2014年08月18日
●和文露訳指南第13回
30年来探し求めていた本の半分が手に入った。Письмовник, Курганов Н.Г.という1794年に出た、日本でいう往来物みたいな、文法と文例集を併せたものである。2巻本の第1巻を手に入れたので読んでいるが、18世紀の終わりに、ほとんど現在の文法と用語面でも遜色のない説明には感心する。時制は10に分け、不完了体未来形を未来において動作が完遂するかは不明と書いてあり、完了体未来形は未来において動作が完遂するとの説明と対比されている。これなども当時の一流の語学者が動詞の体をどうとらえていたかが分かるし、現在にも通じる考え方だと思う。他にも形容詞の最上級を作るнаи-(наилучшийなど)はポーランド語由来で耳への響きが悪いと書いてあるのは、当時のポーランド人に対するロシア人の偏見があるのかもしれない。еслиはестьлиから派生したと思われるが、18世紀末ではеслиではなく、естьлиと書けとクルガーノフは書いている。その他にも、кончитьсяが不完了体で用いられていたり、ロシア文字としてのiの説明など、読み始めたばかりだが、結構面白いことも書いてある。べリンスキー(全集第1巻)も本書については書いてあるが、文学ではないからか、ほめてはいない。私としては第2巻にロシアのアネクドートの元になったと言われる文章がいくつかあると聞いているので、確かめるのが悲願である。私の買ったのは1794年版のファクシミリ版のオンデマンド製本で1万4千円もする高いものだったが、一生に一度の買い物だからやむを得ないと思っている。とかくロシア語の資料集めには金がかかる。
出題)「彼は煙にまかれ窒息死した」をロシア語にせよ。
Он умер от удушья
в дыму.
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正解です。厳密に言うと、絞殺されたのも含まれるような気がします。私の答えは、Он задохнулся от дыма.
Он был окружен дымом, умер от удушья.
よろしくお願いします。カンマのあと и を入れるべきか迷いましたが、なしでいきます。
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окружёнというのは取り囲まれているという意味ですが、周りを(円のように)とか、あらゆる方向から(そこから出られないように)ということで、人がいて、そこを透明なプラスチックなどでスポッと覆った感じです。煙にはそういう器用なことはできないと思います。それゆえ煙の中にいるв дымуというようにブーチャンさんのようにすれば正解だと思います。
Он не смог дышать из-за дыма и задохнулся.
出来ないは具体的な状況下で不可能なので完了体、呼吸するは繰り返しで不完了体、窒息死はアオリストで完了体にしました。
よろしくお願い致します。
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体の用法はその通りです。ただзадохнуться = умереть от недостатка воздуха(空気不足で死ぬ)という意味があり、この不完了体задыхаться = с трудом дышать, испытывать недостаток воздуха(呼吸が苦しい、空気不足を味わう)という意味なので、最初のне смог дышатьは不要です。それと語結合はзадохнуться от + 生格というふうに、原因が来ます。
12回も再投稿しました。
よろしくお願いします。
Он задохнулся в дыму.
アオリスト的用法(完了体動詞過去形)
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正解ですが、「煙に巻かれて」は「煙に包まれて前後左右の感覚を失う」ということで、そういう意味では直訳です。ただ語結合的にзадохнуться от + 生格と原因になる名詞が来るということと、日本語の煙に巻かれて死ぬというのは、煙が原因で窒息死するという意味であって、煙の中で窒息死する(極端に言えば絞殺されるとか)という意味ではないと思います。それに絞殺されるなら自動詞は来ませんし。
Его задушило дымом.
自然災害による死の記述の際にたまに見る構文を用いてみました。添削頂ければ幸いです。
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正解です。アカデミー版露露にはзадушитьが無人称文では使えるとは書いてありませんが、Все они были задушены смолистым дымом.(彼ら全員がヤニのにおいがする煙に巻かれて死んだ)という例文があり、自然災害が意味上の主語であるような文は、『和文露訳指南』9-3項にあるように、無人称文に代えられますから、お答えのような無人称文は可能だと思います。
(お題)
彼は煙にまかれ窒息死した
(コーシカ訳)
1) Он задохнулся в дыму.
2) Его удушил дым.
過去の1点、アオリストの完了体過去です。
煙の内に窒息死と考えるんですね…
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1)正解です。個人的にはより論理的に窒息の原因を煙とした方がよいと思います。煙以外で窒息死したという可能性もなくはないことになりえます。2)についてはアカデミー版の最新版が来ていないので何とも言えませんが、4巻本を見る限り主語は人のようです。Он был задушен дымом.のようになると思います。煙を主語にするのはудушитьが無人称文で使えるのなら、『和文露訳指南』9-3項のように可能だとは思いますが、主語に意志のない煙をもってくるのはそれでも抵抗があると思います。
Он, окутавшись дымом, задохнулся.
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直訳したわけですね。окутаться = окружаться со всех сторон (дымом, туманом и т. д.)ですが、霧の中や煙の中にいても息苦しいという印象がないわけです。そこで窒息死した(しかも自動詞)というのですから、タンとか餅とかがのどにつかえて死んだという可能性もでてきます。はっきりと煙が原因で窒息したと書くべきです。日本語の「煙に巻かれて死んだ」というのは煙による窒息死だと私は理解しており、それ以外の解釈は知りません。
Он задохнулся в дыму.
「まかれた」そして「窒息死した」を順次的用法で表わせればと思いましたが、うまい言葉が分からずこうなりました。よろしくお願いします。
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正解です。個人的には煙が原因でとした方が論理的かなとは思います。
Он пепежил столб дыма и умер от задыхания.
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пережилのタイプミスでしょう。煙の柱に苦しんだよりは煙の中でとしたほうがよかったと思います。
キリル文字だとスパムと見分けにくいとのことなので、HNの表記を変えました。
Женя改め、じぇーにゃ、です。
よろしくお願いします。
Он задохнулся от дыма.
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正解です。お気遣いいただいて恐縮しております。