2014年06月17日
●続和文解釈入門第481回
ロシア語の否定文については、全否定・部分否定、否定生格、否定文における体の使い分けに着目して長いこと自分なりに調べてきたが、総括的な記述のある参考書がなく、大いに不満に思っていた。しかしこのほどРусское отрицательное предложение, Е. В. Падучева, Языки славянской культуры, 2013を入手することができた。目次を見る限り全否定・部分否定、否定生格、否定文における体の使い分けの項目もあり、大いに満足している。全部読んでいないので結論めいたことは言えないが、説明が素人向けではないとはいえ、多くの例文がついており、その例文が分かりやすいので内容は理解しやすいと言える。私の理解していた部分否定(всеなどの数量詞のつく否定文)は語にかかる全否定の扱いであり、全否定の定義も明確である。私のように否定文に興味をお持ちの方もいるかもしれないのでご紹介しておく。
出題)時計などの裏に書かれた「記念に贈る(贈呈)」をロシア語にせよ。
Дарят в знак памяти.
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不完了体を使っているのは正解なのですが、これだと不定人称文になり、誰が贈るのか分からないことになります。無論日本風な奥床しさは日本人には分かるでしょう。贈呈品に「贈呈」と書かれていても、贈り主は一人称であることは間違いないと思います。この用法は遂行動詞なのですが、基本的に遂行動詞は一人称が主語です。それは動作の遂行を完全に把握できるのは一人称が主語のときだからです。二人称や三人称でも遂行動詞はロシア語では可能ですが、その場合もその主語の動作を話し手がよく把握しているという前提があります。英語の遂行動詞の教科書では遂行動詞は一人称の身と書いてあるものもあるくらいです。私の答えは、Дарю на память.
На память
よろしくお願いします。
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正解と言えば正解ですが、お答えは記念だけですから、これだけで贈呈という意味になるかどうかは、厳密に言えば分かりません。自分も含めてみんなで金を出し合って、記念のものを買うということもあり得ます。
преподнешены на юбилей
(юбилейное преподнесение)
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юбилей = годовщина какого-либо события или жизниということで~周年記念ということですから、違うと思います。お答えは被動形動詞過去短語尾の結果の存続の用法であり、動作がすでに成されている(一瞬前か、かなり前かは文脈によりますが)ことになります。「記念に贈る」というのは、この文字を見た瞬間から、動作が理解され、見終わった瞬間意味が了解されるということですから、発話の時点で動作が始まり、動作が終わるという遂行動詞の用法です。
Дарим на память.
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正解です。これはすごい。今回の出題はかなりの難問です。ただ遂行動詞ということを理解されているとよいのですが。