2013年07月02日
●続和文解釈入門第140回
前回の続きで、オレーシャが書いているが、トルストイは家出して亡くなったわけだが、死ぬ間際にたどりついた駅の駅長はオゾーリンОзолинという人で、亡くなる数日間トルストイと一緒にいたらしい。トルストイの死後この人はトルストイ主義者となり、後に拳銃自殺したという。トルストイという人は非常に影響力のある人であることが分かる。トルストイがこの人の駅にたどりつかなければ、この人の運命は違ったものになったのかもしれない。時代が時代だから、平穏とは言えないまでも。
出題)「そのときは紛争は拡大しないという、はかない希望を抱いていた」をロシア語にせよ。
В то время мы
возлагали пустую
надежду на то, что
конфликт больше не
расширится.
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「そのとき」という明確な過去の時間軸の不動の一点があるのにもかかわらず、つまりアオリスト的用法であるのは明らかなのに、возлагалиという不完了体過去形が出てくるのは理解に苦しみます。それと「期待をかける」という意味では、возлагать надежду (надежды)は雅語です。私の答えは、Мы понадеялись тогда, что конфликт не будет расширяться.
понадеятьсяには「十分な根拠もなく期待を抱く」という意味がある。『新訂和文露訳入門』7-3項のказаться/показатьсяと同様、完全な体のペアとは呼べない。「そのときは」というように時間軸の不動の一点を示す語句があるので、完了体過去形のアオリスト的用法(同書2-2-1項参照)を使う。不完了体過去形を使うためには、すでにこのような動作があったという前提が必要である。
出題では紛争は拡大したということが読み取れ、いわゆる結果の非存続であり、不完了体過去形というのは、結果の存続は表せないが、だからといって結果の非存続を示すというものではなく、単に動作の有無を言うのであり、この場合、結果の非存続を明確にする必要がある。つまり第95回の回答と非常もっと言うと、понадялисьは語義を踏まえた上での結果の存続であり、仮に「期待を抱く」という意味の完了体過去形があったとしたら、それは期待を抱いたということが結果として現存しているわけで、出題は今はそういう期待を抱いていないという点で、それは違うということになる。に近い考え方だということになる。
Тогда у меня была пустая надежда, что конфликт не будет увеличиваться больше.
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正解としてもいいのですが、お答えだとその時はむなしい期待があったと述べているだけで、現在には触れていません。結果の非存続をいかに明確にできるかという課題は残ります。
В то время мы испытывали хруплую надежду на то, что конфликт больше не будет распространяться.
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不完了体過去形を使っているということは、アオリスト的用法を理解されていないことになります。хруплуюというのはхрупкуюのことでしょうか?
В тогдашнее время я питал напрасную надежду на то, что конфликт должен быть локализован.
丁寧なコメントありがとうございます。新訂和文露訳入門を購入しましたので早速拝読しております。словосочетаемостьの辞書は来週訪露するので仕事の合間に現地本屋で漁ってみようと楽しみにしております。もっと早く先生のサイトを見つけられればよかったです。
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ご購入ありがとうございます。хомутさんで5人目です。前の『和文露訳入門』をご購入いただいた方が37名ですから、思ったよりはよい数字だと思います。『新訂和文露訳入門』も買うのは5、6人だと思っていますので、хомутさんが最後のお客さんかもしれません。日本中で5人の人に読まれるということで一安心です。これは皮肉ではなく、下手をすると一人も買ってくれないということは電子書籍(特にロシア語などマイナーな分野)では大いにありうることだと考えているからです。語結合の辞典なら、Учебный словарь сочетаемости слов русского языка, Русский язык, 1978を勧めます。2500の語彙の語結合が例文とともに載っております。私も手元において、参考にしておりますし、こういう辞典やロシア語学の権威が書いた参考書が手元にあるので、私も大きな口が利けるというものです。この本は古本なので、古本屋で探す必要がありますが、Проспект мираのオリンピック競技場にに大きな古本市があって、入場料を若干取られますが、古本では一番大きなところだと思います。ただ5年前の情報なので今あるかどうかは知りません。Ozon. ruなどのサイトでも見つかるかもしれません。支払いが問題だと考えるなら、モスクワのオフィス宛てに届けてもらい、代引きという手もあります。モスクワ駐在時代はそういうことをしていました。カードでは嫌な思いがありましたから。
さてお答えですが、アオリスト的用法(拙著の2-2-1項参照)が理解されていないことと、что以下を未来の時制にすべきなのに、義務に言い換えています。通訳する上では、これは誤訳になります。未来の時制の、特に不完了体未来形の使い方に自信がないのかもしれません。そうであれば、第4章の不完了体のところを一読ください。
(お題)
そのときは紛争は拡大しないという、はかない希望を抱いていた
(コーシカ訳)
Тогда я был(а) в слабой надежде, чтобы конфликт не расширился.
был(а)はнадеятьсяの過去形で言い換えることもできそうです:
今回は「はかない」を繋げたいので形容詞との相性が良さそうな構文を選択しております。
不完了体過去形による過去における状態です。
расширилсяと完了体なのは
文中における時点から見て未来であること
具体的で繰り返しが想定されていない事柄であること
などの要素が関係していると思われます。
さて、正解は
ん~
過去が明記されていて、過去で終わっている動作、よって完了体
不完了体では有無を問うのみで非存続を明示できない(問題にしない)
とご説明いただくと
頭では理解できるのですが、素直におなかまで落ちてきてくれません。
アオリストのところを読んでみます。
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それとнадеяться, чтоです。アオリストところではなく、2-1-8-10や7-3をご一読ください。