2013年10月18日
●続和文解釈入門第248回
和文露訳の参考書に求められるものは、総花的なものではない。中級や上級の文法書は初級の文法書の記述をそのまま繰り返す必要はない。著者が学習者の理解が難しいと思うところに焦点を当てて解説すればよいのである。そういう意味では、『現代ロシア語文法』(城田俊、東洋書店)や『ロシア語文法便覧』(宇多文雄、東洋書店)は初級・中級混淆の文法書であり、『ロシア文学観賞ハンドブック』(中沢敦夫、群像社)は露文解釈用に徹しているとはいえ、上級用の文法書である。たとえて言えば、会話での和文露訳では、被動形動詞過去短語尾について完璧に理解することは重要だが、他の形動詞や副動詞については露文解釈ほどで重要ではない。必要に応じて文法の本を読めばよい。しかし、体の用法については、上記の参考書では記述が不十分である。少なくともA Comprehensive Russian Grammar, Terence Wade, Wiley-Blackwell, 2011やA grammer of aspect, Forsyth, Cambridge University Press, 1970は読みこむ必要があると思われる。余裕があれば、『ロシア語動詞 体の用法』(ラスードヴァРассудова、磯谷孝訳編、吾妻書房)に進めばよいのである。
出題)「家中忘れないよう紙をぶら下げておくよ」をロシア語にせよ。
Я повешу записки для
памяти повсюду дома.
----------------------------------------
家中というのは家の中至るところということですから、развеситьを使ったほうがいいでしょう。体の用法はその通りです。для памятиというのは受験生が歴史年号とか英単語をぶら下げているような感じを受けます。忘れ物をしないようにというようなぼけ防止の意味での出題だったのですが、受け止め方はいろいろでしょう。私の答えは、Я по всему дому бумажки развешу с напоминанием.
(お題)
家中忘れないよう紙をぶら下げておくよ
(コーシカ訳)
Я собираюсь вешать бумажки повсюду в квартире, чтобы не забыть.
「ぶら下げる」のは未来で「家中」ですから複数回行われる動作と捉えました。
よってсобиратьсяと不完了体不定形вешатьを組み合わせております。
何かの依頼ないし説明を受けた後の返答でしょうから
不完了体が出て来ても不自然さはないと考えます。
чтобыの後はうっかり忘れないようにの意味で完了体不定形のзабытьを使っております。
-------------------------------
собираюсьは叙想語ですから、不定形は完了体を取るべきですが、複数回だから不完了体ということにはなりません。完了体でも動詞の語義に複数回を示すものもあります。未来の反復には不完了体未来形を使ったほうがいいでしょう。собиратьсяのような予定を示す動詞で不完了体不定形が来るとしたら、切迫の用法やделать(具体性がないから不完了体)などが考えられます。
Я собираюсь уходить. (〔そろそろ〕帰るつもりです)
Что собираетесь делать?(何をなさるつもりですか?)
Я повешу листочки по всей квартире, чтобы не забыть.
-------------------------------------
повеситьは1回1か所の行為ですから、別の動詞を使うべきです。