2014年11月12日
●和文露訳指南第96回
『和文露訳指南』4-2-1項の出だしに下記追記願う。
完了体過去形にはアオリスト的用法があり、その派生として結果の存続という用法がある。完了体過去形という一つの形式に過去完了の完了と現在完了の完了という二つの用法があって、それを文脈により使い分けているということになる。同様に完了体未来形の完遂的用法にも、近接未来ближайшее будущее(発話時点のすぐ後に続くか、発話時点と融合した未来)で用いられる近接未来完了と、発話の時点と隔たっている未来で用いられる未来完了の二つの用法がある。近接未来完了には動作結果表出の想定というニュアンスがあり、発話のすぐ後に動作が起こるため、今というような副詞を除き、具体的な時の状況語と共には使われないことが多い。動作結果表出の想定というのは、動作が始まって終わるという動作の全一性の後で、何らかの結果のニュアンス(そこにそのままいるとか、結果の良否などの主観的ニュアンス)が発話の時点で想定されるという意味であり、完了体過去形の結果の存続と対比される。不完了体未来形は未来の時制の動作の有無の確認はするが、動作の完遂には言及しない。
(その仕事を終わらせる)Я кончу работу. <その仕事が遂行されて、やることがなくなるというニュアンス>
(〔終業時間なので〕仕事は終わりにします)Я буду кончать работу. <時間的に終わる区切りを指しているのであって、仕事自体は残る>
(今〔ここで〕お別れをして、もうお会いすることはありません)Сейчас мы с вами порощаемся и больше не увидимся.
未来完了では具体的な未来の時の状況語をイメージする。未来完了においては未来において動作の結果が現れるが、それは発話の時点とは結びつかない。未来の時制における被動形動詞過去短語尾は、この未来完了の用法で用いられる完了体他動詞由来であり、近接未来完了では用いられない。
(彼は今日明日中に死ぬ)Он сегодня-завтра умрёт.
(彼は1年後モスクワに行く)Он уедет в Москву через год.
(日本は必ず復興する)Япония обязательно возродится! <漠然とした遠い未来であっても、動作が完遂すると話し手が考えている以上、完遂に時点というものが必然的に成り立つと想定されるので完了体未来形が用いられる>
(欠席ないし遅刻に対しては罰が下されることになる)За небытие или опоздание будет взыскан.
(差額は発注者によりそれに応じて払い戻しされることになる)Разница будет возмещена соответственно заказчиком.
出題)「その場所は低地だったので、洪水のときはよく冠水した」をロシア語にせよ。
Так как это место было расположено на
низменности, оно
было часто затоплено
при наводнении.
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затопленоは被動形動詞過去短語尾ですから、1回の動作です。これにчастоはつかないでしょう。私の答えは、Местность эта была низменной и часто затапливалась во время наводнения.
(お題)
その場所は低地だったので、洪水のときはよく冠水した
(コーシカ訳)
1) Поскольку (тот) участок расположен на низменности,
часто затапливался при наводнении.
2) То место было низменностью и часто затаплвалось наводнением.
1) その地所は低地に位置しており、今も低地であるが、治水か何かのおかげで冠水しない。
状態の意味の被動形動詞過去短語尾と、過去の繰返しの不完了体過去です。
2) かつては低地だったが、今は地所の回りも含めて低地ではない。
過去の状態の意味のбылоと、過去の繰返しの不完了体過去です。
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1)расположенは不要です。「何かのおかげで冠水しない」のではなく、しばしば冠水するというのが出題です。2)затапливалосьです。タイプミスでしょう。そのをтотと訳していますが、この場合は間違いです。『和文露訳指南』10-12-1項を一読ください。
То место было низменным и было затопленным по наводнению.
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тотはэтотと対比して、ないしは関係代名詞と共に用いられるのが普通で、это местоとするか、指示代名詞を使わなくても、ロシア語には冠詞がないのですから、文脈によっては「その」という意味になります。по наводнениюではなく、洪水の時にとした方がよいと思います。出題は「よく冠水した」とありますから、動作の反復です。こう言う場合は不完了体を用いるべきです。
Эта местность была впадиной, поэтому во время наводнения там часто затапливало водой.
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впадинаは海で言えば、海溝ですから、陸でもそれに相当するような陥没、盆地だと思います。затапливать = затоплять = покрывать, заливать поверхность чего-либо (о воде)ですから、主語は水か、川のはずです。この動詞には無人称動詞の用法はないので、сяを使った受身にすべきです。
1) Место было низменностью, которую часто затопляло водой во время наводнения.
関係代名詞で接続
2) Место было низменностью, часто затопляемой водой во время наводнения
被動形動詞現在で接続
3) Место было низменностью, часто затопленным водой во время наводнения.
被動形動詞過去で接続
было : アオリスト的用法
затопляло : 過去の反復
низменностьが主格ではなく造格なのは不活動体の不変性によるものという理解でよろしいでしょうか?
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1)のбылоは過去を示す繋辞(連時)です。出題に引きずられずにнизменнаяと形容詞にした方が自然だと思います。затоплятьについてはゴさんへのコメントを参照ください。низменностьが造格なのは、繋辞の後で過去や未来の時制では造格を使うからです。былやбудетと過去や未来の時制では、恒常的状態は造格ではなく、主格が来る傾向があります。 Он был сын учителя.(彼はその教師の息子だった)、Ты будешь профессор.(お前は教授になる)。ただ現代的にはこの場合でも造格が使われる場合が多いように思います。これは「なる」という造格の持つ変化や転化の意味合いから来ていると思われます。2)の被動形動詞現在は決まり文句を除き、あまり使われません。3)の被動形動詞過去は完了体由来ですから、1回の動作です。これがчастоと結び付くのはおかしいと思います。この場合はся動詞の不完了体で受身を作るべきです。
Так как это место находилось в низине, оно при наводнении часто затапливалось.
よろしくお願いします。
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正解です。