2014年08月09日
●和文露訳指南第4回
会話における和文露訳を上達したいと考えているが、語彙や構文の暗記だけでは何となくもの足りない、また外人ロシア語ではなく、ロシア人のようなロシア語を話したいという人は、『和文露訳指南』を一読されることを勧める。ただ読んで分かった気になっても、それだけでは理解したことにはならない。実際に試してみる必要がある。例えばこのコーナーの出題をやってみることである。しかしそれでも自分のどこがよくてどこが悪いのかは分からない。毎回幾人かの投稿者が回答を寄せてくれているが、その投稿文とまったく同じものを、間違っているものも正解のものも含めて書けるはずがない。匿名で構わないのだから投稿すべきである。毎回投稿する必要はないが、百回も投稿すれば自分の長所や短所が見えてくる。
『和文露訳指南』を読んで、その中の結果の存続は理解しやすい。しかし、アオリスト的用法は理解が難しいし、遂行動詞、結果存続評価型動詞となると、この本だけでは無理かもしれない。結果の存続や定動詞・不定動詞の使い分けも否定がからむとよく理解できないのではないかと危惧している。投稿すれば理解が深まることは確実だが、投稿を見る限り、ちょっとしたことでボタンの掛け違いというか、正しく理解できていないのではないかと思えることが多々ある。結局のところ学習者それぞれのレベルに従って、個人的に教えるということが一番の早道かもしれない。『和文露訳指南』に書いてないことを教えるというのではなく、書いてあることを分かりやすくその学習者に合わせて説明するということである。学習の早い段階で、動詞の体の用法をマスターすれば、後は語彙と構文だけだから暗記だけで済むから楽だ。
出題)「いつパスポートを返してもらえますか?」をロシア語にせよ。
Когда мне будут отдавать паспорт?
Когда вы будете отдавать паспорт?
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отдаватьは返すという意味ですが、渡すという意味もあり、渡した人に返却するという意味を明確にするのであれば、отдавать обратноとすべきです。不完了体未来形の使い方を理解されていないようです。詳しくは『和文露訳指南』4-1-1-1項参照。お答えは未来の時制における有無の確認ですから、パスポートを返すかどうか聞いているだけで、まるで他人事です。他の人のはともかく、自分のパスポートは返してもらわないと大変なことになるという意味で、主観的ニュアンスが入るということと、返すという動作は完遂してもらわないと困るわけです。また具体的な1回の行為に関係しているということで、完遂の意味の完了体未来形か、完了体不定形を使わないとおかしいということになります。私の答えは、Когда я смогу получить свой паспорт обратно?
(1) Когда вы можете
вернуть паспорта ?
(2) Когда можно получить
мой паспорт ?
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(2)は正解ですが、(1)は助動詞が現在の状態なので、今返せるかと聞いていることになり、сможетеとすれば、今この瞬間ではなく、この一瞬後以降いつ返せるかと聞いていることになり、こちらの方が自然です。
Когда можно сдать паспорт ?
お久しぶりです。最近ロシアの方(女性)を観光案内しましたが、覚えていた単語や構文がすぐ出てこず困りました。でも根気よく間違っていても話してみることだと思いました。
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сдатьは荷物などを預ける(一時預かり所などに)という意味ですから違います。所有代名詞のмойをつけた方がよいと思います。
実戦(実践)は力なりです。このコーナーに参加するのも、頭の中で分かったような気になっていても、実際に使えなければ意味がないというのと同じです。
Когда отдадут обратно паспорт?
Когда можно получить паспорт?
未来、совにしました。
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正解です。ただмой паспортとすべきですし、получить обратноとした方がロシア語らしいというよりは、パスポートを渡した人に戻すという意味で論理的ですし、自然でもあります。
(お題)
いつパスポートを返してもらえますか
(コーシカ訳)
Когда я смогу получить свой паспорт обратно?
ご著書の『そのまま使える!ロシア語会話表現集』東洋書店、108頁より丸写しです。
疑問詞があるのに完了体のсмогуという理由を考えてみました:
・未来の具体的な1点を尋ねている
・могуとすると状態や繰り返しなど不完了体ゆえの含みが出てしまうことを嫌う
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正解です。具体的な1回の動作であることと、мочьだと状態(今できる)を示しているので、一瞬後以降の動作を扱うということで完了体の助動詞を使っているということです。本に書いていたというのはすっかり忘れていました。
Вы не скажете , когда вернёте мой паспорт?
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正解です。非常に丁寧な言い方です。
Когда будут возвращать паспорт мне?
いつに焦点があるので不完了体にしました。
よろしくお願い致します。
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非常によく勉強されていることが分かります。確かに疑問詞に焦点が来る場合が多いのですが、例外は、生命(特に自分の)、金銭(自分の利害)、そして自分(話し手)自身に関わるときです。これらの場合には主観的ニュアンスが入るために動作(動詞、いつというよりはパスポートを返してくれるかどうか)が文の焦点となることはお分かりでしょう。そのために完了体が使われます。それと不完了体未来形(動作の有無の確認)と完了体未来形(完遂の用法)の大きな違いは、Круганов Н.Г.が18世紀末に書いたロシア語文法書・例文集Письмовник(日本の江戸時代の往来物のようなもの)によれば、前者は未来の動作が完遂するかどうかは不明であるが、後者は動作が完遂するとあります。古い本ではありますが、文法用語なども現在のとほぼ変わらず、動詞あの体は基本的なものですから、当時の学者が動詞の体についてどう考えていたかの一環がうかがえます。またラスードヴァ先生は不完了体未来形は動作が起こるのに一拍(一瞬)置いたような、ある程度のの期間が感じられるが、完了体未来形では文脈によっては(特に文脈に明示されていなければ)一瞬後に動作が起こる可能性もあると述べておられます。ここから不完了体未来形は動作の有無の確認、未来の時制での反復、未来の時制での時間的経過длительностьを伴う動作に使われることになります。
Когда вернете паспорт?
完遂的用法(完了体動詞未来形)
話し手が返却(未来の一点)を期待して問うている。
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正解です。мойを入れた方がよいような気がします。知り合いのパスポートということで、前の文脈でそれは分かっているというならそれはそれで結構です。ただ「返してもらえるか」と丁寧に聞いているので、可能性とした方がロシア語でもそういう感じが出るような気がします。今回の出題の狙いは、疑問詞がある場合の文の焦点はどこにあるかということです。普通は疑問詞に来るので不完了体を使いますが、今回の出題のように完了体が来るのはなぜかということです。