2014年10月05日
●和文露訳指南第58回
先日山手線の電車に乗った時に、ある大手の多言語を教える語学学校の宣伝が貼ってあるのに気がついた。そこに受講生に人気の言語が5位まで書いてあり、英語、中国語、スペイン語の後に、ブラジルポルトガル語を押さえて、何とロシア語が堂々の4位である。NHKの語学番組の扱いや語学テキストの売れ行き(2年ぐらい同じテキストを使っているとばかり思っていた)から、ロシア語は斜陽の言語とばかり思っていたが、違うのだろうか?ドストエフスキー、チェーホフ、トルストイなどのロシア文学は、メンタリティーが合うのか日本でも訳本が売れ行き好調であることは知っているが、ロシア語が静かなブームなのだろうか?全くその特典にあずからない身としてはほんとうに不思議な思いである。技術通訳などの仕事はウクライナ問題もあって低調なようだし、実際のところどうなのであろう?
出題)「ボヤで済んだ」をロシア語にせよ。
Пожар кончился
небольшим.
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Пожар кончился.というのは自動詞ですから、火事が自然に消えたことになります。それと、和英でボヤを引くと a small fireとあり、和露でもお答えのようにнебольшой пожарと出ています。これは当て字の小火からだと思いますが、広辞苑では、ボヤを「大事に至らないうちに消し止めた火事」とあります。私の答えは、Пожар был потушен в самом начале.
К счастью пожар оказался незначительным.アオリスト用法でсвとしました。よろしくお願いします。
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ブーチャンさんと同じような答えですね。
Событие закончилось несерьёзным пожаром.
Событие не дошло до серьёзного пожара.
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発想は悪くないと思いますが、自動詞なので自然に消えたとか、少なくとも動作主があまり感じられません。
(お題)
ボヤで済んだ
(コーシカ訳)
1) Начинался пожар.
2) Прервали распространение пожара.
うゎ、体が分かれた!
1) は未完了の不完了体過去です。
続和文解釈第151回の
自殺未遂2回
Самоубийстовом кончал - два раза.
を参考にしました。
2) はアオリストの完了体過去です。
研究社和露でボヤを引くとнебольшой пожарとあり
何だかなぁと思いつつ、研究者露和でпожарを引きますと
прервать распростронение пожара. 火事の延焼を食い止める
との例文に出くわしましたので、これを不定人称文にして流用してみました。
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1)は「火事が何度も始まったことがある」と反復や経験と取るのが普通です。未完了というのは動作が始まって、それが終わらないということですが、начинатьの語義は始めるですから、動作が始まるのが始まらないというおかしなことになりませんか?体の用法というのは語義と密接な関係があるわけで、その点をよく考える必要があります。2)は「火事の延焼が食い止められた」という意味ですが、これがボヤかどうかは別問題です。
Потушился небольшой пожар.
アオリスト的用法か結果の存続(完了体動詞過去形)
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потушиться = тушиться некоторое времяでとろ火で蒸し煮にするとか、シチューにするという料理用語です。勝手に単語を作ってはいけませんし、こう言う単語があったとしても、自動詞ですから勝手に消えたことになります。
До большого пожара не дошло.
よろしくお願いします。
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大きい火事とは何でしょう?大火は函館の大火のように市街の大半を焼き尽くす大火災ですが、それだとボヤとは関係がなくなります。大きい火事というのは大火ではなく、普通より大きい火事だと解釈できます。それでもボヤとはつながらないでしょう。