2014年07月26日
●続和文解釈入門第520回
動詞бытьには動作動詞として不完了体・完了体の機能があることは前に述べた。不完了体の機能において反復の意味はなく、その機能はбыватьが担う。完了体過去形についても第487回本文においてアオリスト用法はあるが、былが助動詞として過去の時制を示すため結果の存続の用法はないのではないかと述べた。それでは動詞бытьには結果の存続の用法はないのだろうか?『三訂和文露訳入門』8-1-1項において、Я дома.が「私は家にいる」という意味の他に、動作動詞として「ただいま(戻りました)」という意味の時は、3-1-6-2項に挙げたように、状態の動詞がуже(すでに)というニュアンスがある文脈では、結果の存続の意味を出せることから「到着した」という意味を示す事ができると考えてもよい。つまり動詞бытьは現在の時制で結果の存続の意味をもつと言える。
出題)「モスクワでコーヒーを飲む習慣はギリシャ人から始まった」をロシア語にせよ。
Привычка питья кофе
в Москве началась
с греков.
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語結合はпривычка к + 与格か、привычка + 不定形です。それとот грековだと思います。私の答えは、От греков повёлся в Москве обычай пить кофе.
В Москве привычка пить кофе берет начало от греков.
よろしくお願いします。
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正解です。
1) Традиция кофепития в Москве была начата греками.
アオリスト : 話し手が歴史的事実(過去の一点)をイメージしている場合
2) Традиция кофепития в Москве начата греками.
結果の存続 : 話し手が現在も慣習が続いていることをイメージしている場合
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кофепитиеという言葉は聞いたことがありませんし、アカデミー版にもありません。начать/начинатьは着手するという意味ですが、これだけで由来するという意味はありません。この意味があるのは、начаться/начинатьсяです。体の用法は正しいのですが、不完了体現在形の継続の用法で示すことも可能です。
モスクワでコーヒーを飲む(ことの)習慣はギリシャ人(の習慣)から(その時)始まった。
として体を決めました。
В Москве с греческих началась привычка пить кофе.
いつも疑問に答えて下さり、とても感謝しております。
ありがとうございます。
すっとこどっこいな質問もあるかもしれません、すみません。
今は、先生からの「正解です」だけのコメントを頂くことを
目標に取り組んでいます。
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大体いいのですが、「ギリシャ人の」という形容詞の接続の仕方がおかしいと思います。それとгреческийというのは「ギリシャ人の」という意味の他に、「ギリシャの」という意味もあるわけで、今回はどちらでも構いませんが、ギリシャ人のという意味の時は、грекの複数生格を使えば、誤解の余地はありません。人ですから、к/отという関係(в/изと с/на)からот грековとすれば正解です。
私が正解と言っても、うのみにせず、何かおかしいと感じることがあればコメントください。それが私の勉強にもなります。暑さが厳しい毎日ですが、ご自愛ください。
В Москве вошло в привычку пить кофе с грецкого поведения.
動詞は結果の存続でсвとしました。よろしくお願いします。ところで、史実として興味深いです。初めてソ連で飲んだコーヒーはトルコ風コーヒーだったのですが、やはりそちら方面から伝わったのでしたか。
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おっしゃりたいことはこれで伝わるとは思いますが、грецкийは廃語で、現在使われるのは、грецкий орех(クルミ)ぐらいだとアカデミー版にはあります。形容詞としてはгреческийを使うべきですが、ギリシャ人の振る舞いよりは、ギリシャ人とした方がよいと思います。
コーヒーの起源については『中世モスクワの日常生活Повседневная жизнь средневековой Москвы』Шокарев, Молодая гвардия, 2012に載っていて、クレムリンの近くにキターイ・ゴロトКитай-городという地区があり、そこにニコーリスカヤ通りНикольская улицаというのがあり、その由来について述べているくだりにあるものです。1390年にНикольский обитель(ニコラ僧院)というのが記録に見え、モスクワで最も古い僧院の一つであり、17世紀にはこの近くにギリシャのアトス山Афонский関係の修道院があり、そこをイワン雷帝が訪れています。このときにこの修道院がニコラ修道院の名を冠したものとなり、ギリシャ人の影響下におかれたと言われています。ここがギリシャから訪れた総主教の定宿となったわけで、1658年ここで総主教にギリシャ風の食事を出したという記述があり、18世紀にはこの場所にкофейный домが開かれ、祈祷などの後に、ギリシャ人がここに集まり、ホットワインやコーヒーを飲んだと言われています。ギリシャコーヒーというのはトルココーヒーのように濃くて甘いと聞いたことがありますが、自信はありません。
Традиция пить кофе в Москве начинается с греков.
..... восходит к грекам.
..... исходит из греков.
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二番目のは正解です。начинается от грековや
исходит от греков(この動詞はизとの結びつきが強いため、人に対しては避けたほうが無難です)となります。
1) В Москве обычай пить кофе начался от греков.
2) В Москве обычай пить кофе изначально появился у греков.
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正解です。
今日は体だけ投稿させて頂きます。
「飲む」は行為そのものを差しているので不完了体不定形。
「始まった」は、習慣が始まるというのは漠然としていて、時間軸の特定かつ不動の一点をイメージしていると思えなかったのとギリシャ人からが文章の力点と考えて不完了体過去だと思いました。
完了体過去のアオリストや結果の存続ととても迷いました。
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出題の中味を考えると、コーヒーの起源をいっているわけで、コーヒーは現在でも飲まれています。ここから現在の時制に関わっているということが分かります。飲むのはその通りなのですが、「始まった」の正解は完了体過去形のアオリスト的用法か、それから派生する結果の存続の他に、不完了体現在形の過去から現在までの継続ということでも示せます。下記の動詞も状態の動詞とも、文脈によっては歴史的現在とも取れます。брать начало = начинаться
В Москве обычай пить кофе берёт начало от греков.
いずれにせよ、現在の時制につながっていなければならないので、過去の時制でのみに使われる(つまり時制の転用がない)不完了体過去形を使うのは間違いです。完了体過去形はアオリスト的用法か結果の存続かは文脈によるわけで、過去の時制だけに用いられるかどうかは形式上断定できないわけですが、不完了体過去形は過去の時制(仮定法過去を除き)だけに用いられると断定できます。
(お題)
モスクワでコーヒーを飲む習慣はギリシャ人から始まった
(コーシカ訳)
1) Привычка пить кофе в Москве берет начало из греков.
2) Привычка пить кофе в Москве восходит к грекам.
んん、2) は何か変な気もする(自分で書いといて何ですが…)
питьは習慣に関係するので不完了体不定形です:выпиватьでも好いかもしれません。
кофеは変化しない男性名詞ですが、本当なら部分生格になるはずです。
братьもвосходитьも性質?の不完了体現在です:そういうもの”である”。
さて、正解は
うぉ、от生でしたか…
コーヒーと祈祷。鉄板の組み合わせですね。イスラーム世界でスーフィー教団が徹夜の行をするのにコーヒーを嗜むようになったのが始まりなのだと読んだことがあります(小杉泰『イスラーム世界を読む』出版、2002年、71頁)
コンスタンチノープルとイスラーム世界は、地理的な近さも東ローマ帝国という歴史の共通項も幸いして、商業的なネットワークはお上に関係なく細々続き、それが、エレミアス2世前後にロシアに伝わってきた、ということでしょうか。面白いですね。
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пить водуであって、питьの後には部分生格は来ません。来るのはвыпить, попитьなどです。これはпитьが飲むという意味の広い動作(飲み干す、ちょっと飲むという意味も含めた)を示しているからだと思います。кофеは無変化ですが、指小形にкофейкуというのがあり、これで部分生格となります。2)は正解です。