2014年08月08日
●和文露訳指南第3回
語彙や構文に頼らない体系的な、会話のための和文露訳に使える参考書を書くつもりで、先日『和文露訳指南』を上梓した。実質的には『和文露訳入門』の4訂版である。この3年間はこのコーナーの投稿者のみなさんのおかげと、めぐり合ったロシア語のよい参考書のおかげで、自分の中で本当にロシア語の勉強が集中してできたし、ロシア語文法の全般の理解も深まったと思う。ただ今にして思うと『和文露訳入門』は百点満点の60点の出来であり、新訂版は80点、三訂版は90点、そして『和文露訳指南』は95点ぐらいの出来であろう。まだまだ収録する例文に改善の余地はあると思うが、基本的な動詞の体の使い方についてはほぼ書き終えたと思う。ただ面白そうな文例、より分かりやすい説明、記入漏れの遂行動詞などは、『和文露訳指南』出版後も少し書き留めたりしている。こういう参考書と言うのは例文が命であり、自説を証明するために使用の限界を示す事ができるような例文をいくつかバリエーションを変えて紹介できればよい。一例を挙げれば、『和文露訳指南』8-2-1項の次の文である。
(いつも朝は大学へは歩きで、夜帰宅するのはバスです)Утром я обычно иду пешком в университет, вечером еду домой на автобусе.
このような例文がまとまったら改訂版として出版するかどうかは今のところ不明である。ただ主なものはこのコーナーで説明することにする。
出題)「地方の党官僚の組織力には何の幻想も私は抱いていない」をロシア語にせよ。
Я не имею никаких
фантастических
чувств к организационной силе
районных партийных
бюрократов.
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организационная силаというロシア語はありますが、使用例を見ると、組織の力であって、出題の組織する能力というのとは違うように思います。それとиметь чувствоというのは語結合的に正しいのですが、そういう感覚を体が持っているということであって、何かの対象に対して抱いているиспытать по отношению к кому-чему-либо какое-либо чувствоとは違うように思います。районныйは地区のであって、地方のではありません。私の答えは、Я не питаю иллюзий насчёт организационных талантов местных партийных бюрократов.
У меня нет никаких фантазий на организационную силу местных партийных бюрократий.
よろしくお願いします。
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фантазияにはмечтаという意味がありますが、複数で使えるかどうかは最新のアカデミー版露露辞典ができていないようなので何とも言えませんが、同じアカデミーの4巻本で見る限り、そういう用例はありません。ただ出題の幻想というのは現実と違う、現実を欺くというニュアンスがあり、一方мечтаというのは、こうあれかしという希望ですから語の選択が違うように思います。
(お題)
地方の党官僚の組織力には何の幻想も私は抱いていない
(コーシカ訳)
Я не питаю никакой мечты об организаторских способностях краевых кадров.
現在の状態を指す不完了体現在です。
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語結合的には не питаю никаких надежд(何の希望を抱いていない)というのはありますが、お答えの語結合はないと思いますし、出題は現実と異なる、現実を裏切るものというニュアンスがあり、将来に関係する夢とは違うと思います。краевойはкрайのということで、крайは地方と訳されますが、ロシアの行政単位の一つで、中に自治区を持つのが普通であり、いわゆる中央に対する地方ではありません。кадрыは要員ということで、官僚という意味はありません。状態というよりは、動作がないということです。動作がない状態と言いたかったのでしょうか?それは考え方次第です。
5分ほど前にうっかりanonymous投稿してしまいました。
同一内容で再投稿いたします。
У меня нет никакой иллюзии по поводу организационной способности местных чиновников партии.
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ほぼ正解なのですが、чиновникиは役人ですから、もっと適切な語があるはずです。
Я не имею никакой надежды на сплочённость периферийного руководства партии.
иллюзия, организованность, солидарность...
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надеждаは将来に関係したものですから、иллюзииの方がよいと思います。руководствоはトップの人たちということであって、官僚という意味にはなりません。それと固まったものではなく、組織する能力です。
Я не имею никакого иллюзий
行為の無の確認で不完了体にしました。
後半しか出来ませんでしたが、よろしくお願いいたします。
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単語の選択はいいのですが、никакихです。それとиметь чувствоは感覚を持つ(感覚がある)という意味なのですが、対象に対して感じる、経験するという意味はありません。この場合はпитать(抱いている)を使うべきです。
動作の無の確認であることは確かですが、現在の時制では分かりにくいと思います。動作がないので不完了体を使っているということでしょうか。動作の無の確認が分かりやすいのは(確認ということから)過去の時制です。
1) Я не испытывал ни каких иллюзий в отношении организационных сил у местных членов партии.
動作の無効(不完了体動詞過去形)
例として一般論で述べている場合。
2) Я не испытываю ни каких иллюзий в отношении организационных сил у местных членов партии.
状態(不完了体動詞現在形)
例として今まさに党大会で地方の党官僚の組織力に関する演説を聞いている時。
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1)はいかなる幻想を経験したことはないというふうに経験と受け取るでしょう。организационные силыは組織する力ではなく、組織としての勢力であり、члены партииは党員(平党員がほとんでしょう)で、党官僚とは違います。そういう意味で2)は動詞の選定も時制も正しいことになり、否定文の基本である動作や状態がないことを示しています。