2014年12月13日
●和文露訳指南第123回
昨日のオフ会には私を含めて7人(チジクピジクさん、ジェーニャさん、Jiangminさん他)が参加され、ロシア語に関する興味深いお話がいろいろ聞けた。このようなロシア語学習者というマイノリティーの中の体の使い分けに興味を持つ人というマイノリティーの親睦を深める機会が増えるよう切に願っている。急な話にも関わらず参加された方には深く感謝申し上げる。お話を伺った中で、拙著『和文露訳指南』の説明が分かりにくいようだが、特定の人を対象に書いたものではなく、また正確を期してロシア語文法の専門家からも間違いを指摘されないよう工夫して書いてあるので、回りくどく感じられるのも著者からすればある程度やむを得ないと思う。学習者個々人によって分からない点は異なるわけで、そうなるとその人に合わせて教えるしかないということになる。私も今は元気だが、気力がどこまで続くかは分からないし、このコーナーも自転車操業みたいなもので、出題の種がなくなればそれで終わりとならざるを得ない。この2、3年中ならまだ元気だろうから、元気なうちに会話における和文露訳や体の使い分けを後進に伝えたいと思う。
出題)「欠陥設備返品の件は納入者と発注者の代表によりケースバイケースで解決される」をロシア語にせよ。
Вопрос по поводу
возврата
забракованного
оборудования
разрешается
в зависимости от
обстоятельств
представителями
поставщика и
заказчика.
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забракованное оборудованиеというのは、工場などで欠陥品としてはねられた設備ということで、こういうものは市場に出ないのが普通です。出題は販売されたが、欠陥が見つかった設備という意味です。в зависимости от обстоятельствでも、それほど問題はないと思いますが、ケースバイケースというのは、個々の事例に応じてということであり、случайが適当です。обстоятельства(複数で使うことが多い)はслучайの一時的な(短期的な)ある側面とか要素という意味で、事例全体を指すものではありません。私の答えは、Вопрос о возврате дефектного оборудования будет решаться представителями Поставщика и Заказчика в каждом отдельном случае.
ケースバイケースというのは個々の場合(事例、ケース)に応じてということであり、случайを使う。обстоятельствоというのは、случайの一時的な(短気的な)ある側面とか要素であり、ケース全体を指す事はない。出題は個別の契約書の文言であることは明らかゆえに、今後の(未来の時制の)動作の有無の確認である不完了体未来形を用いる。不完了体現在形だと、それこそ規則などにおける規則的反復(いつも~する)の用法となり、不自然である。
Проблема о возврате оборудования с дефектом решается по взаимному соглашению председателей поставщика и заказтика по делу.
動詞は規則的反復あるいは習慣でнвとしました。「件」はПроблемаとし、全体を表す単数としました。よろしくお願いします。
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проблемаはвопросに比べて、よりややこしい問題に使われます。решаетсяと不完了体現在形にすると、規則のようで、これからの事例とは思えません。それと相互の合意のもとにとケースバイケースは違うと思います。
Вопросы при возвращения недостаточного оборудования решаются между представителями поставщика и заказчика в зависимости от каждого случая.
東京の方がパルナスをご存じないというのは本当だったのですね。ということは、パルナスの歌も 耳にされたことがないと。(Песня:Мэйко Накамура)
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~の件というのは、各案件ということで単数のはずです。お答えは「設備不足の返還の際」という不思議な文言になります。具体的に不足するという形容詞なら、недостающие товары(不足の商品)などと使います。ケースバイケースの訳は意味は正しいとは思いますが、こうは言わないでしょう。
パルナスの歌は聞いたことはありません。
Вопросы о возбращении дефектных оборудований решаются индивидуально между председателями поставшиков и заказчиков.
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~の件というのであれば、普通は問題は一つで単数のはずです。оборудованиеは設備という意味では正しいのですが、よほど多種の設備を意味するのでなければ、рыбаと同様単数が普通です。不完了体現在形の反復をお使いですが、そうであれば、今すでに使われているということになり、出題は明らかに契約ですから、不完了体未来形の反復の用法が自然です。一つの設備であれば、納入者と購入者は普通は1社ずつのはずです。お答えは個人的に解決されるであって、ケースバイケースの訳にはなりません。
(お題)
欠陥設備返品の件は納入者と発注者の代表によりケースバイケースで解決される
(コーシカ訳)
Дело возвращении дефектного оборудования по каждому случаю разрешут представители со сторон поставщика и заказчика.
完遂の完了体未来です。
欠陥による返品は非常事態ですし、こうしたことは確実に遂行されないと困るので、完遂の完了体を使うことで動作そのものを強調すると考えました。
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ケースバイケースとあるのですから、反復の用法で、これは契約書の文言ですから不完了体未来形の反復の用法を使います。делоというのはファイル(一件ファイル)とか、関係する事柄(責務)ということで、問題という意味で使えないことはないと思いますが、他にも裁判という意味もあるなど、多義語ですから件という意味では使わない方がよいでしょう。
Вопрос возврата дефектного оборудования решается представителями поставщика и заказчика по-разному.
宜しくお願いします。
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語結合的に言えば、вопросы войны (современности)<戦争(現代)の諸問題>という風に生格でつけるのはできますが、~の件という意味ではвопрос о + 生格か口語的表現であるвопрос с + 造格とすべきです。これは『和文露訳指南』8-12項にもあるように、о + 前置格が全般的な(かいつまんだ)情報を示すことと関係があると私は思っています。8-12項は対格との対比ですが、動詞の直接補語を動名詞にすれば補語は生格となりますから、考え方は同じでよいと思います。つまりこの生格はすべての情報を伝えることになり、~の件という意味では適切ではないというのが、語結合辞典で示されるвопросの語結合に関する私の考えです。
不完了体現在形を使っておられますが、契約となると動作は未来の時制の反復となります。
Вопрос о возврате дефицитного оборудования решается представителями поставщика и заказчика в каждом отдельном случае.
反復(不完了体ся動詞現在形の受け身用法)
遂行動詞群にрешатьсяはありませんでしたが、特定のケースでは遂行動詞にもなり得ませんか?
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契約書なので不完了体未来形にすれば正解です。投稿者が今回の出題は例示的用法と未来の反復のどちらかを選ぶのかなと思っておりました。契約書というのは起こるということを前提にして作成されるので、取扱説明書はともかく、例示的用法が契約書に使われることは少ないと思います。
решатьは判定宣告型の意味であれば遂行動詞も可能だと思います。Этот вопрос решаете вы.(この件を決めるのはあなたです)というのは、遂行動詞だと思います。решатьсяが遂行動詞になるかどうかは、文例がないので分かりません。文法上可能だとは思いますが、先の文を受身にして使えるかどうかは分かりません。遂行動詞や結果存続兼評価型動詞にしろ、細々とですが、いろいろな文献を読んでより例文はエクセルで保存するようにしており、微々たるものですが、遂行動詞の種類も増えつつあります。『和文露訳指南』の改訂版が出るようなことがあれば、ご紹介できるでしょう。人に納得してもらうためには、よい例文をどれだけ発掘できるかにかかっていると思います。遂行動詞といっても、ある語義だけが遂行動詞として扱われるということは大いにあるわけ、そういう意味でもよい例文が必要です。よい文章を見つけたら、その典拠があればなお結構ですが、メールいただければ幸いです。