2013年12月20日
●続和文解釈入門第311回
『三訂和文露訳入門』2-2-1-2項で「一見その動詞が初めて出てくるのにもかかわらず、不完了体が使われることがあるが、よく文脈を見ると、すでにその動詞に関する状況設定がなされている、つまり踏み台のように、場がすでにこしらえられていることが分かる」と書いた。これは第290回の出題のように不完了体不定形を用いる場合も同様である。
(みなさん準備オーケーですか?みなさんチーズしてますか?(それでは)撮ってよろしいですか?)Все подготовились? Все улыбаются? Можно снимать?
最初の二つの文で話し手が写真撮影をしようとしていることが分かる。これが「踏み台」であり、そのために、最後の文で切迫感(もうそろそろ)や促し(着手)の不完了体不定形が来ることになる。
出題)「沈没した船の乗組員の安否が気がかりだ」をロシア語にせよ。
Нас беспокоит
положение (судьба)
экипажа затонувшего
судна.
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положениеは位置、状態、地位と多義ですからどうでしょう?судьбаは正解です。私の答えは、Судьба экипажа затонувшего корабля вызывает тревогу.
安否は、жизнь и смерть(生死)とか、жив ли, мёртв(生きているのか死んだのか)であり、Судьба этих людей неизвестна.(これらの人たちの安否は不明だ)などともいう。
(お題)
沈没した船の乗組員の安否が気がかりだ
(コーシカ訳)
1) Мы беспокоимся, (что) живы или нет команды утонувшего корабля.
2) Мы беспокоимся за командов утонувшего корабля.
思いついた順に2つ:直球とちょっとオブラートに包んだものとの2品です。
беспокоимся は心配しているという状態の動詞ゆえに不完了体現在
…と考えますが
船会社や監督省庁の人間が乗組員の家族に対してや記者会見などでの発言で
我々も心配してるんですよ、ということを伝える遂行動詞とも言えそうに思います。
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беспокоитьсяは状態の動詞でしょう。記者会見で発話とともに心配が始まり、発話の終了とともに心配する動作が終わるのではなく、発話の前から心配であり、その状態が続いているということだと思います。船、飛行機、戦車の乗組員はэкипажであり、командаは、一組のチームです。
Мы волнуемся о судьбе моряков утонувшего корабля.
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正解ですが、細かく言うと、морякиは船員であって、乗組員の一員です。
Я опасаюсь жизни экипажа потонувшего судна.
よろしくお願いします。
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文法的には問題ないと思いますが、опасатьсяは「恐れる」という意味であり、心配するという意味に近い用法としてはопасаться за жизньとした方がまだ自然です。心配するという意味ではбеспокоить(ся), волновать(ся)のほうがもっと自然だと思います。
あっ、экипаж! こちらが間違いないですね。
команда は集合名詞としてなら乗組員の意味もあるようですが
ご指摘のとおりスポーツチームなどなど意味が広くて紛らわしいですものね。
(科学アカデミー2/4、80頁; オジェゴフ、232頁; ЗиР、281頁;
岩波、693頁 [岩波のみ集合名詞である旨を明記]; 研究社、839頁)
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岩波が何を根拠にしたかは知りませんが、最新のアカデミー版の露露には乗組員という語義はありません。рыболовные командыというのはありますが、これは漁労の作業班と考えられます。船舶用語でкомандаは船長、一等航海士、技師長などの上級船員を指し、大きな船では一般船員とは食堂(кают-компания〔士官食堂〕とстоловая〔一般船員用食堂〕)なども別です。私は作業船の造船の通訳を10年ぐらいやったので、軍関係以外でもこのような区別があることは承知しています。岩波はこれと勘違いしているような気がします。
ご説明ありがとうございます。
乗組員は乗組員でも上級船員のことやったんですね。