2014年09月16日
●和文露訳指南第39回
最近お亡くなりになった木田元先生の自伝を第37回で紹介したが、先生は「語学の勉強には精神を安定させるところがあります」とおっしゃっている。不眠に悩む人も催眠剤を飲むだけではなく、外国語を原書で読むような勉強をしてみてはどうだろう。本を読んで眠れなくなるという話を聞くこともあるが、それは非常に刺激の強い本だったり、面白くて読むのが止められない本であるが、そういう本は稀である。授業中に教科書をながめていて(読んでいてと言うよりは)、瞬間気を失った経験はだれしもあるはずである。このことから語学の勉強が睡眠薬代わりになることは納得されるだろう。先生はドイツ語の原書でハイデッガーなどを勉強会で輪読されたようだが、それも人のやらないような、今だれもやろうとしない、正に逆風の吹いている感のあるロシア語を睡眠薬代わりにやってみてはどうだろう。これだと副作用はなかろう。日本人に人気の高い、メンタリティー的に合うと思われるドストエフスキーや、チェーホフ、トルストイの原書でも、若者向けのロシア語の雑誌やアネクドートでもよい。初めからすらすら読める人はいないから、その読み方や辞書の使い方、飽きの来ない勉強法を指導してもよい。
出題)「彼には何でもお見通しだ」をロシア語にせよ。
Ему всё предвидится.
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予見するという意味ならОн всё предвидит.の方が自然ではないでしょうか?お見通しというのは予見とは違うと思います。私の答えは、От него ничего не укроется.
例示的用法を使う必要がある。また否定生格の主語であることに注意。ただ研究社の露和ではничтоとなっており、ザルービンでは回答のようになっている。両方可能な模様。似て非である表現には次のようなものがある。
видеть (знать) насквозь(知りぬいている)<状態の動詞>
видно насквозь(透けて見える)
как в воду смотрел (глядел)(まるで知っていたかのように) <予言したかのように = как будто знал, предвидел заранее>
Ему видно все насквозь.
よろしくお願いします。昨日の出題、ここは一発”診断名”が問われているのだと思いこみ(ナゼ!?)、判断力低下も付け加えたいところです。
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お答えだと「彼には全て透けて見える」となります。
Он все видит.
宜しくお願いします。
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お答えは「彼はすべて見える」ですから、これだけだと意味が漠然としているように思います。
Он видит всё насквозь.
規則的反復と考えнвにしました。よろしくお願いします。
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正解にしてもいいのですが、お答えだと、すべてに、いつも通暁しているとなり、誇張表現としてならともかく、現実的には神様以外あり得ないと思います。出題は、~の場合にはというような例示的なニュアンスがあると思われるからです。
Он видит насквозь что-нибудь.
能力(感覚的な能力を表す動詞)で不完了体現在形を選びました。
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видеть кого-нибудь насквозь(どんな人でも見通す)なら意味は通ります。しかし、そうなると出題とは違いますし、こういう能力を持っているというと神様みたいな人ということになります。
Он разбирается во всём. Он разгадывает всякое.
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お答えは反復からくる能力のような用法ですが、常にと考えるのではなく、場面場面を想定して、一つの場面に代表させるような例示的用法であり、隠し事はできないというような完了体未来形の不可能の用法を考えてみた方がよいと思います。完了体未来形ですから例示的用法にもなります。
(お題)
彼には何でもお見通しだ
(コーシカ訳)
Ему все ясно.
現在の状態のбытьが隠れていると考えます。
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正解です。それは状態ではなく、遂行動詞的用法にも理解できるからです。
Ему всё понятно без слов.
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コーシカさんと同じような遂行動詞的用法ということで正解です。без словはつけなくてもよいかもしれません。
>辞書の使い方
若い人向けなら、多言語をやりたいという大学学部生を取り込めるように感じます。ロシア語をそれなりに読んで書けるようになれば、あと何語が来ても恐くないというのは当たっていると思います。
(以下は引用)
一方、文系で将来的に外国語がたくさん必要になると分かっている人は第二外国語にいきなりロシア語を選んでおくのが最良の選択だと思います。ロシア語の複雑な格変化や奇妙奇天烈なアクセント移動に最初から慣れてしまえば他の言語が特段難しいと感じなくなるからです。…また…インドやアフリカの地方言語の辞書なんかがロシア語の対訳で出ていてしかも結構クオリティが高かったりして驚かされます。
(引用おわり)
http://medomedospot.blogspot.jp/2013/12/blog-post_28.html
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言語学者を目指すなら、多言語の習得(文献を各言語で読める程度)は必須です。中国語、アラビア語、そして言語学自体を文献(以下の三つの言語で書かれた文献が圧倒的に多いので)で学ぶために英語、フランス語、ドイツ語をやる必要があります。しかし、いろいろな言語を学ぶことは言語学以外にも、外国語を理解する上で、似たような表現、文法(特にインド・ヨーロッパ系言語では)プラスに働くことは否めません。しかし、一番のマイナス面は、習得に時間がかかり過ぎることです。新聞の見出しが読めるだけでよいと割り切って、浅く広く文法をやるといっても、いくつもの言語をやるには、趣味や生きがいとするなら別ですが、かなりの時間を取られます。個人的には一つの外国語を突き詰めて学び、会話も、文学も読みこなせるようになってから、他の言語に移りたければ移るとした方がよいように思います。現代では英語の習得は必須ですから、それはある程度のレベルできることは仕事でも要求されますが、ロシア語を極めようとすれば、その文学などの読解にかなり時間を取られ、他の言語どころではないというのが私の実感です。私は大学の時に、トルコ語、ポーランド語、チェコ語を1年くらいやり、モスクワ駐在の時にラジオ講座のフランス語を1年ぐらいやりましたが、覚えているのは、トルコ語とフランス語のアクセントは語末に来る、ポラーンド語は後ろから二つ目というぐらいです。過ぎたことをいっても仕方がありませんし、気晴らしになったのでそれはそれでいいのですが、その分ロシア語をやっておけばよかったかなという気はします。
1) Он видит все насквозь.
状態(不完了体動詞現在形)
2) Ему все насквозь известно.
主格 + 形容詞短語尾文にбыть動詞の現在形が省略されているという理解でよろしいでしょうか?
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状態ということは性質ということですから、神様に近い人ということになります。そうではなくて、比喩的にいっているわけで、場面場面と考えて例示的用法を考えてみることです。Он видит Наташу насквозь.(彼はナターシャのことはお見通しだ)というなら分かりますし、видеть сквозьにも人間レントゲンみたいな用法がありますから、そういう意味では文脈によると言えます。