2013年07月25日

●続和文解釈入門第163回

『新訂和文露訳入門』の8-1-4項でбудетの特殊用法について触れた。бытьの未来形については研究社露和辞典155ページの7および8では推量を表すとあるが、アカデミー露露辞典最新版には由来、親族関係、名前、社会的地位を説明する時にбудетを用いるとあるだけで、推量かどうかについては触れていない。岩波露和辞典の122ページではⅢ12の2)(時間・長さ・重さなどについての数量についての推量を示す)とあり、次の例文が挙げられている。

Ей уже лет девяносто будет.(彼女はもう90歳ぐらいだ)
- Давно ли ты на службе?(勤務は長いのかね?)
- С месяц будет.(ひと月ほどです)

 上記の文で「およそ」という意味を示しているのは、лет девяностоとС месяцの語句であり、これらの文自体に推量というニュアンスはないと思われる。何故そう言えるのかを考えてみよう。例えば、Два и два будет четыре.(2 + 2 = 4)という文に推量というニュアンスはないことは明白である。2と2を足せば、一瞬後には答えは4になるということで、一瞬後が未来だからбытьの未来形が使われているだけのことで、2 + 2 = 4がすでに頭の中にあるということなら、Два и два – четыре.と現在の時制が使ってもよい。このときにбудетが使われるのは、Два и два – четыре.を発音すれば分かるが、述語が形式上存在しない。それで述語を明確にして動詞がない不安定感をなくす同時に、語調の関係ではないかと思われる。

 アカデミーロシア語文法(Наука, 1980)では、бытьの未来形を現在の時制で用いる時制の転用として、二つの用法を挙げている。一つは口語・俗語的用法として、疑問文で用いるもので、「まだ識別していない事実というニュアンス(つまり未来において確定するというニュアンスがあるので未来の時制が用いられているということらしい)оттенок ещё не распознанного факта」がある用法である。Вы кто будете?(どちらさまですか?)
もう一つは、概数приблизительное количествоを示す用法である。現在ではおよその数量(数字)しか分からないが、その確定は未来に先延ばしされる。それゆえ未来の時制が使われているのだという示唆があり、これにも「識別распознавание」のニュアンスがある。この概数を研究社露和辞典や岩波露和辞典では推量と考えたのではなかろうか?しかし、概数と推量では違う概念であることは明白である。

出題)「昨日正しかったものが、今日には疑わしいものになり、明日は全く間違っているということがある」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2013年07月25日 06:26
コメント

Бывает такое
явление, что дело,
которое было
верным вчера становится
сомнительным уже
сегодня и в конечном
итоге станет совсем
неправильным завтра.
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お答えの過去の時制はбылоで、現在の時制は不完了体のстановится(反復)、そして未来の時制はстанетと完了体となっています。未来の時制の動詞だけが具体的な1回の動作の完遂というのはおかしくありませんか?
私の答えは、Бывшие правильным вчера становится сомнительным сегодня и совсем неверным завтра.
 завтраと現在の時制で予定の意味に使われることは、『新訂和文露訳入門』4-1-2-5項参照。

Posted by ブーチャン at 2013年07月25日 07:35

То, что было правдой вчера, оказалось сомнительным сегодня, и завтра может быть совершенно неправильным ; такой случай бывает.
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お答えのоказалосьは完了体過去形の結果の存続だと思いますが、完了体を使っている以上、具体的な事柄となります。つまり「昨日真実だったその事柄は今日は疑わしいものであることが分かった。明日は全く正しい事柄となるかもしれないし、そういうことはよくある」という訳がつけられます。しかし出題は具体的な事柄を指すものではありません。完了体は具体的な事柄を指し、不完了体はそれにこだわらないということをよくご理解ください。

Posted by ゴ at 2013年07月25日 23:32

(お題)
昨日は正しかったのに、今日は疑わしいものになり、明日は全く間違っているということがある
(コーシカ訳)
Бывает, что вчера был правильным,
сегодня становится сомнительным
и завтра будет совершенно ошибочным.

第95回の文が使えそうです。
さて、正解は
おぉ、不完了体現在の予定の用法ですか!
昨日は正しかった事を主語に、動詞はстановится каким1本で乗り切れるんですね。
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お答えも正解ですというか、文法的に考えるとお答えの方がより文法的です。私の答えはやや口語というか、ロシア人が使いそうなものです。

Posted by コーシカ at 2013年07月27日 20:37
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