2014年10月23日
●和文露訳指南第76回
ロシア経済の成り行きに注目せざるを得ない身としては、悪いニュースばかりが目につく。ルーブルの対ドルレートは今年6月に比べて、現在30%ぐらいルーブル安である。2014年10月27日付のタイム誌によると、国家収入の45%を石油やガスの税収から得ているロシアは、最近の原油の値下がりによって大打撃を被っている。2014年6月に1バレルあたり115ドルだった原油は現在85ドルまで下がり、この値下がり傾向は当分続くと識者は見ている。その理由として挙げられるのは、第一に世界経済の牽引役であった中国やドイツの景気後退によるオイル消費の減少傾向、第二はアメリカでの石油増産で、シェールガスの生産もあり6年前より2倍増え、1日当たり850万バレル生産している。第三はOPECの最重要国であるサウジアラビアも減産するよりは、生産量を維持して原油収入を維持する方針であり、他のOPEC諸国も市場シェアを奪われることを恐れて減産には踏み切れない。
一方ロシアは、2015年から2017年の国家予算を1バレル100ドルで計算しており、既に1バレルあたり15ドル税収が落ち込んでいることになる。この損失の穴埋めに740億ドルあると言われる準備基金の半分を使わざるを得ない見込みで、シルアーノフ蔵相も税収不足のため国内のインフラの追加投資取りやめや、軍事費削減まで言及している。国内インフラの整備が遅れれば、ますます石油ガスの税収に頼る割合は増えるわけで、ロシア経済はますます悪循環に陥ることになる。2014年10月23日付読売新聞朝刊によれば原油は1バレル82ドルとのことであり、ロシアの原油生産量が日産1,000万バレルなので、1バレル80ドルになれば、予算との差は1日あたり2億ドルとなる。年間では準備基金が吹っ飛ぶ計算になる。シェールオイルも80ドルを切ると採算割れになるとも言われているから、このまま原油の値下がり傾向が続くというものでもないようだ。
これは北方領土交渉やロシアとの経済協力にとってはプラスの材料かも知れず、石油は1バレル80ドルを割る可能性が高いと専門家はみているので、原油輸入大国の日本にとっては朗報だが、極微小なりといえどもロシアで食っている我々にとっては頭の痛い問題である。
出題)「乗員1名転落。付近一帯の海域を捜索中」をロシア語にせよ。
Один пассажир упал за борт. В окрестных водах ведутся поиски .
よろしくお願いします。
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乗員というのは乗組員のことであって、お答えのような乗客とは違います。ただза бортというのはよい表現で、海でも、川でも、湖でも、ひょっとしたら宇宙空間でも使える便利な表現です。海運用語でзабортная водаというのがあり、普通は海水を指し、船のいる場所によって、川の水、湖の水となりますが、私の先輩はこれを舷外水(中国語にはある表現のようです)と訳していました。他にпресная водаは淡水のことですが、日本の海運用語では清水(せいすい)と言い、調理場はギャレーと英語由来の言葉を使っていました。ロシア語でも海運用語ではкамбузと言い、一般のロシア人の知らない言葉で、普通はкухняでしょう。私の答えは、Член команды упал в море. Разыскиваем повсюду в окрестных водах.
これまで海や漁業関係を出してこなかったようなので、マンネリを避けるため少し出題して見たい。
Член экипажа упал на
море. Идут его поиски
по морским зонам
кругом поблизости.
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堕ちるのは海の中ですからв мореです。海域はводыを使います。
Член экипажа упал. Поиск ведётся в ближайших районах в море.
第一文では結果の残存でсв、第二文では現在進行中のためнвとしました。よろしくお願いします。
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重箱の隅をつつくようなことを言えば、упалだけでは、ころんだ、倒れたと解釈される可能性もあります。海域はводыを使います。
Один экипаж упал в воду. Сейчас прочёсывают прилегающые акватории моря.
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экипажというのは乗組員の総称ですから違います。прочёсыватьというのは普通は山狩り(草の根一本分けても)のような感じで使います。海でそのような徹底した探索ができるかは個人的にはどうかなと思います。
Упал член экипажа.
Проводят пойск по морю вблизи от места произществия.
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二つ目の文があるから分かるとは思いますが、упалだけでは、倒れた、ころんだ、という意味ありますので、何かつけた方が親切だとは思います。поискのスペルミスがありますし、複数にした方がよいと思います。
(お題)
乗員1名転落。付近一帯の海域を捜索中。
(コーシカ訳)
В море пал один член экпажа.
В поисках по всей морской зоне поблизости места аварии.
пастьだけでは意味が広すぎるのでв мореと落ちた先を入れました。
結果の現存の完了体過去です。
2文目は現在の状態の意味でбытьが隠れていると考えます。
油で国家収入のほぼ半分もいくんですか(最近ロシアは「語」しかやってませんもので…)!
ニッケルとかチタンとかを加工した製品を売って儲けられるようにしたらええやん
とは申せ、設備投資どころか軍事費まで削減となると厳しいですね…
日本の電気炉メーカーも原発停止と電気代値上がりで困ってるはずですから
日本から人を送るくらいやって品質管理のノウハウを根付かせ
向こうの鋼材ないし二次製品の品質を高品位にする見返りに
レアメタルを添加する手の特殊鋼のノウハウを分けてもらう
とかやればお互い得な気もするのですが。
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пастьは落ちると言う意味では廃語です。死ぬと言う意味でも雅語で使われるぐらいです。
Член экипажа (судна) упал за борт.
Его поиски ведутся в том районе, где он упал и соседних районах моря.
упал : アオリスト的用法(完了体動詞過去形)
ведутся : 過程(不完了体動詞現在形)
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где以下のиはвのタイプミスでしょうが、隣の海域では違うでしょう。