2014年04月10日
●続和文解釈入門第415回
前にスウェーデンのミステリー作家の『ミレニアム』3巻(6冊)(スティーグ・ラーソン、ヘレンハルメ美穂・岩澤政利訳、早川書房)を紹介した。ミステリーでは日本もロシアもいまいちのような感じがするが、スウェーデンではこれ以前にも、マイ・シューヴァル、ペール・ヴァールー夫妻のマルティン・ベック主任警視もの(10巻)があり、特に第4作『笑う警官』が有名である。職場の人間関係、仲間の協力関係で事件を解決するのだが、描かれる仲間たちの性格描写がスーパーマン並の記憶力、マッチョなどの他にも、普通の人間の弱点を描いており共感が持てる。同じ題名の警察小説で佐々木譲の北海道警察物も読ませるし、べックものを意識したという。プロットは佐々木譲の方が込み入っているし、質も上だ。ところがべックものに登場する一癖も二癖もある同僚、上司、部下の存在感、人物像の面白さ、ユーモアには太刀打ちできないように思う。しかもこのシリーズを読み進むにつれて1960年代から70年代のスウェーデンの社会情勢、庶民の暮らしが垣間見えてくる。年金などが充実して福祉国家と言われ、理想的な国と見えるスウェーデンも実態は年金の実態、フリーセックス、自殺の多さなど必ずしもそうではないようである。これに対して佐々木譲の登場人物の描写が、日本の他の警察小説に比べて落ちるということではないが、プロットの展開に頼り過ぎているということは言える。
べックもの第2作の『蒸発した男』は1960年代のハンガリーだが、スウェーデン帰国後べックが同僚からザリガニрак料理に誘われる場面がある。ハンガリーにはザリガニ料理はないが、スウェーデンでは一般的だと文中にある。ロシアでもザリガニはよく食べるようだ。一度モスクワで接待してもらった時にザリガニ料理を食べたいと言ったら、そのロシア人はマガダンの人で、そんなまずいものはよせと言ってくれたが、敢えて無理を言って頼んでみた。泥臭くて、身も少なくまずい。沿海州のマガダンは収容所でも有名だが、出張で行ったことがあり、街中で1980年代でも茹でたカニを売っていたのを覚えていたので、その話をしたら、カニやエビを食べたことがあるまともな人間は、ザリガニなんか食わないよと一蹴された。スウェーデンもロシアもカニやエビのおいしさは当時知らなかったのかもしれないし、輸出向けで高価だったのだろう。
出題)「鋸の作業の時にうっかりして怪我をした」をロシア語にせよ。
Я в рассеянности
ранил себя во время
работы пилой.
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正解です。私の答えは、Получили травмы из-за неосторожности при работе с пилами.
「うっかりして」はпо забывчивости, по сущей простоте своейとも訳せる。他にも次のようなものがあるので紹介する。
Это по нечаянности (нечаянно).(うっかりからです)
по недосмотру (пропустил одно известие)(うっかりして(ある情報を見逃した))
по рассеянности ответил(うっかり答えてしまった)
О, простите, я не собирался читать ваше письмо, я открыл его чисто автоматически.(すみません。お手紙を読むつもりはなかったです。うっかり開けてしまいました)
выпустил с простоты, взятки не брал(深く考えずに〔つい〕うっかりして自由にしました。賄賂はもらっていません)
Когда я работал пилой, из-за легкомысленности получил травму.
よろしくお願いします。
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「軽率にも」と「うっかり」の違いだと思いますが、前者は「軽はずみに、十分深く考えずにであり、後者は「ぼんやりして、何も考えずに」のようにお思います。
Во время работы с использованием пилы я рассеянно порезался.
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少しくどい感じがします。работа (с) пилойとしたほうがすっきりします。