2014年04月19日
●続和文解釈入門第424回
東日本大震災で当分ロシア語関係の仕事もないだろうと思い、これまでロシア語の文法で長年にわたって疑問に思っていたことを徹底的に調べてみようと思いたった。ロシア語文法には、格変化や動詞の活用など丸暗記しなければならないもの、名詞の格の用法など日本語の理屈で理解しやすいもの、体の用法と単数・複数の使いわけなど理解が難しいものの三つがある。40年以上ロシア語をやっているのだから、最初の二つはとっくにクリアしているが、体の用法や単数・複数については例文の丸暗記によって、使えることは使えるが、根本的な理屈がよく分からない。そこで類語についてのいい参考書も手に入ったことでもあり、シノニム辞典や類語や諺関係の本を精読、再読することにしてもう一度やり直す事にした。それから3年、今ようやく何となく靄が晴れたような気持である。巷のロシア語の参考書は先に挙げた3つすべてを総花的に説明しようとしているものが多く、隔靴掻痒の感がある。最初の二つ、つまり基本的なロシア語文法については城田先生や宇多先生の御著書があり、それを参考にするとよいが、私の『三訂和文露訳入門』は自分がかつて疑問に思っていたことへの答えを書いたものであり、またロシア語学習で日本人が理解しがたいと思われる点を解説したものであり、それが他の参考書との違いである。
出題)「もし私が見つからないようなら、真夜中ホテルを探してみてください」をロシア語にせよ。
Если меня нигде не
найдется, попробуйте
поискать внутри
гостиницы в полночь.
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主語が否定生格というのは存在を否定しているわけで、そうなると探して見つからないという意味にはなりません。それと完了体を続けると、順次的用法になりますから、動作が次々展開していく形となり、時間の余裕が感じられなくなります。出題には「真夜中」とあり、見つからないという動作から、ホテルを探すまである程度時間があるような感じを受けます。そうなると順次的用法は使えないと考えるべきです。полночьは真夜中は夜中でも、夜中の零時、ないしはこれに近い時間を指すのが普通です。一方真夜中は深夜のことですから、夜中の零時以降と考えるべきです。私の答えは、Если меня не застанете, ищите ночью в отеле.
このищитеは不完了体の持つ文脈依存性による促し(着手)の表現。条件文があるので、それが前提条件となる文脈である。
Если вы не находите меня, ночью ишите в гостиницах.
見つけることができないときはいつも、という風に解し、両方とも不完了体にしました。
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反復には不完了体の規則的反復(毎日とか、多数回)と、偶発的反復完了体未来形の(起こるかもしれないし、起こらないかもしれない)がありますが、この区別をよく理解されていないようです。お答えでは、私を見つからないことが規則的に反復されている(例えば毎日、毎月曜日)、わけで、状況的に非常におかしいように思います。いるかいないか、見つかるかみつからないが分からないというふうに、偶発的反復と理解すべきです。ホテルが複数になっていますが、現実的に複数のホテルを真夜中に探すというのはどうでしょうか?
1回ないしはそれ以上の、ないしは回数を特定しない反復を意味する場合は、不完了体が用いられる。完了体の反復の用法(偶発的反復、散発的反復)では動作が起こるか起こらないかが分からない、動作の有無が不明だが、不完了体の反復は動作が起こる(否定では起こらない)という、動作の有か無であることを前提にしているという違いがある。
Если вы не найдёте меня, то пойдите искать в гостиницу в полночь.
例示でсов。貴職とか貴方の会社はвыでいけるんですね。
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例示的用法のところはいいのですが、あとに完了体を続けると順次的用法となり、動作が次々と続く展開となります。日本語の「見つからない」には二通りあって、探して見つからない、努力して探したわけではないが見つからない(その場に居合わせない)というのがあり、普通は後者でしょう。полночьについてはブーチャンさんのところに書きました。弊社、当社はмыとなります。小職はяでしょうが。