2013年05月20日
●続和文解釈入門 第99回
会話での和文露訳を勉強する際に、語彙なら、名詞や形容詞よりも、よく使われる動詞を覚えるのが先決である。そこで問題になるのは体の使い分けということになるが、拙著『和文露訳入門』の見出しを見て、勘違いされる方も多いと思う。この見出しは体の用法を出来るだけ詳しく書けばそうなるということであって、動詞一つ一つに目次に書かれた用法があるということではない。もっというと、文脈以外にも、その動詞のもつ語義によって、ある程度どちらの体を使うのかは決まって来るということである。забыть忘れる、потерять失う、разбить割る、сломать壊す、убить殺す、ударить殴る、уронитьなくす、などの瞬間動作動詞(瞬時の移行・変化を示す動詞)を含む否定的結果の意味がある動詞は完了体で使われることが多い。一方、無接頭辞単純動詞〔делать(する)、писать(書く)、читать(読む)、строить(建設する)、гулять(遊ぶ)などのいわゆる本源動詞は不完了体で使われることが多いし、пойти/поехатьとидти/ехать(これらを完全な体のペアとは呼べないにせよ)では不完了体の方が圧倒的に多く使われる。「研究する」というのはある程度期間がかかる動作だから、不完了体が使われやすい。それで完了体のизучитьよりизучатьが口を突いて出るようにした方が、実際の会話での和文露訳では正しい用法となることが多い。つまり動詞を暗記するときには、完了体・不完了体で覚えることも大事ではあるが、どちらの動詞が会話で使われやすいかというのを目安にした方がよいということになる。『和文露訳入門』の用法にある例文の動詞がその典型的な使われ方であることが多いので、それに着目して覚えるというのも一つの手である。通訳は2、3秒で訳を決めなければならないことが多い。そうなると、用法を思い出している暇はない。確率的によく使われるものが口を突いて出るようにした方が、正しい体の出る確率は上がる。そうはいっても、私の場合は、訳した瞬間、体の間違いが分かったときは、すぐに訂正するようにしている。
出題)「薬の効き目がなくなった」をロシア語にせよ。
(1)Лекарство стало
неэффективным.
(2)Лекарство плохо
действует.
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(1)は分かるでしょうが、(2)は効きが悪いというだけで、ないということにはならないと思います。私の答えは、Лекарство утратило силу.
完了体過去形の結果の存続。
Лекарство перестало помогать.
Лекарство действует слабее.
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最初の文は正解ですが、二つ目の文は弱いということで、効き目がなくなったというのとは違うと思います。
(お題)
薬の効き目がなくなった
(コーシカ訳)
1) Действия лекарства прекратилось.
2) Лекарство прекратило действовать.
いづれも完了体過去による結果の存続です。
さて、正解は
ん~、体は合っとるけど…
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прекратитьの動作主は人、ないしは人為的な機関です。意識的にやめるというニュアンスがあります。しかし、それは瑣末なことで、体の用法は正しいわけですから、それほど気にすることはありません。