2014年07月07日

●続和文解釈入門第501回

パードゥチェヴァ先生は「否定生格は主語と補語が否定されるときは使えない」と述べているが、これは否定自体が世の中にないという絶対的(抽象的)無から、「ここでは見えない」というような、より具体的なものの否定になっていくと、主格や対格補語が出てくる可能性があることを示唆していると思われる。

(どのロシアの飛行機もグルジアの空域を侵犯したことはない)Никакие российские самолёты воздушного пространства Грузии не нарушали.

(事故は起こらなかった)Аварии не произошло.

 上の文でАварии не имело места.とすると、иметь местоが所在動詞なので非文となるのだが、語義上は同じなのに、ダブルスタンダードではないかと思ってしまう。これも主語と補語を同時に否定することになると考えて、否定生格が出て来られないからだろう。いずれにせよ、外国人である私には所在動詞と存在動詞の区別が難しい。существовать(存在する)は存在動詞なので、否定文では否定生格が来ることが多いが、所在動詞としての一面もあり、文脈によっては否定文でも主語に主格が来る。появитьсяも同様である。これも主語と補語が両方否定されることと関係あるのかもしれない。

(純粋な意味では絶対的道徳価値はまだ一度としてどこにも世の中に存在したことはない)В чистом виде абсолютные нравственные ценности ещё никогда и нигде не существовали в мире. <所在動詞としてのニュアンスから主格が来ている>
(新しい乗客はそのコンパートメントには現れなかった)Новых пассажиров в купе не появилось. <否定生格>
(市長は出仕しなかった)Мэр на работе не появился. <所在動詞としてのニュアンスから主格が来ている>

出題)「彼らにはそのポストにトロツキーの宿敵が必要だった。スターリンこそその宿敵だった」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2014年07月07日 04:54
コメント

Им нужно было, чтобы исконный враг Троцкого поставлен на пост.Это и есть Сталин.
よろしくお願いします。
切りのいいところでぜひ2000回ぐらいまでお続けください(笑)。
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исконныйというのは太古からというような意味合いで永久のようなニュアンスがあり、враг(今回のような)とは語結合的に無理だと思います。этоというのは手前の物や人を指す指示代名詞ですが、врагを指すならонのはずです。宿敵はдавний (давнишний口語), старый врагなどが使えます。私の答えは、Им нужен был на этом посту ярый враг Троцкого. Сталин им и был.

Posted by やま at 2014年07月07日 06:16

Им понадобился
соперник Троцкого для
этого поста.
Именно Сталин был
его соперником.
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соперникというのは好敵手とかライバルという意味ですから、トロツキーとスターリンがそういうきれいごとを言うような間柄かというと、そうではないと思います。出題は誤解がないように宿敵を繰り返していますが、ロシア語の場合は繰り返しをしないように代名詞を使うのが普通です。直訳が間違いの場合は多々あります。

Posted by ブーチャン at 2014年07月07日 08:19

Им нужно было, чтобы это место занял давний враг Троцкого. Им был не кто иной, как Сталин.
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正解です。ただ少しくどい感じがします。もう少し簡単に表現できると思います。

Posted by Ml at 2014年07月07日 18:13

(お題)
彼らにはそのポストにトロツキーの宿敵が必要だった。スターリンこそその宿敵だった。
(コーシカ訳)
Им нужен на (тот) пост непримиримый с Троцким враг—Сталин.

Для них нужно ... врага.との違いを考えてみました。
・生格にすると存在しない、不定など抽象的な含みが出る
・この文では具体的にスターリンが想定されているため主格(対格?)の方がより適切
と判断しました。

最近の検索エンジンってキーボードをロシア語入力にしとらんでも認識するんですね。
rfr gbcfnm nbhtと打ったら、ちゃんと候補にкак писать тиреと出ます。
恐るべし!
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непримиримый к + 与格です。この場合はнепримиримый враг Троцкогоでよいと思います。活動体とは言え、нужноの直接補語は生格ではなく、対格(生格と同形)です。ただ活動体が直接補語として生格と対格が同形なのは、ロシア語は語順が英語のように確定していないので主格との混乱を避けるためという説明がありますが、そうではない、生格を使うことには他に何か別の説明があるというのであれば、新しい研究対象ということになります。ただ研究する価値があるか、うまく説明できるかは保証の限りではありません。研究していて横道に入り、それがうまく行く場合もないとはいえないのですから、それも学問が発展していく一つの方法です。

Posted by コーシカ at 2014年07月07日 22:04

スターリンは人間ですから活動体、対格な訳はないですね。うっかりしておりました…

Posted by コーシカ at 2014年07月07日 22:06

Им было нужно, чтобы туда на место попал настоящий враг Троцкого. И этим настоящим врагом был вот именно Сталин.
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попастьというのは自動詞ですから、自然にポストにつくという感じで、出題とは合いません。врагを繰り返すのは、くどい感じがします。иがあって、Сталинが語末に来ているので、強調の用法としては声で十分であり、さらにименноをつける必要はないと思います。

Posted by ゴ at 2014年07月07日 23:02

ярый враг で「宿敵」となるのですね。
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意味的には仇敵が近いかもしれません。ただврагとの語結合ではよく出てくる形容詞です。

Posted by やま at 2014年07月08日 06:25
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