2013年10月10日

●続和文解釈入門第240回

拙著『新訂和文露訳入門』を訂正したので、ご紹介する。
6-2-6-3 遺憾・不本意 → не + 完了体不定形

 「~したい」というのは主観的動作であり、完了体不定形がつくのが一般的である。その否定形не захотеть、не хотетьやне хотетьсяは「~することを欲しない」ということで、主観的ニュアンスの否定であり、嫌気(6-1-8項)のように不完了体不定形が来るのが普通である。ところが、同じ「~したくない」でも、動作が終了してしまえば、過去の時制では遺憾の意や不本意というニュアンスになる。これは「~するにしても、それは本意ではなかった」というように例示的であり、またそれが主観的ニュアンスであるため、完了体不定形が用いられる。

(騙すつもりはなかったんだ)Я не хотел обмануть вас.
(あなたを怒らせるつもりはなかった)Мне не хотелось вас обидеть.

 条件法でも使われる。

(遅れたくなければ、急げ)Если ты не хочешь опоздать, поторопись.
(寝坊したくなければ、目覚ましをかけなさい)Если вы не хотите проспать, заведите будильник.

 ここから発展して非難の意味にもなる。

(私と口を聞くのも、話を聞こうとするのも嫌なんですね)Вы не хотите даже поговорить со мной, даже выслушать меня.

 стремиться(目指す)、стараться(~に努める)、думать(思う)、предполагать(予定する)+ не + 完了体不定形も、不本意や遺憾という主観的ニュアンスがある。しかし、не + 不完了体不定形ならそういうニュアンスはないということになる。

(うっかりして〔他〕人の感情に障らないように努めている)Стараюсь не задеть чувств другого.
(空き巣の多くは警察が「お宮(迷宮)入り」を避けるために受け付けない。それらは警察の統計を大いに損ねるからである)Большинство квартирных краж милиция старается не регистрировать во избежание "висяков" - они изрядно подмачивают милицейскую статистику. <不完了体不定形の否定>

 不定形の動詞の語義によって、遺憾のニュアンスとなるのか、切迫のニュアンスとなるのかが決まっているように思われる。

(それを思い出さないのはよくないことだった)Грешно было о ней не вспомнить. <遺憾>
(捨てるのは惜しい)Жаль выбросить. <遺憾>
(彼と別れるのは残念だ)Жаль с ним расставаться. <切迫>
(立ち去るのは残念だ)Жалко уезжать. <切迫>

出題)「彼は古い小説から抜け出たよう(な人)である」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2013年10月10日 06:41
コメント

Он как будто похож
на такого человека,
который выскользнул
из старинного романа.
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выскользнутьの比喩的な用法としては、記憶から滑り落ちるというのがありますが、この動詞を外してчеловека из старинного романаなら可能だと思います。私の答えは、
Он, казалось, сошёл со страниц старинного романа.

Posted by ブーチャン at 2013年10月10日 08:21

Он человек, который
как будто выходит
из старого романа.
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выходитだと動作が遂行されていないという印象を受けます。вышелと完了体過去形にして、Он, как будто, вышел из старого романа.
とした方がよいと思います。またстаринный にはсуществовавший в давние времена, подобный тому, какой был в старину, живший в старинуという意味があるので、この形容詞の方がいいかもしれません。

Posted by ロン at 2013年10月10日 23:10

Он как будто бы вернулся из старого рассказа.
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戻るというのは元いたところに来るということですから、違うと思います。

Posted by ゴ at 2013年10月10日 23:52

(お題)
彼は古い小説から抜け出たよう(な人)である
(コーシカ訳)
1) Он словно как персонаж из традиционных рассказов.
2) Он дает мне вспомнить персонажа из традиционных рассказов.

彼は古風なおはなしの登場人物のようだ/を思わせる、と解釈しました。
как は主格と同格を取ると考えперсонажとしております。
「古い」は「古風、昔気質」といった肯定的な含みもあると捉えました。
回答にはтрадиционныйを用いましたが
классический、старинныйとも置き換えできるのではないか、と思います。
「小説」は長さが分かりませんが、「おはなし」といった感の出そうなрассказ
を充てております。
2) は「彼は古風な小説(から)の人物を思わせる」と考えました。
「…させる」は彼を見る度に感じることですから
繰り返しの意味を出せる不完了体現在のдает
「思い出す」は具体的な行為と考えて完了体のвспомнитьを組み合わせております。
さて、正解は
なるほど、сойти со страниц という言い方があるのですね。
忘れないように練習してみます(長いので別コメントにて失礼いたします)。
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дать вспомнитьとは言いません。напомнить/напоминатьでしょう。

Posted by コーシカ at 2013年10月12日 23:00

練習その1
彼女のロシア語はきれいだった、まるで作文の教科書から抜き出たかのように。
Ее разговор по-русски был так прекрасен,
как сошел со страниц учебников сочинения.

練習その2:
模範解答で使われている動詞がそれぞれказалось; сошелということは
彼に会った後に物語っているという状況ですね。
聞き手に彼を紹介する、という場面ならкажетсяと現在形を使うのでしょうか:
想定して↓作ってみました。
сошелの方は結果の現存でしょうから、在不在を問わず完了体過去のままと考えます。

- Познакомьтесь! Это господин Такэда.
- Здравствуйте, меня зовут Тэцуо Такэда.
- Здравствуйте, господин Такэда. Я – Юрий Кошкин.
Очень приятно с Вами встретиться.
- Знаешь, Юра, Такэда-сан – очень серьезный человек:
он, кажется, сошел со страниц старинних романов.

- 紹介するよ、こちら武田さん。
- こんにちは、武田哲夫と申します。
- こんにちは、武田さん。私はユーリィ・コーシキンです。
お会いできて光栄です。
- あのねユーラ、武田さんはすっごく真面目。
 古風な小説から抜け出てきたような人なんだよ。
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разговор = словесный обмен сведенями, мнениями; беседаということですから、彼女のロシア語はきれいだったには使えないような気がします。発音произношенгиеや言い回しфразы(文章)がきれいだと言うなら分かりますが。

Posted by コーシカ at 2013年10月12日 23:13
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