2014年06月23日
●続和文解釈入門第487回
私のような素人でも、動詞бытьは連辞(繋辞)という意味で助動詞や状態の動詞としては不完了体であるが、その他にも動作動詞としての完了体の用法があると第386回で指摘しておいたが、専門の研究家であるパードゥチェヴァ先生は、動作の往復(『三訂和文露訳入門』2-1-3項参照)の観点から、同形の完了体бытьの存在を示唆しておられる。
(私は友人のところにいた)Я был у приятеля. <был = приходил = пришёл и ушёлで、動作動詞としての不完了体の用法>
(医師はきっかり6時に来た〔来る〕)Врач был (будет) ровно в шесть.<был = прибыл, будет = прибудетで、これが動作動詞としての完了体の用法(過去はアオリスト的用法で、未来は完遂の用法。ただ過去における結果の存続としての解釈は、былと明らかに過去を示す助動詞としての用法もあるので難しいと考える)>
出題)「これに対する文献による裏付けは見つかっていない」をロシア語にせよ。
Литературного
доказательства по
данному вопросу
до сих пор не находилось.
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出題は「見つかっていない」ですから、現在に至るまでということで、до сих порが来ていることは理解できますが、そうであれば、仮定法以外過去の時制しか示せない不完了体過去形がなぜ来るのでしょうか?литературныйという形容詞は「文学の」という意味であり、「文献の」という意味では使いません。
Документ,который подтверждает это,не нашёлся.
始めの動詞は性質でНВ、後の動詞は結果の存続でСВとしました。よろしくお願いします。
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裏付けるような書類ということであれば、書類は可算名詞ですから単数というのはおかしいと思います。найтисьは確かに見つかるという意味ですが、否定文では見たことがありません。不完了体находитьсяの例はありますが、それだと結果の存続の意味が出ないわけです。私の答えは、Документальных подтверждений этому не найдено.
主語には否定生格が来ます。
найтисьは自動詞であり、自発的に見つかるのは分かりますが、勝手に見つからないというのは論理的におかしいともいます。一方находитьсяは不完了体で、受身ですから、明示されているか、暗示的かは別にして動作主が想定されています。見つからないというのは、探して見つからないわけですから、受身を使う必要があり、その時に体の使い分けをするわけです。不完了体を使うと一般的に「探しても見つからない」という風になり、出題にはそぐいません。そうなると被動形動詞過去短語尾の出番ということになります。
(お題)
これに対する文献による裏付けは見つかっていない
(コーシカ訳)
1) Об этом не документировано.
2) Документов об этом не найдено.
3) Документов об этом не обнаружилось.
結果の存続で3例考えてみました。
「ない」の対象が生格をとるに留まらず、無人称文になるというのも勉強になりました
(『三訂和文露訳入門』172頁、3-2-1-3;
城田俊『現代ロシア語文法 中・上級編』東洋書店、91頁)。
危うく不定の複数に引きずられて動詞を複数にするところでした。
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1)は文書化されていないですから違います。文書化されていても現在まで伝わらないことは多々あるはずだからです。2)と3)は文法的には正確ですが、意訳であり、「裏付け」が訳されていません。この出題の趣旨は主語の否定生格ですから、それが分かっていればよいと思います。いずれ主語が否定生格で用いられる動詞というのをこのコーナーで紹介したいと思います。
С этим письменного обоснования пока не найдено.
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正解です。複数生格にしたほうがよいような感じはしますが。
ご無沙汰しておりました。
設問以外のことで、ご教示いただけないでししょうか。よろしくお願いします。
北方領土返還要求署名数
5500人
(平成26年4月末現在)
Численности подписей, собранных к движению возвращение Север
ных территории
5,500 подпией
В конце апреля 2014г.
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численностьは『三訂和文露訳入門』10-3-1項にも書いたように、численностьは集合名詞との語結合が多く、全体としての数を示すため不可算名詞との語結合が多いわけで使わない方がよいでしょう。原文には運動という言葉はないわけですし、ロシア語にした場合も前の言葉との語結合の関係で座りが悪い言葉です。それとтерриторийのスペルミスがあります。4月末現在とするのであれば、на конец ареля 2014 г.とすべきです。в конце апреля 2014 г.は「2014年4月末に」という意味しかありません。もっと正確に言うのであれば、По состоянию на конец апреля 2014 г.となりますが、そこまでする必要はないでしょう。それと細かいことを言えば、4ケタの数字はカンマもピリオドも入れないのが普通ですし、千の位を示すのであれば、スペースを置くか、ピリオドを入れるべきで、日本や欧米のようにカンマにはしませんので注意ください。小数点のところは、日本は文字通り点を打ちますが、ロシアではカンマを置きます。念のため。
Число (Количество) собранных подписей за возвращение Северных территорий - 5500.
На конец апреля 2014 г.
ご教示いただき、ありがとうございました。
「4月末現在」くらいは、正解かな?と思っていたものの、全敗状態!!めげずに精進します。ありがとうございました。
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自分の興味がある分野で精進されればよいと思います。