2014年02月02日
●続和文解釈入門第354回
『三訂和文露訳入門』2-2-1-2項に、「しかし、「昨日来て、去った」というように、過去を特定する状況語があれば、1度特定の時期に起こったということだから、Вчера он приехал и уехал.となり、приезжалは使えないことになる。つまり、昨日とか1年前とか明らかに過去を特定する状況語が明示されない場合、またいつかは忘れたが、1度あったということをイメージしない場合に、不完了体動詞過去形が出てくる」と書いたが、第349回の回答のコメントに書いたように、これは間違いなので削除し、2-1-3項を次のように訂正するようお願いする。
2-1-3 動作の往復
不完了体過去形の用法には反復と、過程(при-という接頭辞のついた運動の動詞以外)の用法があるが、本項で取り上げる動作の往復の用法というのは、完了体過去形に見られる結果の存続(3-2-1項)の用法のアンチテーゼとして生じた動作の無効(2-1-8-10項)のことである。この用法には、運動の動詞の不定動詞ходить, ездитьの過去形、および接頭辞のついた運動の動詞の不完了体動詞過去形、および対義語のある動詞群の不完了体過去形を用いる。例を挙げると、приходил = пришёл и ушёл; отходил = отошёл и подошёлは、<来たが帰ってしまって、今はそこにいない>を意味し、完了体過去形の順次的用法を意味する。本来不完了体は時間軸の具体的な不動の一点を示す時の状況語と共には用いられないが、完了体過去形の順次的用法の代用であるためにそれが可能になる。また動作が往と復の二つあり、復の動作は往の動作と同じ内容だが、方向のみが逆、つまり同価で符号のみ(+)が(-)に変わっただけの反復動作と考えられるので、不完了体が使われると考えてもよい。これは2-2-1-2項の踏み台(みなし反復)の考え方と同じである。
(昨日僕のところに友人たちが来た)Вчера ко мне приходили друзья. <時の状況語であるВчераにも期間としての要素はあるが、時間軸の特定の不動の一点と考えても問題ない。動作の有無の確認であり、今は友人たちはいないということに文の焦点があるので不完了体過去形が使われている>
往復で使える完了体には4-2-4項で挙げるс-という接頭辞のついた動詞群があるが、これらを過去の時制で用いると往復は往復でも、動作が二つの動作ではなく、一挙動になる。意味的にはアオリスト的用法もあり得るが、結果の存続の可能性が高い。
(ボリショイ劇場へ行ってきました)Я сходил в Большой театр.
2-1-3-1 動作の往復の動詞群
出題)家庭教師の広告案内「数学の家庭教師を月額2万円でいたします」をロシア語にせよ。
Я готов быть вашим
домашним учителем
по математике
с вознаграждением
20000 иен в месяц.
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бытьだとこのまま家庭教師でいるということになりませんか?文法的にはстатьのはずです。お答えは家庭教師の広告の文としては「家庭教師をやってやってもいい」という感じに聞こえます。私の答えは、Даю уроки по математике за 20 000 иен в месяц.
遂行動詞。даватьは抽象的な意味で与えるという意味なら遂行動詞として使える。規則的反復の意味なら未来の時制における反復という事で、不完了体未来形を使わないとおかしいことになる。
Я предлагаю услуги домашнего учителя по математике с зарплатой 20 тысяч йен в месяц.
よろしくお願いします。
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遂行動詞を使っているのは結構なことです。зарплатаというのは予備校にでも就職すればそうかもしれませんが、家庭教師というのはアルバイト(臨時の職業)でしょうから、不適当だと思います。それと円はиенであって、йенではありません。これは英語の影響かロシア人でも間違って書く人も多いようです。ちなみにЙенаはドイツの都市名です。
Работаю домашним учителем по математике за двадцать тысяч иен в месяц.
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遂行動詞を使おうとしたことは評価しますが、работатьは状態の動詞(働いているが本義であり、定期的に働くという意味もあります)であり、遂行動詞であるためには動作の開始と終了が語義に含まれている(動作動詞である)必要があるので、使えないと思います。どうしてもработатьを使いたければ、不完了体未来形で反復の用法を使うことになると思います。