2014年06月18日
●続和文解釈入門第482回
未来の時制における完了体と不完了体が否定文で使われると、その使い分けがよく分からない文も多い。前回紹介したパードゥチェヴァ先生の『ロシア語の否定文』の中に、使い分けの例が挙げられていたので紹介する。
(お願いすることで私は彼をわずらわすつもりはない)Я не буду обременять его своей просьбой. <依頼することはない>
Я не обременю (↘)его своей просьбой. <降下型イントネーションの位置が動詞の後ならお願いはするが、それは負担になるようなお願いではない。通常の平叙文のように語末でイントネーションが降下すれば、不完了体未来形と意味的には同じであり、ただ文脈により主観的ニュアンスで、否定の強調か不可能のニュアンスがある>
ただなぜこのような体の使い分けが起こるのかについては説明がないので、自分なりに考えてみると、不完了体未来形の否定は動作の無の確認だから、未来において動作は起こらないということがはっきりしている。ところが完了体未来形の否定では、イントネーションの置き方により意味の解釈が異なる場合がある。動詞のすぐ後でイントネーションを下げた場合↘は、完了体の特徴として主観的ニュアンスから動詞に文の焦点が来る。そのため動詞の直後に降下型イントネーションがあれば、ここでいったん意味が切れ、この後のフレーズには否定詞неは関与せず、「お願いはするが、それで彼をわずらわす事はない」となる。一方文末で下げれば、否定詞неは文全体にかかる、つまりお願いはしないという、不完了体未来形に近い意味になる。ただ完了体未来形の否定は、文脈により否定の強調か不可能のニュアンスがあることを忘れてはならない。次の文例も同様である。
(話をして疲れさせるつもりはない)Он не будет утомлять тебя разговором. <話をすることはない>
(疲れさせるような話はしない)Он не утомит (↘)тебя разговором. <降下型イントネーションの位置が動詞の後なら話はするが、それは疲れさせるような話ではない。通常の平叙文のように語末でイントネーションが降下すれば、不完了体未来形と意味的には同じである>
出題)「手紙は来ていないよ」をロシア語にせよ
Для тебя нет писем.
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正解です。特定の手紙ではなく、どんな手紙もないという意味になります。私の答えは、Письма не пришло.
Писмьмо не пришло.
この二つの文の違いについては次回本文で説明します。
Тебе не приходило писем.
動作の無の確認ということでнвにしました。手紙は待ちわびているある手紙ではなく、手紙全般について「ない」と思い、複数にしました。よろしくお願いします。
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приийти/приходить + к + 与格のはずです。それと不完了体過去形は仮定法を除けば、唯一過去の時制だけで用いられるので、出題の時制とは一致しません。仮にК тебе не приходит писем.であったとした場合、どんな手紙であろうと、届くような体制になっていないという普遍的な事柄に関したものになります。詳しくは次回本文で説明します。
Письмо не поступало.
否定で、今日のところはまだ来てないよということで…。
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不完了体過去形を使っているので、時制は過去ですから違います。それにПисьма (Писем)не поступило.となるはずです。
поступает/поступилоについては否定生格動詞であることは間違いないのですが、
Не поступило (паступает) сведений. (情報が入ってこない)
「部隊の前進に関する情報が入ってこなかった」という文について、主語が主格でも否定生格でも、どちらの文も意味上の差はないという確証を得ましたので、お詫びの上、お知らせします。
Сведений о продвижении войск не поступало.
Сведения о продвижении войск не поступали.
Пока что письмо не пришло.
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半分正解です。Письма не пришло.との違いが分かっているといいのですが。