2014年07月21日
●続和文解釈入門第515回
日本では外国語のうちで特にロシア語の人気がないのは周知の事実である。それはNHKの語学番組の扱いを見てみればよく分かる。時の政治情勢などにも影響されるだろうし、今回のマレーシア機墜落事件を見る限り、ロシア語を学んでロシアを知ろうという気は起こらないかもしれない。しかし、一方日本人はドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』や、トルストイ、チェーホフなどをよく読み、ロシア文学好きでもある。『カラマーゾフの兄弟』を読了したら、思考力の面で一人前だと考える若い人もいるやに聞く。欧米と異なる対応をするロシア、ロシア人について逆に知りたいと考える人もいるだろうし、私のようにロシア政府と一般のロシア人の考え方は違うのではないかと思う人もいるだろう。こういうときに普通のロシア人とメールなどでやりとりして生の声を聞いてもらいたいと思うのである。
いざロシア語をやろうと思っても、挨拶言葉の丸暗記に続いて、名詞の格変化(6つある)、動詞の活用(人称と単数・複数ごとに)を丸暗記(これはある程度やむを得ない)があり、他にも動詞の体の用法や単数・複数の使い分けがある。これでははなからやる気も失せようというものである。短所ばかりあげつらっても仕方がない。楽な面もある。それは文字である。ロシア文字はたった33文字しかないし、ローマ字と似ているものが大半だから、三日もあれば覚えられるだろう。アラビア文字や漢字を勉強することに比べたら屁でもないはずだ。
問題はここからである。とりあえず学習の目標をロシア語を話せるようにするから、生のロシア人とメールでやりとりできるようするにして、学習法を工夫してあげればよいと思う。ロシア文字を覚えた学習者に、初歩的な言い回しや文法を教えると同時に、学習者からロシア人にメールするとして、それに学習者が必要だと思う短文を日本語で書いてもらう。それを露訳して、レッスンの半分はこの露訳の詳しい解説に当て、この露文を暗記してもらう。例えば、「調子はどうですか?」という文があったら、指導する側は、いろいろ訳せるだろうが、Как дела? と教え、какやделаについて細かく説明し、この返事はどうなるのかまで教える。毎回一文と決めて、やって行くうち、「私は東京に住んでいます」とか、「ウクライナ情勢についてどう思いますか?」、「ロシアのコスプレ人気はどうですか?」というように、学習者の興味ある分野で和文露訳できるようにしてあげる。学習者一人一人に合わせた、オーダーメードの語彙や分野で勉強した方がやる気も出るし、そうすれば勉強も自分の興味ある分野だから勉強も続くはずだ。それを既存の教科書のような、ある意味の押し付けで、学校とか友達とかというきまりきった万人向けのテーマで書かれた会話内容を発音させ、暗記するというのでは実際の会話がいつまでたってもできないままだろうし、学習意欲が湧くとも思えない。自分の言葉でロシア人に自分の話したいこと、聞きたいことを伝えるというのが、まず一番最初にすべきことだと思う。名詞の格変化だって、自分の関心のある分野、例えば車、ファッション関係を使えばいいし、会社関係なら、会社のカタログを使うということも可能である。動詞の活用についても会話でよく使う動詞を優先的に覚えるようにしてもらえばよいわけである。こういう指導のできる講師が少ないのか、あるいは学校の体制によってそれができないのかは知らないが、私なら個人向けにこのようなレッスンはできると自負している。こういうようなレッスンを受けてみたいという方はご連絡を。料金は応相談だが、とりあえずは東京近辺の方ということになる。慣れてきたらそのうちSkypeでのレッスンも視野に入れたいと思っている。
出題)「そんなことは言っていない」をロシア語にせよ。
Я такого не говорю.
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お答えは不完了体の現在形ですから、常にそういうことは言わないという、無(ゼロ)の反復となります。私の答えは結果の存続で、Я этого не сказал.
これは結果の存続であり、現在の時制と関わりがあり、具体的な1回の事柄、今言った、言っていないに関係しているので完了体過去形が来ている。アオリスト的用法というのは過去に動作軸の一つの時点で動作があったことを示しているが、その動作が現在に関係があるともないとも言えないし、あるという文脈なら結果の存続である。一方不完了体過去形は過去の時制でしか用いられないから、現在の時制との結びつきはないということが明確である。
Я этого не говорил.は「そんなことは言ったことがない」は動作の無の確認であり、ここから否定の意味の経験となる。
Я так не сказал.
動作の有無の「無」かとも思いましたが、言うという動作はあり、言った内容が違う、ととらえて、結果の存続でсвとしました。よろしくお願いします。
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正解です。おっしゃりたいの具体的な1回の動作ということでしょう。
Такого-то я и не говорил.
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不完了体過去形は過去の時制のみで使われ、不完了体未来形は未来の時制のみで使われるということを理解してください。つまりお答えは現在の時制とは関わりのない過去の時点で「言った」ことを意味し、回数も1回以上ということですから、露訳する、「言ったことがない」となります。такого-тоというのは「これこれの」という意味で、下記のような使い方をします。
Я, имя рек, с такого-то числа отрекаюсь от отдца и матери, как от врагов советского народа.(私、某はこれこれの日より父と母を人民の敵として義絶します)
アオリストと理解しつつ人称も省略
Не сказал таких слов. : 目的語の否定
Не сказал такие слова. : 動詞の否定
とはなりませんか?
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もっというと結果の存続でしょう。最初の文が正解だと思います。ただтакие словаというのはこのようなと言葉の複数ですから論理的と言えば論理的ですが、普通はэтоでしょう。этоは「このこと」という抽象的な概念ですから否定文で直接補語となるときは必ず生格を取ります。二つ目のお答えが間違いとは言えないのは、否定文において主語の否定生格はそれなりに明確ですが、直接補語の場合は、現代ロシア語のが否定生格か対格に移行しつつあることのため、具体的なものは対格が好まれるようですが、必ずしも一概には言えず、これからの研究課題のようです。ある程度の状況は中級文法書に書いてある通りです。
Я не говорил этого.
Этого не говориться.
行為の存在を否定しているので不完了体にしました。
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一般的にはそれで正しいのですが、今回のように具体的な動作であり、現在の時制に関わるときは否定の意味の結果の存続ということで完了体過去形が来ます。不完了体過去形は過去の時制にしか使えませんが、完了体は時制の転用というのがあるのです。
Этого не говориться.は非文(文法的正しくない文)です。говоритьは自動詞、他動詞とも使いますが、говоритьсяを受身で使いたいのであれば、少なくとも(表に現れるかどうかは別にして)主語は必要です。этогоを否定生格にして主語としたのでしょうか?そうであっても不定法文ですから(不定法文の意味上の主語や与格になりますし)、どうにもなりません。
Я не говорил ничего подобного.
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不完了体過去形は過去の時制のみで使われますから違います。
(お題)
そうは言っていない
(コーシカ訳)
Я этого не говорил.
ご著書『ビジネスロシア語実践会話・応用編』30頁より流用です。
・行為そのものを否定する不完了体
・発言内容を否定する生格
の組み合わせと考えます。
さて、正解は
おぉ、完了体過去と組み合わせて結果の現存というものありなのですね。
ゴさんのお答えも前掲書の同じ頁にありますが、
今回の狙いは完了体過去による結果の現存なので×ということですね。
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基本的には文脈による「こうは言っていない」の解釈次第だと思います。否定の結果の存続であれば、完了体過去形が来ますが、その場合は具体的な1回の発話がすでにあったという前提であり、不完了体過去形がくるときは、動作の無の確認ですから、経験の意味で訳せるとか、動作が1度ならず起こったということになります。