2014年05月26日
●続和文解釈入門第459回
『三訂和文露訳入門』2-1-2-2項を下記のように変更願う。
2-1-2-2 動作の否定(否定文一般)
否定文を時制で考えると、過去の時制では動作の無の確認(不完了体過去形<本項>)、否定の強調(完了体過去形<2-2-1-6項>)、期待外れ(完了体過去形<2-2-2項>)はあるが、動作がすでに起こっているため仮定法過去を除けば、可能性(不可能)ということはない。時間軸の今現在という厳密な意味での現在の時制では動作の無の確認(不完了体現在形<3-1-8項>)や経験の否定(不完了体過去形<3-1-7-2項>)、結果の存続の否定(完了体過去形<3-2-1-2項>)がある。拡大解釈における現在の時制や未来の時制では不可能(完了体未来形<3-2-3項>)や否定の強調(完了体未来形<3-2-2項>)がある。未来の時制ではさらに文脈依存型の否定的意図(不完了体未来形<4-1-1-6項>)もある。禁止は5-1-4項(不完了体命令形)や6-1-5項(不完了体不定形)があり、不可能は6-2-5項(完了体不定形)で、警告・危惧は5-2-4項(完了体命令形)扱う。
否定文というのは動作自体を否定するのだから不完了体が使われるのが普通である。つまり動作の有無の確認に不完了体が使われるということから、一般的に否定文こそ動作の無の確認(ゼロの反復)に他ならない。そのため否定文に完了体を用いるというのは、具体的な1回の動作が否定される場合であり、何らかの主観的なニュアンスを付加することになる。本項では過去の時制における否定を主に扱う。
不完了体過去形が扱う過去の時制における動作の無の確認の他に、動作が始まったが遂行していないか、成果の未達成(結果存続の無効)、否定の強調(一度も~ない)や不可能は完了体過去形で示す。つまり過去のある一点において動作が行われなかったという事をイメージすることにより、期待外れ、失望、予想が外れたことの驚き、不可能などの主観的ニュアンスが生まれる。そのため動作の主体を強調する(主体的意味を担う)場合、完了体動詞過去形が来る。これは否定文におけるアオリスト的用法で、文脈によっては否定文の結果の存続(結果存続の無効)ということになる。多回体の動作の否定については3-1-9項参照願う。また完了体動詞過去形の否定については2-2-2項を参照願う。
出題)「それは私に向かっておっしゃっているの?」をロシア語にせよ。
Вы разве ко мне
обращаетесь с этими
словами ?
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出題は遂行動詞を扱ったものですが、遂行動詞とは主張、謝罪、感謝、誓約、宣言、命令、依頼、質問、警告、助言、提案などの発話行為を意味する動詞ですから、обращатьсяは違うと思います。私の答えは、Это вы мне говорите?
Вы это говорите в мой адрес?
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正解です。これが遂行動詞と理解されてのことだといいのですが。
Ко мне вы это говорите?
今現在行われていることなのでнвとしました。よろしくお願いします。
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ко мнеではなく、мнеとすれば正解は正解なのですが、おっしゃっていることが、過程(現在進行形)とか状態という意味なら不正解です。これは遂行動詞です。過程というのであれば、現在も離し続けていることになり、非常に不自然です。話すという動作動詞が状態という意味で使われることはないはずです。
Это вы говорите по отношению ко мне?
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по отношению к = в отношении + 生格で、動作の方向を示しますが、公式的、ビジネス用語的用法であり、会話で使うのにはどうかなという気がします。それ以外は正解ですが、遂行動詞と理解せずに、出題が現在の時制だから不完了体というのであれば、他の和文露訳で間違う可能性もあります。無論遂行動詞と理解された上でのことであれば、結構なことです。