2014年07月08日

●続和文解釈入門第502回

自分の本を通しで読み返すという機会はあまりない。『三訂和文露訳入門』を出してから、変更や追加をこのコーナーで発表してきており、自分なりに4訂版の原稿が530ページを超えた。60ページほど増えたことになる。これを機会に通しで読んでみることにした。少しずつ読んでいる。読んで思うのだが、自分ではロシア語初級の人にも分かるように書いたつもりだが、内容が分かりにくいというか、くどい感じがする。文章力の問題なのは確かだが、説明を一刀両断にすると正確さが失われるということもある。いずれにせよ参考書は参考書であって、やはり学習者のレベルに合わせて、その希望も聞き、マンツーマンで教えるに如かずということであろう。本はあくまでも学習の補助であり、この本だけで動詞の体の用法をマスターできるとしたら、その人のレベルは上級ということになる。個人レッスンの希望者は大歓迎だが、皆が皆そうもいくまい。そうなるとこのコーナーで実際に投稿するかどうかは別にして、実際に問題を解いて、回答の説明を理解しないと会話の和文露訳の上達の道はないと思う。匿名で構わないのだし、しかも無料である。遠慮しないでどしどし投稿されたら良いと思う。仕事や学校で忙しいなら、毎日投稿する必要もない。休みの日に合わせて、週1回でも2回でも構わないと思う。投稿さえしてくれれば、それに必ずコメントするので、遠慮しないでほしい。この頃気力の衰えも感じられるから、続けているうちが華で、このコーナーが終わってしまったら、和文露訳の練習するようなそういう機会を探すのも大変だろう。あるうちに利用したらよいと思う。ただ投稿したつもりが、載っていないというのは、私が嫌がらせをしているわけではない。数少ない投稿者、神様同然の投稿者ににそういう事をするはずがない。投稿者のフィードバックによって、『和文露訳指南』もより実践的にいい意味で変わってきて、より応用のきくものになってきており、大いに感謝している次第である。コメントがないとしたら、毎日千通ぐらいは来るスパムのせいだろうと思う。毎日更新しているのでスパムも多い。投稿が載っていなければ面倒でも再投稿してほしい。必ずコメントする。逆に同じ投稿が3通ぐらい入ることもあるのだから、投稿したつもりが投稿されていないということもあるのだろうと思う。自分の投稿が載っていないと、私のホームページ『ランポポー』のメールを利用して、メールで送ってくれる熱心な投稿者の方もいる。有難いことである。

出題)「われらがボクサーは強いパンチを食らった」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2014年07月08日 05:51
コメント

Наш боксёр получил
сильные удары
кулаком.
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正解ですが、ボクサーはキックボクサーではないので、ひじや蹴りは当然ないので、кулакомは取るべきです。右だけや左だけのパンチを繰り出したという風にも取れますが、普通は両方でしょうから。私の答えは、Наш боксёр пропустил сильные удары.
似たような言い回しでпропустить мяч в ворота(ゴールを決められる)がある。получить ударを使ってもよい。

Posted by ブーチャン at 2014年07月08日 06:09

Наш боксёр получил сильный удар.
結果の現存でсвとしました。
よろしくお願いします。
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正解です。パンチを一発だけ食らったということになります。もちろんやまさんのとらえ方の問題ですが、何も文脈上の設定がなければ、アオリスト的解釈としておいて、目の前で(テレビを見たりして)こういう表現を聞いたなら、結果の存続となります。しかし、古いビデオで見てならアオリスト的表現ですし、昨日のテレビ番組を録画して見たのなら結果の存続でしょう。状況状況でイメージが湧くようにすべきです。出題の日本語を聞いても、どちらの用法とも判断できます。

Posted by やま at 2014年07月08日 20:21

(お題)
われらがボクサーは強いパンチを食らった
(コーシカ訳)
1) На нашего боксера обрушился сильный удар.
2) Наш боксер был нанесен сильный удар.

ともにアオリストです。
決定打、とどめと考えて単数としております。
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1) のобрушитьсяは波、豪雨、台風、銃撃、台風、軍隊が雪崩のように襲いかかるということですから、一発だけというのはどうでしょう?
2)はнанести кому ударですから、нашему боксёруとなるはずです。

Posted by コーシカ at 2014年07月08日 21:34

Наш боксёр подвергся сильному удару.
боксёра ударил とか。
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подвегаться ударуという語結合はありますが、砲撃とか空爆、雷というような文脈が多いようです。二つ目の文はボクサーは試合では二人しかおらず、そのため不定人称文にできないので、苦肉の策のようですが、Противникとでも主語を入れないと、ロシア語としてはおかしいと思います。

Posted by ゴ at 2014年07月08日 22:35

初めてコメントさせて頂きます。
ソチオリンピックをテレビで観戦していて、あるマイナー競技のロシア人選手のファンになったのですが、日本では全く無名でインタビュー記事もロシア語のものしかなかったため、ロシア語の勉強を始めた者です。

ロシア語については顔文字で使われているдがロシアで使われている文字らしいという知識くらいしか持っていなかったので、開始早々に覚える事の多さとニュアンスの理解の難しさに圧倒されています。

完了体と不完了体の使いわけが腑に落ちずに調べているうちに貴ブログサイトに辿り着きました。

僭越ながら、問題に挑戦させて頂きました。

Наш боксер получил сильнейший удар от оппонента.
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わざわざ投稿いただき感謝申し上げます。本当に入門者なのでしょうか?入門したてでこのレベルなら、よほどロシア語に向いているか、ロシア語マスターの秘訣がお分かりになったということです。ロシア語の勉強の仕方を公開なされば、他の学習者の(ひいては私の)役に立つと思います。お答えはほぼ正解なのですが、оппонентは語義的に、討論などにおいて反論する人(論敵)ということであり、スポーツなどの相手という意味ではпротивник(敵という意味もありますが、感情を特にこめない表現で、それがврагとの違いです)を使います。話し相手ならсобеседникと言います。
 和文露訳の基本は、意味が取りにくい場合を除いて、出題にない語彙は書かないということです。パンチを食らうのは相手から(自分で自分を殴るボクサーはいないでしょうし、ボクシングの試合は二人で行うものです)というのは当然ですから、「相手から」というのは訳す必要はありませんし、日本語でもそうは言わないでしょう。ロシア人も同じ人間ですから、基本的には常識の範囲内で分かります。
получилと正しい体をお使いになっていますが、получалではどうしてだめなのかを考えてみるのが、体の使い分けを考える上で必要です。自信がなければお教えします。
ロシア語をやりはじめたら、体の使い分けに悩むのが普通です。それは初級や中級のロシア語の参考書や文法書でも体の使い分けについてはあまり書いておらず、これで日常会話で使われている動詞の体の用法が分かるとは、40年以上ロシア語をやっている私でさえ、思えません。はりねずみさんのような学習者が増えることを願っています。ロシア文字を覚え、初級文法を終えた時期(学習を始めてから半年ぐらい)で、体の使い分けを学ぶべきです。同時に使い分け用の例文を暗記すれば一石二鳥で1年ほどで、語彙(日常会話を除いて必要とする語彙は人それぞれですから)や発音、イントネーションを除けば、ロシア語が話せるようになると思います。ご精進されることを願っておりますし、遠慮なくこれからもご投稿ください。

Posted by はりねずみ at 2014年07月08日 22:52

Наш боксер пропустил сильный удар.
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正解です。さすがとしかいいようがありません。

Posted by Ml at 2014年07月09日 03:34

Наш боксёр получил сильный удар.
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正解です。

Posted by チョンチン at 2014年07月09日 05:28

丁寧に、しかも分かり易くお答え頂いて本当にありがとうございます。

今まで、問題文は読んでいましたが、難しくて手が出ませんでした。
今回は単語が比較的簡単なものだったので挑戦してみました。

完了体を使ったのはパンチを食らったという完結した一回の事実だと解釈したからです。

Получалだと、(その時)パンチを食らっていたという意味になるのかなと思ったので

問題文の前に
ボクサーはパンチを食らったのか?
の様にパンチを受けるという事柄があったのかという確認の質問か
ボクサーは何(パンチなのか不意なバッティングなのか等)でダメージをおったのかという質問がないとПолучалを使うのはおかしいのではと思ったからです。
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出題の日本語に引きずられずに、時制でとらえようとしている点は評価します。日本語の「~した」というのは、過去であるのは確かですが、ロシア語にする場合、完了体と不完了体のどちらを使うのか、一律には決められません。「佐藤さんが来た」という文も、今耳にしたなら、Г-н Сато приехал.と結果の存続(佐藤さんは来ている)で、佐藤さんはここにいるとなりますが、「佐藤さんが1年前に来た」であれば、露訳は同じでも、アオリスト的用法(この用語は私が作ったものではありません。1980年版の『アカデミー版ロシア語文法』にある用語です)とな、現在ここに佐藤さんがいるかどうかは話し手が興味を持っていないことになります。Г-н Сато приезжал.なら「佐藤さんは来ていた」で、佐藤さんはここにはいないということになります。ただ動詞の種類や文脈によって、体の本質は同じでも現れ方に強弱が出る場合もあります。
 出題についてですが、「事柄があったのかという確認の質問」というのは、不完了体の体の本質を表した言葉です。つまり入門の段階ではりねずみさんは体の本質を理解したことになります。そういう人もいるのですね。不完了体は動作や状態そのものを示すもので、完了体の持つ主観的ニュアンス(完遂、義務、うっかり、具体的な個別動作)がないものです。つまり無色なので、どんな色にも染まるわけです。ですから文脈によっては反復など、完了体の語義では表現できない用法を担うことになったというのがForsyth先生や原求作先生など多くの学者の考えです。ただ不完了体は動作そのものを示すので、使い分けが難しいのです。不完了体 + アルファ(主観的ニュアンス) = 完了体ですから、完了体にも動作そのものを示す要素が含まれており、会話における和文露訳をする上で区別が難しいわけです。そこで、私は完了体に焦点を当てて、完了体は過程(進行形)を表現できないということを手掛かりに、完了体は時間軸の特定の具体的一点をイメージするとしたわけです。もっというと、具体的な動作は完了体を使うと考えれば分かりやすいでしょう。получалはパンチを受けたという動作があったことを確認していますが、いつ、どこで、何度ということには触れていません。ここから経験(パンチを受けたことがある)という場合に使われます。日本語の「~ことがある」は1度と、1度以上を示し、1度ということが確かであれば、時間軸の特定の一点(具体的にいつかは忘れたにせよ)であるので、完了体過去形を使いますが、1度かもしれないし、それ以上かもしれないという時には不完了体子形を使います。つまり時の状況語(昨日とか1年前)とか、具体的な動作の時期があるときは不完了体は使えないのです。使えるとしたら、それは一点ではなく、昨日中のいつか、というように期間でとらえた場合です。何か質問があれば、遠慮なくどうぞ。

Posted by はりねずみ at 2014年07月09日 09:35

詳細な説明をして頂いてありがとうこざいます!ものすごく腑に落ちました。

不完了体が経験を表す事が今回頂いた説明でよく分かりました。

今まで参考書などで例文を見て来て個人的に受けた印象としては、完了体は結果を、不完了体は経過や動作そのものを表し、話し手がその行為の行く末を意識していない、ですとか行為自体よりもそれを取り巻く状況に力点を置いている時に不完了体が使われているなという感じです。

本日の問題については侵入は結果を達成している(侵入してしまった)ので完了体、
防御態勢に置くは黴菌が入ってくれば「いつも」体は防御態勢に置くので恒常性?のようなニュアンスで不完了体かなと予想を立てましたが、単語が分かりません。
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体の理解についてはその通りです。また第503回の体の用法は完璧です。語彙は興味があったり、必要だと思う語彙を覚えればいいのであって、重要なのは体の用法です。語彙は概ね和露辞典やネットで調べることが可能です。英語と違って、日本語にはロシア語同様未来完了の形式がないので、未来の動作でも、動作が二つあって、最初に終わる動作には「~したら」(予定が確定した場合で、未定であれば「~すれば」)となります。これを確述(確言)と呼ぶ国語学者がおり、私もこれにならっています。例えば「今度ハワイに行ったら、お土産買ってきてね」という文では、「行ったら」(予定が決まっている場合)、「行くなら(仮に行くとしたら)」とどちらも使えますが、「行ったら」が確述の用法です。ですから、出題の最初の動作「侵入したら」は完了体未来形でも、完了体過去形でも表現できます。完了体過去形は過去の時制の他に、未来で使う場合があり、これを時制の転用と呼びます。時制を変えることで強調するのだと考えてもいいでしょう。不完了体過去形は過去の時制のみで、不完了体未来形は未来の時制のみで使われると覚えてください。完了体には時制の転用があり、完了体未来形は「昔はよく~したものだった」というような意味で過去の時制で使われることもあります。このコーナーでは、語彙は特に問題にしていません。私の回答を見て、必要だと思えば、エクセルで和露の形で語彙集にすれば、いつか必要な時に取りだすこともできるでしょう。暗記する必要はありません。そうではなくて、今回はりねずみさんののようにどちらの体になるか、自分なりに推論して投稿する方がいてもいいはずです。今までそういう方はおりませんが、そういう参加の方法があっていいと思いますし、学習者の間口も広がります。学習の段階では語彙は二の次です。日常語彙は覚えるべきですが、それ以外は必要だと思うものを語彙集にしておくべきです。常連投稿者のコーシカさんも和露語彙集を作っていると聞いています。またプロの通訳やガイドも自分なりの語彙集を作っているはずですから、ロシア語を自分に用立てる具体的目的(お好きなマイナースポーツの用語集、スポーツ用語集)があるのなら必要なことだと思います。このコーナーでもこれまで例は少ないのですが出題でスポーツを扱ってきました。それなども参考になるかもしれません。使えるものは『三訂和文露訳入門』に収録してあります。

Posted by はりねずみ at 2014年07月09日 16:08

確述は行くという行為があった事前提なので完了体、行くならの場合だと行為があった事を前提にしていないので不完了体という解釈で大丈夫でしょうか。

語彙、本当に恥ずかしい程乏しいです。
語彙集を作りたいと思います。

因みに私の勉強法ですが、覚える事を中心には置いておらず、まだ単語や語尾の変化などはほとんど覚え(られ)ていません。

オリンピックがきっかけでロシア語を学習しようと決めましたが、実際にとりかかったのは4月です。
4月中に文字とその発音を覚え、図書館で借りた参考書をパラパラとめくったのですが、変化とその種類の多さに驚きました。

私のロシア語学習の目的は好きな選手のインタビュー記事を読む事で、私の記憶能力で変化パターンや例外的な変化をする単語などを参考書の順番に覚えていてはいつまでたっても記事が読めるようにはならないと思いました。

とりあえず、体や格を理解しないとロシア人の意図している事は読み取れない事はなんとなく分かったので、単語の変化させ方を覚える事も大事ですが、まずはどうして変化させるかや、変化させる事でどのように意味が変わって行くかを理解しないといけないと思いました。

単語や変化表は必要な時に辞書や参考書で調べられるので…

なので、最初のカテゴリーすらキチンと終えぬままでしたが体が変わる事で意味がどう変わってくるかや、どの格がどういう事を示すのかを最寄りの図書館にあった全ての参考書を並べて例文を読み込み、腑に落とそうと努めました。

体や格という概念が自分には無く、机に向かって勉強出来る時間も少ないので日常生活の中で感覚を身につけないといけないと思い、自分の毎日の動作や発言を、
これを表現しようと思えば完了体だなとか
この発言でこの名詞は体格で表現しないとだなとか考えながら過ごしています。

あと、瞬発力も鍛えないといけないと思ったので、
よく使われる名詞は単語式に覚えて、日本語で例文集を作り、例文集をランダムに引いて、直ぐに正しい格の単語を答えられるようにしたり、友人や家族に
出来るだけ多く○○(名詞)を使って例文を作って
とお願いして、その度に正しい格で答えられるように練習したりしています。

また、シチュエーションというか、時間の経過や話者の意図や力点がどこにあるかで、体はどのように使い分けられているかの様な事や生格等で特殊な使い方をされているもの等に出会えば、それが腑に落ちるまでは例文を沢山拾って使い方を覚える事に務めています。

これからは、基本的な単語と変化、またそれが使われるシチュエーションを少しずつ学んで行きたいと思っています。
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ロシア語では、「ハワイに行ったら(確述)、お土産を買ってね」も、「ハワイに行くのなら、お土産を買ってね」も、完了体未来形でも、完了体過去形でも示せますが、不完了体を使うことはありません。不完了体を使うと動作が終了していないことになるからです。なぜ完了体を使うかというと、二つの動作ある場合、同時であれば(食べながら歩くなど)、不完了体を使いますが、順々に動作が起こるときは、初めの動作が終わらないと次の動作に移れないために、初めの動作は完了体が来ますし、順々にポンポンと動作が起こるのであれば、二つとも完了体が普通です。「ハワイに着いた」という動作が、終了しないと、そこで買い物はできないということはお分かりになると思います。この最初の動作のときに完了体未来形を使うのが基本です。ただ二つ完了体未来形が並ぶと、どちらが先に動作が終わるのか分かりずらい(二つ動詞が並べば、先に来た動詞が最初の動作を担うというのは常識ではありますが)ため、いっそ完了体過去形にすれば、動作が終わったというのがはっきりするだろう(少なくとも耳では誤解が少ない)ということだろうと思います。
 格についてですが、確かに、ロシア語はインドヨーロッパ語の中では格については古形を残しています。英語は一人称のI, meやwe, usぐらいしかないとの大きな違いですが、どの言語にもそれなりの難しさがあります。格を特別なものとしてとらえずに、外国人向けの日本語文法のように、主格(ハ格)、生格(ノ格)、与格(二格)、対格(ヲ格)と覚え、造格は「~によって」、前置格は(~について)のように覚えるしかないと思います。日本語では格助詞をつかいますが、ロシア語では語尾が変化してその役割をするだけのことです。違う点を強調するよりも、偶然とはいえ、似ているところを探し出して覚える方が楽です。お書きの勉強法は非常に合理的です。語学を学ぶ目標が具体的であればあるほど、上達は早くなります。何か質問が出てきたら遠慮なくどうぞ。ただこの502回のコメントの欄は長くなりすぎるので、最寄りの回に投稿の形で質問を寄せてください。他の学習者にも参考になるでしょう。

Posted by はりねずみ at 2014年07月10日 11:46
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