2014年12月18日
●和文露訳指南第128回
『和文露訳指南』10-3-5項を下記のように変更した。
その文脈ではゼロなのか、単数なのか、複数なのか分からない数(不定数)については、可算名詞の場合複数で示される。同様に無を示す場合、可算名詞では複数生格を取ることになる。ゼロも意味するところは無だから同じ扱いとなる。ところが「ひとつも~ない」という一つすらという強調の場合は単数となる。これはロシア語には冠詞が存在しないことと関係があるのかもしれない。つまり単数は定冠詞である「その the」を意味し、複数は不定冠詞 anyというような役割分担のように見える。
(むくみは〔まったく〕ない)Отёков нет.
(零度)Ноль градусов.
(空には小さな雲ひとつない)На небе ни облачка.
(こんなことはまだ一度もなかった)Такого ещё ни разу не было.
直接補語(対格)の場合、単数生格にすると具体的な何かが存在しないという意味になる。2-1-2-2項や3-1-8項にあるように、動詞の直接補語を否定する場合も原則は同じである。
(僕は預言者というものを好きではない)Не люблю пророков. <補語が単数なら特定の預言者が嫌いとなる>
出題)「現在この地区に強風波浪注意報が出ている」をロシア語にせよ。
Сейчас в этом районе
опубликовывают
предупреждение о
сильном ветере и
высоких волнах.
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今回は語彙は別にして体の使い分けについては結果の存続の現在の用法ということで、それほど難しくはないと思います。お答えのопубликовываютはвыватьから判断して、публиковать(不完了体)→опубликовать(その完了体)→опубликовывать(多回動詞)となり、過程はもちろん、状態の動詞でもないと思います。~ているという出題の日本語に引きずられたのでしょうか?私の答えは、В настоящее время по этому району передано предупреждение о сильном ветре и волнении на море.
Сейчас в этом участке дали предупреждение о буре и больших волнах.
不定人称文による受身の表現、その場合動詞は3人称複数形、注意報は既に出ているので完了体の過去と考えてдалиにしました。
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участок землиというのは土地の一区画であり、地域はрайонがよいでしょう。既に出ているというのは、結果の存続で完了体過去形を使ったとのことで、それ自体は間違いではありません。ただ完了体過去形というのは、文脈により(今回のように時を示す状況語がないと)アオリスト的用法と結果の存続の二つに解釈されます。つまり過去のある時点で注意報が発令された(、現在とは関係のない)のか、たった今発令された(現在も発令が続いている)のかが曖昧です。それを防ぐためには、不定人称文の受け身ではなく、被動形動詞過去短語尾を使って受身にして、現在の時制にすればよいのです。分かりやすく言えば、далиという完了体過去は、были даны(過去の時制、アオリスト的用法)とданы(現在の時制、結果の存続)の二つの解釈が可能であり、今回は後者を使うべきだと思います。буряは嵐であり、большая волнаяというのは一つの大きな波ですから出題とは違います。
Сейчас в этом округе объявлено предупреждение о возможности сильного ветра и высоких волн.
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округというのは行政的、政治的、経済的な国の管区で、選挙区、軍管区などと訳しますが、地域であればрайонの方が適切です。問題はв этом округеとすると発令された場所、つまり四国の高知に津波が接近しているとした場合、津波警報を発令するのは気象庁がある東京であり、津波警報は高知に発令されるであり、高知で発令されるわけではありません。
Сейчас по этому региону дана метеосводка о высоких волнах и буре.
作ってしまいました。よろしくお願いします。
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метеосводкаというのは気象概況であり、警報ではありません。сейчасというのは、今は今でも、非常に時間的間隔としては短いものを指します。『和文露訳指南』3-2-1-5項ご一読願います。構文としては、つまり体の使い分けは正確ですから、語彙の問題でしょう。ただсейчасのような基本語彙の意味をよく理解していないのは問題です。語彙を増やすよりも基本語彙を露露辞典を使ってよく理解することです。強風波浪注意報などはやまさんなら1分もあれば覚えるでしょうし、エクセルにでも保存しておけば、それを参照すればいいわけで、暗記する必要もないと思います。
(お題)
現在この地区に強風波浪注意報が出ている
(コーシカ訳)
Сейчас в этом районе объявляется предупреждение о бурной волне.
現在の状態または遂行動詞の不完了体現在です。
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объявлятьは遂行動詞でも使えますが、そうであれば、その日本語は「強風波浪注意報を発令します」というふうに、発話と共に動作が始まり、発話の終了とともに動作が終わるようにならなければなりません。この動詞は状態の動詞ではないので、結果の存続を使うべきです。сейчас やвэтом районеについては他の方のコメントを参照ください。
Сейчас этому региону дают тревогу сильного ветера и высоких волн.
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結果の存続を使うべきです。お答えだと反復の意味にしかなりませんし、それにсейчасというのもおかしい話です。
Сейчас в этом районе объявлена тревога из-за сильных ветра и волн.
結果の存続(被動形動詞過去短語尾)
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сейчасとв этом районеという基本的語彙や用法を間違えたというのは問題であり、いたずらに語彙を増やすよりも、基本語彙をの理解を徹底させた方がよいと思います。ただ体の使い分けは正解なので出題の狙いはクリアしたことになります。тревогаは警報であって、注意報ではありません。警報でも音とか光で作動するシステムや機械という意味ではсигналзация(アラーム)を使います。
На данный момент в этом регионе объявлена тревога из-за сильных ветров и высоких волн.
結果存続としての完了体を選びました。よろしくお願いします。
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体の用法は正解です。в данный момент = кратчайший миг в настоящем времени. (その瞬間)であり、на данный момент = значительный промежуток времени, а не кратковременный (миг),чаще с неизвестным сроком окончания. В юриспруденции - уточняющий термин промежутка времени совершаемого действия. (その時点)ですから、現在というのなら、普通にв настоящее времяを使ったほうがよいと思います。в этом регионеについてはジェーニャさんへのコメントを参照ください。
今日ロシア語のクロスワードの雑誌を買ったのですが、まったく歯が立ちません。クロスワードがすらすらできるようになるには相当の語彙力が必要になるのでしょうね。
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語彙だけではなく、雑学の知識やトンチも必要だと思います。クロスワードの前に、アネクドートでも読まれた方がよいかもしれません。アネクドートは雑学の宝庫です。