば簡単である。そうでないと上級者であっても、ひたすら例文や語彙の丸暗記の道をたどるしかなく、出口の見えないトンネルをただ進んでいくようなものである。だれもこれで体の用法はマスター済みという指針を示してくれないからである。

 私の講習では、学習者に特に希望がなければロシア語のアネクドート(露文解釈中心で、語彙ではなく構文の会話への応用)を使うので、ロシア人気質や日常のトリビア(雑学)も分かり、それらはガイドや通訳の時にロシア人との無駄話(日常の話)の理解に役立つ。ロシア人と話していて、語彙はすべて分かるが、全体の意味が分からないというのは、このような日常のトリビアを知らないからである。これはアネクドートのオチを理解することで分かるようになる。このような一般的な日常会話集に載っていないような語彙も私の講習に含まれるし、アネクドートで頻出する歴史的現在、時制の転用、遂行動詞など上級文法をマスターする過程で、語彙の収集の仕方は教えるので、自分で必要と思う語彙は自分で覚えればよいし、私の出版した参考書を利用してもよい。私の講習では基本的に説明なしに丸暗記はさせないが、文法を覚える時点で例文も暗記することになるので、自然と実戦的な語彙は増えてゆく。後はロシア文学でも、ビジネスロシア語でも、ガイドでも自分の好きな分野の語彙を増やしてゆけばよい。

 不人気なロシア語の面白さをできるだけ多くの人に分かってほしいのと、ロシア語(体の使い分けも含めて)やアネクドート(日本ではほとんど政治小話しかこれまで紹介されてこなかったが)を通じて、日本人の知らないロシアの庶民の深い洞察とたくましさ、日常を笑い飛ばすユーモアとしたたかさ、温かさ、謙虚さを伝えたいというのが終生の願いである。

出題)「名を名乗るのだけはご勘弁願います」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2014年12月19日 08:29
コメント

Прошу прощения.
мне никак не хочется
представиться.
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嫌気を示しているので不完了体のпредставлятьсяとすべきです。『和文露訳指南』6-1-8項を参照ください。私の答えは、Увольте меня от необходимости называть имена.

уволь (те) と命令形でよく使うが、уволить = избавить от чего-либо неприятного, ненужногоは「(いい加減に)勘弁してよ」といううように不必要を示すので、不完了体不定形を取る。
называть себяでもよい。

Posted by ブーチャン at 2014年12月19日 10:14

(お題)
名を名乗るのだけはご勘弁願います
(コーシカ訳)
Разрешите мне, лишь бы не называл(а) мое имя.

лишь быを見つけたので使ってみます。
具体的1回の命令で完了体命令、否定の不完了体、仮定の過去と考えました。
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会話では通じるでしょうが、命令法と仮定法という二つの文を無理にくっつけたような感じです。Позвольте, не хочу называть себя.とすればよいだけで、覚えた手で使ってみたい気持ちは分かりますが、そういうややこしい条件文(形式上は仮定法過去)を持ち出さなくてもよいと思います。

Posted by コーシカ at 2014年12月19日 20:24

Я категорически отказываюсь только от того, что я говорю своё имя.
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お答えは、自分の名を私が言っているということのみ、断固として拒否する」というもので、不思議な文章ですし、断固としてというニュアンスは出題にはありません。

Posted by ゴ at 2014年12月20日 00:08

Простите меня за то что, я откажусь от представления себя по имени.
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非常にくどい感じがします。Простите, я не хочу называть себя.とでもすればよいと思います。
прости(те)には、文字通り「許して(ください)」という意味では、за + 対格という構文になりますが、挿入語としては「警告やしたことや言ったことへのお詫び」という意味の他に、出題の「抗議、不同意、拒否」という意味があります。つまり挿入語として使うので、заと共には使えないということになります。

Posted by じぇーにゃ at 2014年12月20日 03:12

Очень прошу позволить мне не представляться.
прошуは遂行動詞、не представлятьсяはそもそも動作を起こしたくないので不完了体としました。
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不定形の体の選択は正解ですし、その理由づけもその通りです。ただわざと気取って言うなら別ですが(喧嘩を吹っ掛けるとか)、もっと簡単に言えるはずです。Позвольте, я не хочу называть себя.
このпозвольтеは挿入語で、不同意、抗議、拒否を示します。私の答えもくどいのですが、普通はувольтеという挿入語を使った表現が普通です。ただот以下をつけた珍しい例文を見つけたので、ご紹介したまでで他意はありません。

Posted by 智 at 2014年12月20日 05:11

Простите, но я категорически не хочу сказать кто я на самом деле.
勘弁願うという言葉が思いつかず、こんなになりました。よろしくお願いします。
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大体いいのですが、категорическиを取るのと、кто яというのは、名前だけではなく、職業、生い立ちなど記憶障害を起こした時によく使われますから、この場合は違うでしょう。
не хочу сказатьという語結合は、говоритьより多いのですが、文例を見る限り、ничегоなどとの語結合が多く、嫌気というよりは否定の強調のように、主観がかなり強く出てくるような感じを受けます。

Posted by やま at 2014年12月20日 05:34

Разрешите, что я только не буду называть своё имя.
Разрешите : 要請
не буду называть : 否定的意図
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考え方としてはよいと思いますが、разрешитьはуволитьの意味では廃語です。Позвольте, я не буду называть себя.というようにпозвольтеやпроститеを挿入語として使えばよいと思います。無理に二つの文をくっつけるのではなく、挿入語というのを考えてもよい場合があります。

Posted by チジクピジク at 2014年12月20日 06:35
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