2013年09月29日
●続和文解釈入門第229回
ロシア語には時制の一致がないと書いたが、誤解の元なので、訂正しておく。時制の一致がないのは間接話法(伝達話法)に関してである。第197回の本文も合わせて参照願う。
говорить/сказать(話す), объявлять/объявить(宣言する), отвечать/ответить(答える), сообщать/сообщить(伝える), спрашивать/спросить(尋ねる)などの動詞が間接話法で用いられる場合には、英語のような時制の一致がないと考えられている。
発話時を基準にする時制を絶対時制と呼ぶ。これまで挙げてきた文例で単文であれば、ほとんどは絶対時制である。ただ間接話法における従属節の述語動詞の時制は、英語のように主節の動詞の時制にはこだわらず、その点では日本語に似ている。
a) 従属節の述語が現在のときは、主節と従属節の二つの行為が同時に起こっている事を示す。従属節の和訳が「仕事がうまくいっていることを」のとき、主節の訳は下記の通りである。
(手紙で彼は伝える)В своём письме он сообщает, что дела идут хорошо.
(手紙で彼は知らせた)В своём письме он сообщил что дела идут хорошо.
(手紙で知らせる事になる)В своём письме он сообщит, что дела идут хорошо.
b) 従属節の述語が過去のときは、従属節の行為が主節の行為に先駆けて行われる事を示す。従属節の和訳が「彼はもう仕事を終えた」のとき主節の訳は下記の通りである。
(手紙で彼は伝える)В своём письме он сообщает, что работа уже закончена.
(手紙で彼は知らせた)В своём письме он сообщил чторабота уже закончена.
(手紙で知らせる事になる)В своём письме он сообщит, чторабота уже закончена.
c) 従属節の述語が未来のときは、従属節の行為が主節の行為の後に起こる事を示す。従属節の和訳が「彼はすぐに仕事を終える」のとき主節の訳は下記の通りである。
(手紙で彼は伝える)В своём письме он сообщает, что он скоро закончит свою работу.
(手紙で彼は知らせた)В своём письме он сообщил что он скоро закончит свою работу.
(手紙で知らせる事になる)В своём письме он сообщит, что он скоро закончит свою работу.
一方日本語には間接話法以外にも、従属複文で時制の一致がないように感じられるものもある。日本語の、
「他の能力は必要がないので退化した」は結果の現存であり、ヴィヴィッドに感じさせる用法なのかもしれない。
「他の能力は必要がなかったので退化した」はアオリスト的用法、ないしは確言(確述)の用法とも解釈できる。
ロシア語では実際の発話の時制に従う。つまりこの短文においては「必要がない」が時間的に先行し、その後「退化した」わけであり、その逆ではない。
日本語で書かれているロシア語文法書にはこの間接話法で時制の一致がないということに関する記述はないように思う。これは露文解釈を前提としているからとしか思えない。こういうのは盲点であり、英語で書かれたロシア語の参考書を読むと、このような点を克服できると思う。和文露訳をする上では、実際の発話の時制、相対時制も含めて考えないと、正しい訳ができないと考える。
出題)「皆と同じに試験を受けなければいけない」をロシア語にせよ。
Я должен сдавать
экзамен наряду со
всеми другими.
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正解です。ただ主語が一人称とは限りませんが。私の答えは、Надо сдавать экзамены на общих основаниях.
на равных (правах)でもよいかもしれない。
Я должен сдавать
так же экзамен
как и все.
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正解ですが、主語が一人称とは限らないということと、так жеの位置がэкзаменの後の方がいいような気がします。
Следует сдавать экзамен также, как всем.
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так жеと離すべきですし、「~のような」という意味では「, как + 主格」が原則です。しかし、意味の違いが出るときは例外です。
Она любит мою сестру, как родная мать.(彼女は私の妹を実の母がするように愛している)
Она любит мою сестру, как родную мать.(彼女は私の妹を実の母を愛するように愛している)
同格「~として」の場合はカンマなしでкак以下は、同格とする名詞と同じ格になります。『ロシア文法の要点』(原求作、水声社)に載っています。よい本なのでご購入を勧めます。
(私はトルストイのような作家が好きだ)Я люблю писателя, как Толстой.
(私は作家としてのトルストイが好きだ)Я люблю Толстого как писателя.
(お題)
皆と同じに試験を受けなければいけない
(コーシカ訳)
Необходимо сдавать экзамен подобно остальным.
необходимоの後ですが
сдать экзаменとやると「受かる」と混ざりそうですので
あえて不完了体不定形を使ってみました。
さて、正解は
на общих основанияхで「対等に」という意味があるのですね。
勉強になりました。