2014年09月01日
●和文露訳指南第24回
不定法を時制で考えると、時制を担うのは述部であって、不定形ではない。不定形は基本的に発話より未来の時制を示すのが基本で、反復や状態という意味では発話と同じ時制となり、発話より過去の時制を示すことはない。「~したことto have done」と言いたければ、то, что я сделал (делал)と節にするか、сделанноеと被動形動詞過去形を使うしかない。ロシア語では不定形では過去の時制を示す事がない代わりに、形動詞過去がその役割を担っていると言える。『和文露訳指南』8-10-2項参照。
(このテキストを読むのは我々には簡単だった)Нам было легко читать этот текст. <この意味では対応する完了体がないのでчитатьと不完了体不定形が来ている>
(学生たちがその講義を聴講するのは興味深いぞ)Студентам будет интересно слушать лекцию.
出題)「ヴォーフカが先に手を出したんだ」をロシア語にせよ。
Вовка сперва поднял
руку на меня.
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正解にしてもよいとは思いますが、厳密に言えば、сперва = сначала = раньше, прежде чего-либо другого, в первую очередь(何よりもまず、いの一番に)ということですが、出題はヴォーフカと私の二人がいて、私よりも先にヴォーフカが私を殴ったということですから、私の答えはВовка меня первым ударил!
Сперва поднял на меня руку Вовка.
自分に、とは言っておらず (Вовкаと誰かかもしれず)別の言い回しがあるのだろうと思いますがたどりつけません。
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ブーチャンさんと同じですね。時間的にすぐに殴らなくても、ほんの少しでも私より先に殴ったという解釈はお答えからはできないと思います。
Сначала начал драться Вовка.
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драться = бить друг другаですし、драться с кемです。
(お題)
ヴォーフカが先に手を出したんだ
(コーシカ訳)
1) Вовка сначала размахнулся кулаками и ударил.
2) Вовка сначала ударил кулаком.
アオリストの完了体過去です。
発話者が被害者とは限らないため、行為の受け手は省略しました。
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拳で殴ったとは限らないかもしれません。発想はブーチャンさんと同じですね。
Вовка делал насилие раньше.
「先に」に焦点がある、また場依存型の発言なので不完了体過去形(動作の有の確認)を選びました。
よろしくお願い致します。
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動作の有無の確認で不完了体過去形を使うと、経験の意味で理解されるのが普通です。お答えは、ヴォーフカが暴力をふるったことがあるということですが、出題は、ついさっき、私が親か先生に言い訳していると取るのが普通です。殴るというような瞬間動作動詞(『和文露訳指南』第4-1-1-4項参照)は、動作に焦点が来るということと、語義的に殴るという体に危害を加える(生命に関わる可能性があるとか金銭的なもの)は必ず動作に焦点が来るため、反復を除けば完了体が多用されます。出題から判断する限り、ヴォーフカのほうは、ヴォーフカが私から何かされたと申し立てているのに対し、そうではないという新規の情報の提示(申し立て)をしているのであって、文脈(状況)に沿って、殴ったというのではない、つまり反論であることが分かります。そうなると新規の(文脈に沿わない)動作ですから、完了体を使うべきだというkとおになります。不完了体は空気を読む動作であり、不完了体はKY(空気が読めない「読まないと言ったほうが正確ですが」)動作だと理解してください。それと語結合的にделатьは使えず、осуществлять (применять, употреблять, чинить) насилиеですが、暴力(肉体的、ないしは精神的)という意味の書き言葉で、会話で使うことはスピーチ以外ないでしょう。研究社露和や岩波露和にはнасилие = изнасилование(強姦)という語義が載っていますが、最新のアカデミー版によれば現代語では廃用です。研究者や岩波が出てから20年以上も経ち、その時元にした語彙集が採録された単語はそれより何年か前でしょうから、研究者や岩波のせいではなく、時間の経過とともに語彙に変化が出てくるわけで、その点を考慮すべきです。
Вовка начал первым!
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正解です。
Первый удар нанёс Вовка.
結果の現存でсвとしました。よろしくお願いします。
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正解ですが、お答えは子供の喧嘩というよりは、もっと政治外交面で使うような気がします。
Вовка же был зачинщиком.
状態「〜である」を表す助動詞としてのбытьの過去でしょうか。
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間違いとは思いませんが、状態の動詞なので、動きが感じられませんし、子供の喧嘩に使うような言葉でもないと思います。それに使うとしたら現在の時制でしょう。
大きな勘違いをしていた事に気が付きました。
殴られた等のヴォーフカの発言が先にあり動詞が既出だと思ったので、
動詞を抜いた
「ヴォーフカが先だった」
でも通じるかなと思って場依存型の不完了体を選んでしまいました。
動作主に着目すれば新規なのは明らかですね。
新規か場依存かでまだまだ迷走しています。
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場依存か場独立かというのは用法によって明確な場合もあり、出方が弱い場合もあります。瞬間動作動詞のように、反復(убиватьのように志向もありますが)以外では、動作の焦点が動作に来るものもあり、動詞の語義がかなり関係しているように思います。取りあえずは、会話で使われる頻度の高い動詞と多義語の場合は頻度の高い語義に的を絞って勉強したほうが実戦(実践)的で効率の良い勉強ができると思います。もっともこのコーナーや私の本に出てくる動詞はそのような動詞ばかりですが。