2014年11月03日

●和文露訳指南第87回

『和文露訳指南』2-1-3項の前半分を下記のように変更した。

 不完了体過去形の用法には反復と、過程(при-という接頭辞のついた運動の動詞以外)の用法があるが、本項で取り上げる動作の往復の用法двунаправленное значениеというのは、完了体過去形に見られる結果の存続(3-2-1項)の用法のアンチテーゼとして生じた結果存続無効(3-1-12項)の一つである。動作やその結果が反対方向に向けられた動作や出来事によって容易に取り消されるような動詞の用法を意味する。この用法には、運動の動詞の不定動詞ходить, ездитьの過去形、および接頭辞のついた運動の動詞の不完了体動詞過去形、および対義語のある動詞群の不完了体過去形を用い、動詞の体のペアがある動詞である。例を挙げると、приходил = пришёл и ушёлは、<来たが立ち去ってしまって、今はそこにいない>を意味し、完了体過去形の順次的用法を意味する。同様に、входил = вошёл и вышел(そこに入って出て、もうそこにはいない)、заходил = зашёл и ушёл(立ち寄って、去った)、отходил = отошёл и подошёл(その場を離れて、又戻ってきた)、уводил = увёл и привёл(連れ去って、又連れ戻った)、уходил = выходил и вернулся(その場を出てから戻ってきた)などである。

 この用法では時の状況語と併せて用いられることができる。解釈は二つあり、一つは完了体の順次的用法の代用であるから、とんぼ返りを示す折り返し地点のような時の状況語と併せて用いられても問題ないはずだという考え方であり、もう一つは、このような動作の往復では、とんぼ返りのような動作には実際上ならないので、時間の状況語は無限小の時間軸の不動の一点ではなく、「期間内に」を意味するという考え方である。

 この用法では動作が往と復の二つあり、復の動作は往の動作と同じ内容だが方向のみが逆、つまり同価で符号のみ(+)が(-)に変わっただけの反復動作と考えられるので、2-1-6-1項のみなし反復として不完了体が使われると考えてもよい。

 ちなみに、この用法は反復、過去進行形(при-のついた運動の動詞群を除く)、動作の有無の確認と解釈される場合も文脈によってはありうるので、何でもこの用法だと決めつけてはならない。また歴史的現在の用法は実質的に順次的用法なので、時間軸の不動の一点と不完了体現在形が結びつくことになるので、これと混同しないよう注意すべきである。

(昨日僕のところに友人たちが来た)Вчера ко мне приходили друзья.
(1992年カザンに議員としてタタール議会にやってきた)В 1992 году приезжал в г. Казань на Татарский Конгресс в качестве делегата. <приезжал = приехал и уехалであり、1992年内に来て帰ったという意味>

出題)「サケマスは産卵に川に上る」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2014年11月03日 06:52
コメント

Лососи на нерест идут в реки.
上記は研究社露和の例文そのままなので、以下に自分が先に思い浮かんだ文を記します。
Лососи для нереста плывут по реке против течения.
こうして比較すると、綺麗なロシア語と外人ロシア語を隔てる壁が何となく見えてきますね。
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正解です。今回の出題は研究社に載っていたのは知りませんでしたが、決まり文句のようなものです。日本語でも決まり文句というの綺麗かどうかは別にして、何人もの人に練り上げられたものだと思います。だからそういうのと比較する必要はないと思います。短いので丸暗記という手もありますが、要はどういう場合でも、語彙が分かれば、自分の意思をロシア語で精確にロシア人に伝えることができるようにするというようにすればよいと思います。意思の伝わる文章を日本語で書くというのと、美しい日本語を書くというのはまったく別の問題であり、私の方はベースである、意味の精確に伝わる文章をロシア語で作るというのが主眼です。ネットでのロシア語や日本語を見ればおかしな文はいくらでもあります。私の答えは、Лососи на нерест идут в реки.
このような魚を遡河魚(そかぎょ)とか回帰魚проходные рыбыと言う。

Posted by 智 at 2014年11月03日 07:09

Лососёвые поднимаются
вверх по реке для
икрометания.
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正解です。ただ主語を複数にしている以上、川も複数がよいと思います。

Posted by ブーチャン at 2014年11月03日 10:22

Лосось идёт вверх по реке на нерест.
性質なのでнвにしました。サケマス類は単語がたくさんありそうですね。よろしくお願いします。
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正解です。

Posted by やま at 2014年11月03日 10:39

Лососёвые при нересте плавают вверх по реке.
「54のときに(一度)来たことがある」だったら、приезжалでしょうか?
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плаватьは不定動詞ですから、不正解です。産卵のために川を上るというのは一方向の動きですから定動詞を使う必要があります。それと産卵が目的だということを示す必要があります。
 приезжалです。つまり54歳のいつかは知らないが、あるいはイメージとして持っていないが、一度、ないしそれ以上来たことがあるということです。例えば54歳の3月19日午後1時30分に来たということをイメージするなら、ここまで細かく言うことはないでしょうが、完了体過去形を用いることになります。不完了体過去形の場合は動作は1回でもよいし、それ以上でもよいのですが、回数も含めて、動作の行われた時点を特に意識しないということです。前回の出題の問題は、この前とあるので、来たのが現在とは関係のない過去だということ、ここにはいないということを明確にするための用法が必要になります。完了体過去形というのは、アオリスト的用法と、その派生的用法である結果の存続が文脈によってどちらか選ばれるということであり、アオリスト的用法にせよ、現在との結びつきをイメージしないというだけで、結びつきがあるかどうかには興味のない用法です。

Он родился в 1933г.(彼は1933年に生まれた、生まれている)という文は、彼が今生きていれば、結果の存続ですし、死んでいればアオリスト的用法ですが、生死に興味がなければ、アオリスト的用法となります。ちなみに、日本語の「1933年に生まれている」というのは結果の現存ではなく、日本語文法で言う経験「犯人は1年前にここに来ている」であり、ロシア語ではアオリスト的用法で訳すしかないと思います。
 前回の出題は、はっきりと過去であることを示す必要があり、そのためには過去でしか用いられない不完了体過去形を用いる必要があります。ただ不完了体の場合は、時間軸の不動の一点を表現できないという点がありますが、「期間内のいずれかの時点に」ということであれば表現可能です。

(彼がこの前村に来たのは54歳の時だった)Ему было пятьдесят четыре года, когда он в последний раз приезжал в деревню. という文は二つの文から成り、主文で彼が54歳の時だったと述べ、それに対してкогда以下の従属文は主文の内容を補足しているわけで、みなし反復と考えてもよいと思います。従属文にはlast timeとあるだけで、1回であることは分かりますが、いつかについては主文ですでに述べられているので、動作に焦点を置く必要も、置くこともできないという、いわばприезжалは代動詞的な役割を果たしていると言えます。

Posted by ゴ at 2014年11月03日 18:08

(お題)
サケマスは産卵に川に上る
(コーシカ訳)
Лососи на нерест идут в реки.

鮭は露語で4つはあったよな…と、ランポポーから過去の記事、ウィキペディアなどを調べて
нерестを辞書で引くと、そのものズバリがありました…
лососиと複数なのは、この属に分類される複数の魚が話題になっているため
идутと定動詞なのは、海から川への一定方向への移動であるため
不完了体なのは習性で繰り返されるためです。
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正解です。

Posted by コーシカ at 2014年11月03日 21:08

Лосось поднимается в реки , чтобы метать икру.
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чтобыというのは、目的を意味するときは具体的な1回の行為の場合が多く、つまりは完了体不定形の使用が多いのです。お答えのように習慣や習性の場合は不完了体でもよいのですが、カンマを使って文を二つに割るというほどのことはありません。икрометаниеやнерестという名詞を使ったほうが自然です。

Posted by じぇーにゃ at 2014年11月03日 23:31

1) Лососи на нерест идут в реки.
2) Форель поднимается по реке для нереста.
習慣・反復的な性質(不完了体動詞現在形)
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1)は正解です。2)はニジマスの類で、種名がより具体的です。

Posted by チジクピジク at 2014年11月04日 02:28
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